梓「なにもかもオーバーヒートしそうです……」

唯「ど、どうしたの」

澪「まさか演奏が下手くそだったから……」

紬「……うぅ」

梓「この星は……恐ろしいです」

律「……ふぁ?」

梓「文明レベルはたいしたことないくせに……ここまで文化が発達するとは」

澪「え?」

梓「音楽はいいですね。音楽は心を潤してくれる。地球人の生み出した文化の極みです」

律「さ、さいですか……そりゃどうも」

唯「そんなに感動してくれたんだ……うれしいな、ありがとうあずにゃん」

梓「いえ、こちらこそ感謝するです。こんな素晴らしいものがあればきっと戦争もなくなるです」

梓「本国のみんなにもぜひ聞かせてあげたいです。すぐにその楽器とやらを量産するよう申請するです」

澪「音楽があれば、戦争がなくなる……か」

梓「え? どうしたんです」

律「梓はあんまりニュースとかみないのか?」

梓「……はい、まだ全然しらないですけど」

紬「戦争は……なかなかなくならないわ」

梓「え?」

澪「うーん、日本は全然平和なんだけどな。地球単位だと人間はいつまでも戦争してるよ」

梓「そんな平和な星にも戦いの火種はあるんですか……それはちょっと残念な報告になりますね」


梓(そういえばむったんを撃墜した兵器もかなりのレベルだったな)

梓(どんな星にも戦争も兵器もつきものなんだね。もちろん頭ではわかってるよ、いままでそんな星をやまほどみてきたから)

梓(それでも私は、この音楽という文化の中に、一つの未来をみた)

梓(みんなが笑って、安心してくらせる宇宙をつくりたい……)

梓(連合も、ヤッテヤルデス星本国もそのために惑星フロンティア計画を開始したのに……どうしてこうなったんだろう)

梓(危険だと言って滅ぼした星は数知れず、利用価値があると植民地化した星も数え切れないほど)

梓(……もし、私がこの星の戦争について報告したら、この星はどうなるんだろう)

梓(……いまはまだ考えないでおこう、まだここにきてわずか二日。この先どうなるかはまだわからない)

梓(地球人の化けの皮が剥がれる可能性もある……まだ調査を続けなきゃ……)

