「どうしてこんなことになったの!」

 「だから―――言ったじゃない」

 「でもこの子は――――じゃなくて―――希少な」

 「あなた―――おこがましいの、これ以上は」

 「ウエーン、うえーん」

 「あぁごめんね、怖かったでしょごめんね」

 「ウエーン、うえーん」


 『7時00分をおしらせします。みなさん今日も一日がんばりましょう』

 『楽園のみなさまに良い目覚めと希望を』


梓「ん……ふぁ……朝か」


 『7時00分をおしらせします。みなさん今日も一日がんばりましょう』

 『楽園のみなさまに良い目覚めと希望を』


梓「今日は……セックス協会にいくんだっけ……ふぁ~あ」


梓「朝は……ドリンク剤でいっか……」

梓「ぐびぐび♪」

梓「ぷはっ」

梓「はー、昨日のもやもやは晴れないな……唯先輩どうしてあんなこと言ったんだろう」

梓「あの人は謎だ。謎」

梓「ん、あ、そっか……今日は……会えないんだ」

梓「なんかさみしーかも」

梓「協会いって時間があまったら一応セックスサロンに顔だそうかな」

梓「でも毎回ただで使わせてもらうのって憂に悪いような……」

梓「唯先輩怒られたりするのかなぁ」

梓「あ、っと。そろそろスクールに行かなきゃ」

梓「ちゃんと真面目に勉強してポイントためてそれでサロン代支払おう。そう決めた!」

梓「端末に今日の予定を入力。午後にテスト……よし!」

梓「今日も一日平和にすごせますように」

梓「マザー…………いいや、考えても仕方ない」  


……


梓「んーっと、確かこの辺だったような」

梓「マザーの御下は建物がごちゃごちゃしててわからないよ」

梓「私みたいなちんちくりんな学生は滅多にこないしね」

梓「早く成人してマザーに挨拶したいなぁ」

梓「あ! このビルかな」

梓「ニッポンセックス……うん、ここだ!」

梓「入っていいのかな……」


 『御用の方はシリアルナンバーを入力後、要件をタッチパネルから選んでください』


梓「「aZ-281111。要件は……なんだろ、ここで試合とかあるんだ、へー」

梓「問い合わせ? いや違うな。あ、ライセンス更新でいいのかな」

梓「いいや、えい」ピッ


 『しばらくお待ちください』


ウィーン

 『ようこそいらっしゃいませ。左奥カウンターにお進みください』


梓「お、開いた開いた」

梓「おじゃましまーす……」


和「こんにちは、ライセンスの更新?」

梓「こんにちは。あ、えっと、今日は登録で来ました」

和「登録? 最寄りのサロンかカフェでしなかったの?」

梓「あ、いえ、しようとしたらできなかったんです」

和「できなかった……もしかして平沢セックスサロンから?」

梓「は、はい。一応紹介状あります」

和「わかった。じゃあ確認してみるわね。端末貸して頂戴」

梓「お願いします」

和「……」カタカタ

梓「…………」

和「…………おかしいわね」

梓「あの……」

和「あなた過去に軽犯罪歴や記憶更新歴あったりする?」

梓「いえ! ないですないです!」

和「そうよね。あったら普通記載されるものね」

梓「……うぅ」

和「それにそんな悪い子にも見えないし」

梓「……あの、それで」

和「うーん。どうしても機械が受け付けてくれない。エラーばっかりはくのよ」

梓「それは一体……」

和「ちょっと待って。博士を呼んでくるわ。ちょうどここに来てるの」

梓「はい」

和「椅子にかけて待ってて」

梓「わかりました」


梓「…………登録できなかったらどうしよう」

梓「登録できなかったらアマチュアセックスファイターにすらなれないんだよね」

梓「公式記録がつかないから当然ポイントも稼げない……」

梓「そんなのやだよ」

梓「プロになって唯先輩と同じ土俵でセックスしたい」

梓「唯先輩に勝ちたい。もっと気持ちよくしてあげたい」

梓「あれ……なんで唯先輩のことばっか。関係ないのに」

梓「そりゃあ私にセックス教えてくれた恩人ではあるけど……」

梓「あれれ……ッ、うっ、あ、最近の偏頭痛はところかまわず……イタタ」

梓「唯先輩のことを考えると頭と心臓の奥のほうが痛くなる」


和「おまたせ」

さわ子「んもー、ちょっとめんどくさいことおしつけないでよーせっかくこれからお茶しようと思ってたのにぃー」

梓「あっ!」

さわ子「で、この子の登録がダメなんだっけ? この子であってる? ん? ……あっ」

梓「Dr.山中ですよね!? 雑誌でみました! 唯先輩のパーティの!!」

