唯の心は「澪のかわいさ」という物質でいっぱいに満たされ、どうにかしないと、本当に死ぬんじゃないかというほど、はち切れそうになった。
キスをチュッ、チュッと繰り返す唯。
澪は積極的ではないが、唯のキスを受け止めているようだ。
唯は顔を上げて、澪を見下ろした。
澪は目を閉じてかすかに震えている。
(私、今、すごいドキドキしてる!)
唯にとってもこの先は冒険だった。
そもそも、自分がとっさにこんなことをするなんて思っても見なかった。
澪もっと抱きしめたい。
澪の可愛さを知り尽くしたい。
その衝動が抑えきれない。
(これっていけないこと?)
さすがに唯の頭をよぎる考え。
しかし、どうやら澪は唯を受け入れている。
(澪ちゃんも同じなんだよね?)
唯の根拠のない確信がその考えを追い払った。
そして、唯の確信はそのほとんどが正しい。
(ええい!このドキドキが正しい!)
澪は顔を横にして目をそらしている。
耳まで紅らんでいる澪。
その瞳には涙が浮かんでいたが、唯はその涙が悲しみの為ではないことを知っている。
澪が恥ずかしいときに流す涙。
律や唯がさんざん萌えてきた涙だった。
唯は澪のシャツのボタンを外し始めた。
一瞬、澪の手が唯の手を押さえる。
唯は、「めッ」と澪を睨んだ。
澪の手から力が抜ける。
澪のきれいな肌があらわになった。
澪は顔を横にして目をそらしている。
耳まで紅らんでいる澪。
その瞳には涙が浮かんでいたが、唯はその涙が悲しみの為ではないことを知っている。
澪が恥ずかしいときに流す涙。
律や唯がさんざん萌えてきた涙だった。
唯は澪のシャツのボタンを外し始めた。
一瞬、澪の手が唯の手を押さえる。
唯は、「めッ」と澪を睨んだ。
澪の手から力が抜ける。
澪のきれいな肌があらわになった。
澪に愛撫を加えるのに夢中な唯。
唯の愛撫によって澪は様々な仕草をし、声を出す。
唯は胸がキュンキュンしてたまらない。
唯「澪ちゃん、今の表情、可愛いなぁ・・・、もう一回見せて?ねぇ?」
唯 「澪ちゃんの声、可愛過ぎる!今の声、もう一回、聞きたいなぁ?」
澪はイヤイヤと首を振るが、唯はどうすればもう一度、澪の可愛い仕草が見られるのか、声が聞けるのか学習していく。
澪は恥ずかしいながらも、ちらっと唯の表情を見た。
唯は目をキラキラさせながら、熱心に澪に愛撫をしている。
心から、澪を求めているようだ。
誰にも見せたことがない澪の表情。
誰にも聞かせたことのない澪の声。
唯は極めて熱心に、そして真面目に、それを欲している。
(唯は私を自分のものにしたがってる)
努力して認められたかった。
なんとかして居場所を作りたかった。
でも、唯はありのままの自分を必要としているようだ。
澪の本当の姿、飾ることのない本当の自分。
それをこんなに熱心に唯は探り当て、自分のものにしようとしている!
澪は今、考える頭は持たなかったが心の奥でそれが分かった。
それを唯に与えるには・・・。
別に何もしなくてもいい。
ただ、澪が澪であればいいだけだ。
失ってしまうようなものではない。
澪が澪でいれば唯は満足するのだ。
澪は唯の望むままの自分を晒した。
唯の動きに豊かに反応する澪の心と体。
今、澪は、唯と対等になった。
どんなに努力してもコンプレックスを抱かされた天才肌の唯。
澪が澪であるだけで、それらは雪のように消えてしまうものだったのだ・・・。
澪はまだまだ頭では分からないだろう。
しかし、心の奥に、誰に言われずとも小さな自信が根付いた。
それは同時に、澪のなかの女の目覚めでもあった。
求められても、求められても与え続けることが出来るもの。
唯が澪に求めることによってそれは覚醒した。
澪はまったく素直だった。
何も考えず、心だけでいられる瞬間、忘我の時。
決して唯に翻弄されたわけではなかった。
唯と澪は求め合い、深くつながった。
唯は夢を見ていた。
大好きなアイスを好きなだけ食べている夢。
唯「もう、入いんないよ・・・、憂ぃ」
(ああ、こんな幸せでいいのだろうか。)
その時、脈絡もなく澪が現れた。
唯「あれ?澪ちゃん?」
澪「口のまわりにアイスついてるぞ!」
澪は唯の口の周りをハンカチで拭いてくれた。
唯「ありがとう、澪ちゃん」
澪「ほら、これも食べるか?」
澪はスーパーの袋いっぱいのアイスを差し出した。
唯「ええぇ~?」
唯は嬉しいやら、困ったやらで声を上げた。
その瞬間、唯の景色は暗転した。
唯「アイスはもう~・・・、ん?」
(あれ?アイスは・・・)
唯の目に入ってきたものは締め切ったカーテン、暗い部屋の壁。
しかも、それはどうやら自分の部屋ではない、見慣れないものだった。
きょろきょろ見回す唯。
澪と目が合う。
唯「・・・・・?」
(あれ?あっ!そうだ!)
