唯「えッ?」ピタッ

唯は立ち止まって、和を見つめた。

和「なに……今の黒い男の人……」

和はまるで空気を掴むように、宙で手を動かした。何かに触れようとしているようだ。

唯「の…和ちゃん」

ドンッ

和「ここに……見えない何かがある………」

和は姿の見えない唯に触れた。唯は和の手を握り返そうとしたその時。

梓「唯先輩ッ!転送始まりますよッ」

唯「う、うん。わかッてるよ。またね、和ちゃん」

唯は衝動を抑えて、和の手を解いてみんなの元へ駆けだした。

和「…………なんだろう疲れてるのかな」

和は一人で不思議そうな顔をして帰路についた。

ジジジジジジジジジジジ

梓「最近は、本当にスムーズですね」

澪「そうだな」

全員の転送が終わり、五人は玉の前に集まる。

チーン それではちいてんを始める

パッ

dqnA 0点 TOTAL0点

バカすぎ

dqnB 5点 TOTAL5点

短気すぎ 睨みすぎ

dqnC 0点 TOTAL0点

リアクションうざすぎ

dqnA「採点ッてなんなの」

梓「100点を取れば、自由になれるらしいです」

dqnA「へぇ~」

パッ

あきやまさん 5点 TOTAL5点

喜びすぎ     パッ

沢庵 5点 TOTAL9点

ニコニコしすぎ  パッ

凸 10点 TOTAL14点

空気読みすぎ

紬「わぁ~5点!」

澪「やッた……!5点……!」

律「(頑張ッたな、澪)」

パッ

あずにゃん 5点 TOTAL11点

よくできましたッ!(笑)

