【学生居住区―Cランク寮】


梓「ふーやっと帰ってきた。暖かい布団に入りたい」

梓「えっとカードキーどこだったっかな」ゴソゴソ


 『プライベートカードをスリットしてください』


梓「わかってるって、待ってよ」


 『プライベートカードをスリットしてください』


梓「うるさい! あ、あったあった」

梓「……」スッ


pipipi

 『シリアルナンバー、音声認識モード』


梓「aZ-281111。帰宅処理」


 『おかえりなさいませaZ-281111。現在の時刻は21時17分22秒。現在の時刻は21時17分26秒』

 『全消灯まで残り4時間42分29秒。外出の際は電子端末にてガイドラインに従い申請を―――』


梓「あーはいはい、いちいち言わなくてもいいようるさいなぁ」

ガチャリ バタン pi-

 『ドアーをオートロックします。外出の際は電子端末にてガイドラインに従い申請を―――なお申請――』


梓「はぁー、疲れたー」

梓「せっかくいい気分だったのにうざったいアナウンスのせいで……あーもう!」イライラ

梓「ん、ちょっと腰がいたいな、よっこらしょっと」

梓「あー、あー……」

梓「…………えへ、初セックスしちゃったんだ……」

梓「夢のような時間だったなぁ」

梓「あ、そうだ、雑誌雑誌!」

梓「唯先輩のこと書いてあるのかな」

梓「ハウツー本も借りたし今日中に読めるトコまで読んでおこう」

梓「っとその前に晩ご飯~」


 『ポイント残高不足により購入制限がかかっています。スタンダードメニューから選んでください』

 『なお電子端末による購入は23時30分までとなっておりますので――――』


梓「あれ、今月そんなにポイント使ったけ」

ピッピッ

梓「ふーん、なら今日はもうドリンク剤でいいや。そーしんっ!」ピッ


ガタン

梓「~♪」チューゴクゴク

梓「頑張って勉強していい点とらないとなー、ろくにポイント貯まりゃしないよ」

梓「成績優秀な憂はいまごろディナーセットAかな? あはは」

梓「あ、てかあの子お金稼いでるっぽいしお金でポイント買ってるのかな」

梓「ずっるー」

梓「~♪」チューゴクゴク


梓「ふう。さてと、どれから読もうかな」

梓「『週刊セックス倶楽部』『月刊PENIS』『現代のセックス事情』」

梓「やっぱこの『ビギナーズセックス』にしよ」

梓「なになに」

梓「…………」

梓「ふーん……大概しってるね。今日教えてもらったことばっかり」

梓「へー、で、結局セックスが元来なんの意味があるのかはわかってないんだ」

梓「学者たちももっと頑張ってよ!」

梓「つまりセックスもスポーツやボードゲームみたいな単なる娯楽の一つなんだよね」

梓「なんで廃れたのかはちょっと詳しく書いてないや」

梓「ええと、お、セックスファイター(通称SF)について!」

梓「……へー、やっぱセックスファイターってお金稼げるんだ!」

梓「プロとアマチュアがあって、プロはニッポンセックス協会からファイトマネーがもらえると、ふーん」

梓「アマチュアセックスファイターの登録には協会または最寄りのセックス協会加盟店よりライセンスを発行」

梓「発行? えっ、もらってないよー」

梓「ライセンス取得後、プロの登用には試験をうけるか、アマチュアの大会でファイトポイント(FP)を稼ぐかする、なるほどー」

梓「唯先輩はどっちでプロになったのかな」

梓「てか憂はアマチュアのセックスファイターなんだよね? 学校きてるし」

梓「よーし早速明日ライセンス登録してもらおーっと」

梓「登録料は無料、年間ライセンス維持費1000P、うわ、結構学生には厳しいな」

梓「100点10回もとらないとだめじゃん」

梓「でもライセンスなしでセックスしてもFPつかないみたいだし……」