唯「・・・・わっ!そうだ、澪ちゃんちに来てたんだっけ!」
澪「あ、あぅ、ゆゆゆ唯・・・、あのさっ、」
なぜだか、澪はあわてている。
(?・・・どうしたんだろ?澪ちゃん・・・。)
その時、つい先刻までの記憶が蘇った。
唯「くっ、くくく・・・」
唯は突然身体をまるめて、痙攣でもしているように身体を揺すり、くぐもった声を出し始めた。
(澪ちゃん、可愛かったし、暖かかったな~。)
澪「ゆ、唯?どうした?唯?大丈夫か?」
澪は唯の背中をさすった。
(澪ちゃん、優しいなぁ!)
唯「・・・たよ。」
澪「え?な、なんだって?」
唯「すっごい可愛いかったよ、澪ちゃん・・・!」
唯はばっと起き上がり、澪を押し倒した。
もう一度、澪の可愛いところが見たかった。
澪「ちょ、いやーっ!!」
澪は両手で顔を隠そうとしたが、唯はもう手慣れたものだ。
の両手首を掴んで、開かせる。
澪の顔をじっと見つめる。
視線をそらす澪。
唯「だめっ!澪ちゃん、こっち見て!」
(駄目だよぉ、澪ちゃん。もう、私、澪ちゃんのこと随分分かっちゃったんだから!)
強気な唯。
澪「・・・・」
澪は黙ってしまう。
唯「こっち見るの・・・。」
澪は逆らえずにそーっと唯の方を見る。
もう耳まで顔が紅らんでいる。
(う~ん、飽きないなぁ・・・。)
澪の目が唯を見つめる。
唯は先ほど、澪の可愛さを満足行くまで堪能したせいか、幾分余裕があった。
(なんだかすごく優しい気持ち・・・)
つーっと澪の瞳から一筋の涙が零れる。
(あれ?また、澪ちゃん、泣いてる・・・。強引すぎたのかな・・・)
唯は心配になった。
唯「なんで泣くの?嫌だった?」
澪はふるふると頭を横に振った。
(ほっ)
唯「そ、良かった。」
(なら、もっかいキスしとこ。)
唯は優しく自分の唇を澪のそれに重ねた。
その行為で、唯にとっての冒険と言おうか、イベントと言おうか・・・、それはは幕引きとなった。
気持ちが切り替わっていく。
興味が急速に移り変わる。
(私、運動して、寝て・・・。お、お腹が減ったなぁ・・・)
唯「澪ちゃん、私、お腹減っちゃった。なんか食べにいこ!」
唯はベッドから這い出て、ぱっぱと衣服を身につける。
澪「あ、ああ、そうだな・・・。」
澪ものろのろとベッドから這い出てきた。
そして、気付いたように言葉を足した。
澪「ま、まったく唯はどんなときでも食べることだけは忘れないな!」
さすがに唯も澪の精神構造が以前よりもよく分かるようになった。
(さっきまであんなだったのに、澪ちゃん、すましてる!)
唯「ムフフ」
そんな澪も可愛いと唯は思った。
澪「な、なんだよ・・・?」
むきになる澪。
唯「なんでもないよ。行こ?・・・ムフフ。」
唯も悪趣味だ。
さすがに三年間、律と一緒に澪をいじりたおしてきただけあって、澪の弱みを握るともう、いぢめたくて仕方がなくなってくる。
唯が「ムフフ」と笑うだけで、そのたびに真っ赤になり、涙目になる澪。
(お腹減った・・・。)
めまいのしそうな空腹を覚えつつ、「ムフフ」を繰り返す唯であった。
二人は歩いて近所のファミレスに向かった。
(お腹が空いた・・・。)
唯は早くファミレスに到着したかったのだが、どうも澪が後からとぼとぼと歩みが襲い。
唯は澪の手を握った。
早く、澪を連れてファミレスへ行くのだ。
澪は恥ずかしそうに俯いた。
(やっぱり澪ちゃんもお腹が減ってるんだな!)
唯は澪に笑いかけた。
「ふんす!」
一つ気合いを入れた唯は澪の手を引いて、道を急ぐ。
(ごはん、ごはん!)
唯もたまにりりしい顔をする。
可愛そうな澪は唯のりりしい横顔を見て、大誤解をしていたのだが、まぁ、当人がプラスに納得しているのならそれでいいだろう。
完
最終更新:2011年02月24日 01:21