外の世界

DQN「うおッ!?外だ」

男「本当に星人とか出るのかな?」

男3「ねーよ、帰ろうぜ」

男たちが歩いて行く。

女2「出れないかと思ッてちょッと焦ッたよ~」

梓「……………」

唯が出てこない。もしかすれば、と不安が梓を襲う。

ジジジジジジジジジジジ

電柱の側から唯の頭部が出現を始めた。

梓「………!!」

唯「あッ、あずにゃ~ん」ダキッ

梓「唯先輩………ッてなんですかその格好は!?」

唯の滑稽な服装に梓は思わず両腕を解いた。とてもセンスの良い服装とは言えなかった。

唯「どうかッこいいでしょ~?」

それでも唯は自慢げな表情を浮かべて笑っている。

唯「でもいきなりここに来たから制服忘れちゃッたよ」

梓「何してるんですか………」

梓「まぁ、これで外に出られましたし帰りましょうか」テクテク

二人はここがどこかわからないので大通りにでるまで男たちについて行くことにした。

唯「制服どうしよう………憂に怒られる……」テクテク

梓「まッたく………」

唯のドジに思わずため息が出た。

唯「ねぇ?あずにゃん。その銃はどうするの?」

梓「あッ、つい持ってきてしまいました。しかも二個も」

梓は銃を持ってきたことを忘れていた。しかし、捨てるわけにもいかない。

唯「長いほうのなんか映画に出てきそうだね」

ピンポロパンポン ピンポロパンポン

一昔前を思わせるのメロディが一行の元に流れた。

DQN「なんだこの音?」

男「なんか大きくなッてないか?」

女「なにコレ……怖い」

歩くたびに音が大きくなる。全員の表情が一歩ずつ前進するたびに暗くなっていく。

ピンポロ パンポン ピンポロ パンポン

女3「頭が痛い……」

女3が頭を押さえ、苦しそうに歩く。

ピンポロパンポン ピンポロパンポン

バンッ

突如、女3の頭部が道路一面に飛び散った。辺りが絶叫に包まれる。

女「きゃあああああッ……あッ」

バンッ

怖さのあまり、駆けだした女の頭部が爆発した。血しぶきが道路へ飛び散る。

男3「うわあああああ」ダッ

バンッ

男の頭部も無残に飛び散った。みんなの立つ道路はあっという間に血の海となった。

梓「……ッ唯先輩、逃げましょう!!」ダッ

梓が唯の手を掴んで元来た道へ引き返した。

唯「怖いよあずにゃん」ガクガクガク

唯の顔色が青くなり、体はガクガクと震えている。

ダッダッダッ

DQN「音が……止んだ……?」

気がつけば音が止み、静かな夜の道路に戻っていた。

女2「もしかして、あそこより先に出れば死ぬッてこと?」

男2「せっかく外に出れたッてのに」

男「もしかして、頭に何か入れられたんじゃ……」ガクガク

男が目を上に向け、自分の頭を押さえた。

男「あそこに人がッ助けを呼ぼうッ」

男2「おーいッ」タッタッタッ

男「すいませんッ警察を呼んでください!」

一般人1「えッ……」

男が呼び掛ける。しかし、何か様子がおかしい。目線が男と合っていない。

男「警察を呼んでくださいッ」

一般人2「どうかしたのか?」

一般人1「いや……なんか何かにぶつかッた……」

男2「ふざけてないで早く呼んでくれッ!!」

一般人1「ここらへんに……」ブンブン

手で空を切り、男の手に触れようとしている。

男「もしかして……俺たち見えないんじゃ……」

DQN「はぁッ!?」

信じたくない気持からなのか、焦りからなのかDQNが声を張り上げる。

男「あのなんとか星人ッてのを倒さなきゃ終わらないか……死んでるのか……」

梓「(もしかして、本当にあのなんとか星人を倒さなくちゃいけないのかな)」ガクガク

梓は恐怖に震え、銃を強く握りしめた。

DQN「じゃあ、星人を倒さなきゃ終わらないのかよッ!」

DQN「さッさと俺が終わらせてやるッ!」ジャキッ

DQNが銃を構え戦闘態勢に入った。

