和「澪達は一緒じゃないの?」

梓「今日は部活終わって、すぐに解散だったので、わたし一人なんです」

和「そうなんだ」

和「なんか、あなた達はいつも一緒にいるってイメージがあるから、珍しく感じるわ」

梓「そんなことないですよー」

和「こうして二人で話すのって、初めてじゃない?」

梓「んー」

梓「言われてみれば、そうですね」クス

和「でしょ」クス


和「そういえば、何の本買いに来たの?」

梓「え?」ビク

和「ん?」

梓「え、えーっと…」キョドキョド

梓「高校生にもなって恥ずかしいんですけれど…絵本、です」カァァ

和「恥ずかしいところなんてないんじゃない?」

梓「そうですか?」

和「別に高校生が絵本読んでても、おかしくないと思うけれど」

梓「そうですか」

和「本、好きなんでしょう?」

梓「そう、ですね」クス


梓「最近、『100万回生きたねこ』っていう絵本を読みまして」

和「『100万回生きたねこ』かー…読んだわねぇ」

和「あれは、本当のところ…知った方が幸せだったのか」

和「知らなかった方が幸せだったのか…。とても曖昧よねー…」

梓「わたしは、多分幸せだったんじゃないかな、って思います」

和「ふーん」

梓「あ、和先輩のオススメ、何かありませんか?」

和「わたし、絵本はあまり読まないのよねー…」

和「あー…、そういえば」

和「アンパンマンって絵本が先だって知ってた?」

梓「な!?初耳です」


梓「アニメが先だと思ってましたよ」

梓「アンパンマンかー…、懐かしいな」クス

梓「……」

梓「ぼく、アンパンマン」ミョーン

和「……」

梓「……」

梓「あ…穴があったら、今すぐ入りたい」プルプル…

和「ご、ごめん。いきなり過ぎて反応できなかったわ」



和「もう一回やって頂戴!ワンモアチャンス」

梓「い、嫌ですっ」カァァァ


ガー

テクテク

梓「本は人生を豊かにしてくれるんだって、最近わかったんです」

梓「奥底に眠ってる感情や感覚が、ふつふつと沸き上がってきたり」

梓「今まで知らなかった自分に出会えたり…」

梓「何だか音楽に通ずるものがありますよね」

梓「本は、人生をフルコースで味わう為の、スパイスなんですよ」

和「ミスチル?」

梓「ミスチルです」グッ

和「豊かになったと思ってるだけで」

和「実は、井の中の蛙かも知れないわよ?」クスクス

梓「む。意地悪言わないでくださいよー」プクー

和「やっぱり、擬似的なイメージよりも、実際の経験の方が勝ると思うし…」

梓「そうですね。わたしはまだ知らないことで、いっぱいです」

梓「だからこそ、知りたいという気持ちがあって」

梓「そこに、何があるのか楽しみで…」

梓「わくわくしちゃうんです」ニコ

梓「そんな自分が、ちょっと好きだったりします…」テレテレ

和「……」

和「そっか」ニコ


――テクテク

梓「あ、わたし、家がこっちなので」

和「じゃあ、また今度ね。ライブ、頑張ってね」

梓「はい」ニコ


梓「では」ペコリ




――テクテク

和「わくわく…、ねぇ」

和「わく…、わく…」

和「…ふぅ」

和「……」チラ

和「マックスバーガーかー…、最近食べてないわねー」

和「……ん」チラ

和「ムギ…?」ジー

和「……」ジー

和「ムギ、バイト始めたんだ」

和「……あ。転んだ」ジー

和「大丈夫かしら…」

和「……」

和「皆、頑張ってるのね」




――テクテク


和「寒い寒いー…」

和「なんなのよ、この寒さ…」


和「お風呂入りたい…いや、入ろう」

和「……」

ガチャガチャ

カション


和「ただいまー」



和「……」カリカリ

和「……」

和「たまには、ラジオでも聴きながら勉強しようかな」

ポチ

『――見ていたいのは~希望に満ちた~』

和「あ、ミスチル」

和「ふふふ、タイムリーね」

『人生をフルコースで~』

和「……」

和「nー♪n~♪」

『幾つものスパイスが~誰もに~用意されていて~』


和「……」カリカリ

『はっはっは!ですよねぇ~、僕もそう思います』

和「……」カリカリ

和「……」

和「……」ペラ

和「……」

『さて。そろそろ、お時間がやって参りました』

和「んー…」グッ

和「…そろそろ、寝ようかしらね」

『来週のゲストは~――』

和「……」テクテク

『――では、また来週! see you~』


ポチ



― ever green ―


『……』

和『わたしは、何かを捨てて、何かを得るっていうのが嫌なのよ』

『なら、両方共得ればいいじゃない』

和『あなたと違って、わたしは普通がいいの』

