唯「ただいまー!ういー」

「おじゃましまーす」

ゾロゾロ

唯「ういー入るよ?」

ガチャ

唯「あれ、いない。朝は寝てたのに。リビングかなあ」

律「リビング行くか」

憂「」

唯「あ、憂!!」

澪「掃除機持ったまま倒れてる・・・」

唯「ネジ止まっちゃってる。今巻いてあげるね!」

キリキリキリキリ…

梓「体調悪いのに家事やろうとして…」

律「途中でネジが止まっちゃったのか」

キリキリキリキリ ピタ

憂「あ、お姉ちゃん。と、みなさん」

唯「ごめんね、憂。私、学校行かなければよかった」ポロポロ


憂「お姉ちゃん、ごめんね。お掃除だけでもやっておこうと思ったんだけど」

律「健気な妹だなあ」

紬「憂ちゃんは自分のネジ巻けるよね?」

憂「はい。でもお掃除に夢中になってて止まりそうなの気付かなかったんです。
  こんな早く止まるって思わなかったし・・・」

唯「ういー。寝てなきゃだめだよう。ネジ止まりやすいんだから」

憂「うん、でも夕飯作らないと。それにみなさんにお茶も」

律「そんなのいいって!私たち、憂ちゃんのお見舞いに来たんだから」

憂「そ、そうだったんですか。ありがとうございます」

唯「夕飯は私が作るよ!」

憂「え、お姉ちゃん大丈夫?」


唯「大丈夫・・・だと思う!」

紬「唯ちゃん、私でよければ手伝うよ」

唯「おお!ムギちゃんありがとう!」

澪「せっかくだし、私たちも手伝うか」

梓「ですね」

律「おう!」

憂「みなさん、本当にありがとうございます・・・」

唯「いい友達を持ったよ~」

梓「さ、憂は休んでて」


唯「ういー!ご飯できたよー」

憂「わあ。おいしそうなシチューだね」

唯「どうかな?」

パクッ

憂「おいしい!すごくおいしいよお姉ちゃん!」

唯「えっへへ。良かったあ。みんなで作ったんだ」

律「いやー頑張った甲斐があったなあ!」

澪「お前はほとんど何もしてないだろ」

紬「まあまあ」

憂「こんなにおいしい料理を作ってくれて……あり……が……が…」

梓「憂?」

憂「……」


唯「あわわ、もうネジ止まっちゃったのかな。今巻くからね」

キリキリキリキリ…

澪「もう、か」

梓「早いですよね。明らかに」

律「本当に治らない故障かもな」

キリキリキリキリ ピタ

憂「がとう。あれ?また私止まっちゃってた?」

唯「うん。びっくりしたよー」


憂「ネジを巻いてから止まるまでの時間がどんどん短くなってるみたい」

唯「大丈夫。明日は私がずっとついててあげるから!」

憂「だめだよ。もうすぐ学園祭でしょ?お姉ちゃんの部活邪魔したくないよ」

律「でも、もう治らなそうじゃないか?」

唯「ちょっとりっちゃん」

律「たとえば憂ちゃんが風邪ひいて、憂ちゃんのために部活休むなら仕方ないけどさ。
  今回はネジの故障だろ?憂ちゃんを取り換えれば済む話じゃん」

憂「確かにそうですね。それがいいかもしれないです」

唯「りっちゃん!憂の前でそんな話!」

憂「え?なんで私の前で話しちゃいけないの?私の交換の話だよ?」


唯「憂はいいの?交換したら今の憂は死んじゃうんだよ?」

憂「いいって言うか、取り換えってそういうものでしょ?」

唯「そ、そうだけど、そうじゃなくて、私は憂に死んでほしくないんだよ」

憂「なんで?」

唯「だって、憂が死ぬなんて想像したら悲しいもん」

憂「お姉ちゃん、なんで死ぬのが悲しいの?」

唯「だって、だって…うわああああん」

ダッ

憂「あ、お姉ちゃん!」

律「ご、ごめんね憂ちゃん。私があんなこと言うから」

憂「いえ、律さんのせいじゃないですよ。
  死ぬことに関しては、お姉ちゃんは昔からちょっと変なんです」

梓「変って?」

憂「小さいころなんですけど、私とお姉ちゃんと和さんでよく公園に行ってたんです。
  それで、そこに野良猫が住みついててよく可愛がってたんですけど、
  ある日猫が交通事故で死んじゃったんですよ」

