~ぶしつ!~
梓「私限定なんですか」ハァ
唯「だから協力してね、あずにゃん!」
梓「あの……ストーカーっていうのは、本人に気付かれないように行動するからこそ、ストーカーなんじゃないでしょうか」
唯「だから先に教えておくんだよ! あずにゃんが怖い思いしないように!」
梓「ま、まぁ、監視されるっていうのは、あまりいい気はしませんけど……相手が唯先輩だってわかってたら、怯えなくてもいいですかね」
唯「だよねっ!」ググッ
梓「近いです、顔。近すぎます、今にもキスしそうなくらい近いですから」ドキッ
唯「おっとぉ! キスはまだ早いよね! 抱っこもギリギリなのに!」
梓「……変な気を回さないで、いっそのことぶちゅーっと奪っちゃってくださいよ……」ドキドキ
唯「お風呂は覗いたらマズいよね! えっと、登下校の後を追うとそれっぽい!? でもあずにゃんが怖がっちゃうかも!」
梓「聞いてないし……」ハァ
~げこうちゅう!~
梓「はあ……唯先輩ってば、あれさえなかったら素敵なのに……」ハァァ
梓「……はっ!?」キュピーン!
梓(変な気配。どろっと粘つくような、これは、そう……変態の気配だ!)
梓「…………」シランプリッ
梓(下手に刺激しないように……なおかつ、早く人の多い場所へ……)タタタタタ
唯「待って、あーずにゃんっ!」ガバァ
梓「唯先輩っ!?」ビシィ
唯「あ……あれ? どうして私、カバンで叩かれたのかな……?」
梓「……変態かと思いまして」
唯「ひ、酷いな、あずにゃん。天使のように可愛らしいあずにゃんが変態に襲われないように見張ってた私を、カバンを横にして殴るなんてっ」ガクガク
梓「……カバンビンタより、衝撃が集中する分だけ威力ありますもんね。何なら、もっぺんお見舞いしましょうか?」グッ
唯「う、うう……ごめん。ヨコカバンはもう勘弁して……」ビクビク
梓「先輩がたも、何か言ってください! 明らかにおかしいじゃないですか!」
律「あー。唯の気が済むまで付き合ってやってくれ、梓には悪いと思うけど」
澪「私も同意見だな。ここで拒んだら、憂ちゃんに手ほどきなんか受けちゃったりして本物のストーカーになるかもしれない」
梓「たっ、確かに……でも……」チラッ
紬「…………」ニコニコニコ
梓「……はぁ。わかりましたよ、私は別に後ろめたいことなんてありませんし、スパイごっこだと思ってお付き合いしますよ」
~あずさのへや!~
唯「あずにゃーん、お茶ちょーだい! 駄目ならお水でもいいよ!」
梓「勝手に上がってきたとはいえ、お客様には違いないです。はい、粗茶ですが」ストッ
唯「ありがと、あずにゃーん!」ズズッ
梓「……で。唯先輩にストーカーになられたら、割と本気で困るんですが」
唯「んう? どして?」ズズー
梓「……唯先輩が犯罪者扱いされて捕まったら、パートの再構成が面倒臭そうですし」
唯「うぅん、つまりあずにゃんには私が必要なんだね!」ガバァ
梓「どういうプラス思考ですか」ペシッ
唯「うーん、いけずぅ」
梓「大体、勝手に上がり込んでお茶飲んでたら、ストーカーも何もないじゃないですかっ」
唯「お茶出してくれたのは、あずにゃんだよぉ?」ズズズ
梓「そお、ですけど……」
唯「私、あずにゃんと一緒に晩ご飯食べたーい」
梓「くっ……帰りの買い物まで付いてきて、何故か半額出してくれたと思ったらそんな狙いが!」ギュゥ
唯「……ねね、あずにゃん」ズズ
梓「はい?」
唯「あずにゃんて、口で言う程、私のこと嫌ってないよね」
梓「にゃっ!?」ビクッ
唯「……ね。お夕飯の材料を折半した時点で気付こうよ、そこは」
梓「……ええ、まあ。そもそもそこまで嫌ってたら家に上げませんし」
唯「だよねー」
梓「でも! そんなこと、自称ストーカーな唯先輩にだけは言われたくありませんっ!」クワッ
唯「あひんっ」
~ごはんのあと!~
唯「ぷはー。あずにゃんのご飯、美味しくって食べすぎちゃったよ!」マンプクッ
