律「よっ、愛しのりっちゃんだぞー」

憂「お姉ちゃんなら今梓ちゃんと出かけてますよ」

律「知ってるよ。だから来たんだろ」

憂「・・・はあ、まあ上がってください」

律「へへ、おじゃましまーす」

憂「で、今日は何の用ですか」コポコポ

律「・・・わかってるだろ」

憂「・・・お茶、どうぞ」コトッ

律「さんきゅ」ズズッ

憂「・・・律さん、お話があります」

律「ん?」

憂「・・・私、もうお姉ちゃんのふり、したくないんです」

憂「私じゃ、お姉ちゃんの代わりになんてなれません・・・」

律「・・・・・・は?」

憂「私を抱きしめたって、お姉ちゃんを抱きしめたことにはならないんですよ?」

律「わかってるよ。・・・でも、別にいいだろ、私がそれでいいんだから」

憂「私が嫌なんです・・・」

憂「律さんに抱きしめられると、お姉ちゃんがいないってことを再確認させられるみたいで・・・」

律「・・・何でだよ」

憂「だってそのときは私が『お姉ちゃん』じゃないですか」

憂「『お姉ちゃん』が私の中に入ってしまったら、私の『お姉ちゃん』は消えちゃうんです」

律「・・・唯は唯だろ、今も元気に梓とデートしてんだろ」

憂「そういうことじゃなくて・・・、それに私自身の存在も消されるみたいで・・・」

憂「私っていらない子なんだなって、さみしくって・・・」

律「・・・・・・」

憂「だから、もうこんな関係終わりにしましょう」

律「・・・嫌だ」

憂「・・・・・・律さん」

律「絶対に嫌だっ」

憂「でも・・・お互い辛くなるだけじゃないですか」

律「・・・何だよそれっ」

律「いいからほら、髪下ろせよっ」ヒョイ

憂「ちょっとっ!やめっ!」ジタバタ

律「暴れんなって」ググッ

憂「やだっ!やめてっ」

律「うしっ。これでピンを付ければ・・・ああ、唯」ダキッ

憂「離してくださいっ!ぐすっ、ひどい・・・、やだって言ってるのに・・・」

律「唯はあったかいなー」ギューッ

憂「私っ、お姉ちゃんじゃないっ、ひぐっ・・・ううっ」

律「泣くなって。ごめんな唯」ヨシヨシ

憂「律さんなんてっ、ううっ、死んじゃえばいいんだっ」

律「そんなこと言うなよ唯」チュー

憂「んっ!んぐんんーっ!」

律「んー」レロレロ

憂「んーっ!!!んっ、んっ!」

律「ふう、愛してるよ唯」チュパッ

憂「・・・最低だよお」ポロポロ

律「・・・大好き」ギュッ

憂「も、もう離してくださいっ」ジタバタ

律「死んでもやだ」ギューッ

憂「ぐすっ、・・・いい加減、あきらめてくださいよおっ」

憂「お姉ちゃんは、梓ちゃんと付き合ってるんですよ?」

憂「もうあきらめましょうよ・・・こんなことも、もう・・・」

律「はー、やれやれ」

律「・・・あきらめてないのは憂ちゃんのほうだろ」スッ

憂「あっ」

律「ほら、カチューシャ取ったら、ふふふ」

律「ういー、お姉ちゃんだよ」ギューッ

律「ういー?」

憂「おねえ、ちゃん・・・」ギューッ

律「ういー」ギュッ

憂「お姉ちゃん!」ギュッ

律「・・・・・・」

律「・・・・・・ぷっ!」クスクス

律「何がお姉ちゃんだよ。ぷぷぷっ」

憂「っ!・・・・・・律さんなんて大嫌い」

律「じゃあ離れろよ」

憂「・・・・・・」ギューッ

律「はあ、人のこと散々言っといてこれだもんなー」

律「もうお姉ちゃんのふりはしたくない?はっ、何それ」

律「大体、最初は憂ちゃんから頼んできたんだろ。少しの間だけお姉ちゃんのふりをしてくださいって」

憂「そ、それは・・・」

律「いざ自分の番になったら、もうやめましょう?」

律「さっきはとぼけたけど、憂ちゃんの嫌がってる理由、わかってるよ」

律「だって唯に変装して、憂ちゃんに抱きつかれてるとき、私も同じこと思ってたからな」

律「自分を見てくれない?お姉ちゃんが消える?じゃあ私が唯のふりをするのはいいわけ?」

律「・・・最低なのはそっちだろ」

憂「す、すみません・・・」

律「そう思うなら、もう少しだけ・・・」ギュッ

律「もう少しだけ、付き合ってくれてもいいだろお・・・ひぐっ」ポロポロ

憂「律さん・・・」

律「ううっ」ギューッ

憂「・・・ごめんね、りっちゃん・・・ベッドにいこうか」ヨシヨシ

律「ゆ、唯っ!ゆいーっ!!」ギュッ


よくじつ!

