放課後、軽音部部室
律「あー、暇だなー」 ぐたー
澪「暇なんて事あるか。練習するぞ」
律「練習は後で良いよ。もっと違う事しようぜ」
澪「私達は軽音部なんだぞ。練習をしなくてどうするんだ」
律「知るかー。ムギお茶だー、お茶もってこーい」
澪「お前は、どこの亭主関白だ」 ぐりぐり
紬「お待たせしましたー♪」
律「あー、お茶がうまい」 ずずー
澪「それ飲んだら、練習するからな」
律「今しようと思ってたんだよ。あーあ、やる気無くなった」
澪「お前は小学生か」
唯「でも、あずにゃんが来てないよ。それまでは、ゆっくりまったりしてようよ」
澪「唯、お前もか」
紬「コントーラーのコード無いなんて、すごいわよねー♪」
律「それはシーザーも驚くだろうな」
澪「で、唯は練習しないのか」
唯「いや。しない訳じゃないけどさ。その辺は程々というか、ペース配分というか」
澪「・・・ムギは」
紬「勿論練習は大切よ。でも澪ちゃん、全員が揃わないとバンドの演奏にはならないでしょ」
律「ムギは分かってんなー」
紬「りっちゃん、練習は大切なのよ」
律「わ、分かってるよ。そんな事くらい」
澪「唯は律派。ムギは中立で良いんだな」
律「2対1。勝負は決まったんじゃないか」
澪「それはどうかな」
カチャッ
梓「済みません、遅れました」
澪「来たな。梓、練習するぞ」
梓「はい、今準備します」
澪「という訳で、2対2だ」
梓「はい?」
唯「あずにゃん、こっちこっち。飴ちゃんあるよ」
梓「何もかも意味が分かりません」
唯「飴ちゃん、いらないの?」
梓「それは頂きます」 もごもご
5分後
梓「・・・そういう事ですか」
澪「それで、どう思う」
梓「練習はするべきでしょうね。今は、部活動中ですし」
澪「だ、そうだ」
唯「あずにゃん。思い直して、一緒にお茶飲もうよ」
梓「練習したら、飲みましょうね」
唯「そかそか。りっちゃん、やっぱり練習する?」
律「するかー。練習なんて、一生ーやらねー」
紬「りっちゃん。それだと一生ドラムに触れないわよ」
律「むぐっ」
澪「語るに落ちたな。ほら、練習するぞ」
律「・・・私はお茶を飲みたいんだよ。お茶を」
澪「ったく。それなら一生、そこでお茶を飲んでろ」
律「言われなくても飲んでやるさ。ムギー、ジョッキで持ってこーい」
紬「はいー、ただ今ー♪」
梓(本当に持ってこないだろうな)
澪「それで唯は」
唯「いやー。私が練習しちゃうと、りっちゃん一人になっちゃうから」 ぽそっ
澪「・・・なんだ、それ」
唯「いや。意味はないんだけどね。たはは」
梓「唯先輩♪」
紬「お待たせしましたー」 どかっ
律「うおっ。マジでジョッキッ」
澪「全部飲めよ。梓、練習始めるぞ」
梓「は、はい。唯先輩も、早く来て下さいよ」
唯「あずにゃんも、早くお茶飲みに来てね」
律「・・・うー、全然減らねー」 ぐったり
紬「お代わり、ありますよー♪」
梓(鬼だ、この人は笑顔の鬼だ)
30分後
澪「・・・落ちるよっ♪」 ぼぼーん
梓「取りあえずは出来ましたね」
澪「取りあえずはな。・・・ちょっと休むか」
梓「はい」
澪「本当は、取りあえずじゃ駄目なんだけどな」
梓「澪先輩」
澪「……取りあえず、お茶飲むか」
梓「はい♪」
律「・・・なんだよ澪、こっち来るなよ。こっちは私達の陣地だぞー」
澪「小学生か、お前は」 すっ
律「入るなよー」 じたばた
澪「5秒までならいいんですー」 さっ
梓(どっちが子供?)