梓「それはそれは。じゃ、もう時間も時間なので、唯先輩は自分の家に……」
唯「あ、憂? 今日はあずにゃんのおうちに泊まってく。うん、だいじょぶ、うんっ。あ、ご両親はいないみたいだから、また改めて」ピッ
梓「…………」
唯「時間がどうしかしたかな、あずにゃん?」
梓「いえ……」ハァ
唯「んじゃあ……早速!」ジーッ
梓「…………」
唯「…………」ジトー
梓「あ、あのぉ?」
唯「あっ! 私のことは気にしないで!? ストーカーだもん! 見つめるのがお仕事だもん!」ジー
梓「洗い物は済んだし、ちょっと早いけどお風呂に入ろうかと思ってたんですが……まさか、覗くつもりですか?」アセッ
~そのご!~
梓「本当に覗かないで順番待ってるなんて、意外でした」フキフキ
唯「覗きたかったけど、あずにゃんに嫌われたらそもそも意味がないもんね」フキフキ
梓「ストーキングを止めるっていう選択肢はないんですか……ま、目の保養になりましたけど」ハァ
唯「えっ?」
梓「いえ、何でもないです」
唯「私はまだまだ駆け出しストーカーだもん。レベルが上がったら、あずにゃんに気付かれずにお風呂を覗けるようになるよ、きっと!」フンス!
梓「私なんかを見つめてないで、他のことに情熱を注いでください! 結構切実にお願いしますよ!?」
唯「えぇ~? 私、あずにゃんだったら毎日ずうっと眺めてても飽きない自信あるけどなあ」ンムー
梓「他の先輩がたなら飽きちゃうような言い方ですね、それ」ドキドキ
唯「他のみんなでも飽きたりしないと思う。普段一緒にいるだけでも面白いしね」
梓「……だったら他の人のストーカーになってくださいよ!」クワッ
唯「私は、あずにゃんをストーキングしたいんだよ。面白いかどうかじゃなくって、あずにゃんを見つめていたいんだよ?」
梓「あう……で、でも、ストーカーは立派な犯罪行為なんですよ!?」
唯「合意の上ならいーじゃん、別に減るもんじゃなしー」
梓「たっ、確かに減りはしませんが……だって、そうやって見られっ放しじゃ、恥ずかしいっていうか……そもそも合意してません!」
唯「おうちに上げてくれた。ご飯をご馳走してくれたし、お風呂もいただきました……あれれ、これはもう合意じゃないの?」ニヤソ
梓「うく……」ドキッ
唯「というわけで! 私はテレビなんかも消しちゃいつつ!」ピッ
唯「あずにゃんを見つめるとゆー、大事で素敵なお仕事に専念するよ! ねっ!」ジーッ
梓「んぅ……」
唯「えへーぇ。ちょっぴり怒ってるあずにゃんも可愛いねえ」ニマー
梓「じゃ、じゃあ! お返しに私も、唯先輩をストーキングすることにしますっ」ジッ
唯「……私を?」キョトン
梓「一方的に見られるだけじゃ、何だか損してる気分ですから」ジー
唯「なるほど、あずにゃんの言うことも一理あるね。そんじゃお互いに恋人のように熱烈に見つめ合うことにしよっか」ゴクリ
梓「わざと誤解を招く言葉を選んだような気がしますけど、ずっと見つめられる気持ちを唯先輩も思い知ればいいんですっ」
唯「…………」ジー
梓「…………」ンジーッ
唯「真剣な眼差しのあずにゃんも、素敵だよぉ……」ウットリ
梓「……んぅ……ふぅ……」ドキドキ
唯「ねえ、あずにゃん」
梓「は……はい?」
唯「今、あずにゃんの視線を私が独占してると思うと、すっごくこおふんするんだけど……」ハァハァ
梓「気のせいなので落ち着いてください」ドキッ
唯「っでも、あずにゃん……さっきからずっと、私の目ばっかり見てるよね?」ハァハァハァ
梓「あ、あくまでも、唯先輩に変なことされないようにっ……いわば監視です。そう、監視とゆうストーキングなんですこれはっ」
唯「こおゆう監視とかストーキングなら……いくらされても嫌じゃないかな、私……」ウットリ
梓「へ……変態さんなんですか、唯先輩は……?」
唯「私……変態、なのかな?」
