つぎのひのほうかご ふぁみれす

律「各自事件のことは考えてきたな!じゃあまずは誰から意見を……」

澪「……」

唯「……」

梓「……」

律「おいおい、何も思い浮かばなかったのか?」

唯「そういうりっちゃんはどうなんだよ!」

律「私はもちろん考えてきたさ」

梓「なら、律先輩からどうぞ」

律「……」

澪「さぁさぁ、律の推理を聞こうじゃないか」

律「そ、その前にムギが警察で得た情報を聞こう」

 *1

紬「……これ」

唯「んー?これは十字架の写真?」

澪「おい、この十字架の先端のとがってるところ、赤黒くなってないか?」

梓「これってもしかして」

紬「そう、二度目の事件の凶器なの」

律「杭でメッタ刺しって言ってたけど、まさか十字架だったなんて」

澪「でもどうして今更凶器を?最初に聞いたときには教えてくれなかったのか?」

紬「報道規制がどうたらとか言ってね」

梓「そういえば、テレビでは杭としか言ってませんでしたね」

律(規制も何も、死亡推定時刻まで漏らしてるのに今更それはないだろ)

澪(情報を聞き出した刑事にどれだけ圧力かけたんだ……)

紬「あいつ、本庁から田舎に左遷させようかしら……」 ボソッ

律(なんでそんな権限があるんだよ!?)

紬「新たに分かったことは、これぐらいかしら」

律「二度目の事件の凶器か……」

唯「じゃあ、いよいよりっちゃん探偵の推理を!」

律「すみません、何も思いつきませんでした」

梓「だろうと思いましたよ」

澪「どーするんだ、もう行き詰ったぞ」

律「ぬぬぬっ」

唯「その刑事さんを絞り上げれば、まだ情報が出てくるんじゃないかなぁ?」

律(やだ、唯ったら鬼畜)

紬「……やってみるわ」

澪(搾り方は聞かないでおこう)

梓「なら今はムギ先輩の情報待ち、ということでいいんでしょうか」

律「そだな。あとは何か気付いたことがあれば、何でもいいから教えてくれ」

澪「分かった」

唯「唯探偵の推理は次回に期待してて!」

梓「誰もしてませんよ」

律「今日はこれでお開きだ。みんな、気をつけて帰るんだぞ」

 「「はーい」」


あずにゃんち

梓「……」 ジーッ

梓「紙とにらめっこしても何も思い浮かばないや。だいたい、これだけじゃヒントが少なすぎるよね」

梓「ネコショウグン、これ事件の内容を書いた紙なんだけど、どう思う?」 スッ

ネコ「ニャ……」 ジーッ

梓(意外と真剣に読んでる……)

ネコ「ニャニッ!?」

梓「何か思いついたの!?」

ネコ「ニャッニャッ!!」 フリフリ

梓「え?」

ネコ「ニャニャニャニャ!」 ミブリテブリ

梓「うん……」

ネコ「ナーッ!!」 バリバリ

梓(何言ってるか全然分からない……)


つぎのひ がっこう

梓「……」 ボーッ

純「おはー、ってすっごい眠そうだね、梓」

梓「うん、考えごとしてたらいつの間にか深夜2時だったの」

純「恋の悩み事かなー?」

梓「違うよ……」

純「うーん、分からないや。ヒント頂戴!」

梓「私がヒント欲しいぐらいだよ」

純「どういうこと?」

梓「……」

純「し、死んで……寝てるのか……」


ほうかご ふぁみれす

唯「……ふぁーあ」

澪「……」

梓「……ムニャムニャ」

紬「……」

律(みんなの意見は聞くまでもないなぁ。ムギの方も何も情報が得られなかったんだろうか)

紬「りっちゃん、ごめんなさい。こってりたっぷり搾りあげたんだけど、これ以上何もないって」

律「そっか。ないなら仕方ないないな!な、澪」

澪「あ、ああ!そうだぞ。別にその刑事さんのせいってわけじゃない」

紬「そうなの?ついカッとなって左遷させちゃった」

律「それは、まずいんじゃないか?」

紬「大丈夫、表向きは厭味な上司が小さな失敗にケチつけて左遷した、という筋書きになるから」

澪(すごい!ムギってすごい!あと怖い!)

