じゅぎょうちゅう

唯(……姫子ちゃん、和ちゃんのどちらかが嘘をついてる)

唯(でもどうして嘘なんか)

唯(……犯人だから?)

唯(違う!二人ともそんなことするような人じゃないよ!何か別の理由があるんだよ!!)

 「ゆーいー、田井中さんから手紙」 コッソリ

唯「あ、うん、ありがと」

唯(なんだろう……) ペラッ

 『外見てみろ!!』

唯(外……?)

唯「霧がっ!?」 ガタッ

先生「ひ、平沢さん?霧がどうかしたのですか……」

唯「はっ!?……あの、霧が出てるなーと思いました」

先生「たしかにうっすらと霧が出ていますね。ですが授業中は静かにお願いしますね」

唯「はい、ごめんなさい」

唯(どどどど、どういこと!?まだ朝なのに霧が……)

唯(なんで霧が出てるの!?)


ほうかごのきょうしつ

澪「おい、どーなってるんだ!?なんで霧が出てるんだよ!!」

律「私が知るかよ!」

紬「登校したときは晴れていたわよね」

唯「うん、間違いなく晴れてたよ」

律「どうして今になって霧が出たんだ」

澪「このままだと、町は霧に沈んじゃうんじゃないか」

紬「晴れない霧が町を覆う……」

律「霧の中はシャドウだらけってか?冗談じゃないぜ」

澪「その、一ついいか?」

唯「どうしたの、澪ちゃん」

澪「もしかしら気のせいなのかもしれないんだけど……」

律「いいから話せって」

澪「その、霧が出てから妙に胸騒ぎがしてな、何か関係があるんじゃないかと思って」

律「それは澪が怖がりだからじゃないか?」

澪「こ、これは違う!」

紬「……実は私も」

澪「ムギもか!?」

紬「ええ、すごくいやな気配を感じるの」

唯「私もなんとなくだけど、感じる。今も!」

澪「これってさ、シャドウの気配なんじゃないか?」

律「気配を察知できるのは憂ちゃんのペルソナだけのはずだろ?」

紬「こうは考えられないかしら。私たちにも分かるくらい、強い力をもったシャドウが現れた」

唯「そ、それって……」

律「ラスボス登場ってことかよ」

澪「シャドウのボスか……」

律「と、とりあえず憂ちゃんに確かめてもらおう」

紬「そうね、それが一番手っ取り早いわ」

唯「じゃあ私が憂に連絡を……」

 プルルルルル

唯「あれ、あずにゃんから電話だ」

唯「もしもし、あずにゃん?」

梓『唯先輩、憂がっ!!』


びょういん

唯「……」 ガラガラ

律「唯、憂ちゃんは!?」

澪「だ、大丈夫なんだよな!そうだよな!」

唯「お医者さんが言うには、何処も異常ないって」

律「よ、よかったー」

唯「でも、それが異常なんだって……」

澪「どういうことなんだ?」

唯「意識が戻らない原因がまったく分からないって言われたの」

紬「……まさかシャドウが」

梓「うぅ、憂……」

憂「……」

律「今にも起きそうだな」

澪「ああ」

唯「……憂」

梓「ひっぐ、うぅ……」

紬「梓ちゃん、つらいだろうけど、憂ちゃんを見つけたときのこと、もう一度教えてくれる?」

梓「は、はい。授業が終わった後、憂と一緒に皆さんのところへ行く予定だったんです」

律「私がメールで言っておいたからな」

梓「でも、いざ行こうとしたら憂がいなくて。屋上へ行ったら憂が……憂が……」

澪「倒れていたのか」

唯「あずにゃん、何で屋上だと分かったの?」

律「それもそうだな、私だったら近づきたいくないぞ」

梓「……授業中、急に霧が出たじゃないですか」

澪「ああ、私たちもびっくりした」

梓「そしたら、憂が屋上に何かいるって言ったんですよ」

紬「何か……」

澪「シャドウか」

梓「分かりません。ただ、すごく怯えた様子でした」

律「1人で様子を見に行って、それで……?」

梓「ありえませんよ。このことは後で先輩に報告しようって約束したのに」

唯「うん、憂はそんな軽率なことをする子じゃないよ」

澪「じゃあ、どうして屋上なんかに行ったんだ」

梓「分かりませんよ!!」

紬「落ち着いて、梓ちゃん」

梓「うぅ……」

律「なにかの理由があって、憂ちゃんは屋上に行った。そこでなにかがあった」

紬「あるいは、誰かに連れていかれた、ね」

澪「鍵は屋上だな」

紬「もう一度屋上に行ってみたほうがよさそう」

律「ああ、ただ……」

唯「……」

律「唯、今日は憂ちゃんについててやれ」

唯「……うん」

澪「そうだな、それがいい」

律「梓は、どうする?」

梓「私も、憂のそばにいたいです」

律「分かった。私たちの分まで、よろしく頼む」


よる びょういん

憂「……」

梓「憂……」

唯「あずにゃん」

梓「はい?」

唯「あずにゃんは、この事件のことどう思う?」

梓「犯人がシャドウか人間か、ということですか?」

唯「うん」

梓「私はシャドウだと思います。憂も、そのシャドウに」

唯「私もね、最初はそう思ったんだ」

