なかのけ!

梓(・・・学校休んじゃった)

梓(・・・・・・)

梓(唯先輩と、話し会おう)

梓(・・・・・・)プルルル

梓(出てくれないや・・・嫌われちゃったかな・・・)プルルルプツッ

梓(・・・・・・会いにいこう)

梓(・・・親が出かけててよかった)ガチャ

梓(もう家にいるのかな・・・?)テクテク

唯「うぐっ、ぐすっ、のどかちゃんどこおおおっ」トボトボ

梓(あ、すごくあっさり見つけちゃった・・・)

梓「・・・唯先輩」

唯「あ、あずにゃん」ビクッ

梓「泣いてたんですか?」

唯「・・・・・・」

梓「・・・・・・」

唯「・・・あずにゃんはりっちゃんのこと好きなんだよね」

梓「っ!・・・・・・はい」

唯「ひどいよ・・・あずにゃんの嘘つき・・・私のこと好きって言ったくせに・・・」

唯「ついこの間、楽しくデートしたばっかなのに・・・」グスッ

唯「あれ、全部嘘だったなんてひどいよ・・・ひどすぎるよ・・・」ポロポロ

梓「でも・・・唯先輩のことも好きです・・・それは嘘じゃないです・・・」

梓「・・・それに唯先輩だって、真鍋先輩のこと好きって・・・」

唯「なにそれ・・・私のせいなの・・・?」グスッ

梓「ご、ごめんなさい・・・」シュン

唯「・・・もう別れようよ。あずにゃん」

梓「えっ」

唯「私、疲れちゃった・・・もう誰も信じられないよ・・・」

唯「私ばかだから、恋愛とかよくわかんないや・・・」

唯「あずにゃんといちゃいちゃしてたときは、毎日がすごく楽しかった・・・」

唯「でも、楽しいだけじゃないんだね、恋愛って・・・」

唯「お互いこんな悲しくなるんだったら・・・もうやめようよ・・・」

梓「・・・嫌です。別れたく、ないです・・・」グスッ

唯「・・・・・・」

唯「・・・・・・あずにゃん、私にはもう、あずにゃんと付き合う資格なんてないんだよ」

梓「・・・・・・?」シクシク

唯「・・・さっき私ね、りっちゃんとえっちしたんだよ」

梓「え・・・、どういうことですか・・・?」

唯「そのまんまの意味だよ、あずにゃん」

唯「あずにゃんの大好きなりっちゃんと、えっちした」

梓「・・・・・・嘘ですよね?」

唯「・・・ほんとだよ」

唯「さらに言うなら、たぶん今、りっちゃんは憂とえっちしてるよ」

梓「嘘っ、そんなの信じませんっ」

唯「・・・・・・」

梓「嘘ですっ、そんな・・・」

唯「ほんとなんだよ、あずにゃん」

梓「う、うわああああああん」ポロポロ

唯「・・・りっちゃんとえっちしてるとき、私あずにゃんのことなんてこれっぽちも考えてなかった」

唯「・・・私はそういう人間なんだよ、あずにゃん」

唯「あずにゃんは、こんな私と付き合いたい?りっちゃんと付き合いたい?」

唯「ちなみにりっちゃんはもうたぶん無理だよ。憂にメロメロみたいだから・・・」

梓「やだっ、もう聞きたくないいいいいいいっ」ブワッ

唯「・・・別れよう、あずにゃん」

唯「昔に戻ろうよ・・・」

唯「仲のいい先輩後輩として、一緒に楽しく過ごそうよ」

唯「ねっ?」

梓「やだやだやだああああっ」

唯「今までありがとう、あずにゃん。いろんな思い出をたくさんもらったよ」

唯「これからも、軽音部の仲間としてよろしくね」

唯「・・・ばいばい、あずにゃん」クルッ

梓「どごに行くんでずがっ」ガシッ

唯「え、どこって・・・のどかちゃんのところだけど」

梓「やっぱり真鍋先輩のほうが好きなんだあああっ、嘘つきっ、最低!」タタタッ

唯「・・・・・・行っちゃった」

唯「・・・これでいいんだよね」

唯「あずにゃんには私なんかより、もっといい人が見つかるよ」

唯「傷つけちゃってごめんね・・・、私先輩失格だね・・・」

唯「・・・・・・」

唯「私に恋は無理だったなあ・・・」ポロポロ



よくじつ!

澪「やっと全員集合したなっ」ニコニコ

澪「まったくもー、さ、さびしかったんだからなっ」カァッ

澪「じゃあ張り切って練習するぞっ」ワクワク

紬「・・・・・・」

律「・・・・・・」

唯「・・・・・・」

梓「・・・・・・」

紬律唯梓(気まずい!!!)

