……

「熱い……熱いよぉ唯先輩……火が……」

「マザーが怒ってる。コワイヨォ、怖いよぉ」

「また怖い夢がおそってくる……」

「いやだ……私は、私は……」

「うえーん、ウエーン」


……


【マザーズベッドタウン―Aランク メディカルセンター:待合室】


唯「あずにゃん……大丈夫かなぁ」

唯「吐き気と頭痛……なんかの病気だったり」

唯「お薬で治るといいけど」

唯「もっと早く連れてきたらよかった」

唯「私のせいだ……最低……あずにゃんの体調、わかってるつもりになってた」

唯「……」

唯「あれ? なんか……ドタバタ、あわただしいな」

唯「なにかあったのかな……」

唯「あずにゃん……帰ったらおいしいものたべてゆっくりしよ」

唯「もうセックスはしばらくしないよ……だから、早く元気になってね」

唯「あずにゃん……私、あずにゃんのことが……あれ?」

唯「おかしーな……好きって言葉は……人に使っていい言葉じゃないのに……」

唯「そっか、最近、私も変なんだ……あはは」

唯「あずにゃんと出会ってからー……ずっと変だ……」

唯「頭のなか……ぐるぐるぐるぐる」

唯「ぐるぐるぐるぐる……」

ウィーン

和「結果がでたわ」

唯「あ、和ちゃん! あずにゃんは! あずにゃんは大丈夫!?」

和「簡潔に話すわね。シリアルナンバー『aZ-281111』の処刑が決まったわ」

唯「…………は?」

和「そして同罪であなた、『Y-271127』の更生プログラムの注入も決定したわ」

唯「ちょ……ちょっとまって……和ちゃん?」

和「『Y-271127』、期限までは3日あるわ。3日後、指定の時間に端末に表示された場所に向かって頂戴」

唯「まって! まってよ!!!」

和「残念よ。こんな形で同期を失うなんて。『Y-271127』」

唯「わからないよ……わからないよ……こんなのって!!」

和「ごめんなさい。でも大丈夫。すぐに忘れるわ」

唯「ああ、ああああっ!!」

和「次会うときはあなたはどんな名前なのかしらね『Y-271127』」

唯「……ッ! あずにゃん!! あずにゃんに会わせて!! 処刑なんて!!! ふざけないでよ!!!」

和「わがままは言わないの。これはもう決定よ」

唯「……あ、あ、あ……」

和「それとも楽園から追放がお望み?」

唯「追、放……イヤ、それ、だけは……」


……

梓「はっ!」

梓「……また、病室だ」

梓「唯先輩は……」

梓「ここ、メディカルセンター?」

さわ子「そうよ」

梓「あ! Dr.山中!」

さわ子「みんなはさわちゃん先生とかさわ子先生って呼ぶわ」

梓「さ、さわ子先生……どうしてここに」

さわ子「ねぇ、梓ちゃん」

梓「あれ、私の名前……あ、そういえば前に端末みましたよね」

さわ子「……うん。ちょっと話したいことがあるの。それでふらりとね」

梓「え?」

さわ子「マザーについて」

梓「マザー……あぁ、そうですか……やっぱり私」

さわ子「その前に、ごめんなさい」

梓「え? どうして謝るんですか」

さわ子「あなたのこと、守れなかったなぁって……中枢まで行ってなにしてんだか」

梓「はい?」

さわ子「マザーと約束したのよ。マザーシステムじゃなくて、あなたのマザーと」

梓「私の……マザー?」

さわ子「うん、ちょっと歳は離れてるけど、仲の良い友達でね」

梓「はぁ」

さわ子「かっこ良かったし可愛かったし、でも、バカだった」

梓「……?」

さわ子「あまり残された時間もないし、簡潔にいうわ」

梓「え?」

さわ子「あなたのマザー、マザーに処刑されちゃったの。重い重い、この世界には重すぎる罪で」


梓「……え?」


さわ子「彼女にはそれしかなかったのよ。それしか……あなたを守るには」

梓「よくわかりません」

さわ子「わかるわよ。あなたは賢いもの」

梓「あの、さわ子先生。私って……一体」

さわ子「悲しいわね。私があなたの立場なら、とっくに自壊プログラムで自殺してるわ」

梓「……わけわかりませんよ」

梓「教えてください! もうこんなぐるぐるした思いをするのは嫌なんです!」

梓「それと、唯先輩!唯先輩に会いたい!」

さわ子「わかったわ。……もう全部、解放してあげる。きっとそれがホントの私の役目。ちょっと後ろむいてくれる?」

梓「はい……」

さわ子「……けっこう痛いかも、我慢してね」

梓「え? あっ、ツツ、うっ……あっ――――――ああああああああああああ!!


