ほうかご

律「SHRが長引いちまったな。憂ちゃん待ってるよな」

唯「メールで、図書室で待ってるって」

澪「なら急がないとな。行こう」

?「あ、あの……」

律「ん?私たち?」

?「はい。けいおん部の方たち、ですよね?」

律「そうだけど、あなたは?」

?「あ、私は、梓さんと学年が一緒で、二年生なんです」

澪「そうなのか。私たちにどんな用なんだ?」

律「とりあえず、この入部届けにサインを」

澪「あほっ!」 ポカッ

律「いたっ!」

?「実は私……」

唯「何かな、何かな?」

澪「唯、急かすなよ。余計に言いにくいだろ。ごめんな」

?「い、いえ。実はその、見てしまったんです。でも、怖くて言い出せなくて……」

?「もしかしたら、見間違えとかの可能性も……っ!!」

律「どうしたんだ?」

?「し、失礼します!!」

律「なんだ、行っちまったぞ。何が言いたかったんだろうな」

澪「分からない。話があればまた向こうから来るだろう」

律「そだな。私たちは急いで部室に行くとしますか」

唯「……」

澪「唯?顔が青いぞ。早く憂ちゃんを迎えに行こう」

律「おいおい、どうしたんだよ、唯。私の後ろに何か……」

唯「……ぁ」

律「いる……のか……」

澪(たしかな息遣いを感じるっ!)

律(ま、まさかこんな所にまで影がっ!?)

律「……」

澪「……」





さわ子「あーなーたーたーちー」

律「ぎゃー!!」

さわ子「何よ、大声あげて」

律「さわちゃんかよ~。びっくりさせないでくれよな」

さわ子「そっちが勝手にびっくりしたんでしょう」

律「だって唯が思わせぶりな顔するからさ」

唯「あまりにも恐ろしい形相だったので」

さわ子「……誰のことかしら」

唯「ひひひ、1人ごとであります!」

さわ子「それより、部室がどうのって聞こえたんだけど?」

律「あ、あー!それのことな!しばらく部室で練習できないだろ?」

さわ子「そうね、当分部活動は禁止だから」

律「必要な機材とか持って帰って家で練習しようって相談してたんだ。な、唯」

唯「そーなんだよ!りっちゃん部長の言う通り!!」

さわ子「ほんとかしら」

律「ほんとだって。だから今から部室に行くとこなんだ」

唯「学園祭に向けて家でバンバン練習するんだよー」

さわ子「ほんとにそれだけ?ケーキはないわよね?」

律「もちろんそれだけだって!だから1時間もかからないと思う」

唯「ぱっぱのぱで、すぐ終わります!」

さわ子「そこまで言うならいいけど。早めに終わらせるのよ」

律「あい!」

さわ子「後で見に行きますからね」

唯「いぇっさー!」

律「……なんとか誤魔化せたな」

唯「寿命が縮まる思いでした」

律「はは、言えてる」

唯「あっ、もうこんな時間!憂、待ちくたびれて寝ちゃってるよ!」

律「唯じゃないんだから、それはないだろ」

唯「シンパシーで分かるんだよ!急ごう!!」

律「おう。澪、ボーッとしてないで行くぞ」

澪「あ、ああ」


ぶしつ

唯「憂ー?」

憂「あ、お姉ちゃん……」

律「なんだ、こっちに来てたのか。必死に図書室探しちまったぜ」

澪「遅くなってごめんな。SHRが長引いて……っ!」

紬「……」

唯「……ムギちゃん」

律「ムギも、部室に何か用なのか?」

紬「そうね、どちらかというと、りっちゃんたちに用がるの」

律「私たちに?」

憂「……」

紬「りっちゃんたち、ペルソナ使いよね?」

澪「なっ!」

唯「どうして、それを知ってるの!?」

律「……なんで、分かった」

紬「朝教室でコソコソ話していたでしょう?気になったから聞き耳立ててたらね、聞こえてきたの」

澪「……」

紬「ペルソナって」

律「だとしたらどうなんだよ」 ゴクリ

紬「私もね、使えるんだ、ペルソナ」

律「嘘だろ……?」

紬「……アヌビス」 カッ!

