真鍋家編

コンコン

紬「ことみ~、ご飯よ~。早くいらっしゃい」


ことみ「うん、わかった~」


たかとし「あ、俺も…」


紬「あら…?たかとし、あなたもいたのね?」


紬「今から用意するわ、もう少ししたらいらっしゃい」バタン


たかとし「はあ…」


ことみ「どうしたの?早く行こうよ」


たかとし「…俺ってさ、ムギ母さんに嫌われてるのかな…」


ことみ「何で?そんなことないと思うけど…」


たかとし「今だってさ、明らかに差別されてるような…」


ことみ「う~ん…。そんなに気にすることないと思うけど、どうしても気になるんなら、一気に解決するいい方法があるよ!」


たかとし「本当か!?」


ことみ「うん、今日の夜に夜ばいをかけて、男女の仲になれば…」


たかとし「…ああ、悪いのはお前に期待してしまったこの俺だ、気にすんな」


―後日


和「え?私に相談したいことがある?」


たかとし「うん…」



―和の部屋


和「え?ムギがあなたを嫌ってる?」


たかとし「うん…。ことみと比べて、冷たいしさ…」


たかとし「その…、ムギ母さんって女の人が好きなんでしょ…?」


たかとし「バンドのメンバーの人達の子供はみんな女の子だし…」


たかとし「俺って、望まれない子供だったのかな…」


和「はあ…、やっぱりそう思っちゃうわよね…」


たかとし「え…?それじゃ、やっぱり…?」

和「ううん、それは違うわ」


たかとし「え…?」


和「結論を先に言うとね、ムギはあなたをとても大切におもっているわ」


たかとし「そ、それじゃ何で?」


和「それには、まずこれを聞いてね」


たかとし「カセットテープ…?」


和「これは、私が密かに録音したものなんだけど…」


たかとし「…何で?」


和「気にしないで、趣味みたいなものだから。HTT寝言大全集もあるけど、聞く?」


たかとし「…またの機会に」


和「あらそう?じゃあこれを聞いてね」


ガチャン


紬「うう…。あなた…」


紬「また、たかとしとお話できなかった…」

和「…また駄目だったの?」


紬「あの子の前にでると、私…、何も言えなくなって…」


紬「今日も、心にもないことを…」


紬「私、きっと嫌われてる…。ひどい親だと思われてる…」


和「…大丈夫よ、あなた達は親子でしょう?」


和「それに、あの子はそんな子じゃないわ」

和「勇気を…、ほんの少し勇気をだせばうまくいくわ…」


紬「う…、う…」


ガチャン


和「…どう?少なくともあなたを嫌ってはいないってわかった?」


たかとし「うん…?でも、何で?」


和「簡単に言うとね、ムギは男性とどう接していいか分からないの」


たかとし「どういう意味?」


和「ムギはお嬢様育ちだって知ってるわよね?」


和「ムギのお父さん…。あなたのお祖父さんは多忙な方で、ほとんど家にいなかったそうよ」


和「年に会えるかどうか…。そんな感じだったんだって」


和「家には執事さんもいたんだけど、結局は主従関係…。それ以上にはなれなかった」


和「中学校まではいわゆるエリート学校に通っていたそうなの」

和「でも、そういう所な通ってる子って、偏ったエリート教育を受けてる子ばっかりだったそうよ」


和「ムギは元々、おっとりした優しい子だから、全然馴染めなかったんですって」


和「…それに、その頃から自分の性向に気づいていたの」


和「たまに話をする相手も女の子ばかりで…」


たかとし「え…、ちょっと、それじゃあ…」


和「そう、ムギは男性とまともに接したことがないの」


和「あなたが初めて、身近に現れた男性なのよ」


たかとし「そんな…。でも、ムギ母さんは高校の頃、アルバイトしてたんでしょ?」

たかとし「今だって、バンドの契約の時とか、普通に話してるじゃないか」


和「それは、お客様とかビジネスの相手っていう前提があるからよ」


和「アルバイトの時も、教育係が女性の人でずっとその人の近くにいたみたい」


和「…そういうことなの」


たかとし「…でも、小さい頃はこんな感じじゃなかった気がする」


たかとし「…もっと、優しかった気がする」

和「それはね、これを読んだからなの」


たかとし「『教育のススメ』…?」


和「ここ読んでみて?」


たかとし「『小学校の中学年から中学校にかけては、多感な時期なので、教育には一段と注意を払わねばなりません』…?」

たかとし「これがどうかしたの?」

和「ムギはね、怖くなっちゃったの」


和「男性とまともに接したことのない自分が、男の子に教育なんてできるのかって」

