紬「集まろうよ、唯ちゃん。」

唯「そうだよね!澪ちゃんの為に集まろう!」

唯はみんなに電話して、もう日時を決めてあるという。

その日は紬には大事な用事がある日だった。

しかし、かまわない!澪ちゃんの方が大事だ。

紬は全く迷わず、執事の斉藤に予定をキャンセルさせた。

そして・・・。


紬は久しぶりに会う澪の雰囲気に驚いた。

非常に柔らかで落ち着いている。

それなのに何か、自信のようなものも感じる。

唯が言った、「澪が泣いている」という電話から想像していた澪とは全く違う澪を見て、紬は驚いた。

(何があったのかしら?)

澪は話し始めた。

ここしばらくの葛藤を。

軽音部への思いを。

紬はうすうす分かってたとはいえ、涙ぐんでその話を聞いた。

(やっぱり、一人で苦しんでたのね。)

紬は思った。

動けない自分も歯がゆかったが、どうして澪は誰にも相談しようとしなかったのか。

しかし、澪の話を聞いて、

「今、初めて知った」

と言わんばかりに鼻水と涙を怒濤のごとく流す律と唯を見て、

(仕方ないか・・・。頼れないよね。でも、私にくらいは・・・、そしたら私だって、ひょっとしたら・・・)

しかし、それも無理な相談だろう。

澪は紬に妙な遠慮を示してきたし、紬も二年生くらいからは、律や唯といっしょにはしゃぐことも多かった。

何より、澪は紬の本当の姿をうすうす感づいていた。

しかし、紬は自分の本当の性格を積極的には面に出さなかった。

遠慮が生まれるのは仕方がない。

澪「ムギ、突然来てくれてありがとう。ごめんな、予定とか大丈夫か?」

紬「全部、キャンセルしてきましたわ!」

最初に澪が謝ったときに、紬はスマートではないが、澪よりも大事な予定なんてない!と力んで言った。

紬が意外に強い意志を示したことに、澪は少々、驚いていたようだ。

紬と澪。

本音で語り合ったことはないが、紬は澪に自分でも思ってもみないほどの友情を感じていると実感した。

澪も遠慮がちにだが、紬ともっと深く知り合いたいとずっと願ってきた。

人間関係のバランスの中で交わらなかった二人の気持ち。

澪は、自分の心境を語り終えると、静かに微笑んでいる。

メンバーの間に桜ヶ丘高校の時の雰囲気が戻ってきた。

(ああ、この雰囲気、懐かしいわ。みんな、少しづつ変わっていく・・・)

だけど。

こんな風にちょっと下事件があれば、みんなの気持ちはすぐに一つになるんだ。

そのちょっとした事件は、自分たちで作り出していくものなのだ。

待っていては何も起こらない。

(今、私は岐路にいるんだわ・・・。もっとこのメンバーと、一緒にいたいのか。
それとも・・・)

紬は律、唯、澪、そして梓の顔を見渡していく。

(ああ、でも分からない。)

紬が自分が決めたことだった。

高校を卒業素すれば、財界の社交界にも出席し、経営を学び、大学で人脈を作って・・・。

でも、自分の気持ちが大きく揺れ動くのがはっきりと分かった。

人間として、生き生きとしていられるのは、このメンバーと過ごす時間なのだ。

小学校、中学校で自分を出せなかった苦しさ。

高校生活でそれは癒された。

本当の自分をこのメンバーになら出せるだろう。

だけど・・・。

澪「みんな!『放課後ティータイム』で武道館に行くよ!」

(え?)

澪「このメンバーなら行けるよ!」

澪は熱弁する。

澪「このあいだのライブの客の反応をみただろ?雑誌だって特集記事にしてくれたし、将来は有望だって!」

澪の頬は紅潮している。

一生懸命にみんなに話している。

澪はメンバーの尻を叩いたが、夢を語ることはなかったはずだ・・・。

紬は澪の変わりように驚いた。

澪「だって、そうだろ?ムギのキーボード、律のドラム、梓のギター、唯のボーカル&ギター、どれも最高じゃないか?」

唯「ムギちゃんの曲と、澪ちゃんの作詞とベースもね!」

澪の熱がみんなに伝播していく。

澪の確信がメンバーに乗り移っていく。

メンバーが私たちならやれる!

と誰もが感じ始めているようだ。

(澪ちゃん、すごい・・・!)

紬は本当のリーダーシップを澪に見たような気がした。

(澪ちゃん、変わった。)

時間が経てば誰もが変わっていくと紬は思っていたし、事実そうだろう。

澪は変わった。

しかし、変な言い回しだが、変わった澪こそ、変わってないような澪のような気がした。

変わることを受け入れ、変わることを恐れないことが変わらないっていうことなんだ。

紬は澪の姿を見て思った。

(それでこそ澪ちゃんよ!)

紬は、やはり澪が好きであった。

(尊敬できる友人だ・・・。素敵・・・。)

メンバー達は澪の提案に一も二もなく賛成した。

「私たちはプロになって武道館を目指すんだ!」

メンバーの心が一つになった。

しかし、紬は・・・。

メンバーとバンドを続け、プロを目指す・・・。

紬にはその決断は重すぎた。

いや、時間がいくらあっても迷い続けるような気がした。

どうしよう?