律「コホン……。とりあえずだな、わかってることでもいいから意見を出していこう」

澪「そ、そうだな。それがいい」

紬「犯人は学校の関係者、これはほぼ間違いないと思うわ」

梓「そうですね」

唯「うー、問題は誰かってことよだね」

律「異常な殺し方からして、犯人は複数かもしくは……」

紬「ペルソナ使いである可能性が高いわね」

梓「複数よりも、そっちのがしっくりくる気がします」

澪「今わかってるペルソナ使いと言えば、何人いる?」

律「えーと、私と澪と唯とムギ、それから梓に憂ちゃん」

唯「それと姫子ちゃんだね」

澪「考えたんだけど、和が実はペルソナ使いってことはないだろうか」

律「否定はできないな」

梓「真鍋先輩を入れたら8人ですか」

唯「犯人がペルソナ使いなら、私たちの中に犯人がいるかもってことだよね」

紬「あくまで可能性だけれど」

梓「先輩たちが悪い人じゃないのはよく知ってます!絶対この中に犯人はいませんよ!!」

律「とくに唯先輩、だろ?」

唯「あずにゃ~ん!」 ダキッ

梓「茶化さないでくださいよー!」

紬「あらあらまぁまぁ♪」

梓「と、とにかく、この中に犯人なんていないんですぅ!!」

 「あなたたち、ここで何してるの?」

律「げっ!」

さわ子「いきなり『げっ』とはひどいわね。これでもあなたたちの顧問なのだけど」

律「いや、びっくりして、あはは……」

さわ子「犯人がどうたらって聞こえたけど、まさかまだ探偵ごっこしてるの?」

唯「聞き間違いじゃないかな~」

さわ子「いいえ、たしかに聞こえました」

梓「ニュースの話をしてたんですよ!それで、犯人ひどいですねーって」

澪「そうそう!ひどいなーって話してたんです」

さわ子「……」

律(さ、さすがに無理があったか?)

さわ子「私ね、あなたたちのことけっこう好きよ?」

紬「……」

さわ子「教師がこんなこと言っちゃいけないんだけど、他の子たちよりもずっと好き」

梓「先生……」

さわ子「もし、あなたたち身に何かあったら私は……」

唯「さわちゃん……」

さわ子「あの子のように、十字架の杭で穴だらけになったあなたたちとご対面なんて、嫌よ」

律「……」

さわ子「だからね、お願い。もうこういうことはやめて?」

澪「わ、私たちは」

律「分かったよ、さわちゃん。心配させてごめん」

澪「律?」

紬「もう、こんなことは二度としません。ね、唯ちゃん、梓ちゃん」

唯「心配させてごめんね、さわちゃん」

梓「ごめんなさいです」

律「気分転換にさ、なんか食べようぜ!今日は私が奢るぞ、さわちゃん」

さわ子「ふふ、調子いいんだから。でも甘えちゃおうかな」

律「マジかよ!?普通逆だろ!!」

さわ子「給料日前できつくて」

唯「えー、何にお金使ったのー?」

さわ子「い、色々ね」

澪(お酒かな……)

梓(お酒でしょうか……)

さわ子「私はチーズインハンバーグと、ライス。あ、もちろんライスは大盛りね!」

律「うぅ、それぐらいならなんとか払えるか」

さわ子「あ、デザート忘れてたわ」

律「……」

さわ子「ふぅ、ご馳走様でした」

澪(すごい食べっぷりだった)