唯「本当にいるのかな……」ガクガク

梓「今までのことが今までですし……」

梓は半信半疑だった。星人なんか存在するはずはないと思いながらも、ありえないことが次々と起こっているので困惑していた。

DQN「あッ」

男が前を指差した。薄暗い道路の向こうで何かが蠢いている。

男「なんだ……コイツ」

クルッ

星人「食べたか?」

顔が緑色の星人がこちらを振り向いた。

唯「本当にいたよあずにゃん!」

梓「………!」

梓は目を大きく見開いた。まさか、本当に存在するとは。

DQN「ぶッ飛ばす!!」カチッ

DQNがいきり立って引き金を引くが何も起こらない。

DQN「やっぱおもちゃかよ!クソッ!」

DQNは舌打ちしながら、銃を叩いた。

や「本当に食べたのか?」ドン

DQN「うおッ!?」

星人がDQNを突き飛ばした。DQNは反動で背中を壁に打ちつけた。

や「送ッてヤル!!」ドカッバキッ

星人がDQNに殴りかかる。

DQN「クッソ!なんだよこいつ!!」カチッカチッ

DQNがヤケになって引き金をがむしゃらに連続で引いた。偶然、二つのトリガ―を同時に引いた瞬間

ギョーン

何とも形容しがたい非常に奇妙な低音が道路に響いた。

DQN「は?」

や「……………」

銃に見られた初めての現象。DQNは何かが起こることを期待して待つが何も起こらない。

や「キチンと食べろッ!」スッ

やはり何も起こらない。星人も異常が無い事を確認すると、再び拳を握りしめた。

DQN「クッ……」スッ

DQNが身構えたその時。

バンッ

星人の片腕が木端微塵に消し飛んだ。血が道路一面に飛び散る。

女2「きゃあああああああああ」

男「うわああああああ」

や「ぐああああああああッ!!」

星人が血を垂らしながら地面にのたうちまわる。

DQN「何だ……この銃……」

DQNが恐怖と好奇心が入り混じった顔で銃を見つめた。

DQN「二つ同時に引いたらでたぞッ!」

や「残さずにッ食べろッ!」バッ

DQNが笑いながら引き金を連続で引いた。

ギョーン ギョーン

男2「あッ……」

ババンッ

星人の両脚が吹き飛び、星人は血の海となった道路に体を沈めた。

や「ギョエエエエエッ」ピクピク

DQN「うッせーやつだな」ガッ

DQNが星人の頭部を脚で踏みながら、銃の引き金を引いた。

ギョーン

や「く、残さz……げぼぶッt」

バンッ

星人の頭部が破裂し、DQNは返り血を浴びる。

男「うえええぇ」ゲロゲロ

唯「あ……あずにゃん……」ガクガク

梓「うッ……」ゲロゲロ

梓は堪え切れなくなり吐いた。唯は何もできず、ただ震えて立っている。

DQN「終わッたぞ!」

DQNが声を張り上げる。しかし、何も起こらず。時間だけが過ぎていく。

男2「終わらないぞ」

女2「どうなッてんのよ……」

男「うええええッ……」

DQN「クソッ……何をしたら終わんだよッ」

ダダダダダダダッ

足音が聞こえ、全員が振り向くと顔の以上に赤い生物が立っていた。

女2「何……こいつ……?」

男「顔が赤い……」

梓「(何コレ……顔がトマトみたいだけど。トマト星人?)」

ト「怒ッたゾ」

星人は怒りの表情を浮かべている。体が震えていて銃で撃たなくとも破裂しそうだった。

DQN「……は?」

ト「怒ッたゾ」

DQN「うッせーんだよッ!」

ギョーン

シュッ

星人は俊敏な動きで不可視のエネルギーを避けた。

男「速いッ!!」

DQN「クソ野郎がッ!」

DQNは焦りの表情を浮かべながら連射する。

ギョーン ギョーン ギョーン

シュッ バッ

星人が高くジャンプした。

DQN「なッ!?」

ト「怒ッたゾおおおおお」ブシュウウウウ

星人が吐瀉物をDQNにぶちまけた。DQNは銃を構えていたせいか、顔一杯に吐瀉物を浴びた。

男2「まずいッ!!」