梓「……」

唯「でも、もしかしたら人間が……学校の誰かが犯人なのかもって思ちゃったの……」

唯「そしたらね、みんな怪しく思えて……。和ちゃんや姫子ちゃんを疑ちゃったんだよ」

唯「ひどいよね、友達なのに……」

唯「だけど、シャドウの気配がして、憂が倒れたって聞いたときね……」

梓「……」

唯「ちょっとだけ、ほんのちょっとだけ安心しちゃったんだ。あぁ、やっぱり犯人はシャドウだったんだって」

唯「もう、誰も疑わずにすむんだって……」

梓「……唯先輩」

唯「えへへ、ほんとにひどいよね。最低なお姉ちゃんだよね」

梓「最低なんかじゃないです」

唯「……」

梓「それだけ、みんなのことが大好きなんですよ」

唯「だけど、私は……」

梓「つらかったんですね。気付いてあげられなくて、すみません」

唯「つ、つらくなんてないよ。ひどいこと考えてたんだよ?」

梓「唯先輩、もう我慢しなくてもいいんです」 ギュッ

唯「我慢なんて……してない……ひっく……うう……」

唯「あずにゃん、あずにゃん!」

梓「よしよし」 ナデナデ

唯「もう、誰も疑いたくなかったんだよ!全部全部シャドウが悪いんだよ!」

梓「そうですね」

唯「シャドウが憂を!憂を!!」

梓「シャドウをやっつけて、憂を助けましょう」

唯「うん、うん!!」

梓「だから今日はもう休みましょう。自分のためにも、憂のためにも」

唯「……ぐすっ……分かったよ」

梓「おやすみなさい、唯先輩」

唯「おやすみ、あずにゃん……」


よくあさ とうこうちゅう

律「よ、澪」

澪「律か」

律「律か、とはなんだよ。元気ないなー」

澪「……霧」

律「……晴れないな。昨日の朝からずっと霧が町を覆ってる」

澪「このままだと、町中がシャドウだらけになっちゃうのかな」

律「そんなことにはならない」

澪「でも霧が……」

律「きっと晴れるさ。……晴らしてみせるさ」


がっこう

紬「りっちゃん、澪ちゃんお早う」

律「よー、ムギ」

澪「お早う」

紬「唯ちゃんと梓ちゃんは……?」

律「学校は休むとさ。放課後の作戦会議は参加するってメールで言ってたぜ」

紬「そう」

澪「今日、屋上を調べるんだよな?」

律「その予定だよ」

紬「なら夜がいいと思うの」

澪「余計危険じゃないか?」

紬「昨日の深夜、屋上でのシャドウの気配がより強まったのよ」

律「その時間帯に姿を現すってわけか」

紬「はっきりと気配が伝わってきたから、間違いないと思うわ。かなり強い力をもったシャドウね」

澪「屋上のシャドウを倒せば、霧も晴れるかな」

律「きっとな」

紬「ええ」

澪「……」

律「いまさら怖くなったのか、澪ちゅわん」

澪「む、武者震いしてたとこだ」

紬「あら、頼もしい」

律「じゃあ澪が最前線で決まりだな」

澪「私は後方支援でいいぞ!うん、そっちのが合ってるからな!」

律「さいですか」

紬「なにはともあれ、また放課後に話し合いましょう」

律「今度は唯と梓も含めてな」

澪「おい!その前に私の話を聞け!」


ほうかご ふぁみれす

律「全員集まったな」

澪「唯、憂ちゃんの具合はどうだ?」

唯「健康そのもの。いつ目覚めてもおかしくないってお医者さんが言ってたよ」

律「屋上のシャドウを倒せば、きっと目覚めるさ」

梓「そうです。めでたしめでたしのハッピーエンドです」

澪「殺人事件の犯人は、やっぱり屋上のシャドウなんだろうか」

律「たぶんな」

紬「……」

律「おそらく、屋上のやつがシャドウの親玉だと思う」

梓「そいつを倒せば、憂もこの霧も!」

唯「私、頑張るよ!」

澪「私だって!」

紬「今夜午前0時、学校の正門に集合ね」

律「全てを終わらせるんだ!いくぞ、HTD!!」

 「「お~~!!」」

唯(今夜、シャドウを倒して憂を助ける!ついでに町も救っちゃう!)

唯(気合入れないと……!)

姫子「あ、唯じゃない。今、帰り?」

唯「姫子ちゃん!丁度いいところにきてくれたよ!」

姫子「どうしたの、鼻息荒くして……」

唯「今夜0時にね、みんなで屋上に行くんだ」

姫子「ああ、屋上のシャドウを倒すのね。でも、あいつめちゃめちゃ強そうよ」

唯「だからね、姫子ちゃんにも力を貸して欲しいんだよ」

姫子「無理無理、あんなの勝てっこないって」

唯「1人の力じゃ無理だよ」

姫子「……」

唯「でもね、みんなの力を合わせれば、きっとできるよ」

唯「私ね、和ちゃんと姫子ちゃんを少しだけど、疑っちゃったんだ」

唯「事件の犯人じゃないかって」

姫子「ま、無理もないわ」

唯「でもそんなことあるわけないんだよね。和ちゃんも姫子ちゃんも、私の大切な友人だから」

唯「私が信じた友人だから」

姫子「……」

唯「今夜0時……来てくれるって信じて待ってるよ、姫子ちゃん……」

姫子「……そう」


9