澪「うん。それで?」

憂「お姉ちゃんは、かわいそうかわいそうって泣いたんです」

律「何がかわいそうなんだ?」

澪「憂ちゃんに聞いてもしょうがないだろ」

憂「それで私と和さんは、猫の死体が道路にあったら迷惑だと思って公園のごみ箱に捨てたんですけど」

紬「小さい頃から二人はしっかり者だったのね」


憂「そうしたらお姉ちゃんが怒って、そんなことしたらかわいそうだって。もう死んでるのに」

澪「へえ・・・」

律「小さい頃から変わったやつだったんだなあ」

憂「で、でも、お姉ちゃんはすごく優しい人で!」

澪「ふふっ。わかってるよ。そんなことは」

梓「ちょっと変なところも唯先輩の魅力ですもんね」

紬「大丈夫よ憂ちゃん。私たちはそんなことで唯ちゃんを嫌ったりしないから」

憂「みなさん・・・お姉ちゃんはホントにいい部活に入ってくれました」ポロポロ

律「へへ、泣くなって」

憂「あの……みなさんにお願いがあるんです」

律「なに?何でも言ってみな」

憂「私を取り換えるのに協力してほしいんです。
  これ以上お姉ちゃんに迷惑かけたくありません」

澪「いいけど、どうやって?」

紬「取り換えは本人以外の肉親の許可がいるわよね?」

憂「はい。でも両親は海外に長期滞在だし、お姉ちゃんはあの調子なので……
  でも学生なら、教師の保証でも取り換えができるんです」

梓「なるほど、さわ子先生に」

憂「うん。軽音部のみんなは先生と親しいから」

律「私たちがさわちゃんに憂ちゃんの取り換えの保証人になるように頼めばいいんだな。
  お安い御用だ!」

憂「すいません、お願いします。お姉ちゃんには内緒で」




律「それにしても、唯はなんであんなに憂ちゃんに死んでほしくないんだろうな」

紬「不思議ね」

澪「うん、まるで……」

梓「なんですか?」

澪「いや、やっぱなんでもない」

律「なんだよ!気になるだろー言えよ」

澪「で、でも」

憂「私も気になります」

澪「う、憂ちゃんがそういうなら言うよ?……唯が人とか動物が死ぬのを悲しむのって」

律「うん」

澪「……まるで、人間みたいだよな」


律「いや、何言ってるんだよ澪。人間じゃないだろどう見ても」

澪「わ、わかってるよ!//まるでって言っただろ?」

紬「でも……その例えは的を射てるかも」

梓「え?」

紬「私たちと人間の最大の違いってなんだと思う?」

律「ネジがあるかどうか?」

紬「それもそうだけど、内面的なことよ」

憂「死……」

律「?」

憂「人間は、”死”を恐れる……」

紬「そう。それが私たち人形との最大の違い」


憂「でも、お姉ちゃんは人間じゃないですよ!」

紬「ええ、わかってるわ。あくまで例えよ」

澪「やめてよムギ、ちょっと怖かったよ」

律「澪は怖がりだなー。あ!」

梓「またよからぬことを思いついた顔ですね」

律「こういう都市伝説あったよな?」

澪「都市伝説?やめてくれ私そういうのは……」

紬「ごめんね澪ちゃん、私ちょっと聞いてみたい」

憂「私も……」

律「というわけだから話すぞ澪」

澪「ミエナイキコエナイミエナイキコエナイ……」


律「なんか、ごくごく稀に、人間の魂をもった人形が生まれるらしいよ」

梓「人間の、魂?」

律「うん。で、その人形は人間みたいな精神構造になるんだってさ」

憂「そうなんですか……」

律「うわさだと、大昔に滅ぼされた人間たちの呪いとか……」

澪「ひいいいい!?」ガバッ

紬「おーよしよし」ナデナデ

律「まあただの都市伝説だけどな。澪にはきつかったか」

梓「確かに唯先輩にはその話当てはまっちゃう気がしますけど」

澪「や、やめろよ。人間なんてもういないだろ……」

律「だから呪いなんだって」

澪「ひい!」

紬「りっちゃん?」

律「ごめんごめん」


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