唯「どうしたのあずにゃん、黙りこんで」

梓「い、いえ、なんでもないです。報告内容を吟味してただけです」

唯「そう……」

梓「わ、私もう一回音楽をききたいです! きかせてくださいです!」

律「よーし! そういうことなら!」

澪「あぁ、メドレーだ!」

紬「うふふ、たっぷり楽しんでいってね!」

唯「いっくよー!」


♪♪♪


梓「ふにゃああ……幸せです……」

唯「そんなに気に入ってくれたら本望だよね、えへへ」

澪「う、うん……曲をつくったかいがある……」

律「あー、疲れたー……とりあえず今日はこのへんで」

紬「そうね、夏休みになったらまたたくさん練習しましょ!」

澪「あ、合宿はどうする?」

律「そうだ! よければ梓もきたらいいじゃん!!」

紬「うんうん! 大歓迎かも!」

梓「合宿? なんですかそれは」

唯「あずにゃんもいこうよー! 海だよー!」

梓「わかったです。また調査が増えるならいくしかないです」

律「むひひ、これで確実に部員確保だな」

澪「……いや、そういうつもりで誘ったわけではないけどな」

唯「たのしみだねーあずにゃん」

梓「はいです! これほど楽しい調査観測ははじめてです!」

律「んで、さっきから調査調査ってなんなんだ?」

澪「さぁ? きっとなにか他の単語とまちがえてるんじゃないかな日本語まだ不自由そうだし」

紬「うふふ、ちょっとずついろんなことを教えてあげないとね」

唯「みんな協力してくれてありがとー。助かるよー」

梓「この星のサンプルどもは気が効いてやりやすいです!」


☆☆☆


帰り道


唯「あついねー」

梓「このミンミンうるさいのをなんとかしてほしいです。耳障りです」

唯「セミの奏でる音楽だとおもったらどう?」

梓「……なるほどです。そう考えれば趣があるです。ミンミン」

唯「お、アイス屋はっけーん! アイスたべる?」

梓「それはなんです? おいしいですか?」

唯「つめたくておいし~いんだよ。私の大好物」

梓「ユイ先輩の大好物ですか。それは調査の必要性大ですね」

唯「うん! 食べてみて!」

梓「ヤッテヤルデス!」

唯「おねえさーん、このソフトクリームを2つくださーい」

梓「……おお、なんかむにょむにょしたのがマシンからグルグルでてくるです! なんかアホっぽいです!」

唯「ほい、あずにゃん」

梓「どうやってたべるんです?」

唯「こうやってペロって舐めてたべるんだよ」

梓「……ペロペロ」

梓「!! つめたくて甘くておいしいです! やみつきです!」

唯「へへー、そうでしょー」

梓「ペロペロペロペロ、ん、ツ、頭いたい……キーンってするです」

唯「あはは、いっきに食べるからだよー」

梓「でもだんだん溶けてくるです。どうしようもないやつです」

唯「えへん、こぼさないように食べるのがコツなのさ!」ペロペロ

梓「むぅ、むずかしいです」ペロペロ

唯「んふーおいしー、幸せー!」ニコニコ

梓「…………私も、幸せです……」

唯「ん?」

梓「い、いえっ! なんでもないです! なんかここにきてからちょっと調子が変なんです!」

梓「こ、このアイスをたべるときっとオーバーヒートも収まるです」

唯「あずにゃん、口の周りべたべたー」

フキフキ

梓「ふにゃっ!?」

唯「ん? どうしたの……」

梓「あっ……あ、だめです」

唯「?」

梓「これ以上はおかしくなっちゃうです」

唯「ほえ? なにがー?」

梓「わからないです。だからいまさぐってるんです!」

唯「? おかしなあずにゃん、ふふふっ」

梓「おかしいです……絶対なにかおかしいです……ユイ先輩の近くにいるとおかしくなるです」

梓「このおかしな感覚が理解できたらいの一番に本国に報告するです」

梓「きっとこれにより私の昇格まちがいなしです」

唯「私は応援してるよ。早く記憶がもどるといいね」


梓「あと……一ヶ月……」ボソッ

唯「?」

梓「……調査ガンバルです!」

唯「うん!」

梓「とりあえずこれを食べたらまた家でギー太とやらをひくです。きかせろです」

唯「えー、まだひくのー? つかれたよー」

梓「もっと協力的になるです」

唯「んもー、わがままだなー」

梓「うるさいです! サンプルはおとなしくいうことをきくです!」

唯「あはは、なんか怒ってるあずにゃん可愛い~」

梓「ば、馬鹿にするなですううう!!」



第一話
『ヤッテヤルデス星人襲来!』 

おしまい




梓「ミンミンミンミン」

唯「……あつーいー……とけるー」

梓「ミンミンミンミン! 我慢するです! これが風物詩というものだとテレビで言っていました!」

紬「もうちょっとで別荘よ~」

律「ようし! ついたら早速~!」

澪「練習だな! 練習するよな!」

律「う、海に……」

梓「調査するです! 報告するです!」

