唯「……あれ、和ちゃんだ」

和「おはよう唯」

唯「私、寝ちゃってたんだね」

和「唯だけじゃないわよ」

唯「ほんとだ、皆も寝てる」

和「一番起きるのが早かったところを見ると、きっと唯が一番早く寝たんでしょうね」

唯「えー、そんなことないよ。きっとりっちゃんじゃないかな?」

和「皆が寝てるって知らなかったんだから、きっと唯よ」

唯「違うよ、きっと皆で同時に寝たんだよ」

和「……どっちみちよっぽど疲れてたのね、お疲れ様」

唯「うん、ありがと」

和「どうだった、最後の学園祭ライブは?」

唯「うん、最高だったよ」

和「そう、それは良かったわね」

唯「ホントに最高だったよ」

和「そう」

唯「ホントに、ホントに最高だった」

和「そんなに何回も言わなくても大丈夫よ」

唯「何回言っても大丈夫じゃないよ、だって本当に最高だったんだもん」

和「本当に最高だったのなら、尚更何回も言わなくても大丈夫よ」

唯「そういうもんかな」

和「そういうもんよ」

唯「そっか、和ちゃんが言うんならきっとそうなんだね」

和「そうよ、最高のライブだったわ」

唯「……えへへ、ありがとう」

和「どういたしまして」

唯「隣、座ってもいい?」

和「勿論、どうぞ」

唯「ありがと……鞄どけないと座れないね。よいしょ」

唯「和ちゃん、一人で待っててくれたの?」

和「最初はさわ子先生も起きるまで待つって言ってたんだけどね、きっと忙しいだろうから私が一人で引き受けたの」

唯「和ちゃんは忙しくないの?」

和「準備で頑張ったんだから後は任せてください、って他の役員が代わってくれたのよ」

唯「そっか、さすが和ちゃん。ありがとうね」

和「いいわよ」

和「……ねえ唯」

唯「なあに?」

和「最後にやった曲、U&I、だったかしら」

唯「U&Iがどうかしたの?」

和「唯が作詞したって曲、アレのこと?」

唯「すごい、どうしてわかったの?」

和「前に憂が風邪引いた時に詞が出来たって言ってたじゃない」

和「それでタイトルがUとIで"うい"になるでしょ、だからそうじゃないかなって」

唯「さすが和ちゃん、眼鏡をかけてるだけはありますなあ」

和「目が悪いからかけてるのよ」

唯「きっと無関係ではないよ」

和「別に頭がよくなりたくて目が悪くなったわけじゃないわよ、頭、良くもないしね」

唯「そんなことないよ」

和「……それにしても、唯がこんなに凝った曲名を作れるとは思わなかったわ」

唯「あれれ、気づいていただけました?」

和「あなたと私、って意味のYou&Iっていうのを憂の名前のローマ字のつづりとかけてるよね」

唯「えへへへ、我ながら良い出来だと思います」

和「それに、少し強引だけどUをそのまま"ユー"って読んで、Iを"い"って読めば"唯"とも読めなくもないし」

唯「……」

和「唯と憂、あなたとわたし、U&I、本当に良く出来た曲名だと思うわ」

唯「そっかー、頑張ったら唯って読めなくもないんだね、和ちゃんすごい!」

和「……深読みし過ぎたみたいね」

唯「でもね、何も憂のためにしか書いてないわけじゃないんだよ」

和「そうなんだ」

唯「憂が風邪を引いて、そのとき部室も使えなくて、当たり前がとっても大切で、ほんとは当たり前じゃないんだ」

唯「それはとってもありがたいんことなんだって凄くわかったんだ」

唯「……君についつい甘えちゃうよ、君が優しすぎるから」

唯「きっかけは憂だけど、和ちゃんにだって、さわちゃんにだって私は同じ気持ちでいるよ」

唯「だからね、いつもありがとう和ちゃん」

和「どういたしまして」

和「……私はね、唯はすっかり変わっちゃったんだと思ってたの」

唯「どういうこと?」

和「いつも私と一緒にいたから、高校でもきっと一緒にいるんだろうなって思ってた」

和「でも唯はクラブに入って、とっても仲の良い友達もできた」

和「一年の時の演奏を見て思ったわ、きっと唯は私や憂がいなくても大丈夫だって」

唯「そんなことないよ、私はそばに誰かがいないと、それこそなにもできないよ」

和「私や憂が軽音部に入れって言った?唯は誰もいなくても軽音部に入れたのよ」

唯「でも……」

和「話は最後まで聞いて」

唯「うい」

和「話を戻すわね」

和「一年の時は同じクラスだったから良かったんだけど」

和「二年になってからかな、月並みな言い方になっちゃうんだけど」

唯「月並みってどういう意味?」

和「……ありきたりな言い方になっちゃうんだけど」

唯「なるほど」

和「クラスも違うし、宿題見せたりしなくてもいいと思ったら、なんていうか、ね」

唯「……」

和「唯は、そばに誰かがいないと何もできないって言ってたわね」

唯「うん」

和「何もできないとまではいかないけど、私も唯がいないと駄目なんだって気がついたの」

和「だから、なんていうか」

和「……どうして頭の上に手を置くの?」

唯「えへへへ、和ちゃん、なんか可愛いから」

和「そうかな」

唯「それより続き話して。なんていうか、の続き」

和「そうね、なんていうかきっと……寂しかったの」

和「軽音部の皆とも仲良くなったし、唯とも時々遊んだりしたけど、やっぱりなんだか寂しかったの」

和「近くにいるんだけど、それでも前より遠いところにいるんだなって、そんな気がしてたの」

唯「和ちゃんは難しく考えるね」

和「そう?」

唯「きっと頭がいいからだね」

和「そんなことないわ」

唯「そうだよ、私はそんなこと考えたことなかったよ?和ちゃんや憂がいないと何もできないのは今も同じだもん」

和「そんなことないと思うんだけど、きっと唯が言うのならそうなんでしょうね」

唯「そうだよ」

和「だから、U&Iを聞いたときそうなのかなって思ったのよ」

和「唯は変わったけど、やっぱり変わってないのね」

唯「うーん……よくわからないけどニートじゃないのは確かだよ」

和「ふふ、そうね」

唯「……和ちゃん、もしかしてだけど、泣いてるの?」

和「眠いのよ」

唯「そっか、そうだね、和ちゃんが言うんならきっとそうなんだね」

和「そうよ、昨日は夜更かししたから」

和「ところで、手、いつまでのっけてるの?」

唯「えー、もうちょっとのっけてたいんだけど、駄目?」

和「別に、そんなに嫌じゃないけど」

唯「そっか、じゃあもう少しのっけてるね」

和「のせるのはいいんだけど、撫でるのはやめてくれる?」

唯「えー、いいじゃん」

和「……好きにして」

和「でも、皆が起きるまでには止めてよね」

唯「うん」

唯「……そういえば和ちゃん」

和「どうしたの?」

唯「どうして起きるまで待っててくれたの?」

和「ああ、そのことね」

和「一緒に帰ろう、って言おうと思って」

唯「いいよ、皆も一緒にね」

和「勿論、皆が起きるまでもう少し待ちましょっか」

唯「そうだね」

唯「それまでは、こうしてていいんだよね」

和「……そうね」