律は間に合わないと考えて、大声を出してdqnBに注意を向けさせた。

唯「……!危ない和ちゃんッ!!!」バッ

ズバァッ

和「唯ッ!!大丈夫ッ!?」

とっさに和を庇った唯は背中を斬られた。しかし、傷口は浅いようだ。

唯「エヘヘ……大丈夫だよ……和ちゃん」

dqnB「クソッ、はずしたか」チャッ

和「これ以上はやめなさいッ!」

和が唯の前に立ちふさがった。その目は揺るがない決意を写している。

dqnB「お前のせいでそいつが傷ついてるんだぞ」

dqnBが不敵な笑みを浮かべ、和を見つめた。和は一瞬脚にしがみついている唯を見つめた。それを見て決意が固まった。

和「………いいわ、私を殺しなさい」

唯「和…ちゃんッ、ダメだよ……逃げ…なきゃ……」ギュッ

唯が和の脚にしがみついて訴えかけた。しかし、和はdqnBだけを見ている。

dqnB「かッこいいねぇッ!」シュッ

和「……!」

ズバァッ

和「ックあ………」ドサッ ダラダラ

刀は和の肩から胸へと振り落とされた。傷口から血が溢れだし、和は地面へ倒れた。

律「おおおおおおおおおおおおッ!!!!」ギョーン

dqnB「またお前かッ!」

キュウウウウウウン ドロッ

dqnBのスーツからゲル状の液体が出てきた。

律「」ギョーン ギョーン

ババンッ

スーツの機能を失ったdqnBに律が銃を連射して放った。時間を空けて、dqnBの両脚が破裂し吹き飛んだ、

dqnB「ぐあああああッ!!痛ッてえええッ!!脚がアアァァッ」ジタバタ

dqnBはあまりの激痛に顔を醜く歪めて、のたうちまわった。

律「お前はここで死ねッ」ギョーン

dqnB「お…お前らァァァァッ!!絶対に許s」バンッ

dqnBの頭が爆発し、血が辺り一帯に飛び散った。道路は大量の血で赤く染まった。

律「唯ッ!和!!大丈夫かッ!?」

律「(唯は背中で和は傷が深い……)」

唯「和ちゃん……」ユサユサ

和「フフ……唯………守ッてくれて……ありがとう……」

和は唯に優しく微笑む。こうして見ている間にも顔色が白くなっていく。

唯「守れてないよッ!何も守れてなんか……ないよッ!」

和「ううん……十分よ……今まで楽しかッたわ……また……ね……」ガクッ

唯「あ゛ あ゛あ゛あ」

和が事切れた瞬間に唯は和の手を落として、血で染まった自分の手を茫然と眺めた。

律「和ああッ!!!おいッ!?目を開けろよッ!?」

ク「………………」スッ

ジジジジジジジジジジジ

律「おいッ待てよッ!おいッ!!」

律がいくら大声を出そうと転送は止まらない。

ジジジジジジジジジジジ

唯「のど……かちゃん……」

唯が放心状態のまま部屋に転送された。

ジジジジジジジジジジジ

唯「ああああああああ!!和ちゃんッ!!!!」

唯の悲痛の叫びが部屋に響き渡る。クリスは憐みの目で唯を見つめている。

ジジジジジジジジジジジ

澪「律ッ!唯ッ!」

律「………………」

澪「(ダメだッたか…………!!)」ギリッ

澪は自分の不甲斐無さに怒り、情けなくなった。そして、この理不尽な闘いに心の底から怒りが湧きあがった。

紬「唯ちゃん……」

チーン それではちいてんをはじめる

~~~~~~~~~~

梓「(今回はあの人が死んだから誰もいなかッた……和先輩)」

dqnA「はぁ……テツも死んだみたいだし帰るか……」ガチャン

ク「俺が言えた義理でも無いが………いつまでもクヨクヨせずに前向きに生きるんだな」ガチャン

唯「………」

唯「和ちゃんを返してよ……」ボソッ

梓「えッ」

唯「和ちゃんを返してよぉッ!」ガンガン

唯が力の限りで黒い玉を殴った。しかし、玉には何も起こらない。唯は疲れ果てその場に座り込んだ。

紬「唯ちゃん」グスッ

パァッ

突然、黒い玉に何十人もの写真が表示された。下の方には見覚えのある顔が並んでいる。

梓「玉に何か絵がッ!!」

紬「これは…今までに死んだ人……?ほらッ、この人」

律「そいつは私が殺したからな……」

澪「……!和がッ!!和がここに!」スッ

澪が和の写真を指差した。そこにはまぎれもなく和が表示されていた。

唯「えッ…」

唯「和ちゃん…和ちゃんッ…」グス

四人は唯を立たせ、部屋を後にした。



帰り道

唯「(和ちゃん……)」

澪「今日は送るよ」

唯「…………………………」

梓「(唯先輩……)」

ピンポーン

憂『はい』

律「あッ、憂ちゃん?唯を送りに来たんだけど」

憂『お姉ちゃんですか……えッ家にいるはずですけど……』

律「いや……ここにいるんだ」

憂『そうなんですか?(いつの間に……)』

憂は違和感を覚えながらも、玄関へと急いだ。

憂「どうも、すいません。迷惑をかけてしまッて」ガチャッ

律「いやいや、じゃあまた」

憂「はい、みなさん本当にありがとうございました」

梓「またねッ憂」

憂「またね、梓ちゃん」ガチャン

憂「お姉ちゃんいつの間に外に出てたの?」

唯「………」

唯は憂の質問には答えずに、自分の部屋へと向かった。何もしたくなかった。何も考えたくなかった。

憂「お姉ちゃん?(一体どうしたんだろう……心配だなぁ)」

PRRRRRRRRRR

電話のパネルが先に光り、遅れて音楽が鳴り始めた。憂は小走りで駆けより、受話器を取った。

憂「もしもし……あッ和ちゃんのお母さん。お久しぶりです」