さわ子「……あなたは」

和「この端末なんですが」

さわ子「……ふーん」

梓「えへへ、セックス学の権威にこんなとこで会えるなんて光栄です!」

和「まだアマチュアですらないのに随分と物知りね」

さわ子「……そう、大きくなったのね」ボソッ

梓「はい? すいません聞き取れませんでした」

さわ子「いやいやなんでもないのよー! さぁて、じゃあちょっと見てみましょっか」

梓「あ、お願いします!」ペコリ

和「先生、私一応中枢に連絡とってみましょうか?」

さわ子「いやー、いいわよ別に。もう問題はわかったから」

和「え? は、はやいですね。さすがです」

さわ子「この子の出生シリンダー単位でエラーが起きてたみたい。もう大丈夫。すぐに修正されたわ」

和「あ、確かにエラーはかなくなりましたね。にしてもラッキーでしたね、この子と同じシリンダーの人の更新がたまたまかぶらなくて」

さわ子「……うん、そうね。はい、私の役目終わり~! よし、お茶してこよっと」

梓「本当にありがとうございました!」

さわ子「……ま、がんばって頂戴」

梓「はい! いつか私もプロになって、パーティ開いて先生をお招きします!」

さわ子「うふふ、なにそれ」

和「唯の30連勝記念パーティの記事を読んだそうです」

さわ子「そうなんだ。唯ちゃんに憧れる子って今おおいのよね」

和「それでは先生。お疲れ様でした」

さわ子「はーい。まったねー」



梓「あ、それで登録についてなんですけど」

和「あぁ、ごめんなさい。いまからするわね」

 「あ~ずにゃんっ!」ギュウウ

梓「うにゃっ!?」

 「あずにゃ~ん、こんなところで会えるなんて~」スリスリ

梓「うわっ何何!? あ! 唯先輩!!」

唯「んぅ~、何時間ぶりの抱き心地だろ~」

梓「やめてくださいこんなところで」

和「あら、二人とも知り合いだったの? ただのファンの子かと思ってたわ」

唯「もう何回かセックスした仲だよー。ねー?」

梓「はい、そうなんです」

和「へぇ、アマでもない子が唯とセックスできるなんてラッキーね」

唯「あずにゃんのおま◯こきもちいんだよー? あ、和ちゃんまだお仕事中?」

和「そうよ、いまからこの子のライセンスを登録するの」

梓「あれ、唯先輩とお知り合いなんですか?」

和「まぁね、スクール時代の同期よ。腐れ縁とも言うかしら」

唯「和ちゃんは秀才だったからね、推薦で働き場所が決まったんだよー」

和「それでもほんとは中枢にいきたかったのよ」

唯「えー? ちゅーすーは怖いとこだから行っちゃだめだよー」

梓「私も中枢で働いてみたいと思ってました。けど今はプロのセックスファイターになりたいです」

唯「セックスファイター……あっ! それで登録は?」

和「いましてるトコよ」カタカタ

梓「……わくわく」

唯「あずにゃんもこれでちゃんとしたセックスファイターかー」

梓「はい、やっとポイントがつきます!」

唯「いろんな人とセックスするんだよねー……」

梓「はい。いろんな人と……」

和「それじゃあ最後にシリアルナンバーを音声入力するわ。それが終わったらライセンス発行よ」

梓「いろんな……あっ、ツ、ああああっ!」

唯「あずにゃん!?」

和「え?」

梓「ああああっ、イタ、あっ、ツツ、頭が、割れちゃうっ」

唯「あずにゃん! 大丈夫!? また頭いたいの?」

梓「だ、だいじょう……うぐ、ああああっ!!!」

唯「和ちゃん! メディカルセンターに!」

和「ええ、わかったわ。すぐに!」


……


 「どうしてこんなことになったの! ひどい!!」

 『だから―――なんてやめなさいって言ったじゃない』

 「でもこの子は! ――――じゃなくて世界で―――希少な」

 『あなたたちのやってることはとってもおこがましいのよ、これ以上は!』

 「ウエーン、うえーん」

 「あぁごめんね、怖かったでしょごめんね。よしよしもうしないから」

 「ウエーン、うえーん」

 「ごめんね。でも大丈夫。すぐに忘れるわ。許しももらった」

 「あなたもみんなの仲間になれるのよ。良かったね」

 『それが、この子にとって幸せだっていうの? バカげてる』

 「これ以上悲しい思いはしてほしくないの」

 『それで代わりに――されるなんて』

 「ごめんね―――あとはよろしくね」


~~

梓「あっ……あ……はっ!」

唯「おきた? あずにゃん」

梓「ここは……」

唯「協会で倒れちゃって、そのままメディカルセンターまで連れてきたよ」

梓「病室?」