唯「あはは、さわちゃん食べすぎだよー」

さわ子「いいのよ。これぐらい食べないと大人はやってらんないの」

梓「説得力があるようなないような」

紬「勉強になるわー」

律「嗚呼、私のお小遣いが……」

澪「元気出せ、今度何か奢ってやるから」

律「絶対だぞ!絶対だからな!!」

さわ子「それじゃそろそろ帰りましょうか。奢ってくれたお礼に、車で送るわよ」

唯「わーい♪」

紬「でも、さわ子先生の車にこの人数は無理なんじゃ……」

澪「……」

さわ子「……あ、私仕事があるんだった。じゃーねー」

律「おぃいいいいいい!!!!」


かえりみち

澪「律、元気出せって」

唯「そだよ、明日ムギちゃんがおいしいケーキ持ってきてくれるって!」

律「……」

紬「りっちゃん」

律「ああ……」

梓「どうしたんですか?」

律「みんなに聞いてもらいたい話があるんだ」

澪「お金なら貸せないぞ」

唯「わ、私も今月はきついから……」

律「真面目な話なんだよ」

紬「……」


おくじょう

 「……」

律「呼び出してごめん。どうしても話しておきたいことがあって」

 「なに?」

律「最近この町で起こった殺人事件について」

 「……」

律「私たちが探偵の真似事してたのは知ってるよね。実はさ、犯人を見つけてやっつけたんだ」

 「すごいじゃない」

律「これで一件落着。町の霧も晴れてめでたしめでたし。でも、そうじゃなかった」

律「私たちの勘違いだったんだよ。犯人は別にいたんだ」

 「へぇ……」

律「真犯人は学校の関係者だってことは分かったけど、誰かまでは分からなかった」

律「でも、今日の出来事で分かったんだ。もしかしたら、この人なんじゃないかって」

 「それは誰かしら」

律「さわ子先生、あなただ」

さわ子「冗談にしてもひどいわよ」

律「冗談だったらいいんだけどな」

さわ子「だいたい、どうして私なのよ」

律「二度目の事件、最後の目撃者」

さわ子「まさかそれだけで?たまったものじゃないわね」

律「まだある。ファミレスで、さわちゃんこう言ったよな。『十字架の杭で穴だらけになったあなたたち』」

さわ子「それがどうしたの?」

律「どうして凶器が十字架の杭って知ってるんだよ」

さわ子「テレビで見たの」

律「報道規制でテレビには凶器のことは流れてない。ムギが警察に確認済みだ」

さわ子「……ああ、思い出したわ。りっちゃんたち、以前ホワイトボードに事件のこと色々書いてたじゃない?」

律「……」

さわ子「そこに書いてあったのを見たのよ」

律「それもありえない」

さわ子「……」

律「私たちが、二度目の事件の凶器が十字架の杭だと知ったのは、つい最近なんだよ」

律「あのときのホワイトボードに、書かれているわけがないんだ」

さわ子「……」

律「なぁ、本当にさわちゃんが犯人なのかよ?」

律「自分でも信じたくないんだよ!なんとか言ってくれよ!むしろ否定してくれよ!」

さわ子「……全く、あなたたちは」

律「……」

さわ子「世の中クソね」

さわ子「あー、まずったなー。なーんであんなこと言っちゃったのかしら」

律「さ、さわちゃん?」

さわ子「ドラマで自ら自供しちゃう犯人を馬鹿にしてたけど、まさか私がねー」

律「じゃあ、殺人事件の犯人は……」

さわ子「はい、私です。せいかーい」 パチパチパチ

律「ふ、ふざけんなよ!なんでこんなことしたんだ!!」

さわ子「こっからはあれかしら、犯人の回想タイム?」

律「さわちゃん!!」

さわ子「はぁ……。私ね、あいつらに暴行されたの」

律「あいつら?」

さわ子「ほら、あの団子三兄弟」

律「最初の事件で、電柱に串刺しにされた男たちのことか」

さわ子「そりゃひどかったわよ?もう身も心もズタズタにされちゃったんだから」

律「……」

さわ子「自殺まで考えたわ。手首切ろうとしたけど、死ねなくて」

さわ子「そしたらね、どうして私が死ななきゃいけないんだろう。死ぬべきはあいつらなんじゃないかって思えてきたの」

さわ子「でも女の力じゃやっぱり無理ね。逆にやられちゃったわ」

律「そこで、ペルソナに目覚めた」

さわ子「あたり。このままじゃ一生こいつらの『おもちゃ』よ。憎い、憎い、殺してやるって思った」

さわ子「気がついたら、ペルソナが使えるようになってたわ。あいつらを殺せる力も」

律「それでも人を殺すことは間違ってる」

さわ子「そうかしら?」

唯「あの子は!あの子には何の罪もなかったんじゃないの!?」 タタッ

律「唯……」

さわ子「あら、唯ちゃんいたんだ」

唯「どうして、あの子まで殺さなきゃいけなかったの……」

さわ子「簡単なことよ。事件の目撃者だったから」

さわ子「あの子とあなたたちが話してるのを耳にして、もしかしてと思ったらね」

律「あの子が途中で行っちゃったのは、さわちゃんを見たからか」

さわ子「あとでしっかり捕まえたけどね。必死に命乞いしてたわ」

さわ子「誰にも言わないから助けて、助けてって」

唯「ひどいよ……」

さわ子「私も捕まりたくないから、ごめんなさい」

律「……」

さわ子「唯ちゃんがいたなら、他のみんなもいるわよね」

律「ああ」

さわ子「出てきたら?話したいこともあるでしょ」

律「みんな、出てきてくれ」

澪「……」

梓「先生……」

紬「……」

さわ子「みんな暗いわね。質問ないの?」

梓「……憂は、憂は先生がやったんですか!?」

さわ子「ああ、憂ちゃんね。あれは私じゃないわ」

梓「じゃあ、どうして憂はあんなことに……」

さわ子「んー、あれじゃない?強いシャドウの気に当てられたからとか、そんなとこ」

梓「そんなとこって」

さわ子「そう言われても分からないものは分からないから」

律「憂ちゃんには一切手は出してないんだろ」

さわ子「そうね」

唯「……」

さわ子「質問は終わりかしら?」

澪「さわ子先生が犯人だなんて、信じられない」

さわ子「でも犯人なのよね、ごめんなさい」


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最終更新:2011年02月24日 22:33

*1 (逃げた!!!