ほうかご ぶしつ

梓「このたびはご心配をかけまして」

唯「あっずにゃーん!」 スリスリ

梓「もぉ、唯先輩たら」

澪「身体は大丈夫なのか?てっきり今日は休みかと思ったぞ」

梓「寝て起きたら元気になっちゃいました。それと、新しい友達もできたんです」

律「新しい友達?」

梓「はい……」

紬「……」

梓「ネコショウグン!」 カッ!

ネコ「ニャー!」

唯「ネコで将軍!?」

紬「これが、梓ちゃんのペルソナね」

憂「かわいいですね」

ネコ「ニャー!?」

律「おい、嫌がってるぞ。撫で回すのはそのへんにしておけ、唯」

唯「ちょぇー」

紬「梓ちゃん、部室に来たってことは事件解決に協力してくれるってこと?」

梓「はい。まだ目覚めてまもないですけど、先輩たちの力になりたいです」

律「梓、これは部活動じゃないんだ。怪我だってするし、命を落とすかもしれない」

澪「それでもいいのか?」

梓「先輩たちのように、私にだって守りたいものがあるんです」

憂「梓ちゃん……」

梓「怖くないかって聞かれたら、そりゃ怖いですよ?」

紬「ならどうして?」

梓「大切な人を失うことのほうがよっぽど怖いって気付いたからです」

梓「それに、私には力が……ペルソナがあるから……」

律「大いなる力には、大いなる責任が伴う」

梓「その言葉は……?」

律「昔やってたヒーロー映画の台詞さ」

澪「責任か」

梓「……」

律「梓、力を貸してくれるか?」

梓「はい!」

唯「改めてよろしくねー、あずにゃん!!」 スリスリ

梓「ゆ、唯先輩はスリスリ控えてくださーい!」

憂「ふふ、スリスリするお姉ちゃんもかわいい♪」

律「梓も入れて6人、HTDのメンバーもけっこう増えたな」

澪「なんだ、HTDって?」

律「放課後探偵団の略。何かしら名前あったほうが便利だろ?」

唯「おぉ!かっこいいかも!!」

紬「ふふ、素敵だわぁ」

梓「律先輩らしい安直なネーミングセンスです」

律「ほっとけ!」

律「で、本題なんだけど、ここいらで捜査の方針を固めようと思うんだ」

唯「どーゆうこと?」

律「今までは霧が出てた夜にパトロールしてるだけだったろ?」

澪「そうだな」

律「どうせならさ、第1の事件、第2の事件の被害者を調べてみるのもいいんじゃないか」

憂「シャドウが犯人なら、あまり意味がないんじゃないでしょうか」

紬「本当にシャドウが犯人ならね」

律「仮にシャドウだったとしても、全くの無駄ってことはないだろ」

唯「なんかほんとに探偵みたいだね」

律「もしかしたら、何か新しい事実が分かるかもしれないしな」

澪「私はいいと思うぞ」

憂「私も賛成ですけど、どうやって調べるんですか?」

梓「第2の事件の被害者は私と憂の同級生ですから、調べようもありますけど」

律「うーん、問題はそこなんだよな」

澪「いきなり壁に当たったな……」

紬「私に心当たりがあるわ」

唯「ほんと!?」

紬「警察の人に知り合いがいるから、その人を当たれば分かると思う」

澪(そういえば、こなだいも死亡推定時刻をすらすらと答えてたな)

律(普通守秘義務ってのがあるんじゃないのか?警官としてはだめだろ……)

紬「どうしたの、りっちゃん?」

律「いや、どうやったら警察の人からそんな情報を引き出せるのかなと思って」

紬「りっちゃん」

律「な、なんだよ?」

紬「世の中には、知らないほうがいいこともあるの♪」

律「そう……だな……」

澪(ムギこわっ!)

律(被害者に関してはムギに一任して……)

澪&律(そっとしておこう……)