どうすれば?

唯「ムギちゃん・・・」

心配そうに紬を見つめるメンバー達。

紬「私は・・・」

澪はそんな紬をじっと見つめていた。

心の中で何か逡巡していたようだった。

だが、紬は澪の次の一言を生涯忘れないだろう。

澪「ムギ。ムギが嫌だって言っても私はムギを連れて行くからな!」

澪は穏やかだが有無を言わせない口調で言った。

澪が初めて紬に示した強い意志。

澪の思いに紬は打たれた。

どうして断ることが出来ようか。

澪の紬を見る眼差しは一点の曇りもなかった。

それまでの二人の微妙な?人間関係を払拭するような一言。

紬は

「は、はい!」

と思わず返事をしてまった。

いや、紬がイエスというのは確定していたのだが、自分が思うよりも早く、返事をしてしまった感じだ。

(私がイヤだと言っても連れて行かれるんじゃしょうがないわ♪)

紬は、澪の一言があまりにも嬉しかった。

紬と澪の間にあった遠慮を、澪から越えられたのが、ちょっぴり悔しかった。

そして、澪への尊敬の念がはっきりと固まった。

自分が心配していたのが、いつの間にか逆になっていた。

澪ちゃんは私をこんなにも必要としてくれてたんだ。

私はそれに応えたい。

父親の会社は、10年後、20年後でもいいだろう。

それまで会社があればだが。

でも、このメンバーと夢を追っていくのは今しかできない。(よし、私がみんなを武道館に連れて行く!)

紬は作曲能力に密かな自信があった。

澪ちゃんを支えて、夢を叶えてみせる!

あとから、あとから、頑張ろう!やってやろう!と言う気持ちが溢れてくる。

まるで、澪の一言で心のフタが開いたようだ。

(これが私の本心だったのか・・・。)

紬は自分の心の動きに驚いていた。

私はそれに応えたい。

父親の会社は、10年後、20年後でもいいだろう。

それまで会社があればだが。

でも、このメンバーと夢を追っていくのは今しかできない。(よし、私がみんなを武道館に連れて行く!)

紬は作曲能力に密かな自信があった。

澪ちゃんを支えて、夢を叶えてみせる!

あとから、あとから、頑張ろう!やってやろう!と言う気持ちが溢れてくる。

まるで、澪の一言で心のフタが開いたようだ。

(これが私の本心だったのか・・・。)

紬は自分の心の動きに驚いていた。

人は独りで悩んでいても答えが出せないものだなぁ・・・。

紬は思った。

しかし、自分を後押しした澪が変わったきっかけが唯だとは、紬には知るよしもない。


とにもかくにも、「放課後ティータイム」はこうして無敵の布陣になった。

天才?ギタリスト、そしてボーカルの唯。

ムードメーカーであり、表のリーダー、そしてパワフルなドラムの律。

一年下だが、職人のようにしっかりしたビートを刻む、梓のギター。

バンドの運営を一手に引き受ける覚悟を持ち、作詞担当であり、ベースもまだまだ伸びるであろう澪。

人は独りで悩んでいても答えが出せないものだなぁ・・・。

紬は思った。

しかし、自分を後押しした澪が変わったきっかけが唯だとは、紬には知るよしもない。


とにもかくにも、「放課後ティータイム」はこうして無敵の布陣になった。

天才?ギタリスト、そしてボーカルの唯。

ムードメーカーであり、表のリーダー、そしてパワフルなドラムの律。

一年下だが、職人のようにしっかりしたビートを刻む、梓のギター。

バンドの運営を一手に引き受ける覚悟を持ち、作詞担当であり、ベースもまだまだ伸びるであろう澪。

澪はまた、バンドの精神面の支柱にもなるだろう。

このバンド活動を通して、どれだけ澪が成長するのか、紬は楽しみだった。

そして、作曲担当で、キーボードの腕前はコンクールで優勝するほどの腕前の紬。

紬は澪をもっと支えていこうと考えていたし、ともすれば、陰ながら自分がバンドを引っ張っていこうと決意していた。

紬にも確信が宿ってきた。

私たちならやれる!

こうして、場面は紬の部屋に戻ってくる。

手元には澪の書いた歌詞があった。

「琥珀色の刻」

と題名が記されたその歌詞は、今までの澪のものとは、一線を画していた。

紬は、この歌詞を最高の曲をつけたかった。

毎晩、ピアノの前に向かって、いろいろなメロディーを試している。

しかし、それももうすぐ完成する。

澪の歌詞と紬の曲をみんなで演奏するんだ。


律、唯、梓、澪の顔が目に浮かぶ。

明日、一週間ぶりにみんなが集まる。

しかし、メンバーは毎日練習に明け暮れたいた。

律が来られない日、澪が来られない日、そんなのは関係なかった。

集まれるものがあつまり練習する毎日。

明日はみんなが揃う。

紬は、完成した曲をみんなに披露するのが楽しみであった。