唯「す、すごいの出たよ……」

澪「私たちのペルソナとはなんだか、オーラが違うな」

紬「唯ちゃんのイザナギがLv1としたら、私のアヌビスはLv59ってところかしら」

唯「分かりやすい!」

律「感心してる場合じゃないだろ」

澪「そ、そうだな」

律「ムギ、私はな、おまえのことは親友だと思ってる」

紬「嬉しいわ」

律「だからはっきりさせたいんだ。ムギが私たちの……」

紬「何?」

律「今まで通りの親友なのか、ほんとは敵なのかってことさ」

紬「……」

紬「りっちゃんたちが霧の夜に出会ったお化け、私はシャドウって呼んでるわ」

律「へぇ、かっこいい名前じゃないか」

紬「おそらくだけど、殺人事件の犯人はシャドウよ」

澪「そ、それは私も考えた」

紬「あんなことをするシャドウだから、きっとすごく強暴で凶悪な個体」

唯「想像したくもないね」

紬「でもしないとだめ。憂ちゃんから聞いたんだけど、今日ここで集まって話をする予定だったんでしょう?」

律「ああ」

紬「大方、この事件の犯人であるシャドウを退治しようって話じゃないかしら」

律「私はそのつもりだった」

唯「わ、私も……」

紬「りっちゃんたちは、その強暴で凶悪なのと戦うことになるのよ」

憂「……」

憂「私は、反対です……」

澪「憂ちゃん?」

憂「だって、とっても危険なんですよ!?」

紬「そう、とても危険なことなの。大怪我をしたり、最悪、誰かが命を……」

澪「……っ」

憂「遊び半分じゃ許されないんです!実際、人だって死んでる!」

律「……」

憂「たしかに私たちには力がありますけど、不死身というわけではないんですよ?」

唯「そう、だね……」

紬「この力を忘れて、普通の生活に戻ることもできわ。今なら」

憂「犯人はきっと警察がなんとかしてくれるよ。だから、危ないことはよそう、お姉ちゃん」

唯「……」

律「あーあ!」

唯「ど、どしたのりっちゃん」

律「なんつーかさ、憂ちゃんの言う通りだと思ってな」

紬「……」

律「そーだろ?たしかに犯人捕まえようって思ったけど」

律「それは特別な力に目覚めたことの思い上がりだったのかもしれない」

紬「遊び半分で手を出そうなんて、甘い考えだと思うわ」

澪「たしかにそうだな」

律「だからさ、それ聞いたら……はぁ……」

唯「わ、私は遊び半分じゃないよ!本気だよ!!」

憂「お姉ちゃんはまだそんなことを言って。律さんもお姉ちゃんに言ってあげてください」

律「唯、これは遊びじゃないんだぞ。マジの中の大マジだ。下手したら誰か死ぬ」

唯「死なないよ!みんなで力を合わせれば、きっと大丈夫だよ!!」

律「本気かよ、大怪我するかもしれないぜ?」

唯「私はこの力で憂も、友達も、この町も守りたい」

唯「でも、それは1人でできないことだと思う」

澪「……」

唯「だからね、みんなの力を貸してほしいの!みんなが大好きな友達を、家族を守るために!」

紬「それが、唯ちゃんの考えなのね」

唯「うん!私は譲らないよ!!」

憂「お、お姉ちゃん……」

律「唯……おまえ……」

唯「だからりっちゃんになんと言われようと、考えは変えない」

唯「むしろこっちの仲間に引き入れちゃうんだからね!!」

律「……」

唯「……」

律「……唯」

唯「なに?」

律「そいつは最高に燃えるな!!」

憂「律さん、それはどういう意味ですか……」

律「本当に思ってたんだよ、遊び半分で犯人捕まえてやろーって」

澪「律……」

律「けど、それじゃいけないんだ。そんな中途半端な気持ちじゃ、守れない」

律「怖くて、痛いこともあるかもしれない。それでも、私はみんなを守りたいって改めて思った」

唯「りっちゃん!!」

律「だからやってろうぜ、唯!!この町に平和を取り戻すんだ!!」

唯「おぅ!!」

澪「はぁ、おまえってやつは……」

律「へへ、今になってわかったのかよ。私がこういうやつだって」

澪「前から知ってたよ。律と唯だけじゃ頼りないからな、私も協力するぞ」

唯「さっすが澪ちゃん!」

憂「……」

唯「憂お願い、力を貸して」

律「安心しろい、いざとなったら唯も憂ちゃんもこのあたしがまとめて面倒みるぜい!」

澪「微力ながら、私も力を貸そう」

憂「みなさん」

唯「えへへ、けいおん部パワーでなんとかなりそうな気がしてきたでしょ?」

憂「……お姉ちゃんは、こうと決めたら絶対に貫き通すからね」

唯「そこに憂が加われば100人力だよ!」

憂「分かりました、私も協力します」

律「ありがとう、憂ちゃん」

憂「ただし、本当に危なくなったらお姉ちゃん連れて逃げちゃいますから」

澪「はは、それは困るな」