紬「それで、どこからどこまでが陣地なの?」
律「ベンチからこっちが私達。ベンチから向こうが澪達の陣地だ」
澪「望むところだ。律、お前も入ってくるなよ」
律「頼まれても入りませんよーだ」
澪「大体これ、お前のバッグだろ」 ひょいっ
律「うぉっ」 どすっ
澪「これは唯の」 ひょい
律「おぅっ」 どすっ
澪「全く」
梓(もしかして、わざと返してあげたのかな。でも律先輩達の方が、どう考えても狭いし。良く分かんないな)
律、澪「ふんっ」 ぷいっ
澪「まあ、良い。梓、私達はベンチに座るぞ。ムギ、お茶頼む」
紬「はいどうぞー♪梓ちゃんも、はい♪」
澪「ありがとう」
梓「頂きます」
律「ムギーッ」
紬「ごめんなさい。私は中立だから」
唯「ムギちゃんはいつも優しいね」
紬「野菜室だったら困るけどね」
唯、紬「「あはは♪」
律「フリーザー室並にお寒いな、おい」
唯「あずにゃん、あずにゃーん」
梓「なんですか、急に」
唯「ずっと離れ離れだったから、寂しいんだよ」
梓「目と鼻の先にいるじゃないですか」
唯「でも私とあずにゃんの間には、越すに越せない壁があるんだよ」
梓「大げさですよ。大体、越えたところで別に」 すっ
澪「梓。5秒越えるなよっ」
梓「は、はい」 さっ
唯「それで、5秒越えたらどうなるの?」
律「それは、その。なあ、澪」
澪「ああ、律。そうだよな」
律、澪「うんうん」
梓(仲良いんじゃないの、二人とも。で、結局どうなるの?)
澪「さてと、もう少し練習するか」
梓「はい」
唯「あずにゃん。バナナパイ、まだあるよ」
梓「私はもう、十分食べましたから」
澪「あれ。まだ残ってた?」
梓「え?」
澪「な、なんでもない。練習、練習。バナナパイの練習だっ」
梓(食べたかったのかな、もしかして)
ボローン、ボローン♪
唯「どうしようか、これ。残すのはもったいないし」
紬「3人で分けて食べる?」
律「・・・いや。私はもう良いよ。食べ過ぎても太るしな」
唯「りっちゃんが食べないなら、私もいいや」
紬「だったら、しまっておくわね。澪ちゃん達が、後で食べるかも知れないし♪」
律「ん?それはあいつらの勝手だろ」
唯「りっちゃん、もしかして澪ちゃんのために?」
律「はは。そんな訳あるかよ。私は、お茶をもっと飲みたいだけなんだよ」
紬「だったら、お代わり持ってくるわね♪」
律「えー」
律「あー、何か暇だな」
唯「やっぱり、楽器がないとね。澪ちゃん達に頼んで、持って来てもらう?」
律「いやー、駄目だ。お互い陣地を決めたのなら、そこに入るなんて事は許されない」
唯「もう。りっちゃん、変な意地張らないでおこうよ」
律「良いんだよ。別にギターやドラムに触らないからって、死ぬ訳でもあるまいし」 ドンタタ、ドンタタ
唯「今、机叩かなかった?」
律「え?今刻んでた?完全に無意識だったわ」
紬「その台詞、2年前に聞いたわー♪」
澪「ふっ、せっ、はっ」 ぐいぐいっ
梓「・・・澪先輩、ドラムを持ち上げてどうしたんですか?」
澪「ピックが、ドラムの下に入った」
梓「運ぼうとしてません?」
澪「・・・そんな訳無いだろ。ついでに掃除するから、ギー太を運んでくれ」
梓「あ、はい」 すたっ
澪「もっと向こうに。・・・もっと、もっと向こう」
梓「この辺、ですか」
澪「ああ」
唯「あずにゃん、どしたの」
梓「こんにちはです」
唯「それ、ギー太だよね。届けてくれたんだ」
梓「いや。澪先輩が掃除をするというので、ここまで持って来ました
唯「澪ちゃんが?」
律「あんにゃろう」
紬「やっぱり澪ちゃんは優しいわねー♪」
唯「ありがと、あずにゃん。澪ちゃんにもよろしく言っておいて」
梓「はいです♪」 とたとた
梓「ギー太、片付けておきました。それと唯先輩が、ありがとうって言ってました」
澪「私は掃除をしてるだけだ」 はぁはぁ
梓「ドラム、私も運びましょうか」
澪「いや。これは重くて動かせない」 はぁはぁ
梓(本気で運ぶ気だったのか)
澪「・・・・そのスティックも、片付けてくれ」
梓「スティックを、ですか」
澪「ああ」
梓「この辺ですか?」
澪「もっと向こうに。・・・もっと、もっと向こう」
梓「この辺、ですか」
澪「ああ」
律「ん?梓、どうした」
梓「こんにちはです。あの、これを」
律「スティック?」