平沢進 0点 TOTAL19点

ドジすぎ バカすぎ

唯「バカすぎッて……そッちはバカにしすぎだよッ!」

梓「まぁ、スーツを忘れたのは痛いですね」

クリス 10点 TOTAL34点

ク「ふぅ……あと何回で終わるんだか……」

シュン

唯「終わッたー」

律「ん、帰ろッか」

梓「そうですね、着替えましょう」

五人は着替えの準備を始めた。

dqnC「外には出られないぞ」

梓「採点が終わればドアに触れます」

dqnA「またここにこなくちゃいけないのか~」

dqnC「めんどいな」ツルッ

dqnCがドアノブに触れようとするが、触ることができない。

dqnC「……おいッ出られないぞ!」

梓「え……そんなはずは……」ツルッ

梓も何度も掴もうと試みたが、結果は同じだった。こんなことは初めてだ。

あーたーらしーい あーさがきたー

梓「え………………」

ク「どういうことだ……」

不吉な気配を漂わせながら本日二度目のラジオが部屋に鳴り響く。

梓「な……なんで……」ダダダダ

梓が黒い玉の元へ駆け寄る。

梓「なんでまたッ……」

澪「こんなことは初めてなのか?」

唯「おかしいね」

梓「どうして………」

パッ

梓「あッ」

真鍋和

特徴
よわい 頭が良い

口癖
生徒会

唯「えッ………………」

画面を見た唯は表情が凍りついた。視線を離さずにただ表示された画面だけを見つめている。

律「なッ……これは…………」

紬「どうして和ちゃんが?」

dqnA「また行かなきゃダメなの?」

dqnC「なにこいつ、人間じゃねーの?」

dqnCがまじまじと和の顔を覗き込む。

唯「…………ッ」ダッ

唯「転送してッ!早くッ!お願いッ!!」

唯が黒い玉に近寄り、希望を伝えると転送が始まった。唯の姿がどんどん消えていく。

ジジジジジジジジジジジ

紬「ゆ……唯ちゃん……!」オロオロ

律「……!あいつ、先回りして和を逃がすんじゃ……」

澪「梓ッ!時間内に倒せなかッたらどうなるんだ!?」

梓「わからないです。でも、あくまで推測ですが全員死ぬとか……」

梓はこう答えることしかできなかった。何しろこの部屋のことはまだ何も知らないに等しい。

梓「(唯先輩……あの一瞬でここまでの行動を……。危機的状況の頭の回転は速い……!)」

dqnA「あぁッ!?時間内にこいつ倒さなきゃ全員死ぬのかッ!?」

dqnC「おいおい、急がなきゃなぁッ!」

dqnB「こんな女一瞬で殺ッてやるよ」

紬「あッ」

ジジジジジジジジジジジ

澪「くッ……」

律「クソッ……待ッてろ唯!」

~~~~~~~~~~

唯「ハァッ…ク……ハァ」

唯は転送が完了すると同時に駆けだして、和の家へと辿り着いた。震える手でインターフォンを押す。

ピンポーン

和『はい』

唯「もしもしッ、和ちゃん?」

和『どうしたの?唯』

唯「和ちゃんドアを開けてッ!」

和『どうしたの、落ち着きなs』

唯「いいからッ!!」ハァハァ

和「どうしたのよ唯。息切らして」ガチャ

唯「和ちゃんッ!逃げようッ!逃げなきゃ……」ハァハァ

和「逃げるッて何から?」

唯「いいから来てッ!」グイ

唯は和の手を強引に掴んで走りだした。和も唯の手に引かれ走りだす。

和「ちょッ……唯。どうしたのよ」