律「梓と憂ちゃん、第2の事件の被害者のことも調べておいてくれるか?」

梓「具体的に何をすればいいんですか?」

律「そうだな、事件当日の足取りとか。その日、何かおかしな様子はなかったかとか」

憂「分かりました、その子と同じクラスの人に聞いてみます」

澪「私たちは引き続き夜の見回りだな」

唯「がってん!」

律「何かあったらしっかりと報告するように」

 「「りょーかーい」」


そのひのよる

唯「さぁ、集まりました。HTD見回り部隊!」

澪「なんでそんなに張り切ってるんだ」

律「今日は霧が出てないけど、油断はするなよ」

唯「分かってるよ、りっちゃん」

澪「憂ちゃんはなんて?」

唯「シャドウの気配は全く感じないって」

律「そうか……。とりあえずグルっと町内を一周しよう」

澪「分かった」

唯「りょーかーい」

澪「まだ時間も早いってのに、人っ子一人いないな」

律「この町にいるのが私たちだけみたいだ」

唯「……なんだか不気味だね」

 「あら、あなたたち」

律「っ!」

澪「ひっ!?」

唯「その声は……」

和「三人集まって何してるの?」

唯「和ちゃん!」

和「散歩?」

律「まぁそんなところ」

和「まだ犯人も捕まってないのよ、お勧めできないわね」

唯「りっちゃんがどうしてもしたいってきかなくてさー」

律「私かよ!?」

澪「そういう和こそどうしたんだ、散歩か?」

和「まさか。これから勉強するから夜食の買出しに行ってきたの。冷蔵庫見たら何もなくて」

唯「ほえー、さすが受験生だね」

和「あのね、あなただって受験生なのよ?」

唯「はい……」 シュン

和「それじゃあ私は帰るから、もう夜に散歩なんてしちゃだめよ」

律「あいよ」

澪「和も帰り道気をつけてな。なんだったら送っていくぞ」

和「ありがとう、でも家は目と鼻の先だから」

唯「唯は受験生としての自覚を持つように、だって……」

律「ま、それを言うなら私もだな」

澪「威張ることじゃないからな」

唯「……今日は何もなさそうだね」

澪「これと言って異常も見当たらない」

唯「まだ見回り続ける?」

律「もう一周見て周って、解散するか」

澪「そうだな」

唯「そんじゃ早速いこー!」


つぎのひ ほうかごのぶしつ

律「……で、昨日見て周ったけど以上はなし」

澪「和に会ったぐらいだな」

紬「和ちゃんに?」

唯「うん、それ以外とは誰とも会わなかったし、シャドウも出なかったよ」

紬「……」

梓「どうかしたんですか、ムギ先輩」

紬「ううん、なんでもないわ」

律「それで、梓&憂ちゃん組は何か分かったか?」

梓「はい、一応収穫はありました」

紬「私も」



第1の事件の被害者たちについて

  • 三人はいわゆる不良仲間だった
  • 最近面白いおもちゃを見つけたと仲間内に話していた
  • 事件当日の足取りは不明(夜には霧が出ていた)
  • 死亡推定時刻から、生きながら電柱に張り付けにされた



第2の事件の被害者について

  • 学校で目撃されたのを最後に、その後の足取りは不明(紬調べ)
  • 第1の事件後、何かに怯えている様子だった
  • 死体発見場所は学校の屋上
  • 事件当日の夜に霧は出ていなかった



澪「ホワイトボードにまとめると、こんなもんか」 キュッキュ

梓「両方とも、被害者の足取りは分かってないんですね」

紬「警察の調べでも、目撃者は見つからなかったみたいだから」

唯「……うぅ、これだけじゃ全然分からないよぉ」

憂「第2の事件は霧が出てないというのが引っかかります」

律「たしかに気になるところだな」

紬「私はこの三人が見つけたおもちゃ……」

唯「遊ぶおもちゃってことはないよね」

澪「だろうな。でも、きっとろくなことじゃないだろう」

律「あー!余計こんがらがってきた」

澪「とにかくだ、忘れないうちにメモしておこう。解決の糸口に繋がるかもしれない」

梓「じゃあ、私がノートに書いておきますね」

律「頼む」

澪「私たちは、もう少し事件のことについて考えてみよう」

紬「そうね」

憂「……っ!!」

唯「どしたの、憂?」

憂「あ、あの……」

律「まさかやつらが!?」

さわ子「あーなーたーたーちー!!!!」 ゴゴゴゴゴゴ!