『ふーん』

『やっぱり、あんたとは友達になれそうな気がするわね』

和『何それ』クス


ピピピピ ピピ―ガチャ

和「……」

和「…あふぁ」グッ

和「……にゃむ」

和「……」ポリポリ

和「……」

和「……」


和「……」ポリポリ



カチャカチャ

トロトロトロ

ジュージュー

和「……」

ジュージュー

和「ほっ」クルン

ジュージュー

和「ほっ…ほっ」クルンクルン

ジュージュー




――テクテク

和「……さむ」

和「……」

――――おはよう

――――あ、おはよ。今日も寒いねぇ

和「……」

和「……」

――――ねね、昨日のあれ見た?

――――あーあー!見た見た!あの番組、面白かったね

和「……」

和「……」



……

カッカッカッカッ

教員「――こうすると」

和「……」カリカリ

和「……」カリカリ

和「……」

教員「こうなって」

カッカッカッカッ

教員「――反応を起こす訳だ」

和「……」

和「……」


……

澪「じゃ、わたし部活行くよ」

和「うん、わたしも行かないと」


ガチャガチャ

澪「生徒会?」

和「うん」

澪「途中まで一緒に行こうよ」

和「いいわよ」


――テクテク

澪「そう言えば昨日、テレビ見た?あの番組」

和「ごめん、見てないのよ。勉強してたし」

澪「え、見てないのか!勿体ないなー。面白かったのに」


ガラガラ

澪「――がさ、また面白くてさ」

和「へぇー」

ガラガラ―ピシャン


和「ふぅ……終わった」

――真鍋先輩、さようなら

和「うん、お疲れ様」


……

律「やほー、和」

和「あら、律。どうしたのよ、部活は終わったの?」

律「終わった終わったー」ミョーン

律「和、今日これから暇ー?」

和「帰ったら勉強するから、少しの間なら暇ね」

律「だったら、ちょっとだけ付き合ってよ」

和「付き合ってって…、どこに?」

律「服とか、化粧品とか見に行こうぜー」

和「はぁ。別にいいけど」


和「で?一体どうしたのよ」

律「何が?」

和「わざわざ、わたしの所に来たんだもの。何かあるんでしょう?」

律「……」

律「んー…」ポリポリ

和「……」

律「……」

和「…どうしたの?」

律「んー」

律「……」ポリポリ

律「…真面目に聞いてくれるか?」

和「なによ改まって」

律「……なんかさ」

律「わたしってちょっと、男の子っぽいところあるじゃん?」

和「はい?…あー、若干あるかもしれないわね」

律「だろ?……だから、もうちょっとだけ、女の子っぽくなりたくてさ」

和「……」

律「でも、自分じゃどうしたらいいのか、わからなくて」

和「…と、言われてもね」アセ

律「ほら、わたし、そーいうの本当に疎いからさー」

和「……」

和「まず、普段の行動と、言動から直しなさい」

律「……はい」ズーン

和「で、わたしに相談しに来たわけね」

律「う、うん」

律「それにさ」

律「もう少しで、クリスマスじゃん?」

律「あー、クリスマスなんだなー…って思ってたら」

律「わたしだって、女だから」

律「素敵な、恋とか…恋愛とか、してみたいな…って思っちゃって」ボソボソ

和「はい?」

律「……」カァァ

和「え?……え?」

律「高校生なんだし…、恋のひとつぐらい…したいじゃん?」

和「つまり、色気づきたいの?」

律「ち、ちがうし!」カァァ

和「律って…、意外と乙女なところがあるのね」

律「和って…、意外とサバサバしてるよな」

和「単純に興味がないんだと思うわ」

律「バッサリだー」ガーン

和「……」

和「律は、ちょっとだけ、恋に恋してる感じね」

律「そうかな」

和「そうよ」クスス

和「ほら、じゃあ行きましょ」

律「あ、うん」アタフタ



――テクテク


和「わたしそういうの、あまり気にしない方だから、あまり当てにしないでね」

律「そーなの?」

和「だって、服とかメイクとか、あまり興味無いもの」

律「…ふーん」

和「まぁ、最低限のメイクとかケアはちゃんとやってるし、服も気にはするけど」

和「やれブランドものだーとか、そういうのは気にしないわね」

律「そうなんだ」

和「ねぇ…思ったんだけど」

律「なに?」

和「だったら、澪達も誘えばよかったんじゃないの?」

律「やだ」ボソ

和「え、何?聞こえない」

律「はずかしいから、…やだ」ボソボソ

和「ごめん、全然聞き取れない」

律「だから!澪達に言うのは、恥ずかしいのっ」カァァァ


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