澪「な、なんだよお前ら・・・元気ないな・・・」

澪「あ、先にティータイムか?しょうがないな、ちょっとだけだぞ」フフッ

澪「ムギ、悪いけど頼むよ」ウキウキ

紬「え、ええ・・・今準備するわね・・・」カチャカチャ

紬(私、まだりっちゃんにあやまれてない・・・)

澪「いい香りだなー、な、律?」エヘヘ

律「あ、ああ・・・」

律(ムギにあやまんなきゃ・・・、それと梓・・・はどうすりゃいいんだ?)

澪「お、唯の好きな苺のショートケーキだぞっ」フフフッ

唯「うん・・・」

唯(りっちゃんとあずにゃんに目、合わせらんない・・・)

澪「どうした梓?下向いて」

梓「い、いえ・・・なんでも・・・」

梓(・・・唯先輩、律先輩)

梓(やだよお・・・、嫌わないでよお・・・)

梓(あ・・・、だめっ、泣いちゃ・・・、あっ)

梓「・・・・・・ぐすっ」ポロポロ

澪紬律唯「!」

澪「ど、どうした梓。お腹でも痛いのか!?」

梓「ち、ちがっ、ちがうんでっ」グスッ

澪(血?血が膿んで!?)

澪「ひっ」アトズサリ

紬(梓ちゃん、きっとまだりっちゃんと仲直りしてないのね・・・)

紬(わ、私がなんとかしなきゃっ)ガタっ

紬「ほら、りっちゃん、梓ちゃん。二人で仲直りの握手よ」ギュッギュッ

律「あっ」

梓「あっ」

紬(こ、これでいいのよね!?斉藤!)

梓「・・・ううぇえええええええええんっ」ギュー

律「・・・・・・チッ、離せっ」パッ

紬(あ・・・、あれ・・・??)

紬(間違えた・・・?)

紬(・・・だって、お友達なんかできたことなかったから・・・)

紬(どうすればいいかなんてわかんないわ・・・)グスッ

紬「ううっ、ぐすっ」

ガチャッ

和「律、あんたまた提出書類忘れてるわよ」

梓「っ!うええええええんっ」

紬「ぐすっ、ぐすっ」

律「・・・・・・」

和「あら、修羅場かしら?ふふふ、青春ね」

梓「ま、なべぜんばいっ、ゆいぜんばいのうそつぎいいいいっ」

和「また唯が何かしたの?こら、唯。だめじゃない」メッ

唯「の、のどかちゃん・・・」

唯「たすけてよおおっ、もうやだああっ」ブワッ

和「そうなんだ。じゃあ私生徒会行くね」ガチャ

唯「うわあああああんっ」ポロポロ

梓「びえええええええっ」ブワッ

紬「えぐっ、ぐすっ」

律「・・・・・・チッ」プイッ

澪「・・・・・・う」

澪「な、なんなんだよ、お前ら・・・」

澪「せっかく楽しく部活ができると思ったのに・・・」

澪「なんなんだよお・・・」ポロポロ

澪「うえええええええええんっ」ブワアッ

ガチャ

さわ子「やっほー・・・あれっ!?」

澪梓紬唯「うええええええんっ」

さわ子「ちょっとみんなどうしたのっ!?」

澪梓紬唯「うあああああああっ」

さわ子「みんな、落ち着いて、ねっ?」

澪梓紬唯「もうやだああああっ」

さわ子「・・・・・・」イラッ

さわ子「うるせええええええっ!!ガキどもっ!!」バンッ

律澪梓紬唯「!」ビクッ

さわ子「ギャーギャーギャーギャー、てめえらは猿かっ!!」ドンッ

律澪梓紬唯「!」ビクッ

さわ子「何があったか知らねえけどよっ」

さわ子「言いてえことがあんならっ」

さわ子「楽器で語りやがれっ!!」ダンッ

律澪梓紬唯「?」ポカーン

さわ子「ほら、位置につけっ」

律澪梓紬唯「???」

さわ子「何ぼさっとしてんだよっ!演奏位置につけっつってんだよっ」ペシッペシッペシッペシッペシッ
律「いてっ」
澪「あたっ」
梓「ひっ」
紬「えへっ」
唯「ぎょえっ」

律澪梓紬唯「・・・・・・」ガッキジュンビ

さわ子「さあ、聞かせてくれよ・・・」

さわ子「てめーらの叫び(デスメタル)を・・・・・・」

律澪梓紬唯「!」ゾワッ

律澪梓紬唯「・・・・・・っ!」フンスッ

律「・・・ワン、ツウ、スリー」

唯澪律梓紬「ボエエエエエエエエ!!!!」ガシャギンドンバンゴン

・・・・・・五人は叫び奏でた。
内からこみ上げる激情を、魂の赴くまま・・・
それは傍から聞けば、とても音楽と呼べるようなものではなかっただろう。
しかし、騒音の最中・・・
五人の心は深く結びついていたという・・・

それが・・・

音楽というものの・・・奇跡なのかもしれない・・・

さわ子「ヒャッハー!てめーら最高だぜ!!!」ブンブン


ジャジャンッ!