梓「あ、こんにちは律先輩」

律「おーす・・・」

梓「・・・なんかやつれてますね。大丈夫ですか?」

律「へーきへーき、はは・・・」

梓「?」

梓「・・・そういえば唯先輩たちはまだですか」

律「ああ、あいつら掃除当番だからな」

梓「そうですか・・・」

律「・・・・・・」

律「早く唯先輩に会いたーいってか」ケラケラ

梓「ち、ちがいますよっ。もうっ」

律「ははっ嘘付け。それより昨日のデートは楽しかったか?」

梓「いやっ、あれはデートじゃなくて、ただ遊びに行っただけでっ」

律「へー、じゃあ首のところにキスマークが付いてるのは何なんだー?」ニヤニヤ

梓「えっ嘘っ!いやっ」

律「えっ・・・マジ?冗談だったんだけど」

梓「えっ・・・あはははは・・・」

律「・・・・・・」イラッ

梓「あ、ご、ごめんなさい・・・」

律「・・・・・・梓」

梓「律先輩?」ビクッ

律「本当にキスマーク付いてるか、ちょっと見てやるよ」ガシッ

梓「へっ?何で首に手を・・・えっ!?」

律「んー、よく見えないなー」グググッ

梓「く、首がっ!ぐっ!絞まって!あがががががっ」バタバタ

梓「やめっ!やめっ!ぐあっ」

律「・・・・・・」ギリギリ

ガチャッ

紬「遅くなってごめんなさいね、唯ちゃんたちはもう少し遅れて・・・って、えっ?」

律「・・・・・・」ギリギリ

梓「・・・・・・」ビクビクッ

紬「・・・・・・はっ!」

紬「りっちゃん!何やってるのっ!手を離してっ」

律「・・・・・・」ギリギリ

紬「ちょっとっ!離してって言ってるの!」グイッ

律「わっ」ドサッ

梓「かはっ」ドサッ

梓「ぐほっ・・・げほっげほっ」

紬「梓ちゃんっ大丈夫っ!?」サスサス

梓「はあーっはあーっ、・・・だ、大丈夫です、・・・ムギ先輩。けほっ」

紬「・・・・・・りっちゃん?」クルッ

律「・・・・・・う」

紬「どういうこと?」ツカツカ

紬「答えて」

律「ムギ・・・」

紬「どうしてこんなことしたの?」

律「・・・わかんねえよ」

紬「っ!」パシンッ

律「いてっ」

紬「・・・・・・」プルプル

律「・・・・・・わりい、梓、ムギ。私帰るわ」ガチャ

紬「あっ・・・」

紬「・・・・・・りっちゃん」シュン

紬「・・・ねえ、梓ちゃん?何があったか教えてくれる?」

梓「わ、私が悪いんです・・・」

紬「え?どういうこと?」

梓「それは・・・・・・」

梓「・・・・・・私、律先輩追いかけてきますっ」ガチャッ

紬「ちょっと梓ちゃん?・・・行っちゃった」

紬「・・・・・・」ハァ

紬「私、友達叩いちゃった・・・」

紬「それに二人とも何も話してくれない・・・」

紬「私って何なのかしら・・・ぐすっ」

ガチャッ

唯「やっほー、あれ?あずにゃんとりっちゃんは?」

澪「よっ。・・・あれ?ムギ泣いて・・・?」

紬「あっ何でもないの。目にゴミが入っちゃって」フルフル

紬「それより、さっきりっちゃんが今日の部活は休みだって言ってたわ」

澪「えー?なんなんだあいつは。まったく!」

唯「ムギちゃん、あずにゃんは?」

紬「あ、梓ちゃんももう帰ったみたいよ」

唯「・・・じゃあしょうがないねー。私たちも帰ろー」

澪「仕方ないな。ほら、ムギ行こう」

紬「あ、先に行っててもらえる?私やることあるから」

澪「何だ?手伝うぞ」

紬「ほんとにたいしたことじゃないからっ。いいの」

唯「そっか、じゃあまたね。ムギちゃん」ニコッ

紬「うん。またね、唯ちゃん、澪ちゃん」ニコッ

唯「澪ちゃん、行こっ」グイッ

澪「お、おい引っ張るなって唯。・・・じゃあなムギ」

ガチャン

澪「何だよ唯。そんなに急ぐことないだろ」

唯「よくわかんないけど、ムギちゃん一人になりたそうだったから・・・」

唯「それにムギちゃん泣いてた・・・」

澪「え?目にゴミが入ったんだろ」

唯「・・・本当にそうなのかな?」

澪「ん?本人が言ってたからそうなんだろ」

唯「そうかー、そうだよね・・・」

澪「変な唯」

唯「あはは・・・」

唯(・・・あずにゃんが私に何も言わずに帰るわけないんだよ、澪ちゃん)