唯「あずにゃ~ん、あついー……」

梓「耐熱スキンすらもってないとは、不憫です」

澪「そうだ、ついたら梓も楽器やってみる?」

梓「音楽ですか? できるならやってみたいです。まぁ聴いてるだけでもいいんですけど」

紬「たしかギターも余ってたはずだから」

律「あー早く泳ぎたいー、スイカ割りしたいー、花火したいー」

唯「あずにゃんも一緒に泳ご~!」

梓「なんだかいっぱい調査対象があって嬉しいです。仕事にも精が出るってもんです」

唯「あずにゃんは熱心だねーよしよし」ナデナデ

梓「ふみゃ……」

律「お、海だ! みえてきたぞー!」

紬「うふふあっちの家が今回使う別荘よ~」

澪「ま、また結構な大きさの……いつもありがとうムギ」

梓「これが地球の海……近くでみるととっても青くて綺麗です……」

唯「海~~! 水着! 中に着てきてよかった!」

律「うおおおおお! 突撃だー!」

梓「調査するです! 突撃するです!」

澪「ちょ、おい! 練習……ムギぃ……」

紬「えへへ。この水着似合うかな」

澪「そ、そんな……」

梓「澪先輩も早くいくです! みんなで調査するです!」

律「澪は真面目だから一人で練習するんだもんなー?」

澪「うぅ……ちょっとだけだぞ! 昼からは絶対の絶対に練習するからな!」

唯「あははは、あずにゃ~ん、あんまり走るところぶよー」

律「なんだ~? 梓は海はじめてかー?」

梓「……ふむ、塩分濃度がずいぶん安定しているです。おそらくこの星の生き物は海から命の恩恵を」ブツブツ

梓「サンプルとして持って帰るです。これを量産すれば食料の生産に一定の――」ブツブツ

唯「……あ、また変なモードに入っちゃった」

律「この二週間ずっと梓をみてきたけど、いっつもあんな感じなのなー」

唯「うん、記憶さがし手がかりになればといろんなことを体験させてあげてるんだけど……」

律「まぁあれはあれで……おもしろいというか、なんというか」

唯「えへ、かわいいよね! あずにゃん!」

律「ちょっと生意気だけどなー」

澪「私たちにとってはじめての後輩だもんな……私が先輩……ふふ」

紬「これはもうけいおん部に入るしかないわね! うんうん!」

唯「あずにゃんも一緒に演奏できたら楽しいだろうねー」

律「ま、今はとりあえず泳ごうぜい! ほら梓ー、いつまでしゃがみこんでんだー」


☆☆☆


澪「ま、まってりつー」バシャバシャ

律「へへー追いついてみろー」ザブザブ

紬「りっちゃん泳ぐのはやーい」ジャプジャプ


梓「……」

唯「あずにゃん? 泳がないの?」

梓「どうやってるです」

唯「え?」

梓「どうやって水中であんなに早く移動してるです。不思議でたまらないです」

唯「あずにゃん泳げないの?」

梓「……そんな目でみるなです」

唯「じゃあ教えてあげる! えへへっ!」

梓「……なんか不安が胸をよぎるです」

唯「はい、いっちにーさんしー」

梓「あぷ、ん、あぷ」バシャバシャ

唯「そうそうそんな感じ。バタバターって」

梓「ん、あぷ」バシャバシャ

唯「上手だねーあずにゃん」

梓「ばかにするなです! こんなの、あぷ、ん、余裕です!!」

唯「ふーん、じゃあ手はなしていい?」

梓「え!? それは……!」

唯「離すよ?」

梓「あ、ちょ……」

唯「ほれ」パッ

梓「ふにゃあああおぼれるですううう! 死ぬですうううう!!!」バシャバシャ

唯「おおげさだよ……足ちゃんとつくっばて」

梓「助けるですうう!!! このまま英霊になるなんていやですううう!!」

唯「んもー、しかたないなー。ほい」ギュ

梓「全く! 焦らすなです!」

唯「それじゃ泳げるようにならないよ?」

梓「といわれても、うまく浮かないです。きっとこの星に嫌われてるです」

唯「だれでも浮くよー、リラックスして」

梓「……じー」

唯「なに?」

梓「じー」

唯「ど、どこみてるの!?」

梓「浮き袋……なるほど、ずるいです」

唯「へ?」

梓「この二つの立派な浮き袋を使うです」

唯「え? ちょ」

梓「……」ムギュ

唯「ふぁ! ちょ、ちょっとあずにゃん! そんなとこさわっちゃ、やぁ……」

梓「これをよこすですー! よこすですー!」ムギュムギュ

唯「たすけてー、私より澪ちゃんのほうがいいものもってるよー」

澪「こ、こらっ! 唯! そんなこと言ったら……」

梓「……じー」

澪「ひっ」

梓「……」

澪「……? 襲ってこない」

梓「ふふ……やっぱこれがいいです」モニュモニュ

唯「ふああああんどうしてー!!」

梓「地球製の特殊な浮き袋を調査するです! 報告するです!」

唯「そんなのしなくていいよー!!」

梓「ヤッテヤルデス!」


律「なんだぁ……あれ」

紬「ぷ、プライベートビーチだけど、あれはちょっと……」

澪「よかった……助かった……」


5