梓「登録する価値はありそうだね!」

梓「よーし、あとは唯先輩の記事をさがそう」

梓「これかな、これかな?」ペラッペラッ

梓「お、新風杯についての記事だ。ちょっと古いけど」

梓「えっと、『今年度の新風杯を制したのは、まさにセックス界に新しい風を吹き込むにふさわしい大型新人であった』」

梓「おおお! 唯先輩のことだよね! すごい!」

梓「『名前は『平沢唯』プロ登用試験をぶっちぎりの成績で通過し、プロ入りしてからは破竹の勢いでトーナメントを勝ち進み、見事に新風のタイトルを獲得した』」

梓「『ちなみに彼女が一年で打ち立てた、『セックスファイト31連勝』という記録はセックス協会設立後はじめての快挙である』」

梓「『彼女の30連勝達成を記念して開かれたパーティにはセックス学の権威Dr.山中の顔もあったようだ』」

梓「『インタビュアーが彼女に来年度の抱負を聞いてみた』」

梓「『え~? 抱負~? じゃあファイトマネーいっぱい稼いでいっぱいいっぱいアイス食べたいなー豊富だけに!』」

梓「…………」

梓「でもすごいすごい! そんなにすごい人だったんだ! 人は見かけによらないなー」

梓「『最後に、彼女の快進撃を止める者が今後のセックス界に現れることを期待する』」

梓「なんかうずうずしてきた! セックスファイトって心も体も熱いじゃん!!」

梓「うわー! よし! 寝るまで一人でセックスのトレーニングしよう!」

梓「んと、どうやればいいのかな」

梓「『ビギナーズセックス』にのってるのかな」

梓「……」ペラペラ

梓「……『忍耐力をつけましょう』」

梓「ん? あぁ、絶頂に達したら負けだもんね」

梓「でもあの凄まじい快楽を我慢するなんてなかなかできないよ」

梓「『快楽に負けずに相手を打ち負かしたらいい』って簡単に書いてあるけど」

梓「一度気持ちよくなったらとまらないよね」

梓「その辺がプロとアマの差なのかな」

梓「そういえば唯先輩はきもちいきもちい言いながらも結構冷静だったかも」

梓「かっこいいなー。私もあんな風にクールにセックスがしたい」

梓「よし! まずは我慢を覚えるとしよう」

梓「自分で触って、とにかく我慢!」

梓「あ、その前にパンツ脱がなきゃ」スルスル ストン

梓「い、いきま~っす……」

梓「……」サワサワ

梓「……んっ」

梓「あっ……声でちゃう」

梓「隣に迷惑かな」

梓「まぁいっか。まだ全消灯じゃないし」

梓「んっ、んっ、あ、あう……」

梓「やぁ……ああっ、きもちい」

梓「一人セックスもきもちいよ……」

梓「んっ、あっ、あああ唯先輩っ」

梓「ん? あれ……おかしいな」

梓「一人セックスしてたら唯先輩の顔がどうしてもうかんできちゃう」

梓「なんだろうこの感じ……んっ、ああ」

梓「やっ、あ、唯っ、せん、ぱ……ああっ」

梓「はぁ……がまん……しなきゃ」スリスリ

梓「あああああっ!! だめえええ! い、い、ああっイクっ」


……


梓「はぁ……あれから10回くらいイっちゃった……」

梓「快感のコントロールって難しいな」

梓「一人でするぶんには手を弱めたらいいんだけどそれじゃ意味ないし」

梓「もし相手にされてるときにきもちよくなってきたらどうしたらいいんだろう」

梓「他のことを考えるとか? テスト、将来、宇宙」

梓「うーん、でも私の場合どうしてもセックスに集中してしまうような……」

梓「おま◯こにおちん◯んいれられたらきもちよすぎて頭変になっちゃうよ」

梓「あ、ちょっとまって、ということは。たしかこのページ」ペラペラ

梓「あった! 手淫! テクニック!」

梓「これでおま◯こに入れられる前に相手に快感ダメージを与えればいいんだよ!」

梓「えっと、相手のPENISを刺激する方法」