唯澪律梓紬「・・・・・・」ハァハァ

さわ子(いい曲だったわ・・・)パチパチパチ

さわ子(ふふ、五人ともいい顔してるわね)

さわ子(・・・・・・)

さわ子(・・・・・・はっ)

さわ子(よく考えると素を出しすぎたわ・・・)

さわ子(なんとかフォローしなくちゃっ)

さわ子「・・・いい?五人とも」

さわ子「バンドっていうのはね、みんながバラバラじゃ成り立たないの」

さわ子「何があったか知らないけど、じっくり話し合うことが大切よ」

さわ子「今のあなたたちならそれができるわ」

さわ子「じゃあ、あとはりっちゃん、任せたわよ」ガチャッ

律「さわちゃん・・・」

さわ子(これでセーフよね・・・ふう・・・)

律「・・・ムギ、ごめんな。いろいろ迷惑かけて」

紬「えっ、ああいいのよ。それより叩いちゃってごめんね、りっちゃん・・・」

紬「それより、梓ちゃんと仲直りして、ね?」

澪「????」ポカーン

律「ああ。・・・すまん、ムギ、澪。唯と梓の三人にしてくれないか?」

紬「ええ♪ 行きましょ、澪ちゃん」グイッ

澪「え、うん・・・」ガチャッ

バタン

唯梓「・・・・・・」

律「・・・梓」

梓「・・・はい」

律「今、私は憂ちゃんと付き合ってる。だから告白は受けられない。・・・ごめんな」

唯「・・・・・・」

梓「は、はい…」グスッ

律「でもな、梓は大事な後輩だ。これからもずっとバンドメンバーとして一緒にやっていきたいと思ってる」

梓「・・・・・・」

唯「・・・・・・あずにゃん、私もそうだよ」

唯「もうちょっと大人になるまで、付き合うとか付き合わないとか保留してさ、また楽しくやっていけないかな・・・?」

梓「・・・・・・私も」

梓「私もどんな形であれ、先輩たちとずっと一緒にいたいです・・・」グスッ

梓「先輩たちと音楽やるのが、一番楽しいです・・・」

律「・・・梓」ギュッ

唯「・・・あずにゃん」ギュッ

梓「ぜんばあああああああいっ」ギュッ

梓「うわああああああああんっ」ブワッ

唯「よしよし、あずにゃん」ナデナデ

唯「・・・・・・りっちゃん、憂をよろしくね」

律「・・・・・・ああ」

唯「ほらほら、あずにゃん。もう泣き止んで」

梓「・・・えぐっ、唯先輩。私、もう何も求めませんからっ、今までみたいに抱きついてきてくださいねっ」

唯「もちろんだよ、あずにゃん」ギュッ

梓「律先輩っ、・・・・・・変なことお願いしてもいいですか?」グスッ

律「何でも聞いてやるよ。言ってみな」

梓「私の――」



エピローグ

中野梓です。
あれから一ヶ月が経ちました。
最初こそぎこちなかったものの、段々と私たちは元の軽音部に戻っていきました。
あの頃の私は、自分勝手だったのかもしれません。
大好きな先輩たちを失うことを恐れていたのでしょう。

唯「えへへ、あずにゃん」ダキッ

梓「あっあっあっあっ」ビクンビクン

こうやって唯先輩に抱きつかれて・・・

律「・・・・・・梓はかわいいな」ギリギリ

梓「あっあっあっあっ」ビクンビクン

こうやって律先輩に首を絞められて・・・

それだけで幸せです。
私が求めていたのは、恋ではなくて、先輩たちのぬくもりだったのですから・・・


平沢唯です。
人間は慣れる生き物です。
妹と友人が、退廃的で倒錯した恋愛模様を繰り広げているのにも、慣れてしまいました。

律「ういー」ペロペロ

憂「りっちゃああん」ペロペロ

唯「あいすおいしー」ペロペロ

のどかちゃん、恋愛って難しいね。


琴吹紬です。
私が何をするでもなく、気がついたら全てが元通りになっていました。

紬「嬉しいけれど、結局私、何の役にも立てなかったのね・・・」

斉藤「気がついたら、仲直りしていた・・・」

斉藤「・・・友達とは、本来そういうものですよ」

紬「・・・そうね、斉藤」

これからもよろしくね、みんな。


あきやまみおです。
きょうもへいわです。
みんななにをもめてたのかな?
よくわかんないや。
ちょっとさみしいな。
りつー・・・。


田井中律です。

最近は毎日です。
憂ちゃんも呆れ気味です。

憂「また来たんですか・・・律さん」

律「・・・また来たよ。何度でも来るよ」

憂「・・・もうっ、・・・大好き」カァッ

律(・・・ちくしょー、かわいすぎるだろこいつ)カァッ

律「・・・・・・なあ、憂ちゃん」

憂「なんですか律さん」

律「唯とか憂ちゃんとか関係なく、君の全部が好きだよ」

憂「・・・ふふ、私もですよ」

憂「・・・おいで、りっちゃん」チュッ

おわり



最終更新:2011年02月25日 04:04