DQN「あああああああッ!」シュウウウウウウ

DQNが吐瀉物で覆われた顔を押さえ叫ぶ。顔からは煙が立ち上っている。

女2「と……溶けてるッ!」

男「に……逃げるぞッ」

梓「あッ……唯ッ先輩!に逃げましょうッ!」グイッ

唯「う、うんッ」ダッ

男「うわあああッ!!」ハァハァ

全員が我先にとばかりに駆けだした。残りの体力なんて気にしていられない。梓は全力で走った。

ト「許さんッ許さん!許さん!」

ドドドドドドド

星人が人間の脚では到底逃げきれない速度で駆けだした。

女2「きゃあああああ」ガッ

ト「許さんぞッ!」ドカッ

女2「うッ……」

トマト星人が女2の首を掴み、持ち上げた。女2は苦しさのあまり足を虚しくバタつかせるも、
意味をなさなかった。そして、

ズン

女2「あ………あああッ……」ズズズズ

トマト星人の手の平から槍のように鋭い棒が現れ、女2の腹を突きさした。棒は根元まで深く刺さり、血がポタポタと滴る。

男「うわああああッ」ガッ

ト「怒ッたゾ!」ギギギ

不幸にも男は星人に捕まってしまった。

男「たッ助けてくれ!」

男2「やめろッ放さなきゃ、お前はこうだぞ!」

男2がトマト星人に銃を突きつけた。星人が銃をまじまじと見つめた。しかし、力は緩めない。

ト「…………」ギギギ

男「あ……ああああああッ」

男2「やめろおおおッ」

男の危機を感じた男は引き金を目一杯に引いた。

ギョーン

ト「」スッ

トマト星人は素早く腕を移動させ、男を盾にして身を守った。

男2「あッ」

男「お前……俺に撃ッたのかッ?」

男2「あ……あああ」

バンッ

男の体が中心から破裂した。男2は銃を持った両手を降ろし、わなわなと震えている。

男2「うわああああッ」ダッ

男2は叫び声を上げ、星人に背中を向け走り始めた。だが

ズンッ

男2「がッ……ま………」ドサッ

ト「………」

トマト星人は辺りを見渡したが道路には誰もいなかった。

梓「はぁッ、はぁッ」

唯「逃げれたかな……」ハァハァ

梓「どこかに隠れましょう」バッ

唯「うう……」

唯と梓は裏路地の自動販売機の暗がりに隠れた。星人の駆け足が近づいてくる。二人は身を寄せ合い静かに震えた。

ダダダダダダッ

ト「許さんッ!許さんッ、絶対にッ」

唯「(こ……怖い……!)」ブルブル

極度の緊張により唯の体は激しく震えていた。

梓「(お願い!向こうへ……!)」

梓は両手を組んで神に祈った。

ガッ カランカラン

唯「あッ……」

唯は捨てられていた空き缶を踏んでしまった。星人が鬼のような形相でこちらを振り向いた。

梓「(唯先輩ッ!)」

ト「許さんッ!」

ドドドドドドドッ

唯「あずにゃんッ!逃げよう!!」ダッ

梓「ック……!」ドキンドキン

二人は一目散に駆けだした。梓は足がもつれて思うように前に出ない。
どうしてこんな目に遭ってるんだろう、と梓は思った。ついさっきまで、唯と楽しく買い物をしていた。
そんな普通の日常から切り離されたことに梓はまだ納得できなかった。

ト「許さん許さん許さん許さん許さん許さん許さん!!」 ドドドドドド

キュイイイイイイイン

梓「えッ…」

唯の動きが急に速くなった。黒いスーツが盛り上がり、レンズ状のポイントが青く光っている。

ガッガッガッ

唯が脚を踏み出すごとにアスファルトがひび割れ、めり込んだ。唯は車の様にスピードを上げていき、走り去った。

梓「ちょッ……唯ッ先輩……待ッて」

ト「許さんッ!」ガッ

梓「きゃッ……」ズササ

星人の蹴りで梓は転んでしまった。舌を歯で噛んでしまい、血の味が口内で広がる。
しかし、そんなことは気にしていられない。

梓「(ど……どうしよう。唯先輩はものすごい速さでどこかに行ッちゃッたし……)」ガクガクガク


3
最終更新:2011年03月17日 01:31