~~~~~~~~~~

ジジジジジジジジジジジ

唯を除く、全員の転送が完了した。

梓「どうしますか……」

律「タイムリミットになれば死ぬかもしれない……か……」

紬「私は和ちゃんが死ぬなんてイヤッ!」

澪「わかッてるよ、ムギ。でも…………」

律「とりあえず唯を捜そうッ」

梓「そうですね」

律「行こうッ!」ダンッ

DQNたちを置いて、律たちは駆けだした。一刻を争う事態に四人は焦っていた。

dqnA「あいつら行ッたけどどうする?」

dqnB「俺たちも行こう」ダンッ

dqnBは不吉な笑みを一瞬浮かべ、律たちのあとを追いかけた。

dqnB「」ギュン

律「(速いッ!)」

dqnBが律たちを追い抜いた。dqnBは素早く建物を伝って、身軽に進んでいく。

dqnB「いたぞッ!」

唯「…!行こうッ」グイ タタタ

和「えッ」

唯はdqnBに気付き、駆けだした。

dqnB「いかせるかよッ」ザッ

しかし、男は二人の頭上を飛び越えて、行く手を阻んだ。表情は怒りに満ちていた。

dqnB「お前には借りがあるからな……」ギリギリ

和「唯、なんなのこの人は」

唯「………」ハァハァ

dqnB「ここで仕留めてやるよッ!」チャッ

dqnBは銃口を二人へ向ける。銃を見た和は恐怖で唯の手を強く握る。

和「…!銃?」

律「おおおおおおおおッ!!!」キュイイイイイイイイイイイン

律は体全身を隆起させ大声を出した。レンズ状のポイントはこれまでにない輝きを見せている。

律「おおおおおッ!!」ドガッ

律は全力で男を殴り飛ばした。男はコンクリートの壁を破壊しながら吹き飛んだ。

和「律!?」

dqnB「ぐッ!」ガラガラ

dqnC「てめぇッ!」

唯「和ちゃん、行こうッ!」ダッ

和「えッ………これは……一体………」

いきなり奇妙な服を着た律が現れ、男を殴り飛ばす光景を目の当たりにし、和はますます混乱した。

dqnC「てめぇッ!何してんだよッ!」

律「待ッてくれ…お願いだ」

律「今回のターゲットは私たちの友達なんだッ!」

dqnA「えッ」

dqnA「じゃあ、人間ッてこと?」

律「そう……だから勘弁してくれッ!お願いだッ!!」

dqnA「どうするよ、テツ」

dqnB「関係ない。行くぞ」

dqnBが律の制止を聞き流し、歩み始める。

紬「お願いですッ!見逃してくださいッ!」

dqnB「じゃあ、俺らは死ねッてか」

紬「え……」

dqnB「タイムリミットになれば死ぬんだろ?」

梓「それは推測ですッ!」

dqnB「じゃあ、見ず知らずの人なら殺していいのか?」

律「え?」

dqnB「このメンバーのッ!誰も一切関わりのない人間ならッ!殺していいのかッ!?」

澪「ッ……」

dqnB「お前らの言い方だとさ、まッたくの他人だッたら殺していいように聞こえるけど」

律「それは………」ギリギリ

律は反論できなかった。男の言うとおりだ。

dqnB「」ニヤニヤ

律を論破したdqnBは会心の笑みをもらした。律は俯いて、拳を握りしめている。

dqnB「そこのお前はどうなんだよッ?」

ク「俺はどッちでもない……。ただあんたらの意見には賛成できないな」

dqnB「へッそうかよ」ザッ

澪「………」

dqnBが振り向くと、澪が両腕を広げて立ちふさがった。

dqnB「……どけ」

澪「い…嫌だ」

dqnB「そこをどけッ!」バッ

dqnBが拳を握りしめて、澪へと狙いを定める。

澪「……!」

キュイイイイイイイン

律「うおおおおお!!」ドンッ

dqnB「」ガッ

dqnBは律の動きを見切り、片手で受け止めた。

梓「(あの距離の不意打ちを受け止めた……!)」

dqnB「お前……俺らと闘るのか?」

律「ここから行くッてんなら闘うぞッ!」

dqnB「トモォッ!刀寄こせッ!」チャ

dqnB「へッ」ガチャッ

ギョーン

弾が律へと容赦なく発射される。

律「クソッ!」

紬「待ちなさいッ!」

ギョーン

dqnB「」ダンッ

dqnBは紬の放った弾を素早く避けた。

紬「あッ……」

dqnB「ノロイんだよ」ガッ

紬「あッ!」ドゴォン

紬はdqnBに腹部を蹴られ、コンクリートにめり込んだ。

律「待てッ!」ダンッ

すかさず律がdqnBを追いかける。dqnCが銃を構えて、残った三人を見る。

dqnC「くそッ!闘るしかねぇッ!」

ギョーン

梓「(上トリガ―で……)」スッ

梓「ロックオン!」カチッ カチッ

チュイイイイイイイン

銃のレントゲン画面にdqnAとCが映し出された。

dqnC「おいッ!コイツら撃ッてもハジケねぇぞッ!」

dqnA「当たッて無いか、服のせいだろッ!!」ハァハァ

梓「」ギョーン ギョーン ギョーン ギョーン

dqnAC「え?」

キュウウウウン ドロッ

二人のスーツからゲル状の液体が流れ出た。dqnCは大声で叫びうろたえている。

dqnC「なんじゃこりゃああッ!?」

梓「スーツを破壊しましたッ!もう動かないでくださいッ」

dqnA「クッ……」

澪「私は律の所に行ッてくるッ!」ダッ

紬「澪ちゃんッ、頑張ッて!」

梓「…………」

梓と紬が睨みつけると、二人は観念したのか銃を捨て両手を上げ、降参した。

~~~~~~~~~~

和「唯、一体どういうことなの!?きちんと説明して」ハァハァ

唯「和ちゃんは今、あの男の人たちに狙われているの」ハァハァ

和「え?」

和は息を切らしながら立ち止まった。

唯「今から言う事信じてくれる?」

和「………」

和は静かに唯の話を聞いていた。唯から目を離さずにまっすぐ見つめていた。

唯「私たち前に一度死んだの」

和「!?死んだッてどういうことなの?今生きてるんじゃ……」

唯「うん、死んでなかッたんだけど、ある部屋に集められて変な闘いをさせられてるの」

和「ヘンな闘い?誰と?」

唯「よくわからない、生き物とか……」

和「じゃあ、さッきのは…。もしかして律たちもそうなの……?」

唯「うん……。それで今回のターゲットが和ちゃんで………」

和「………」

和は何かを考えているかのように舌を向いて俯いた。その表情から何を考えているかは読み取れなかった。

唯「ごめんね……」

和「ううん……」

唯「和ちゃん………」

dqnB「見つけたぞッ……」ビュオオオオオオッ

キュウウウウウウン

dqnBは高く跳び上がり、刀を伸ばした。どんどん二人に迫って行く。

律「(クソッ!追いつかない!)唯ィィッ!!」


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最終更新:2011年03月17日 02:43