梓「澪先輩が、片付けろと言ったので」
唯「私達が暇そうにしてるから、澪ちゃんが気を遣ってくれたんだよ」
律「んな訳無い無い」
紬「だったらスティックは、私が預かろうか?」
律「いやいや。それはそれ、これはこれだから」
紬「あらあら♪」
律「・・・梓、澪に伝えてくれ」
梓「はいです♪」
梓「スティック、片付けておきました」
澪「ん、そうか」
梓「それで、律先輩から伝言です」
澪「・・・なんだって」
梓「後ろ、お化け。お化けいるぞっ」
澪「いる訳無いだろ」 さっ
梓(だったら、何故振り向く)
……
澪「・・・ポーケットから、出すよ♪」 ボボーン。
梓「ふー。ギターとベースだけでは、やっぱり薄いですね」
澪「だから、5人じゃないと駄目なんだ」 ぽそっ
梓「え、何か言いました?」
澪「何でもない。・・・ちょっと寒くないか」 ぶるっ
梓「陽が当たりませんからね、この時間は」 ぶるっ
澪「上着は・・・。椅子に掛けてきたか」
梓「取りに行って来ましょうか」
澪「いや。・・・梓、ほらこっち来て」
梓「あ、はい」
澪「済まないな、私がふがいないばっかりに」 きゅっ
梓「いえ。そんな事は」 きゅっ
澪「全く。駄目な先輩だ、私は」
梓「そんな事無いですよ。私は澪先輩を、いつも尊敬してますから」
澪「ありがとう、梓♪」
梓(どう致しまして♪) くんかくんか
唯「・・・澪ちゃん達、寒そうだね」
紬「向こう、陽が当たらないから」 ちらっ
律「知るかー。たるんでるから寒いんだ。・・・うぅっ」 ぶるっ
唯「りっちゃん。そんなお約束なんて」
律「ち、違うよ。お茶飲み過ぎたから。・・・ちょっと、トイレ行ってくる」 すたすた、ぱたん
唯「い、今の内に」 とたとたっ
紬「あらあら♪」
唯「あずにゃん、あずにゃん。これ、二人の上着」
梓「あ、ありがとうございます」
澪「唯、5秒過ぎてるぞ」
唯「さっきも聞いたけど、5秒過ぎるとどうなるの?」
澪「いや、別に何もならないけど。私と律がそう決めたんだから、5秒ルールは絶対なんだ」
唯「結局澪ちゃんもりっちゃんも、お互いを信頼してるんだね♪」
梓「私もそう思います」
澪「そ、そういう事じゃない。とにかく唯は早く戻れ。律が帰ってきたら、またうるさいぞ」
唯「二人とも、早く仲直りすればいいのに。そうしないと私はあずにゃんと、ずっと離れ離れだよ」
梓「さっきから、しょっちゅう会ってますけどね」
唯「そかそか」
澪「全く♪」 くすっ
律「うぃーす、今帰ったぞー」 どたっ
唯「お帰りなさーい」
紬「お菓子にする?私にする?それとも、お茶にする?」
律「色々突っ込みたいが、もう何もいらん」
紬「唯ちゃん。今のはお茶を持ってこいってボケと解釈して良いの?」
唯「おー、ムギちゃん分かってきたね」
律「分かってないのはお前だろ。・・・あ」 ちらっ
唯(見つかった?)
紬(まあ、二人とも上着着てるから)
律「おい、唯」
唯「ひゃ、ひゃいっ」 びくっ
律「このマフラー。梓のじゃないか」
唯「いや。それは・・・、あずにゃんのかもね」
律「ここは私達の陣地だからな。向こうへ持って行け」
唯「隊長、了解しました」 すたすたっ
紬「うふふ♪」
律「なに笑ってるんだよ」
紬「まあまあ。お茶のお代わりどうぞ♪」 こぽこぽ
律「ジョッキに注ぐのかよ、なみなみと」 ぐったり
唯「あずにゃん、あずにゃん。また会ったね」
梓「唯先輩。もう普通に来てますね」
唯「たはは。これ、あずにゃんのマフラー」
梓「いや。これは、律・・・」
澪「梓のマフラーだろ、それは」
梓「・・・ああ、はい。そうでした。私のでした」
唯「で、これは私のマフラー。澪ちゃんはこれ付けててよ」
澪「ありがとう。それと、5秒過ぎてるぞ」
唯「たはは。あずにゃん、寒いだろうけど頑張ってね」 きゅっ
梓「はぁ」
澪「ゆ、い」
唯「たはは。ごめん、ごめん。じゃ、澪ちゃんも頑張ってね」 とたとたっ
澪「唯の奴は、もう♪」
梓(残り香かー♪) くんかくんか
澪「素直じゃない奴」 ぐるぐる
梓「はぁ」 ぐるぐる
澪「暖かいな」
梓「はいです♪」
澪「優しいな」
梓「はいです♪」
澪「律の馬鹿」 ぽそっ
梓(全く、困ったもんだ♪) くんかくんか
最終更新:2011年02月28日 21:40