かえりみち

澪「憂ちゃん、元気そうでよかったな」

唯「うんうん!文化祭までに退院できそうでよかったよ~」

梓「唯先輩、練習しっかりしないとだめですよ?」

紬「ふふ、梓ちゃんの言う通りよ」

唯「うぅ、あずにゃんとムギちゃんが厳しいよ、りっちゃーん」

律「おー、よしよし」 ナデナデ

梓「もー!ちゃんと練習してくださいね!」

澪「最近はごたごたして全く練習できなかったからな、当然だ」

律「はいはい、分かってますよー」

澪「ところで帰りの電車何分だ?」

律「あー、携帯で調べるからちょっと待ってろ」

唯「おー!携帯にそんな機能がっ!?」

梓「……唯先輩」

紬「ふふ♪」

律「……あり?」

澪「どーした、律?」

律「携帯が……ない……」

唯「えぇ!?」

梓「何処かで落としたんでしょうか?」

律「……そういえば憂ちゃんの病室で、机の上に携帯を置いた記憶が」

澪「なんでそんなとこに携帯置いたんだ!」

律「電源を切り忘れててさ、慌てて切って、そのまま机によっこらせと……」

唯「ぷーっ!りっちゃんドジ♪」

律「おまえには言われたくねー!」

律「と、いうわけだから携帯取りに行って来るわ」

澪「じゃあ私たちも……」

律「いいって、帰りが遅くなっちゃうだろう?先帰っててくれよ」

梓「いいんですか?」

律「ああ、気をつけて帰るんだぞ。じゃ、明日学校でな!」

唯「りょーかいであります!りっちゃんも帰りは気をつけるんだよー」

紬「ばいばい、りっちゃん」

澪「寄り道しないで真っ直ぐ帰るんだぞ、律」

律「はいよ、まったなー!」

律「……さてと、急いで戻らないとな」 タタッ


ういちゃんのびょうしつ

律「失礼しまーす」 ガラガラ

憂「あ、律さん。携帯忘れていきましたね」

律「あはは、ばれてたか」

憂「机の上にありましたよ、はいどうぞ」

律「お、サンキュー」

憂「ふふ、気をつけてくださいね」

律「んじゃ私はもう帰るよ。これ以上ここにいたら、憂ちゃん休めないからな」

憂「……」

律「文化祭、楽しみにしててくれよな!それじゃ……」

憂「律さん!」

律「ん?なんだ、憂ちゃん」

憂「霧の元凶であるシャドウは倒したって言ってましたよね」

律「ああ、もうこの町が霧で覆われることはないぜ」

憂「殺人事件の犯人も、そのシャドウだったんでしょうか」

律「そうだろ」

憂「……本当に、そうでしょうか」

律「気になることでもあるのか?」

憂「二度目の事件のとき、霧は出ていませんでした」

律「そうだな、でもそれはたまたま霧が出ていなかっただけで、あのシャドウが殺したんだろ」

憂「それはないと思うんです」

律「……どうして」

憂「あれだけ強大なシャドウなんですよ?行動を起こせば、絶対に私のレーダーにひっかかるはずなんです」

憂「それが、事件の夜は何も感じることはできませんでした。シャドウの気配なんて微塵もなかったんです」

律「……」

憂「もしかしたら、事件の犯人は別にいるんじゃ……」

律「じゃあ、まだ事件は続くってことかよ」

憂「分かりません」

律「もしかしたら、霧が出てなくても活動できるシャドウが別にいるんじゃないか?」

憂「おまけに出現する気配も感じることのできない、ステルスのシャドウですか?」

律「それは……」

憂「できすぎている気もしますが、いないとも言い切れません」

律「……」


かえりみち

律(たしかに、私も何か引っかかるものを感じてた)

律(町の霧は晴れたのに、私の心の霧はまだ晴れていない……)