唯「うん、とってもうなされてた。大丈夫?」

梓「はい……」

唯「……」ナデナデ

梓「私、どうしたんでしょうか。最近、すごい体が変」

唯「あずにゃん……」

梓「あと、それとは別に、怖い夢がどんどん近づいてくるんです」

唯「怖い夢?」

梓「はい……起きたらいつも忘れてしまってるんですが、すごく怖かったような」

唯「……マザーがいい夢をみせてくれないの? 夢情報はインプットされてるんでしょ?」

梓「わかりません……わからないです」

唯「あずにゃん……」

梓「こんなこと話しても仕方ないかもしれませんが、私、昔っからちょっと変なんです」

唯「あずにゃんは変じゃないよ……変じゃない」

梓「変なんです。アナウンスにはいちいちイライラするし、運動にしても勉強にしても冴えないし」

唯「……?」

梓「外に出て、楽園の天井を見上げるだけで、気分が悪くなるんです」

唯「どうして?」

梓「わかりませんよ。みんなそういうもんだと思ってたら違うみたいですし」

唯「あずにゃん……私心配だよ。あの……さっきあずにゃんのこと変じゃないっていったけどさ」

梓「はい」

唯「少し変わってるなって思ったことはある」

梓「そうですか……」

唯「私いままで指導セックスで初めての子と何人かしてきたけど」

唯「あずにゃんだけみんなとは違う反応なんだよ。なんか、くすぐったいっていうか、うまく言えないけど」

梓「あ、そういえばライセンスの登録……できたんですかね」

唯「音声入力してないからできてないよ。端末は私がもってる。はい」

梓「そうですか、ありがとうございます……」

唯「もう一度ゆっくり考えようよ。あんまり急がなくてもプロの世界はどこかへ行ったりしないよ」

梓「……はい、ちょっと。考え直します」

唯「……ねぇ、あずにゃん。セックスは好き?」

梓「好きです……でもそれは、唯先輩とのセックスに限るかもしれません」

唯「私もね、あずにゃんとのセックスが好き……だから、今日」

梓「え?」

唯「はじめて、すっぽかしちゃった。セックスファイト」

梓「ええ!?」

唯「なんでだろうね。連勝記録もかかってたし、今期の成績も大事なはずなのにさ」

梓「なんてことを……」

唯「公式セックスルームに入ろうとしたら、あずにゃんの顔が浮かんできて」

唯「なんか、知らないうちに逃げだしてた。不戦敗だね。あはは」

梓「あははじゃないですよ。怒られませんか?」

唯「怒られると思う。怖いなぁ」

梓「ならどうして……」

唯「私もちょっと考えたいことがあるからさ。このまま休みとろっかな」

梓「休み? 試合をすっぽかし続けるってことですか?」

唯「うん、一応協会には連絡いれといてさ」

梓「……でもそれだと戦績が」

唯「いいよ。もともとそんなにこだわってなかったから」

唯「勝ち負けに執着したら、いいセックスはできないし」

梓「ありのままの唯先輩が強いってことですね」

唯「いまの調子で公式セックスファイトしても、惨めな結果になるよ。対戦相手にも失礼かも」

梓「……唯先輩」

唯「あずにゃん、突然だけどウチへこない?」

梓「唯先輩のおウチへ?」

唯「うん、あずにゃんといっぱいセックスして、鍛え直すよ」

梓「でも、私スクールとか……」

唯「車で送り迎えしてあげる」

梓「そうですか、それはありがたいですね。私外歩くの嫌いなので」

唯「だからーウチに来てよあずにゃん!」

梓「わかりました……荷物まとめていきます」

唯「うん! 楽しみだね!」

梓「唯先輩とセックス漬けの毎日が送れるんですよね」

唯「うん。毎日平沢プロ☆5が指導セックスしてあげよう」

梓「う、ま、まぁ……ありがとうございます」

唯「そうと決まれば! よし! 和ちゃんに連絡いれてくる」

梓「しばらく試合さぼりまーすって? やっぱそれ怒られますよ」

唯「修行っていったでしょ! 修行!」

梓「……」

唯「和ちゃんならきっとわかってくれるよ!」

梓「……ふふ、楽しみです」


唯「一日10回はあずにゃんイカせちゃうぞー!」

梓「わ、私はじゃあその間唯先輩を5回はイカせてみせます!」

唯「やってみろーアマチュア以下めー!」

梓「実力はプロに見劣りしないって言ってくれたじゃないですかぁ!」

唯「あははっ! 怒ってる怒ってる」

梓「もおー!」

唯「あずにゃんも一緒に超強くなっちゃおうね!」

梓「当然です!! やってやるです!」



梓(頭痛……おさまらないなぁ)





セックスファイター梓~決断編~ 【完】



6