その後、私たちは文化祭に向けて本格的に練習を始めました。

しかし、憂の体調は一向に回復せず、むしろ悪化したのです。

それを機に、唯先輩は練習に来なくなり、文化祭ライブは中止を余儀なくされたのでした。


あれからすうかげつご

律「みんな揃うのも久しぶりだな」

澪「ああ、卒業以来だ」

紬「梓ちゃん、けいおん部のほうはどう?」

梓「すみません、私の力不足で部員が全然集まらなくて……」

律「本来は憂ちゃんが入るはずだったしな、仕方ないさ」

梓「すみません……」

澪「ところで、唯って今何してるんだ?」

紬「大学進学をとりやめて、憂ちゃんのためにバイトしてるって聞いたけど」

梓「お見舞いは毎日行ってるみたいですよ。きっと今日も来てます」

紬「今から会うのが楽しみね」

澪「ああ、唯と会うのは本当に久しぶりだ」


びょういん

梓「失礼します」 ガラガラ

唯「あ、あっずにゃーん!」 ダキッ

梓「ちょ、唯先輩やめてください!みなさん来てるですよ!!」

律「よ!元気そうだな」

澪「はは、唯は変わらないな」

紬「ほんとね」

唯「みんな久しぶり!なんだか大人っぽくなったよね!!」

律「だろう?大人の魅力ムンムンだろう?」

唯「りっちゃん以外!」

律「てめー、唯ー!」

唯「きゃっきゃ!」

梓「もう!あんまりうるさくすると憂に悪いですよ!!」

律「そ、そーだな。すまん」

唯「別にいいよ。憂もね、みんなが来てくれてすごい嬉しいって!!」

澪「……っ!」

唯「え?……うん、うん。そーなの?」

律「お、おい、唯?」

唯「あのね、寝巻き姿だからちょっと恥ずかしいって」

紬「……そう」

梓「……」

唯「そんなの気にしないのにねー。憂の照れ屋さん!えへへ♪」

律「おい、梓……」

唯「あれ、どうかしたの?」

梓「いえ、なんでもありません」

唯「そうなのー?」

律「ああ、何でもないよ。ちょっとジュースでも買って来るから、梓付き合ってくれないか」

梓「分かりました」

唯「あ、私コーラね!憂は何がいい?オレンジジュースね!りっちゃん!」

律「ああ、コーラとオレンジな。りょーかいだ……」 ガラガラ

律「どーいうことだよ!」

梓「それはどういう意味ですか」

律「憂ちゃんだよ!」

梓「ご覧の通りです」

律「ご覧の通りって……」

梓「あの後、憂はまた意識不明になったんですよ」

梓「先輩たちが大学に入学してすぐあたりに」

律「どうして知らせてくれなかったんだ」

梓「唯先輩が、みんなも何かと忙しいだろうからって」

律「どうしてそこで遠慮しちまうんだよ」

梓「文化祭で、ライブが出来なかったのは自分のせいだと、引け目を感じているんだと思います」

律「でも、あれは仕方なかっただろう……」

梓「結果、唯先輩は憂に逃避、入れ込んでしまったんですよ」

律「入れ込むたって、チューブでつながれて、やせ細った憂ちゃんを見ても……」

梓「何も感じないほどに、です。今は、妄想の憂と楽しくおしゃべしています」

律「……」

梓「……私も認めたくありませんでした」

律「こんなのってありかよ……」


去り際の、律先輩の言葉がとても印象的だったのを今でも覚えています。

町の霧は晴らせたけど、今度は私たちの心に霧がかかってしまった、と。


終わり