律「ありゃー、雨降ってるな」

いちご「うん」

部長会議を終え、律といちごが外に出るとシトシトと雨が降り注いでいる。

昼間は良い天気だったのに。

二人は校舎の入り口で佇んでいた。


家の人に迎えに来てもらおうか?といちごが思案していると

瀧エリ「あれ?雨降ってるの?」

律「そうなんだよ。傘無いし参ったよ」

佐藤アカネ「私、折りたたみ傘持ってるから良かったら使って」

いちご「良いの?」

エリ「うん、私も傘持ってるから。アカネ帰ろ」

アカネ「うん」

相合い傘で帰って行くエリとアカネ。

エリ「アカネ、今日は私の家でしよ」

いちご(するって何を?///)

アカネ「良いよ、私新しい装備出来たんだ」


いちご(あ、ゲームね///)

律「相変わらず大胆だなあの二人は」

いちご「3-2公認カップルだもの」

いちご(そして律っちゃんと秋山さんも・・・)

律「いちご、私達も帰ろーぜ」

律は照れ隠しからか、笑顔を輝かせ、いちごの腕を取る。

律は傘を開いた。けれど折りたたみ傘は、二人が入るにはやや小さい。

律「もっとくっつかないと濡れちゃうぞ」

律はいちごに寄り添う。

いちご「うん///」

少し顔を赤く染め、いちごは恥ずかしそうにニコリと笑う。

こうして二人は互いの温もりを感じながら雨の中を歩き出した。

姫子「ヒューッヒューッ!相合い傘とは妬けるね」

律「姫子、うっせーよ///」

いちご(もしも知らない人が見たらやっぱりそういう関係に見られるのかな?)

いちご(今はそれでも嬉しい)

律「何笑ってんだ?」

いちご「何でもない」


最近私は変わったと自分でも思う。

自分で言うのも変だけど

以前よりも笑う回数が増えたような気がする。

どうしてだろう?

律っちゃんと居ると自然と笑みがこぼれる。


そう、あれは一年の時の学園祭。

秋山さんが一躍人気者になったライブ。

でも私はドラムを叩く田井中律に惹かれた。

3年になって一緒のクラスになった時は心の底から喜んだ。

律っちゃんはコミュニケーション能力の低い私にも気さくに話しかけてくれた。

部長会議などで、一緒になる事も多くなり話す機会も増えた。

昼休み、軽音部のみんなが一緒にお昼ご飯を食べている。

りっちゃんは秋山さんと楽しそうにお喋りをしている。

秋山さんも実に楽しそう。

この二人がお似合いだと言うのは私も納得する。

秋山さんは私から見ても美人だし、格好良い。

既に恋人同士なのかな?

そんな事を考えながら俯き加減で黙り込んだまま歩くいちごを、隣を歩く律がちらりと見る。

いちごが喋る事は少ない。

でも、それがあまりにも不自然だったからか、つい視線を送ってしまう。

律「どうしたんだ?」

いちご「ん、何でもない」

と軽く微笑んで見せた。

その笑顔に律もゆっくりと笑う。


私は昔から感情を表すのは苦手だった。

嬉しかったり、楽しかったりを表現したいと思っても上手く表情が作れなくて

周りの人からは無表情とか言われてた。

若王子いちごはクールで他に興味を示さない人間だと

クラスみんなの中でのイメージが作り上げられた。

律「笑った方が可愛いよ」

そう律に言われてからだ。

いちごが笑顔を見せるようになったのは


律「雨、強くなって来ちゃったな」

いちご「うん」

律「これじゃ、傘差してても濡れちゃうな。雨が弱くなるまでどこかで雨宿りして行こうぜ」

いちご「うん」

近くの自販機コーナーに入る二人。

ここでしばらく二人きりか。

もしも願いが叶うなら

このまま雨が弱くならなければいいのに・・・・

そして、君の事を好きだと言える勇気が欲しい。


二人はしばらく他愛もない会話をしていたが、

不意にいちごがした質問が律に衝撃を与えた。

いちご「りっちゃんって好きな人いるの?」

その言葉に一瞬律の動きが止まる。

しばし間を開け

律「…いるよ」

律はそう言って足元を見つめる。

どうしてだろう、分かっていたはずなのに、胸がずきりと痛む感覚に息が苦しい。

いちごは平然を装い、律の顔を覗き込むように見た。

いちご「へぇ、そうなんだ誰?」

律「・・・誰だって良いだろ」

いちご「同じクラスの人?」

律「!」

いちご「その反応はズバリね」

律「だ、誰だって良いだろ///」

いちご(秋山さんね)

律「そういう、いちごはどうなんだよ?」

いちご「私?」

律「そうだ」

いちご「居るわよ、好きな人」

律「へー、誰?」

いちご「律っちゃんも教えてくれなかったから私も教えない」

律「じゃ、じゃあいちごが教えてくれたら私も教えるよ」

いちご「!」

いちご(好きな人に気持ちを伝えるんだもの良いよね)

いちご(それに律っちゃんの口からハッキリ聞きたい)

いちご「分かったわ」

いちごは顔を伏せながら

いちご「・・・っちゃん」

律「え?」

いちご「律っちゃん」

律「私か?」

驚いた表情でいちごを見つめる律

自分の気落ちを伝えることが出来たいちごだが、

律に見つめられていると段々気恥ずかしさが増してきたのか、ふと視線を反らしてしまう。

いちご「今度は律っちゃんの番だよ」

顔を真っ赤にしながらいちごは律を促す。

律「わ、分かったよ」

動揺しながら律がこたえる。

律『私が好きなのは、秋山澪だよ』


そういう言葉を予想していた。

だが、律の口から発せられた言葉は

律「わ、私が好きなのは、いちごお前だよ」

余りに突然の事に、いちごは硬直してしまう。

耳に入った言葉が信じられなくて、いちごはゆっくりと律を見る。

いちご(え?今私の名前を?)

いちご「秋山さんじゃないの?」

律「澪はただの幼なじみだよ。恋愛感情とかは無いよ」

律「いちごと一緒に居ると、心が落ち着く」

そう語る律に、いちごはキュンとトキメク。

いちご「私も、律っちゃんと一緒だとすごく楽しい」

恥ずかしいのを堪えつつ、いちごも自分の気持ちを打ち明ける。

律はいちごを見つめる。ふふ、といちごは微笑した。

いちご「律っちゃんには笑顔の作り方とかも教わったし」

そう言うといちごは律のおでこにキスをした。

それは、今いちごが出来る精一杯の愛情表現であった。

律「雨、ずいぶん弱くなってきたみたいだな」

律「さっきお願い事2つしたんだけど、2つはやっぱ欲張りすぎたみたいだな」

律「いちごの事を好きだって言える勇気はもらえたけど」

律「雨が弱くならないようにってお願いはスルーされちゃったみたいだ」

いちご「そんなお願い事してたんだ」

律「へへ・・・」

律は頬を染めながら、笑顔を弾けさせる。そして

律は優しくいちごの頭を撫でる。するといちごは、よりいっそうの笑顔を見せるのであった。

いつだっていちごと笑っていたいから

もっと楽しい時間を

もっと、もっといちごの笑顔が見たいよ。



お終い