唯(あの三人に、きっと何かあったんだ・・・)

澪「まあとにかく、明日は律のヤツとっちめてやんないとな」

唯「・・・あははー、りっちゃん災難」


……

梓「見つけたっ!律先輩!はあはあ」

律「!」ビクッ

律「あ、梓・・・」

律「梓・・・さっきは悪かった。すまん」ペコリ

梓「顔上げてくださいよ。それに・・・こっちこそすみませんでした・・・」

律「え?いや、悪いのは私だ。ごめんな梓」

梓「・・・違うんです、私が怒らせるようなことをしたから・・・」

律「は?梓は何もしてないぞ。私が悪いんだ・・・」

律「私ほんとにどうかしてた。梓は大切な後輩なのに・・・」ギュッ

梓「律先輩・・・」ギュッ

律「でも梓・・・ちょっと聞いていいか?」

梓「何ですか?」

律「私があんなことした理由、何で聞いてこないんだ?」

梓「あっ・・・」

律「・・・・・・」

梓「・・・・・・律先輩」ギュッ

梓「・・・私の話、聞いてくれますか?」

律「なんだ?」

梓「・・・軽蔑するかもしれませんよ?」

律「・・・話してみ」

梓「私、唯先輩のことが好きです」

律「っ!・・・知ってるよ。何だよいまさら」

梓「でもっ、り、り」

律「?」

梓「り、律先輩のことも、す、す、好き、なんです・・・」

律「え?」

梓「・・・・・・」

律「どゆこと?へ?意味わかんない」

梓「ひぐっ、だってえ、うぐっ、ずぎなんだがら、しょうがないじゃないでずがぁっ、ぐすっ」

梓「最低、でずよね私・・・ううっ」

律「・・・・・・」

梓「でも、りづせんぱいはぁっ、ゆいせんぱいのことがすきだがらっ」

律「・・・やっぱりばれてたのかよ」チッ

梓「わかりまずよ、すきな、ひとのことなんだがらっ」

律「・・・梓、ちょっと離れてくれ」

梓「やだっ、はなれないでっ、きらわないでっ、きらわないでくだざいよぉっ」ギュッ

律「・・・ごめん梓、よくわかんねーよ。今私の頭、パンクしそうだ。とりあえず離せ」

梓「だがらぁ、きらわないでって、わだじ、いやですっ」ギュッ

律「・・・嫌わねえから。いいから泣き止めよ。何言ってるかわかんねえ・・・」

梓「ぐすっぐすっ・・・・・・」ギューッ

律「・・・・・・落ち着いたか?」ナデナデ

梓「・・・・・・はい、すみませんでした・・・」

律「・・・で、梓はそのー、なんだ、私のことが好き・・・なのか?」ポリポリ

梓「はい・・・」

律「唯は?」

梓「っ!・・・好きです」

律「・・・じゃあ私と唯、どっちが好きなの?」

梓「両方です・・・比べられません・・・」

律「・・・おいおい」ハァ

律「私はさー、唯のことが好きなんだよ・・・」

梓「・・・・・・はい」

律「ほんとにさあ、マジでさ、本気で好きなんだよ・・・」

律「ぶっちゃけ今でもあきらめらんねーんだよ」

梓「・・・・・・はい」

律「それなのにさあ・・・なんだよお前・・・どういうことだよ・・・」

律「わかんねー、わかんねーよ・・・」

梓「すみません・・・」

律「あやまんなよ・・・ひぐっ・・・卑怯だろ・・・ぐすっ」

律「ずりぃよ・・・嫌いになれねーじゃんかよ・・・」

律「マジわかんねー・・・」

梓「だってぇ、だっでぇ、ぐすっ」ギュッ

律「私、梓のこと、結構好きだぞ?本当だぞ。でもな、同じくらい・・・」

律「憎いよ。・・・殺してやりたいくらい」スッ

梓「あっ、首っ」ビクッ

律「・・・・・・」グッ

梓「っ!」

律「・・・細い首だな」

梓「・・・ころして、ください」グスッ

律「・・・・・・」

律「・・・やめた」パッ

梓「あっ・・・」

律「・・・ごめん、梓。お互い頭冷やそう、なっ?」ナデナデ

律「・・・嫌わねーから。約束する。・・・じゃあな」スタスタ

梓「律先輩っ!律先輩っ!やだっ、やだよおおっ、いがないでえええっ」

梓「もうごろじでぐだざいよぉっ、じぶんでもっ、よくわかんないんでずよぉっ」

梓「うわああああああああああん」

律「・・・・・・泣きてえのはこっちだよ」スタスタ


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最終更新:2011年02月25日 03:58