梓「唯先輩ッ!やめてくださいよ……」

梓が唯の手を強く握りしめた。しかし、唯は微笑み続ける。それが逆に梓を悲しませる。

唯「みんな……大好きだよ……ありがとう……」

唯「(和ちゃん……100点取れなかッたよ…。ゴメンね…)」

ドサッ

唯は梓の手を握りながら力尽きた。その表情は見る人を安心させる笑顔があった。

澪「唯……唯ィィィッ!!」

魔「貴様ら……」フラフラ

星人が歯を軋ませながら三人に迫る。澪たちはその気迫にたじろいだ。

紬「澪ちゃんッ!アイツを倒そうッ」

澪「……」グスッ

梓「アイツを倒して100点を取ればッ……みんなを再生できます」

澪「………」スッ

澪「……そうだな。行くかッ!」

澪「(律、唯……見ていてくれッ!)」

澪「私が刀でッ!」

梓「銃で援護しますッ!」

紬「いッけええええ」ギョーン

魔「ぬ………」サッ

星人が潰れた目を押さえながら避けた。

澪「今だッ!」キュウウウウウン

魔「」サッ

澪が全力で刀を振り切った。しかし、星人は知っていたかのようにそれを避けた。

魔「馬鹿がッ何度も同じ手をくらうかッ」バチバチ

澪「あッ……」

星人の手に電撃が走る。澪はその次に何が起こるかがわかった。わかってはいるが体が動かない。もうだめだ。

梓「澪先輩ッ!!」ハッ

ギョーン   バンッ

突然、銃の奇妙な発射音が辺りに響き、その直後に星人の腕が吹き飛んだ。

魔「なッ……」

魔「腕がアアアッ」

ク「フ………」ドサッ

クリスが放った弾が星人の腕を吹きとばした。クリスは少し微笑むとそのまま力尽きた。

澪「……ッ!!」

突然の事態に戸惑う星人を見て、澪は思い切り刀を振り切った。

ズバァッ

魔「」ゴロン

星人の首が弧を描きアスファルトに落ちる。星人は血を噴き出しながら倒れた。

澪「やッた……」

澪「やッたーーー!!!」

梓「やりましたねッ!!」

紬「本当にカッコ良かッたよ。澪ちゃん」ギュッ

澪「うん、ありがとう……(終わッた………)」

ジジジジジジジジジジジ

梓「転送が始まりました……」

ジジジジジジジジジジジ

梓の視界からは街が消えた。


紬「残ったのは三人だけだね………」

梓「………」グスッ

梓はさめざめと泣いていた。時折鼻をすすっている。

チーン それではちいてんをはじめる

パッ

あずにゃん 38点 TOTAL49点

梓「………」ポカーン

梓は泣きやみ、呆然と画面を見ている。澪と紬が梓の肩に手を置く。

紬「すごいわッ!梓ちゃん」

澪「やッたな、梓」

パッ

沢庵 41点 TOTAL50点

紬「41点……」

梓「すごいですッ、おめでとうございますッ!」

紬「ありがとう~」パァァァッ

あきやまさん 53点 TOTAL58点

梓「53点ッ!!すごいですッ澪先輩ッ!!」

澪「は……ははッ……やッ…た……」

澪は梓の時と同じように画面に釘付けになった。二人が祝福の言葉を送る。

紬「おめでとう~!」

フッ

梓「終わりましたね」

澪「うん……着替えてから帰ろう……」

紬「そうね……」

先程とまでは裏腹に三人は静かに着替えを始めた。三人からは笑顔が消えていた。



帰り道

梓「これから……これからはどうしますか……」

紬「この部屋のことを話したり、知られたりすると頭が爆発するらしいしね」

澪「憂ちゃんが……どうなるか……かな………」

梓「今日はみんなで楽器を買いに行くことにしていましたしね」

澪「二人が行方不明に………ということにしか……」

紬「澪ちゃん……」

梓「じゃあ、今帰るのはまずいですね。二人が来ないから探していることにしなくちゃ」

紬「公園にでも行こッか」

三人は俯きながら歩き始めた。誰も三人を助けてくれる人はいなかった。

~~~~~~~~~~

ヴーン ヴーン

澪の携帯が振動する。画面には『憂ちゃん』と表示されている。

澪「憂ちゃんからだ」

梓「」コクッ

梓が黙って澪を見つめる。澪は恐る恐るボタンを押した。

澪「もしもし…!?」

憂「あッ、澪さんですか?お姉ちゃん帰りが遅くて電話したんですけれど電話に出なくて…。そちらにいますか?」

澪「それが唯が来ないんだそれに律もッ。今三人で探している所なんだ」

憂「えぇッ!?今からそちらに向かいますッ。どこですか?」

我ながら白々しいと澪は思った。澪の演技に対し、憂の声は悲痛なものになった。

澪「いつもの公園にいるよ。すぐに来てッ。合流しよう」

憂「わかりましたッ」プッ

澪「ふぅ……」パタン

紬「なんか……悲しいね。言いたいことも言えなくて」

澪「…………」

紬の一言に澪は答えることができなかった。紬は空の星を静かに眺めていた。