~~~~~~~~~~

唯「(和ちゃんは死んだ………もう……戻ッてこない)」

和の名前を何度も何度も心の中で繰り返した。何も起こらないのは百も承知している。しかし、そうせずにはいられなかった。

唯「(どうしよう………本当にどうしよう…………)」

唯「(守るッて言ッておきながら守られた。私を庇ッて………)」

唯「私……何も守れてないなぁ…………」

唯は自分の無力感に苛まれ、押しつぶされそうだった。もう和は帰って来ない。



三日後の放課後

澪「今日も唯来なかッたな」

梓「まぁ……仕方ない……ですよ」

紬「和ちゃんは……グスッ……行方不明ッてことになッちゃッたしね」グスッ

さわ子「ちょッと!あなたたち!」

担任の山中さわ子が下校準備をしている四人に詰め寄る。

澪「さわ子先生……」

さわ子「あなたたち、唯ちゃんが休みの理由は知らないの?」

澪「はい、体調不良としか」

さわ子「あの子がそんな……いやよく風邪をひくからそれはないか」

律「またな、さわちゃん」トコトコ

さわ子「ちょッ……なんなのよ………もう……」

さわ子は通り過ぎていく四人の背中を見つめることしかできなかった。



その日の夜

澪「あの部屋とかについて調べたらヒットするかも…」カタカタ

澪「おッ」

『黒い玉の部屋』

検索結果を見た澪の手が一瞬止まる。

澪「随分ストレートにヒットしたな。どれどれ……」

澪「“この黒い玉はガンツと呼ばれている”……」

澪「“ガンツ”……、えーッと“星人と呼ばれる生き物と闘い”……」

澪「“合計100点を取ると三つの選択肢が与えられる”……。解放されるだけじゃないのかッ!?」カチカチ

“記憶を消されて解放される”、“より強力な武器が与えられる”、“メモリーの中から人間を再生させる”