純「あれ、律先輩じゃないですか」

律「あ、鈴木さん」

純「憂のお見舞いの帰りですか?」

律「まぁね」

純「……他の皆さんは?」 キョロキョロ

律「携帯を病室に忘れちゃってさ、他のみんなは先に帰ってもらったんだ」

純「そうだったんですかー」

律「鈴木さんはこれからお見舞いかい?」

純「そうなんですよー。お母さんに頼まれた買い物してたら遅くなっちゃって」

律「なら急いだほうがいいぜ。そろそろ面会時間終わっちゃうからな」

純「マジですか!?だ、ダッシュで行ってきます!それでは失礼しますね!」

律「転ぶなよー」

律「あ、こけた……くくく……」

律(……)

律(1人でうじうじしてても何も始まらないな。明日、みんなに相談しよう)

律(間違っていたら、笑い話にもなるさ……)

律(もしも、真犯人が別にいるのなら、捕まえたい)

律(でも、それが学校の人間だったら?)

律(先生、友人だったら?)

律(私は、捕まることができるのかな……)


つぎのひ がっこう

唯「やっほー」

澪「お早う、唯。今日は眠そうじゃないな」

唯「昨夜はよく眠れましたー。快眠快眠~♪」

紬「感心感心~♪」

澪「あ、あはは……」

律「……よ」

澪「律!……今日はおまえが眠そうだな」

律「昨日ちょっと考えごとしてたんだよ」

唯「りっちゃんが考えごとー?うそー」

律「……まーな」

澪(いつもなら『なんで意外!って顔すんだよ!!』と、怒るのにな……)