~~~~~~~~~~

憂「澪さんッ!」

澪「あッ、憂ちゃんッ!」

憂が公園の入り口に到着した。様子から窺うに、どうやら走ってきたようだ。肩で息をしている。

憂「まだ…二人とも見つかりませんか………」ハァハァ

澪「うん…。警察に行かない?和のこともあるしさ」

憂「はぁ……そう…ですね」

梓「大丈夫……憂?」

憂「ありがとう……梓ちゃん」

憂は梓に微笑みかけた。しかし、問いには答えなかった。



翌日

「真鍋さん以外に田井中さんと平沢さんも行方不明なんだッて」

「なに……怖いよ……」

「この学校から三人もッておかしくない?」

同じ学校から三人も行方不明になったことで、学校はかなり困惑した。生徒たちは不安な顔をして身を寄せ合っている。

さわ子「……あなたたち、りっちゃんと唯ちゃんと待ち合わせしてたのよね?」

澪「はい」

さわ子「はぁ……和ちゃんに続いて二人まで……」

随分と痩せたさわ子が俯いて拳を握りしめる。自分の無力さを呪っているようだった。

澪「…………」

さわ子「不審な人を見たりしていない?」

澪「はい」

さわ子「そう……じゃあもう帰ッていいわよ」

澪紬梓「失礼します」ガタン

さわ子「はぁ…………」

さわ子は頭を抱え、長い髪を掻き乱いた。

~~~~~~~~~~

紬「今日は早く終わッたね」

その日は午前授業となり、部活もすることなく全員下校となった。

梓「まぁ、三人もこの学校から失踪したことになッてますからね」

澪「………」



三週間後

梓「憂……大丈夫……?」

憂「うん……」

憂が梓に微笑む。しかし、その目はやつれていて黒い隈ができていた。まともな睡眠が取れていないようだった。

梓「(憂……だいぶ痩せちゃッたなぁ。何とかしないと……)」

憂「じゃ……ここで……バイバイ」

梓「バイバイ」

梓は途中で振り返って、憂いの背中を見た。その背中からはどんよりとした黒い雲が漂っているように見えた。


平沢家

憂「ただいまー」

シーン

憂はいつもより自分の声が大きく聞こえた。両親はまだ帰った来ていないので、当然ながら返事は帰ってこない。

憂「(もうすぐ、お父さんとお母さんが帰ッてくるからその時までは………)」

憂「…………」ガチャッ

憂は悲しげな表情のまま失踪した唯の部屋に入った。もちろん誰もいなかった。

憂「お姉ちゃん……」

誰となく憂は呟いた。部屋を見渡すとある物を発見した。それを見て憂は口元を押さえた。

憂「……!ギー太……!!」

憂「たしか……あの日お姉ちゃんはギー太のメンテナンスに行ッたはず……」

憂「(いくらなんでも、ギー太を忘れるはずはないし……あれは嘘……?)」

憂「もしかして何かあッたんじゃ…!」ガラッ

何かが遭ったに違いないと憂は確信し、唯の机をあさり始めた。引き出しを開くと白い便箋が一つ置かれていた。

憂「あッ」

“お父さんお母さん憂へ、 もしもの時に”

憂「もしもの……時………」ガサガサ

憂の手が震えはじめた。この先を見たくない気持ちと好奇心が入り混じりながら憂は中身を読んだ。

“お父さんお母さん憂、多分この手紙を呼んでいるときには私はこの世にはいないと思います。”

憂「お……お姉ちゃん……」

“この世にはいない”という言葉が唯の声で再生され憂の頭に響いた。

“でも心配しないで、探さないでください。私の存在は完全に消えちゃうからね。バイバイ”

憂「もしかして……自殺………!!」ガタガタ

憂「ど……どうしよう………」

憂「捜しに行かなくちゃッ」ダッ

憂はいてもたってもいられず家から飛び出した。
わずかな望みであれ、憂は“生きているかもしれない”ことに縋るしかなかった。