律「……さて、憂ちゃんもこっちに来たことだし、残るは1人だな」

紬「……」

澪「ムギ、おまえが来れば千人力だ」

律「事件解決のために力を貸してくれ!!」

唯「お願い、ムギちゃん!」

憂「私からもお願いします」

紬「ふふふ……」

澪「……?」

紬「実はね、私の答えはもう決まってるの」

紬「もちろんイエスに決まってるじゃなーい♪」

律「ムギ!」

唯「やっぱりムギちゃんは私たちの親友だよ~!」 ギュッ

紬「もう、唯ちゃんたら♪」

澪「でも、どうしてあんな回りくどい言い方したんだ?」

紬「ごめんなさい。でも、とても危険なことでしょう?みんなの覚悟が知りたかったの」

律「ムギは意地の悪いことをするな。そんなの最初からあるに決まってるぜ!」

憂「最初は遊び半分だって誰かさんが言ってましたよ」

律「ぐっ!そ、その部分はカットしておいてくれ」

澪「できるか!」 ポカッ

律「あひぃ!」

 「「あはははは」」



ゆいちゃんち

律「……」

澪「……」

唯「……」

憂「……」

紬「ふぅ、お茶がおいしいわー。あら、なんだかみんな暗くないかしら?」

律「あの後さわちゃんにこってり絞られたからな、早く帰れって言ったでしょーって」

唯「本気で怒るとさわちゃん怖いね」

澪「……」 ガクガク

憂(澪さんは消えないトラウマになってそう)

紬「ところで今後の方針だけど、どうするの?」

澪「そうだな、ちゃんと決めたほうがいいと思う」

律「相手は霧の夜にしか現れないから、地道に足で捜査ってことになると思う」

唯「うぅ、大変そうだね」

律「もちろん、ただ闇雲に霧の中を探し回るんじゃないぜ?」

唯「そうなの?」

律「そんなんじゃいつまでたっても見つけられないだろ。そこで、憂ちゃんの出番だ」

憂「私のペルソナのレーダー、ですか」

澪「そうか、レーダーを使えば効率よく敵を見つけられるな!」

律「敵わないやつが近づいてくるのが事前に分かったら、逃げればいい」

唯「りっちゃんにしてはナイスアイディア!」

律「一言余計だ」

紬「ふふ♪」

律「それじゃあ、当面は夜のパトロールに決定だな」

唯「霧が出た夜のパトロールだね」

澪「私はそれでかまわないぞ」

憂「私もいいと思います」

紬「同じく~」

律「うし、お昼の部はここで解散~。最近霧が出る時間帯が早まってるようだから、各自注意すること」

唯「あいまん!」

憂「……皆さん、せっかくなのでお昼うちで食べていきませんか?」

澪「いいのか、憂ちゃん」

憂「はい、みなさんがよければですけど」

律「はは、そんなオールオッケーだよ。ムギはこの後用事あるか?」

紬「とくにないから、私も大丈夫よ」

澪「ならいただいていこう」

唯「わー、みんなでご飯だー!!」 バタバタ

律「こら!はやしゃぐな、唯」


よくあさ

唯「ふぁー!」

憂「お姉ちゃんすごい欠伸。ふぁ……」

唯「憂だって」

憂「結局昨日は霧が出なかったね」

唯「頑張って深夜1時まで起きてたのに」

憂「でも霧が出なかったってことは、シャドウも出なかったってことだから」

唯「いいことだね!……でも」

憂「眠いね」

唯「うん……」

 プルルルルルルル

憂「あ、うちに電話だ。誰だろう」

憂「はい、平沢ですが……」

さわ子『さわ子だけど、その声は憂ちゃんかしら?』

憂「はい、先生お早うございます」

さわ子『朝早くにごめんなさいね。事件の件で全校集会があるからそのことで電話したの』

憂「そうなんですか。わざわざありがとうございます」

さわ子『ううん、別にいいのよ。』

憂(なんで今更全校集会なんだろ。あるとしたら事件が起こった次の日にするんじゃないのかな)

さわ子『それにしてもひどいわよね』

憂「そうですね、早く犯人が捕まって欲しいです」

さわ子『憂ちゃんの同級生なんでしょう?杭みたいなもので全身メッタ刺しで穴だらけだって……』

憂「……なんの、ことですか」

さわ子『何って今朝の事件よ。ニュース見てないの?』

憂「……っ!!」

憂「お、お姉ちゃんテレビ点けて!」

唯「うん!」

 『被害者は○○○さん(17歳)。全身を杭のようなものでメッタ刺しに刺されており……』

憂(……嘘、昨日は霧なんてでなかったのに!)

唯「……この子」

憂「お姉ちゃん、知ってるの?」

唯「昨日、りっちゃんと、澪ちゃんと一緒にいるときに会った子だよ……」

憂「……」



さわ子『もしもし?憂ちゃんどうしたの?もしもし?』


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