律「おーっす!」ガラッ

唯「おはようりっちゃん」

紬「おはよう」

和「…今日澪は一緒じゃないの?」

律「あ!」

やっべ、迎えに行くのすっかり忘れてた。

和「でも昨日あんなことがあったぐらいだから…」

律「(あたしのせいなんですけどね)」

唯「うーん」

でもどうすっかなぁ。
日記使って無理やり来させるンも悪くないけど。

律「そんなことさせる必要ねーんだ」

紬「え?」

律「ああ、こっちの話」スタスタ

唯「ぷっ、変なりっちゃん」

話を切り上げ席に着き日記帳を机の上に出す。

律「よし」カキカキ

●月▲日■曜日
校舎のメンテナンスとやらで今日は朝礼だけで学校が終わった。

律「これで実現するはず…」

唯「何書いてるのー?」ヒョコッ

律「わわっ!」バタン

唯「どしたの?そんなに驚いて」

律「な、何でもない!」

唯「ははーん」ニヤリ

…悪寒。

唯「さては極秘事項でも書いてますなりっちゃん隊長」

何だ、ビビらせんなよな。

ガラッ

さわ子「おはようみんな」

丁度その時さわちゃんが教室にやってくる。

さわ子「早く席についてー!今日は大事なお知らせがあるから」

来た…!