……

 「どうしてこんなことになったの! ひどい!! なにもかもめちゃくちゃじゃない! パーよ!」

 「この子は神になるの! マザーを越える! 邪魔しないでよ!!」

 『だから生体実験なんてやめなさいって言ったじゃない! マザーにバレないとでも!?』

 「でもこの子は! シリンダー生まれじゃなくて世界で唯一母体から生まれた希少な……私の!!!」

 『あなたたちのやってることはとってもおこがましいのよ、これ以上は追放処分よ!』

 「ウエーン、うえーん」

 「……あぁ、梓ごめんね、怖かったでしょごめんね。よしよしもうしないから。私が悪かった」

 「ウエーン、うえーん」

 「ごめんね梓。ほんとごめん。でも大丈夫。すぐに忘れるわ。今、条件付きでマザーに許しももらったし」

 「これであなたもみんなの仲間になれるのよ。良かったね。神様なんかにしようとしてごめんね」

 『条件……? それが、この子にとって幸せだっていうの? バカげてる……あんたバカよ』

 「仕方ないわ。これ以上悲しい思いはしてほしくないの、この子も生きているんだから」

 『それで代わりに処刑されるなんて! あなたは中枢の人間なんだからまだなんとか……!』

 「ごめんね私の可愛い梓、そしてさわ子、あとはよろしくね……この子きっといい子になるから」


梓「あっ……あっ……私」

さわ子「三日後、私は中枢のマザーシステムを少しだけいじる」

梓「え?」

さわ子「うふふ、大停電よ。全てのロックがはずれて、ドームも少しだけ開く」

梓「あの……そんなことしたら」

さわ子「あなたはここにいてはだめ、禁忌の存在」

梓「さわ子先生……」

さわ子「行きなさい、生きるのよ。あなたは大丈夫」

梓「でも……私、唯先輩がいないと……グス」

さわ子「それは無理、唯ちゃん、いえ、私たちはマザーがないと生けていけないもの」

梓「……」

さわ子「あなたは唯一、楽園から追放されても生きていける人間」

梓「無理です……無理ですよ」

さわ子「マザーチップももうないわ、頭も軽いでしょ? ほら、立って」  

梓「……唯先輩は……唯先輩」

さわ子「残念ながら、あの子はきっと今拘束されてるわ。会うことは叶わない」

梓「そんな……」

さわ子「お腹の子、大事にね」

梓「子供……うっく、無理です……無理ですよぉ」

さわ子「苦しいかもしれないけど。あなたは生きている、生きている以上は生を紡がないといけないの」

さわ子「私たちは機械も同然。マザーズチルドレン」

梓「うう、唯先輩…・…唯先輩……」

さわ子「さぁ、もうこのお腹のバンソーコーもいらないでしょ」

ペリペリ

梓「あっ……傷が」

さわ子「あの時から変わらない……ふふ、文献によるとね、へそっていうんだって」

梓「へそ……?」

さわ子「これはあなたが本当の人間である証、いままで隠してばっかりでずっと辛かったでしょ? ごめんね」

さわ子「梓ちゃん……こんな世界で……ごめんね……」


三日後


梓「あは、ほんとうに真っ暗だ。時刻は15時、5分前」

梓「楽園でただ一人……」

梓「私、ただ一人……」

梓「よしよし」ナデナデ

梓「一人じゃなかったね。お前がいるもんね」ナデナデ

梓「それじゃあ唯先輩……元気でね」

梓「楽しかったです……いままで、ずっと」

梓「ドームの最果てなんて初めてきたな」

梓「てかいままで、これがドームだったなんてしらなかった」

梓「マザーは偉大、いや、マザーをつくりあげた人類かな?」

梓「あはは、ドームの外にはなにがまってるんだろう」

梓「地獄かな? 恐怖かな?」

梓「それともほんとうの楽園かな……? なんてねー」

梓「うっぅ……唯先輩……唯先輩……」

梓「私、いきてみせます……唯先輩の子供、ちゃんと、育てて……」

梓「もうこんな悲しい思いしなくても……すむように……うっく、グス」


ギュ


梓「え?」


ギュウウウウウ


梓「え!?」


唯「あずにゃん……びっくりしちゃった」

梓「えっ!?」

唯「あずにゃん……大丈夫、私がいるよ」

梓「唯先ぱ……どうして!! 唯先輩!!!!」

唯「和ちゃんがここへ、この時間に来いっていうから……きたらさ、あは、あずにゃん……グスいたし、あは」

唯「あははっ! あずにゃん……私たち、処刑よりもっと厳しい処分だよ!」

梓「……はい!! 唯先輩と一生ふたりきりなんてめちゃくちゃ厳しいです!!」

唯「追放されたよ! 楽園から追放されたよ!!」

梓「……はい……!! 二人ともバカだから追放されました……」

唯「あずにゃん……」

梓「唯先輩……あ、でも電子供給が……」

唯「バッテリーは山ほどあるし、たぶん電気は大丈夫、あ!」

梓「え?」

唯「PENIS忘れちゃった」

梓「い、いりませんよ……そんなもの」

唯「え~、あずにゃんPENIS大好きなのにー」

梓「こんなときまでセックスのこと考えさせないでください」

唯「ぶー……」

梓「ふふ、相変わらずで安心しました。私の唯先輩のままです」

唯「そう? よし、じゃあ行こうか! 新天地!」

梓「はい……いきましょう」

唯「あずにゃん、この扉の先にどんな世界が待ち受けていても」

梓「はい。私たちは、ずっと、ずっと永遠に一緒です……」

唯「あ、そうだ……ねぇ、あずにゃん」

梓「はい?」

唯「今のこの気持ちを相手に伝えるにはどんな言葉を使えばいいの? 好き?とはなんか違うんだよね」

梓「えっと、うーん……そうですねぇ」



「『愛してる』がいいんじゃないでしょうか」


「おお! 愛してる! そんな使い方が!」

「いっぱい愛してるよ~あずにゃん!」


「ふふ……えぇ、私も愛してますよ。唯先輩」



セックスファイター梓~旅立ち編~ 【完】



唯「セックスファイトしようよあずにゃん」

お し ま い