澪「ぎゃあああああああああ!!」

さわ子「何度も言わせないでちょうだい。居残りは禁止なの」

唯「ご、ごめんなさい」

さわ子「それに、このホワイトボードに書かれてること……」

律「それは、その」

さわ子「子供が遊び半分で首を突っ込んでいいことじゃないの。分かるわよね?」

澪「すみません」

さわ子「こんなことは今後一切禁止よ。これはね、あなたたちのためなの」

憂「……はい」

さわ子「分かったらさっさと帰りなさい。気をつけてね」

梓「分かりましたです」

唯「さわちゃん先生、さようなら」

さわ子「……」

唯「さわちゃん?」

さわ子「あ、はい、さようなら」

唯「どうかしたの、さわちゃん」

さわ子「……」

律「具合でも悪いのか?」

さわ子「あの子も、そう言っていなくなっちゃったなって」

紬「それって、第2の事件の?」

さわ子「ええ、昇降口に向かう途中ですれ違ってね」

梓「それじゃあ先生が最後の目撃者なんですか」

さわ子「そう、なるわね……」

憂「……そうだったんですか」

さわ子「私があのとき呼び止めていたら、あの子は……」

唯「さわちゃんのせいじゃないよ!悪いのは犯人だよ!!」

律「そうだぜ、さわちゃん」

さわ子「ありがとう唯ちゃん、りっちゃん」


げこうちゅう

律「最後の目撃者がさわちゃんだったなんてな」

澪「先生もつらいだろうな」

唯「……」

紬「先生の証言からしても、あの子は学校でさらわれた可能性が高いわ」

梓「どうしてそう思うんですか?」

紬「その子、発見されたときに上履きを履いていたの」

憂「それだと、学校から出ていないってことになりませんか?」

紬「外履きも下駄箱の中にまだあったから、おそらく……」

澪「昼間にシャドウが、白昼堂々とさらったってのか?」

紬「もしくは、犯人は……」

唯「学校関係者」

律「考えたくもないぞ……」


ゆいちゃんち

憂「……」

唯「……憂は、どう思う?」

憂「犯人のこと?」

唯「私たち、ずっとシャドウだって思ってたけど、もしかしたら学校の誰かが犯人なのかもしれない」

憂「でも、あんな異常な殺し方、普通の人には無理だよ」

唯「たしかに大人の男の人を電柱の上まで背負って、串刺しにするなんて無理だね」

憂「でしょ?そんなことができるのは、シャドウぐらいなものだと思う」

唯「……そうかな」

憂「そうだよ」

唯「その、もしかしたらだけど」

憂「……」

唯「犯人が私たちと同じペルソナ使いなら、犯行も可能だよね……」

憂「やめてよお姉ちゃん!それはクラスメイトや先生も疑うってことだよ!?」

憂「私、今日は見回り行かないから……」

唯「うん、わかった」

憂「部屋で勉強してくる」 タタタ

唯「……」

唯(私だって、学校のみんなを疑いたくはないよ)

唯(でも、もし誰かが犯人なら……私は……)

 プルルルルルル

唯「ん、りっちゃんから電話。もしもし?」

律『唯!見たか!?』

唯「ど、どうしたの、りっちゃん。見たってなんのこと?」

律『まだ見てないのかよ!とにかく外を見てみろ!!』

唯「うん」

唯「…………うそ」

唯「まだ15時なのに、どうして霧が!」

律『澪、ムギ、梓にはもう連絡したんだ。唯と憂ちゃんは16時に駅前のファミレスに集まれるか?』

唯「うん、大丈夫だよ」

律『おし、じゃあ16時にな。来るときはくれぐれも気をつけてくれ』

唯「りょーかい」 ピッ

唯(……一体、どうなってるの)

唯「とりあえず、出掛ける準備しなくちゃ」


ふぁみれす

律「全員集まったか」

澪「唯、憂ちゃんはどうしたんだ?」

唯「憂は具合が悪くて、休んでるの」

律「憂ちゃんのレーダー頼りにしてたんだけど、参ったな」

梓「具合が悪いのでは無理はさせれません。私たちだけでなんとかしましょう」

紬「そうね」

唯「出掛ける前に憂に聞いたんだけど、ほんの僅かだけど、シャドウの気配を感じたって」

梓「やっぱり、この霧の中にもシャドウがいるんですね」

澪「ムギの言ったとおり、霧が出る時間がどんどん早まってるな」

紬「このままいくと、一日中霧で覆われるってことも十分に考えられるわ」

唯「憂が言うには、学校のほうからシャドウの気配を感じたみたい」

澪「学校か……。と、とりあえず行ってみるか?」

律「あったりまえだろ。シャドウが学校に巣食ってんならやっつけないとな」

梓「……やっぱり、学校の事件も犯人はシャドウなんじゃないでしょうか」

紬「もしかしたら、そうかもしれないわ。だから、それを確認しに行きましょう」

唯「うん、はっきりさせにいこう!あれこれ悩む前に、できることをしよーよ!!」

律「唯の言う通りだ。みんな、学校へ行くぞ!」


7