さわ子「あら。今日は澪ちゃん休みなのね…まぁいいわ」

さわ子「今日は校舎のメンテナンスで、みんなこの後すぐに下校になるの」

律「おっしゃ来たーーーっ!!」ガタン

あたしが席を立った瞬間にどっ、と笑いが巻き起こる。


唯「あははは!りっちゃん喜びすぎだよー」

和「律…」

やべ、ちょっと調子に乗り過ぎた。

さわ子「りっちゃん。喜ぶのは後でね」

律「…はーい」ストン


唯「今日の部活どうする?」

律「いや、だから校舎のメンテだから無いだろ」

紬「帰りにお茶でもして帰らない?」

和「いいわね。それ」

唯「あ!じゃああずにゃん達も呼んでこようよ」

律「悪ぃ、あたしはパスだわ」

唯「えーなんでなんでー?」

律「澪ん家行ってくるわ」

紬「あ…じゃあお大事にって伝えてくれる?」

律「おう。んじゃな」

とりあえず昨日のことはあたしが原因なんだし…。


―澪の家

律「みーおー!」ピンポーン

澪「はーい、どちら様で…」ガチャ

律「おっす」

澪「えっ?お前、何でこんな時間から!?」

律「はは、何か今日学校が中止になってさ!」

澪「…まぁいいよ。上がって」

家え上がり、澪の部屋へと行く。

律「何でお前学校休んだんだ?元気そうなんだけど」

澪「…本当に分からないか?」

律「ごめん分かるわ」

澪「あんな…あんなことをしてしまうなんて…もう学校に行けない…」

律「なーに言ってんだよ。パンモロしたことに比べたら」

澪「あれはあくまで『事故』だっただろ!今回のは『故意』だ!」

いや、故意ってかあたしのせいなんだけどさ……なんて口が裂けても言えない。

澪「本当にどうしてあんなことをしたのか自分に疑問だよ」

律「は…は」

まずい…このままじゃこの先澪の人生を壊しかねないぞ。

澪「そう言えば律…」

律「ふぇい!?」ドキッ

澪「お前今日、コンビニの前で不良と喧嘩してただろ」

そっちか。ビビったじゃねーか。

律「おま!見てたのかよ…」

まさか見られてるとは思わなんだ。しかも親友に。

律「…チクるか?」

澪「そんなことしないよ!ただお前…強かったんだなぁって」

律「そうだぞ。あたしは実はすっげぇ強いんだぜ」

ドーグに頼った嘘の強さだけどな。

律「だからお前のこと馬鹿にする奴がいたら守ってやるからさ、学校来いよ」

単なる自業自得だけどな。

澪「…考えとくよ」

少し話した後、澪の家から出た。

そんで自販機でジュースを買い飲みつつ独り言を言った。

律「ぷはーっ!…あらかじめ『澪は明日から学校に来るようになる』って書いててよかったよ」


不思議な道具に魅せられたあたしの常識は

恐らくこの辺から消えていった。


一度家に帰り、着替えてからあの路地裏へと向かう。

律「おいす婆さん」

老婆「……」

律「何かもっと面白いモン売って無いの?」

老婆「……」スッ

『熱線銃 売ります』

これはタイトルからしてやばいぞ…。

律「でも本物かよ?えらい軽いし」ヒョイッ

老婆「3000円でございます」

律「3000か…キツイな」

老婆「高いか安いかは」

律「ヨアセルフって言いてんだろ。ほら」

婆さんにヒデヲを三枚手渡す。

老婆「お買い上げありがとうございます」


買った熱線銃を手に、あたしはそのまま街に繰り出した。

律「さぁて。どこに向けてぶっ放すか」

気付くと物騒な事を言ってしまっていた。
しかしあらかじめ『今日は死者は出なかった』『外であたしの姿を目撃されなかった』と書いておいたのだ。

だから大丈夫だろ…多分。

律「でも何か実験できるよーな物は無いんかなー」

律「…あの停車してある駐車場辺りがいいかな」

目標は駐車場に停車されてある車。勿論、人は乗っていない状態だ。

そして誰にも見つからないように隠れながら銃口を向ける。
この時のあたしは高揚感と効果を見てみたいしてみたいと言う気持ちに駆られていた。

律「いっくよーん!」

馬鹿みたいな声で何の躊躇も無くグッとトリガーを引いた。

解き放たれた熱線は次々と車を貫通していき、最後には大爆発が起こった。
炎は駐車場全体を包み込み、ガソリンに引火して炎はより一層空高く燃え上がった。

律「うひゃーー……」

いつの間にか尻もちをついていた。

周りが急に慌ただしくなり、サイレンの音が聞こえてくる。
紅蓮の炎は未だに高くうねっている状態である。

律「ここにいると危ないな」

あたしはニヤケ顔を押さえつつ、その場を離れた


―律の家

テレビ「ただいま入った速報です。●●街の駐車場で突然大炎上するという事故が―」

聡「うげっ、これって近くじゃん」

律「蒲焼三太郎うめぇ」ムシャムシャ

テレビ「幸い死者は無しと言う事です。警察は原因の追及と―」

世間があたしの為にざわめき始めるという優越感。

しかも日記帳のおかげで捕まることは無いし手袋で喧嘩は無敵。

それにこの銃一つあれば軍隊でも壊滅させることができる。

律「くくくくく…ふぁーっはははは!完璧だ!」

聡「…?」

それからと言うもの、あたしは日記帳を使い親の仕事を成功させ金を増やし

手袋を使って不良狩りを始め、街のヤンキー達のカリスマ的存在になり(知人に知られないように前髪下ろしフードで)

銃を使い死者が出ない程度に世間を騒がせていた。

そうしてだんだん使っていくう内に道具の欠点も分かってきた。

あらかじめ日記はあくまで「あらかじめ書いておいたことを現実にする」だ。

つまり突然の事柄には対処できない。

スーパー手袋は当然だがその場に無いとどうしようもない。

熱線銃は…言わずもがな。


ある日の夜、ついに最悪のことが起こった。

律「今日ドコ行く?」チャラチャラ

男A「最近オープンしたバーとかどっすか?」

男B「今日は俺の奢りっす。律さん限定で」

男C「俺にも奢ってくれよーん」

澪「…あれ?」

クラブに入る階段でたむろっているとジーっと見てくる女が一人。

男A「何かあいつ俺らのこと見て無いっすか?」

律「あぁ?……ゲッ!」

何でこんな所にいるんだよ、澪!