唯「なんだか今日元気ないね、何かあったの、りっちゃん?」

律「実は気になることがあるんだ。今日の放課後、部室に集まれるか?」

紬「私は問題ないけど」

唯「私もおっけーだよー」

澪「まだ部活動は当面禁止だから、あまり長居はできないぞ」

律「犯人はまだ捕まってないからな」

唯「ほんとは、私たちがやっつけたのにねー」

澪「まぁ、もどかしくはあるな。みんなで練習も早くしたいし」

律「本当に犯人は捕まってないかもしれないんだ」


ほうかご ぶしつ

梓「唯先輩から放課後に部室に集合と言われたんですけど、なんの集まりなんですか?」

唯「あのね、りっちゃんが大事な話があるんだって」

澪「律、犯人が捕まってないってどういうことだよ?犯人は、私たちがやっつけたただろ」

律「たしかに、霧はあの目玉親父のせいだったかもしれない。けど、殺人事件の犯人は別にいるんじゃないか?」

紬「……」

梓「そんな!」

律「もしかしたら、犯人は学校の……」

唯「そんなわけないよ!学校の誰かが犯人だなんて、やだよ!!」

律「私だって嫌だよ!でも、そうかもしれないんだ」

紬「りっちゃんは、どうしてそう思ったの?」

律「実は憂ちゃんが……」

律「……と、言うわけなんだよ」

紬「……」

梓「憂がそんなことを……」

澪「た、たしかにおかしいな」

律「だろう?このままうやむやにしてちゃいけないと思う」

唯「それが、友達を捕まえることになったとしてもなの?」

律「……ああ、間違ったことは正さなきゃいけない」

唯「りっちゃんはクールだね」

梓「ゆ、唯先輩」

唯「だってそうじゃん!信じた友達を疑って、捕まえる?そんなのおかしいよ!!」

律「そうだな、最低かもしれない」

唯「なら!」

律「だけどさ、誰だって間違えることはあるだろ。私だって、唯だって……」

唯「……」

律「友達が間違ってるって気付いたら、どうする?」

梓「それは間違ってるよって教えてあげます……」

律「だろ?見て見ぬフリするのが友達じゃないだろう?」

澪「……ああ」

律「どんな状況だろうと、人を殺していいわけないんだ」

紬「そうね」

律「私は間違ってることだと思うから、もし友達が犯人なら、ぶん殴ってでも分からせてやりたい」

律「おまえのやったことはいけないことなんだぞってな」

唯「……りっちゃん」

唯「……私も」

律「……」

唯「友達が間違ってたら、直してあげたいよ……」

律「そっか」

唯「つらいけど、言ってあげなくちゃいけないもんね」

澪「その人のためにな」

律「ならHTD、再始動だ」

紬「昨日解散したばかりなのにね」

律「それは言わない約束だろ!」

唯「あはは」

律「とりあえず、事件を改めて調べてみよう」

梓「最初から徹底的に、ですね」

澪「ムギ、警察の人からもっと情報は聞き出せないのか?」

紬「問題ないわ。みっちり引き出しておく」

唯「ムギちゃん頼もし~」

律「梓、前にホワイトボードに事件のことを書いただろ?あれをメモった紙、今持ってるか?」

梓「はい、ありますよ」

律「それコピーしてみんなに配ってくれ」

梓「分かりました。今からコピーしてきますね」 タタッ

律「梓!」

梓「はい?」

律「その紙は見られないように気をつけろ」

梓「はいです!」

梓「どうぞ、唯先輩」 スッ

唯「ありがと、あずにゃん」

律「よし、コピーした用紙は行き渡ったな。これを元に考えていこう」

唯「らじゃー!」

澪「むぅ、これだけじゃよく分からないな」

律「たしかにな。とりあえず今日のところは解散して、明日また話し合おう」

梓「え、もう解散しちゃうんですか?」

律「さわちゃんがきたらまた怒られるだろ?」

澪「こ、今度は怒られるだけじゃすまないかも……」

律「各自で事件について考えてきてくれ。明日はファミレスに集まって、そのことについて意見を出し合おう」

唯「私の名推理が火を吹くね!」

梓「使い方が間違ってるような気がします」

律「よし、解散!」


かえりみち

唯(この紙に書かれることから犯人を……)

唯(も、もしくは何か気付くことがあれば!)

唯「だー!全然わっかんないよー!!」

和「あら、唯もついに受験勉強を始めたのかしら」

唯「和ちゃん!え、えへへ」

和「どうやら違うみたいね」

唯「なんで分かるのっ!?」

和「何年の付き合いだと思ってるのよ」

唯「さすが私の親友!」

和「……素直に喜べないわ」

唯「……和ちゃん」

和「なに?」

唯「あのね、この前聞いたこと覚えてる?」

和「この前というと、生徒会室でのことかしら」

唯「そうだよ。学校に来たかってお話」

和「……」

唯「和ちゃんは、絶対に学校に来てないんだよね?」

唯「信じていいんだよね?」」

和「……はぁ」

唯「和ちゃん?」

和「白状するとね、本当は学校に来たのよ」

唯「そうなの?」

和「ええ」

唯「じゃあ、なんで嘘なんか……」

和「以前みんなに注意した手前、私が出歩いてたって言うのが恥ずかしくて。ごめんなさい」

唯「べ、別に気にしてないよ、和ちゃん。でも、なんで学校に来たの?」

和「大したことじゃないわ。学校に勉強で使う参考書を忘れてちゃったの」

和「気付くのが遅かったから、もしかしたら学校閉まってるかもって思ったけど」

唯「学校には入れた?」

和「案の定手遅れ。正門の前でしばらく呆けてたけど……」

和「冷静に考えてみたら、危険な霧の中を戻ってするようなことじゃないわよね」

唯「……」

和「馬鹿らしくなって、走って帰ったわ」

唯(姫子ちゃんが見たことと一致する!)

和「嘘をついてごめんなさい、唯」

唯「誰にでも言いたくないことあるもんね!ほんとに、気にしてないから大丈夫だよ、和ちゃん」

和「ありがとう」

唯「これからもよろしくね!」

和「ええ、もちろん」

唯「えへへ」

和「でも受験勉強はしっかりね?」

唯「……はい」


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