和「自分の何気ない一言であなたを間違った方向に向かわせてしまうんじゃないかって」


たかとし「…」


和「…その結果があの有様」


和「あなたに接するのを恐れるあまり、何も喋れなくなって…」

和「何か喋ろうと意識するあまり、あんな言い方をしてしまう…」


たかとし「…」


和「…ね、だから…、たかとし?あなたがムギを助けてあげて?」


たかとし「俺が…?」


和「…もう、ムギはあなたに話しかけることはできないかもしれない」


和「だから、あなたからムギにどんどん話しかけてほしいの」


たかとし「…でも、俺もどう話したらいいか…」


和「何でもいいの。今日も綺麗だとか、お世辞も忘れないでね?」


和「それから、もしムギの話し方が気になったらこういう受け取り方をしたらいいわ」


和「…『ツンデレ』ってね」


たかとし「」


和「あながち間違ってないと思うし…。ね?」


たかとし「…うん、わかったよ」


たかとし「ムギ母さんが俺を嫌ってないってことはわかったし…。頑張ってみる」


たかとし「和母さん、相談にのってくれてありがとう」


和「…いえ、何かあったらいつでもきてね?」


たかとし「うん。それじゃ…」バタン


和「…あの子は私似だから、女性で苦労しそうとは思ったけど」

和「まさか、母親との関係であんなに苦労するなんてね」


和「…でも、きっといい男になるわ」


―数日後・たかとしの部屋の前


紬(今日こそ…、今日こそ、たかとしとちゃんとお話をするのよ…)


紬(今日は、ことみは友達の家に泊まりに行って、留守…。まさに絶好のチャンス!)


紬(普通にお話すればいいの…)


紬(それで、抱きしめてあげて、今までのことを謝るの…)


紬(今までごめんなさいって…。そして取り戻すの…。家族の絆を…。あの子が産まれた頃の楽しい日々を…)


紬(思い出せ…。あの武道館のライブを…。あのものすごい人数に比べれば…)


紬(……でも、よく考えたら、あの時みんながいたし…。それに私、あんまり緊張しなかったし…。むしろすごく楽しかったような…)


紬(……)


紬(落ち着け…!)


紬(そ、そうだ、準備体操…)

紬(まずは背伸びの運動から…)オイッチニ


和「…??…何であんなところでラジオ体操してるのかしら…?」


紬(…よし!)

紬(いざ!)

紬(………)


紬(一応やっておこう…)オイッチニ


和「…弟2…!?」


紬(ふう…、いい汗かいた…。じゃない!)

紬(いざ!)

コンコン

たかとし「はい?」


ガチャ…

たかとし「何?ムギ母さん」


紬「……(言うの!言うのよ!私!)」


紬「…たかとし、ご飯よ。食べたかったら来るがいいわ(違う!違う!まだ間に合う!)」


紬「無理にとは言わないけど…。どっちでも私は構わないし…(私のいくじなし…)」


たかとし「うん、わかった。早く行こう、ムギ母さん」


紬「!?…あ、あらそう…(た、たかとし…)」


たかとし「」じ~


紬「な、何かしら…。人の顔をジロジロと…(何?何?何なの?)」


たかとし「いや…。ムギ母さんって改めて見ると、綺麗だなって」


紬「なっ!何を言ってるのかしら!?お世辞のつもり!?(たかとしが…、たかとしが私のことを…)」


紬「そっ、そんなこと言われたって、全然嬉しくなんかないんですからね!(嬉しい…。ありがとう、ありがとう、たかとし…)」


紬「そ、そんな無駄話してる暇があったら、早く来なさい!早くしないとご飯は抜きよ!」


たかとし「うん、早く行こう」


たかとし「ムギ母さん、今日のご飯何?」


紬「…豚の生姜焼よ」


たかとし「え?俺好きなんだ。覚えててくれたの?」


紬「か、勘違いしないようにね!?口蹄疫の影響であまりに安く大量に手に入ったからよ!?」


たかとし「大量ってことは、おかわりし放題かな?ことみもいないし」


紬「し、仕方がないわね!?手抜きと思われたくないから、特別に腕によりをかけて作ってあげるわ!」

たかとし「はは…。楽しみだな」


紬「わ…、私も楽しみだわ…」


和「…どうやら、うまくいきそうね」


和「この調子なら、きっと…」


和「ムギ?ちゃんと私の分もあるんでしょうね?」


紬「あなた…」


たかとし「どうかな…。俺が全部食べちゃうかも」


和「まあ」


紬「…だ、大丈夫…。ちゃんと用意してあるから…」


紬「たかとしとあなた、ことみの分も用意してあるから…」


たかとし「だって」


和「それじゃあ遠慮はいらないわね」


紬「…たくさん食べてね」


真鍋家は今日も仲良しです



3 ※中野家編