~~~~~~~~~~

憂「ここなら……いるのかも………」ザッザッ

憂が辿り着いたのは唯たちの住む地域の一番大きな山だった。山には絶えず強風が吹き荒れている。

憂「お姉ちゃーんッ!!」

憂「お姉ちゃーんッ!!いるのなら出てきてーーーッ!!」

すっかり暗くなってしまった夜の山道を憂は唯の名を呼び続けながら歩いた。


中野家

梓「憂に電話しよッと」

PRRRRRRRRRR PRRRRRRRRR 『お掛けになッた番号はただいま圏外か電源g』

梓「出ない……どうしたんろう………」

ゾクッ

梓「……きたッ。スーツを持ッていかなきゃ」

ジジジジジジジジジジジ

梓「(頑張らなくちゃッ!)」

自分の部屋が視界から消えていく。そして目の前に紬が現れた。

紬「梓ちゃんッ」

梓「ムギ先輩、頑張りましょう!」

~~~~~~~~~~

憂「お姉ちゃーんッ!!」

憂「出てきてーッ」ハァハァ

憂「うう……寒いッ…」ブルブル

何十回何百回呼ぼうと、唯は姿を現さない。強い風が吹き、憂の体を芯から冷やしていく。

ズルッ

憂「あッ」

憂が足を滑らせ崖から落下した。落下中に走馬灯のように今までの事が思い出された。

憂「きゃあああああああああッ」

カガッ

鈍い音とともに、憂は岩に頭を強打し着地した。痛みはまったく感じられず、意識が遠のいていく。

憂「うッ………」

憂「(お姉ちゃんもこういう風に死んじゃッたのかな……)」

憂「(ごめんなさい……お父さん、お母さん、お姉ちゃん……)」ドサッ

憂は家族を想いながら力尽きた。そして、夜の山の岩場から憂の姿が消え始めた。

ジジジジジジジジジジジ

ジジジジジジジジジジジ

憂「え?」

憂は気がつくと見覚えの無いマンションの一室に立っていた。正面には黒い玉が置かれている。

澪「え?」

梓「なッ…」

紬「なんで憂ちゃんがッ!!?」

三人は幽霊でも見るように憂を見つめた。憂は呆然として三人を見つめた。

憂「え…ここは一体………」

憂「さッきまで山にいたのに………」

梓「……!!憂ッ、そこで何してたのッ!?」

梓が何かを察知し、憂に迫り尋ねた。憂は不思議なものを見ているように梓の質問に答えた。

憂「お姉ちゃんを捜していたら……崖から……落ちてなぜかここに………」

憂がそう言うと、澪は紬と顔を見合わた。紬も同様の考えらしい。澪は憂に歩み寄った。

澪「憂ちゃん」

憂「なんですか?澪さん」

澪「話さなくちゃいけないことがあるんだ」

憂「なんですか?」

澪「唯は死んだんだ……ここで……」

憂「えッ…それッて……どういう……」

澪「今から話す事は全部本当なんだ。信じてくれる……?」

憂「信じます……!聞かせてくださいッ」

澪は憂の瞳を見た。その瞳は今までのような暗い瞳ではなく明るく輝いていた。

~~~~~~~~~~

澪「ということなんだ」

澪が言い終えると、憂は頷いて立ち上がった。そして、三人にお辞儀をした。

憂「わかりました。みなさん、今まで大変だッたんですね」

澪「ごめんね、憂ちゃん」

憂「いえ、仕方のないことですよ。でも、私が100点を取ります。私がお姉ちゃんを再生しますッ!」

憂いが力強く決意を表明した。その直後、ガンツが例のラジオ体操の音楽を鳴らした。

あーたーらしーい あーさがきたー

澪「はじまッた」

パッ

ひだるま星人

特徴
ほのお

口癖
おーおー

憂「これが星人……」スッ

憂がガンツに近づき星人を見つめた。梓はその眼から何を考えているかは読み取れなかった。

ガシャン

ガンツが勢いよく開いた。反動で中にある銃が揺れる。

澪「みなさんッ!スーツを着てください!」

坊主「これを着ると何があるの?」

坊主頭の初老の男性が澪に尋ねる。澪はケースを男性に渡してこう言った。

澪「生きて帰れるかもしれませんッ。このスーツを着ていると身体能力が上がるんです」

澪「今から闘いが始まりますッ武器を持ッてください!」

澪「エリアから出ると、頭が爆発します。一般人には私たちの姿は見えません」

澪が坊主と他のサラリーマンの二人へ向けて説明した。

紬「憂ちゃんはどれを持ッていく?」

憂「私は……透明になるッていうのと、刀とショットガンと捕獲用の銃ですかね」

梓「それほとんど全部だよ……」

澪「私は捕獲用の銃と刀でいいかな」

紬「私も攻撃用の武器を持ッた方がいいかな……」

梓「その方がいいですよ。特に刀は一振りで出現しますし」

ジジジジジジジジジジジ

坊主「あッ」

坊主の頭部が消えていき、戦闘の始まりを告げた。


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