次の日の澪捜索にはある作戦があった

澪の事情を知る私でなければ、絶対に思いつかない作戦だ

題して
町のデートスポット巡り大作戦!

まぁ、デートスポットは一人で巡るわけだけど

奴の狙いはカップルだ

デートスポットのほうが遭遇率は高いはずだ

そして奴の行動範囲はこの町内

きっと会うことができるはずだ


まずは公園

先日の事件のせいか人はいない

まぁ初めから期待などはしていなかったが

次にショッピングモール

人が多いところにはまだカップルが大勢いる

人の集団の中にいれば安全だ、と思う人間が多いようだ

全く、カップルというのは節操がない


次にゲームセンター

澪は一人では行ったことはないだろうが、今の澪ならどうだろう

あまりコアなゲームには触れず、カップルが楽しめそうなコーナーを回る

不審がられない程度にてきとうなゲームをたまにやる

しかし澪の姿は見当たらなかった


収穫が無く、とぼとぼと帰る途中

ライブハウスの前で黒い人影を見つけた

律「澪!」

「!」

影は少し大げさに肩をびくつかせたかと思うと、走りだした

律「待てよ!」

今度は逃がさない

逃がすわけにはいかない


澪は思ったより速く、また見失いそうになったが

信号がそれを防いでくれた

流石の爆弾魔も、大きな通りの車が頻繁に行きかう横断歩道を渡るわけにはいかず、立ち往生していた

律「捕まえた!」

澪「……間に合った」

律「え?」

澪の声と同時に、私の体に何か熱いものが接触する

同時に大きな音が聞こえる

次第に意識は遠くなっていった……


目が覚めた時には、私は病室にいた

律「……私」

唯「目が覚めたんだね、りっちゃん!」

梓「もう!心配したんですよ!」

紬「まさか爆弾魔に会っちゃうなんて……」

律「みんな……」

和「でも軽傷で済んで良かったわ」

憂「律さん、りんご剥けましたよ」

律「悪いな、みんな」

そうか、私が勝手に動いたらみんなに迷惑をかけてしまうのか

なら仕方ないな

律「……これから言う話、信じてくれるか?」

その場にいる全員が頷くのを確認し、私は私の知る限りの真実を全て話した

梓「じゃあ澪先輩が爆弾魔だっていうんですか!?」

律「ああ、澪はなんらかの方法でカップルを爆発させている」

唯「何らかの方法……」

憂「まさか……」

律「心当たりがあるのか!?」

紬「彼女は……不死者になったのかも」

律「不死者?」

信じてもらえない話をしたつもりが、信じられない話の応酬を食らってしまった

ムギの説明によると、

不死者とはある日平凡な生活を送っていた人間が突然、バラバラになっても再生する異常な生命力と

超人的な能力を得ることがあるらしい

それが不死者

澪はその不死者で構成される組織に入ってしまったかもしれないと言うのだ

律「そんなことってあるのかよ……」

憂「試してみます?」

そう言うと憂ちゃんは先ほどりんごを剥いていたナイフを自らの手に当てた

血が噴き出し、傷口はどんどん開いていく

しかし、数秒たってからその傷はどんどん小さくなっていき、最終的には元通りになってしまった

私と梓と和はその光景をただあっけらかんと見ていた

憂「これで信じてくれますよね?」

律「……あ、ああ」


みんなにも協力してもらって、早速動きたいところだったが

一応数日は絶対安静と言うことで、私は動くことはできなかった

でも、たまには頼るのもいいだろう

みんなは私の作戦を実行し、デートスポットをしらみつぶしに探していった

……しかし、特に成果は得られなかったようだ

紬「作戦がバレて方法を変えたのかも……」

律「じゃあどうすればいいんだよ……」

もうすぐバレンタイン

滑り止めの受験もあるし、
みんなでN女子大の合格発表を確認してお祝いするって約束したじゃないか!


2月13日

結局今日の滑り止め受験までに澪は見つからなかった

爆弾魔の事件もないらしく、どこかに潜伏しているのかもしれない

どの問題が難しかっただの疲れただの話していると、憂ちゃんからメールが届いた

憂『律さん、至急純ちゃんに会ってください! 私の家にいます、理由は後で説明します!』

律「……純ちゃんに?」

メールの件を二人に伝え、途中ムギと別れて唯と一緒に平沢家に向かった

唯「ただいまぁ、あ、甘い匂いがする!」

律「おじゃましまーす」

憂「おかえりお姉ちゃん、ちょっと律さんだけいいですか?」

唯「私はー?」

憂「ちょっと待っててね」

私は憂ちゃんに連れられるまま、憂ちゃんの部屋に入った

純「どうもこんにちは」

律「よう鈴本さん」

純「鈴木です……」

律「ははっ、ごめんごめん」

純「そんな意地悪するなら教えませんよー」

律「え、何を?」

純「実は今日……私が澪先輩を見かけます」

律「……?」

憂「純ちゃんは予知夢を見ることができるんです」

律「それも……不死者とか言うのの力?」

純「私は違います、生まれつきみたいなもんです」

……世の中不思議に溢れてるもんだな

と、そんなことより

律「で、澪に会えるのか?」

純「はい、それなんですけど……」

何故か言葉を濁され、不安が私の中に過る

純「誰かが爆死します」

律「……!」

そうか、澪が誰かを殺してしまうのか

憂「そこで私の出番なんです」

律「え?」

純「爆死するのは女性のほう、男性のほうは無傷でした」

憂「だから私がその女性になれば、死にはしません」

律「で、でも……」

純「男性役は……お願いできますね?」

律「……ああ、そういうことか」

やってやる

今度こそ澪を助ける!