澪「メモリーから再生……もしかして和を……生き返らせれる……」

澪「ん?“カタストロフィ”ッてなんだろう……」

澪「“この世界は…カタストロフィの日に向かって進んでいる……”、“終局”……?よくわからないな」

しかし大きな収穫を手に入れた。澪は高まる興奮を抑えパソコンを閉じた。



翌放課後

紬「久しぶりのお茶だね」

律「トレーニングばッかだッたしな」

澪「みんな、今日私の家に来てくれないか」

梓「どうかしたんですか」

澪「重大なことに気がついたんだ。唯も呼んで見てもらう」

律「もしかしてあの部屋のこと?」

澪「あぁ」

紬「じゃあ、お茶飲んでから行こッか」

律は紅茶を一気に飲み干し立ち上がった。

~~~~~~~~~~

憂「お姉ちゃん!みんな来てるよー」

唯「でたくない」

憂「どうしても見てほしいものがあるんだッて」

澪「そうだッ!唯!」

澪は興奮を抑えきれず、二階まで上がってきた。ドアの向こうの唯に語りかける。

憂「み、澪さん…」

澪「お願いッ!私の家に来てッ!」

唯「……どうしたの」ガチャッ

澪「いいからッ来てくれッ」バッ

唯「あッ」

澪「ちょッと唯を借りてくね」

澪は唯の手を引いて階段を急いで降りた。早く見せたい、伝えたい。

紬「あッ、唯ちゃん」

律「オッス、唯」

唯「みんな……」

久々に日差しを浴びたのか、眩しそうに眼を細めて腕を額に運んでいる。

澪「さぁ行こう」

唯「どうしたの……」

律「あたしらもまだ知らないんだ」

梓「(一体なんなんだろう)」

早歩きする澪を先頭に五人は歩き始めた。


秋山家

律「ん、着いたな」

紬「おじゃましまーす」

澪「どうぞ、あがッて」

律「で?どうしたんだよ。何かあッたのか?」

澪「うん、これなんだ」

澪がスリープさせていたパソコンを起動する。

紬「インターネット……黒い玉の部屋?」

梓「これッて本当にあの部屋と関係があるんですか?」

澪「うん、ここの管理人はどうやら東京の人らしいんだ」

梓「ちょッと見せてください」カチカチ

梓「ねぎ……星人…をくろの けいが倒す……」

梓「私たちとは違う星人……」

澪「そう、ここの管理人はガンツのメンバーなんだ」

紬「がんつ?」

律「ガンツッてなんだよ、澪」

澪「この黒い玉のことらしいんだ。そして、どうやら世界中には私たちみたいな人がいるらしいんだ」

律「世界中……か………」

梓「世界中の人もこんなことを……一体何の目的で……」

澪「まぁ、それも大事だけどこッちだ。特に唯、見てくれ」カチ

紬「100点のメニュー……」

紬「記憶を消されて解放される……、より強力な武器、メモリーから人間を再生……!!」

唯「あ……」

澪「そうだ、唯。100点を取れば和を再生できるんだ」

紬「そッか!ガンツのメモリーには和ちゃんがいたしねッ!」

梓「でもそれッて……自由に…解放されないッてことですよね……」

唯「ううんッ!私はそれで良いよッ!」

梓「唯先輩……」

唯「私が100点を取って、和ちゃんを再生させるよ。ありがとう澪ちゃん」ニギッ

唯は澪の手を取り、強く握りしめた。唯の顔が明るく輝いている。どうやら元気を取り戻したようだ。

澪「いや…そんな///」

澪が顔を赤くして照れる。他の三人もそれを見て温かく微笑む。

律「(唯のやつも元気になッて良かッた)」

律「(澪が死んだら………どうするんだろうな……私。でも、そんなことはさせないからな)」

唯「よーッし!100点目指して頑張るぞーッ!」バッ

唯は天井に拳を突き上げた。

紬「私も頑張るわッ!唯ちゃん!」バッ

紬が遅れて拳を突き上げた。



二週間後

唯「よしッ…書けた。引き出しにッと」スッ

唯は白い便箋を机の引き出しにしまった。唯は閉めた引き出しをしばらく眺めていた。

ゾクッ

唯「……きたッ」

唯はスーツに着替えて急いで一階へと降りて、玄関へと向かった。

唯「憂ーッ、ちょッとみんなとギー太のメンテナンスに行ッてくるねー」ガチャッ

憂「えッ、お姉ちゃん!外寒いから上着着て行ッた方が……」

憂「あれッ……いない………」

唯「ごめんね……憂」

茂みの陰から憂を見つめながら呟いた。罪悪感が唯の胸を覆う。転送が始まり、憂の姿が視界から消えた。

ジジジジジジジジジジジ

律「オッス」

唯「りっちゃん。頑張ろうね」

律「おう」

ク「(立ち直ッた様子だな…)」

あーたーらしーい あーさがきたー

ラジオ体操が部屋に鳴り響く。もう何回この音を聞いたのだろう。

パッ

まほうつかい星人

特徴
つよい PSI まほう

好きなもの

口癖
マジックパワー

梓「魔法使いですか……それにしても……人間にしか……」

紬「魔法ッて本当にあるのかな?」

ガチャン ドン

勢いよくガンツが開いた。

男1「すいません、ここッて一体……」

サラリーマンの男が唯に遠慮がちに尋ねる。

唯「今から私たちは星人と呼ばれる生き物と闘う事になりますッ!」

澪「できるだけ死傷者はだしたくないのでこのスーツを着てください!人数分ありますから」

澪が男1にスーツケースを渡した。

男1「これをですかッ!?」

男2「勘弁してくれよ…」

dqnA「いいから着ろよ」

男2「…………」

dqnAが男2を鋭く睨みつけた。男2は黙りこんで俯いた。

澪「あッ…あの」

dqnA「いや、礼はいいよ」スッ

律「…………」

唯「これから街のどこかに移動します。これからは死ぬかもしれない闘いになりますッ!」

唯「覚悟してくださいッ!これは戦争でもありますッ!!」

男1「生きて帰るんだッ!」ジャキッ

男2「あぁ、帰ろうぜ!」

男1、2が意気込んで言った。二人を待つ家族でもいるのだろうか。

唯「みなさん、絶対に生きて帰りましょうッ!!」

ジジジジジジジジジジジ

男「あッ」

紬「転送が始まりましたッ。武器は持ちましたね?」

唯「(100点を取るッ……絶対に……!!)」

唯は決意を固めた。絶対に和を再生する。決意の炎が唯の心を加熱していく。

律「行くぞッ!!」


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