澪「…」ジーッ

律「(見んな見んな!こっち見んな!)」

澪「…律?」

律「あ?律って誰だよ俺は男だぜ?」(裏声)

我ながらの自分の演技は完璧だと思った。

澪「あっ…すいません!人違いでした」

律「(アブねー)」

男C「何言ってるんすか律さん?」

律「この馬鹿!」バキッ

男C「あでっ!」

澪「やっぱり律なんだな!?」

律「…ちっ」パサッ

もう無理かと思い、フードを下ろす。

澪「何やってんだよ……学校にも来ないと思ったら」

律「あんなとこ行く必要ねーだろ。あたしもう一生遊んで暮らせんだから」

澪「放課後ティータイムはどうするんだ?」

律「…知らねぇよ」

新たな居場所を得たあたしに部活のことなんて頭に無かった。

澪「お前が作った部活だろ!」

律「忘れたな」

澪「無理やり私を誘ったのも律だ…」

律「あっそ」

男A「この女何言ってんすか?」

律「さぁ?頭イカれてんだろ」

澪「…っ!」

律「大体お前何しに来てんだよ。こんなトコまで」

澪「みんなお前のこと心配してるんだぞ…唯も紬も梓も和もさわ子先生も」

澪「家に行ったら聡に泣きながら『姉ちゃんを元に戻して』って言われもした」

律「そいつは御苦労なこったな」

そう言った時、あたしは澪に掴みかかられた。

澪「お前は一体みんなを何だと!」

律「あー、そういうのいいから」グッ

澪「うっ!」

胸倉を掴んでいた手首を掴むと澪は苦痛に顔を歪める。

離してやると涙を流しながら手をさすっている。

澪「うっ…うぅ」

律「泣くぐらいなら最初から向かってくんなよ」

男B「やばいっす律さん。そろそろ人が…」

周りを見る、澪が大声を出していたせいか人の視線を集めていた。

律「見せモンじゃねーんだよ!」

こっちを見ていた奴らは顔を背け、再び歩き出す。

律「もうあたし帰るわ…今日はバー行く気分になんねー」

男A「お、お疲れっす」

澪「私のこと守ってくれるって…そう言ってたじゃないかっ!」

律「…言ってねーし」

泣き叫ぶ澪を放って歩き出した。


そうしてしばらく歩いていると見知った顔に出会う。

律「…ん」

老婆「……」

変だな。このババァいつもは路地裏にいるのに。

律「よう、婆さん。まだやってんのかよ」


老婆「……」

律「今度はどんなオモシログッズを売ってくれんだ?」

『独裁スイッチ 売ります』

律「何だよこれ。ちっさ…」

老婆「30万円でございます」

律「えらく破格だな」

昔のあたしなら到底手の及ばない価格だったが今のあたしは違う。

大金持ちの娘なんだ。


律「カードでいいか?」

老婆「現金のみとなっております」

律「…分かったよ。ちょっとATMで下してくるから」

老婆「……」

全速力でコンビニに向かい、ATMで金を下ろし戻ってきた。

律「はぁっ、はぁっ」タッタッ

よし、婆さんまだ居るな。

律「ほら!三十万!」バッ

老婆「お買い上げありがとうございます」

律「三十万もしたんだから、そりゃ今までを凌駕する力なんだろうな」

老婆「それはお使いに…」

律「あー分かってるから、もうそれ以上言わなくていい」

買った小さな機械をポケットに入れ、家へと戻る。

日記で親を出世させてからという物、両親は海外を飛び回り家には帰ってこなくなった。

聡「お帰り…姉ちゃん」

律「ただいま」

聡「今日、澪さんが来たよ」


律「…あっそ」

聡「すげぇ心配してたよ」

律「そうか」

聡の言葉を聞き流し部屋へ戻ろうとする。

聡「そうかって…姉ちゃん最近おかしいよ!急に学校に行かなくなるし夜は出ていくし!」

律「あたしの勝手じゃねーか。それとも何か文句あんのか?」

聡「大ありだって!今の姉ちゃんは姉ちゃんじゃない!」

律「……」

何を血迷ったのか、あたしはポケットへと手を伸ばし例の機械を取り出す。

聡「何だよ、それ…」

指にグッと力を入れ機会のボタンを押した瞬間―


目の前に居た弟が消えた。

跡形も無く綺麗さっぱりと。


律「…え?」

何が起こったんだ今?

律「どこ行ったんだあいつ?」

突然のことで頭が混乱したあたしは、そのままソファーに倒れ込んだ。


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