律「よし、じゃあ早速準備だな!」

純「こんなこともあろうかとさわ子先生に男装衣装借りてきました!」

律「う……やっぱちょっと抵抗あるな……」


街中、大きな商店街

爆弾魔が数日いなくなっただけで町はカップルで賑わっている

もしかするとこの瞬間を組織とやらは狙っているのだろうか

私は男装をし、憂ちゃんも普段とは少し違う格好をして、町を歩いていた

純ちゃんは少し後ろで私達の行動を観察している

憂ちゃんは私にベタベタしてくる
もちろん恋人の演技だ

私はちょっとその状況に恥じらいを感じてしまった

しばらく歩くと純ちゃんが「そろそろです」と耳打ちした

純ちゃんとの距離を離し、所定の位置に着く

純ちゃんの話が正しければ……

ぼんっ!
と爆発音が聞こえた

相当近い

私の隣、憂ちゃんが爆発した音だ

しかし私は怯まない

目の前に居る黒服を睨みつける

私の接近にうろたえる黒服

周囲の注目は爆発した憂ちゃんに集まる

とうとう私は澪を捕まえた

律「澪ぉ!歯ぁ食いしばれぇ!」

ゴスッ、と鈍い音が私の拳から伝わって頭に響く

澪「……っつ!」

律「お前、人様に迷惑かけんじゃねー!」

澪「……」

澪は決して私のほうを向かず、何かを探すように辺りを見回している

律「と、一発殴ってスッキリした……澪、ごめんな」

澪「……!」

澪の焦点がようやく私に合う

律「構ってやれなくて、それでカップルに嫉妬して……爆発させて発散してたんだろ?」

澪「……ちょっと違うけど、だいたい合ってる」

律「久々に聞いたな、澪の声」

澪「……」

律「ほら、これ」

澪「!?」

律「チョコレート、一日早いけどな」

澪「……本命?」

律「ばーか、友チョコだよ」

澪「……」

律「本命は明日お前から貰うんだからな」

澪「律……!」

唯「捕まえたー!」

律「な、なんだ!?」

澪「もしかして!」

曜子「うぅ……」

紬「こっちが本体ね」

梓「もう一人逃げて行きます! 私はこっちを追いかけます!」

律「……どういうことだ?」

唯「私達もみんなの後を追ってたんだよ、そしたらね」

紬「澪ちゃんが捕まった瞬間に怪しい人影が見えたものだから」

曜子「う~……」

律「つまり、澪はこいつに唆されたのか?」

澪「ち、違う、私が会ったのは……」

紬「三浦茜」

澪「……どうしてその名前を!」

紬「そっか、やっぱり彼女が不死者の支配者……」



三浦茜

数日だけ桜ケ丘高校にいた生徒

彼女は特殊な家庭で生まれ育ったらしい

紬「彼女の父親、傭兵なの」

律「またとんでもない家庭だな!」

紬「それで……その雇用先は私の家の取引先なの」

澪「どうしてそこまで詳しいんだ?」

紬「元同級生が彼女を見たって言ってたらしくね、この町の行方不明者は不死者の組織に入った可能性があるから……」

澪「傭兵の娘だから彼女は監視から逃れる術に詳しかったのか……」

律「で、この子は?」

曜子「……もう逃げませんから離してください」

唯「ウチのクラスの佐々木曜子ちゃんだよ?」

曜子「実は……澪さんじゃなくて私が爆発させていたんです」

澪「え!?」

律「どういうことだ!場合によっちゃあ……」

曜子「ひっ!わ、私の能力は他人の妄想を具現化する能力なんです……」

律「なんだその卑怯な能力は……」

曜子「これで澪さんを助けてあげてって言われて……」

紬「結局三浦茜の掌の上ってわけね……」

唯「今回のことは黙っておいてあげるから、何かあったら私達に相談してね!」

曜子「……うん」

憂「無事に一件落着だったみたいだね」

唯「あ、憂!」

純「全く、周りの人に言い訳するの大変でしたよ……」

律「お疲れさん!」

澪「……ごめん」

曜子「あっ、私もごめんなさい」


翌日、私達は揃って合格発表を見に行った

プチケーキの甘い味は、私達が掴み取った勝利の味だった

本命があるから私には甘すぎたかもしれないけど……

おわり