梓「もしかして自覚なかったんです?」
唯「うー、その言い方はしどいよ、あずにゃん」プクー
梓「……変態さん。唯先輩、変態。変態の唯先輩っ」
唯「あっ……や、ああ、そんなに変態変態ってあずにゃんに言われるとっ……何かに目覚めちゃうかも?」ドキドキドキ
梓「目覚めないでくださいっ!」クワッ
唯「やだなあ、冗談だよ。私はストーカーだけど、変態じゃあないからね!」エッヘン
梓「充分に変態ですよ!?」
唯「えぇ……ストーカーが変態だってゆうなら、あずにゃんも変態ってことじゃん?」
梓「……えっ?」ドキッ
唯「そうだよ、あずにゃんも変態なんだよ! 私と同じだね!」
梓「そんな……私が変態って……変態の烙印を押されるだなんて……」ドキドキッ
唯「んへー……あずにゃんの、変態さん。しかも怖くない、むしろ可愛いくらいだよっ」ニコー
梓「へっ、へ、変態とか言わないでください!」カアア
唯「えへへへへ。そんなこと言っても、ちゃーんと私を見つめててくれるんだね?」
梓「と、当然です……唯先輩みたいな変態ストーカーから目を離したら、何をされるかわかりませんから……」
唯「その言い方はちょおっと待ったぁ! それじゃあまるで、私があずにゃんにいかがわしい真似をするような感じじゃん!?」
梓「……しないんですか?」ポッ
唯「いや、しないけど……しないつもりなんだけど……今はまだストーカーとしての経験値を貯めるのが先だもん」
梓「じゃあ……経験値、貯めましょうか。お互いに。ええ、見つめ合うの上等です、朝方まででも続けてやるです」ジー
唯「あ、朝までは、ちょっと……あ、そういえばあずにゃん、ちょっとサイズ大きいTシャツとか持ってない?」
梓「ありますよ。知り合いが予定外に泊まる時用に、安いですけど下着もいくつかサイズあるので、後で新品を買って補充してください」ジーッ
唯「あ、あれ? さっき私お風呂上がりにあずにゃんを覗きたいの我慢したのに、まさかここで着替えろって話なの?」イヤーン
梓「折角お風呂に入ったのに、着古した下着でいたいなら構いませんけど」ジジーッ
唯「ん……ちょ、ちょっと見えにくいように隠れるのは許してくれるかな」アセー
梓「私は唯先輩程には変態でないので」
唯「あ、あはは……んじゃ、着替えお借りしまーす」ヒョヒョイ
梓「…………」ドキドキ
唯「あり、本当に安いやつだね。これならお返しに買ってくる下着の値段は気にしなくていーね」
梓「私が考えたわけじゃないですけどね。なかなかいいシステムだと思いますよ」
唯「……そっか。あずにゃんにも大事なお友達がいて、お泊まりしたりしてるんだ……」ハァ
梓「あ、ああ……いえ、そのっ! 友達はいますけど! 高校に上がってからは疎遠になったっていうか!」
唯「……うん?」
梓「あっちはあっちで新しい生活してますし、私が唯先輩の相手をしてるみたいに楽しく過ごしてるらしいですしっ」
唯「あ……れ? あずにゃん、私と一緒にいるのは、楽しいってゆうこと?」ポ
梓「あう……」ポ
唯「ね、ねっ、どうなの? 私と一緒にいて、楽しい?」ドキドキ
梓「それはノーコメントで!」クワワッ
唯「そんなこと言わないで、教えてよ。嫌だったら……んと、まだ電車もバスもある時間だから帰るし」
梓「もう真っ暗ですし、嫌でも帰せないですよ……それに、湯冷めでもされたら明日の練習に響きますしねっ」プイス
唯「や~ん。あずにゃんってば、優しいんだ~」
梓「振り回したカバンの横が威力高いんですよね。あんまりおふざけがすぎると……」ブンッ
唯「うひゃあ!?」ヒョイッ
梓「……ふふっ、冗談なのに。怯える唯先輩も可愛いですねえ?」ニマー
唯「そこはかとなく殺意を感じたけど……本当に冗談だったの?」
梓「そこを見極められないようじゃ、ストーカー失格ですね」
唯「うう……私もまだまだだねえ」ガックリ
最終更新:2011年02月27日 22:42