梓「え? 手でこするだけ? あ、舐めるとかもあるんだ」

梓「でもウチにはPENISないし……練習しようがない……イメトレだけして明日唯先輩相手に試してみようかな」


梓「というかなにか代わりになるものないかな」

梓「んー、細長い物ー」


キーン キーン

梓「あっ……」


 『全消灯時間になりました。楽園のみなさまに良い眠りと夢を』

 『全消灯時間になりました。楽園のみなさまに良い眠りと夢を』

 『おやすみなさい。本日はお疲れ様でした』


梓「あ、あー……どうりで眠いはずだ……」

梓「おやすみなさいマザー」

梓「明日も平和を。世界に安定を。星に健やかな眠りを」

梓「……zzz」


……


純「おっはよー梓!」

梓「うん、オハヨ!」

純「お、元気だね。なんかいいことでもあったー?」

梓「まぁね!」

純「もしかしてセックス部絡みとか? ねぇねぇどんな部だった!?」

梓「あー、セックス部は廃部になってた。けどセックスについてはいろいろ知ることができたよ」

純「へー! 教えてよセックス!」

梓「純はしってるような口ぶりだったじゃん」

純「てへー、ちょっと知ったかぶりしちゃったかなー」

梓「ふーん。セックス、純の嫌いなスポーツ系だったよ」

純「えっ、嘘! 結構激しい感じ?」

梓「まぁ、かなり激しいかな。へとへとになるし体のあちこち痛いし」

純「うわー……じゃあいいや。誘われても困るし遠慮しときまーっす。あんたセックスこれから始めるの?」

梓「うん! やるよセックス! でも学校ではやらない」

純「じゃあどこで? どっかあいてるグラウンドとかあるの?」


梓「ふっふーん! 実はねー裏路地になんと」

憂「ストーっプ!!」

梓「ふぇ?」

純「あ、憂おはよ。どしたのそんな慌てて」

憂「い、いやなんでもないよっ」

純「で、裏路地がなんだって?」

梓「え? あー、あのね」

憂「ほんとなんでもないよっ! なんでもっ!!!」

純「なんであんたが答えるのさ」

梓「……ちょっと純ここで待ってて。憂、こっち」

憂「うん……」

純「あ?」


憂「実はね……セックスサロンで働いてることは黙っててほしいの」

梓「え? でも就労届けだしてるんでしょ?」

憂「……」

梓「え? だしてないの? どうして」

憂「セックスは……アンダーグラウンドな娯楽だから」

梓「?」

憂「あまり人に言っちゃいけないの。認知度も低いし、人によっては心象も悪い」

梓「そうなの?」

憂「梓ちゃんも昨日の昨日まで知らなかったでしょ?」

梓「まぁそうだけど。素敵な事だと思うなーセックス」

憂「私もそう思う。でもね、聞いて。セックスはね、この世で唯一」

梓「? 唯一?」


憂「マザーに嫌われる娯楽なの」

梓「……マザーに? なんで?」

憂「わからない……でもずっとそうだったから」

梓「それで廃れていったっていうの?」

憂「わからないよ」

梓「……あんなの楽しいしきもちいのに?」

憂「うーん……でもマザーに悪く思われたくないし」

梓「それであんな裏路地に」

憂「一応セックス協会自体は公認なんだけどね」

梓「よくわかんないよ。マザーが何をしたいのか」

憂「とにかく! あんまり人には言わないで!!」

梓「わかったよ。憂がそういうなら」

憂「で、梓ちゃん今日もサロンくる?」

梓「うん! いくいく! あ、そのときついでにライセンスを発行して欲しいんだけどできる?」

憂「うん! 電子端末もってきたら登録してあげる!」

梓「やった! これでちゃんとしたセックスファイターになれる!」


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最終更新:2011年02月24日 04:14