6. 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/11(金) 22:43:37.46 ID:TT811Ri+0
唯なんて嫌い。

唯なんて大嫌い。

ほんとむかつく。

私は、唯なんて大嫌い。

田井中律は、平沢唯なんて大嫌いだ。
9. 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/11(金) 22:46:23.48 ID:TT811Ri+0
唯「澪ちゃん、りっちゃん、おはよう!」

澪「おはよう唯」

律「……おー」

登校中、私と澪を見つけると、元気に声をかけてくる。

必ず澪を先に呼ぶ。

むかつく。

唯なんて大嫌い。
10. 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/11(金) 22:47:45.06 ID:TT811Ri+0
唯「りっちゃん、どうしたの?」

律「ん?  なーんでもないよ」

澪「本当だ、律元気ないな」

普段鈍いくせにすぐに人の異変に気がつく。

今日は澪よりも早い。

唯のくせに。

むかつく。

唯なんて大嫌い
12. 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/11(金) 22:50:14.45 ID:TT811Ri+0
唯「だいじょうぶー?」

律「だからなんでもないって」

唯「ほーんと?」

律「ほんと」

唯「ふうん」

いいながら私の腕にまとわりつく。

いくら食べても太らないっていってたけど。

柔らかい感触が伝わってくる。

気持ちいい。

むかつく。

唯なんて大嫌い。
16. 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/11(金) 22:53:10.39 ID:TT811Ri+0
律「はなれろよ」

唯「やーだ」

律「恥ずかしいから」

唯「だめだめ」

ぺたぺた触ってくる。

離れない。

人が見てるのに。

仲いいね、って声が聞こえてくる。

違うし。うざったいし。

唯なんて大嫌い。
20. 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/11(金) 22:57:06.03 ID:TT811Ri+0
澪「唯、人目もあるし、そろそろ」

唯「そっか、そうだね」

律「そうだよ」

私から離れる。

あっさりと。もう飽きた、と言わんばかりに。

腕が寒い。

むかつく。

唯なんて大嫌い。
26. 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/11(金) 23:01:36.67 ID:TT811Ri+0
唯「じゃあ、次は澪ちゃん」

澪「え?  こらこら!」

澪の大きな胸に飛び込む。

唯「柔らかい、えへへ」

澪「だ、だめだぁ!!」

へらへらにやけている。

これ以上ないってくらいに嬉しそうな顔で。

むかつく。

唯なんて大嫌い。
29. 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/11(金) 23:05:51.67 ID:TT811Ri+0
唯「いたいよぉ……」

澪「当たり前だろ。ゲンコツだ!」

律「そうだ。自業自得」

ようやく澪から離れた。

ぶたれた頭を押さえている。

名残惜しそうに澪の胸をちらちら見ている。

私のときはあっさりしてたのに。

むかつく。

唯なんて大嫌い。
30. 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/11(金) 23:09:49.19 ID:TT811Ri+0
唯「いたいいたい」

澪「うう、ごめん」

律「だから自業自得だっつうの」

唯「むう、りっちゃあん」

涙目を私に向ける。

うるうるきらきらしている。

もえもえきゅん。って違う。

むかつく。

唯なんて大嫌い。
31. 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/11(金) 23:12:59.65 ID:TT811Ri+0
唯「ようやく学校に着いた!」

律「遅くなったのは、唯のせいだけどな」

澪「確かに」

唯「でも、たくさん二人といられて、嬉しかったよ」

……。

むかつく。

唯なんて大嫌い。
32. 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/11(金) 23:16:57.92 ID:TT811Ri+0
澪「うっ!  わぁあ!」

律「お、すごい量のラブレター」

唯「よく下駄箱にそれだけ詰められるね。……おっと?」

律「どうした?」

唯「ううん」

うつむいて、何か隠している。

少し頬が赤い。

らしくない。

隠しごとするなんて。

むかつく。

唯なんて大嫌い。
33. 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/11(金) 23:18:12.99 ID:TT811Ri+0
律「とりゃ!」

唯「うわっ」

律「どれどれ?  ……え」

可愛い便箋。

澪の下駄箱に入っているのとおんなじような。

なんで隠すんだ。

むかつく。

唯なんて大嫌い。

35. 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/11(金) 23:19:46.53 ID:TT811Ri+0
澪「唯も、もらっているじゃないか」

唯「なんか、最近よくもらうんだあ」

律「ふん」

眉をハの字にしていても、

口元はしっかりにやついている。

へらへらしている。

むかつく。

唯なんて大嫌い
37. 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/11(金) 23:21:31.99 ID:TT811Ri+0
紬「あら、三人ともおはよう」

澪「おはよう」

律「おっす、ムギ」

唯「おはよう!  ムギちゃん」

紬「わっ!  唯ちゃん」

唯「あったかあったか」

体温が高いムギに抱きつく。

ほっとしたような顔。

むかつく。

唯なんて大嫌い。

41. 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/11(金) 23:36:14.47 ID:TT811Ri+0
唯「ムギちゃんあったかいね」

紬「唯ちゃんもね」

離れない。

むかつく。

唯なんて大嫌い。
43. 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/11(金) 23:38:00.32 ID:TT811Ri+0
澪「そんなにムギはあったかいのか?」

唯「あったかいよ。りっちゃんは冷たいけど」

律「悪かったな」

唯「とくに、おでこのあたりが」

律「わっ」

丁寧に私のおでこをさする。

じんわりと熱が帯びる。

唯「だから、私があっためてあげるね」

あったかあったか。

……。

むかつく。

唯なんて大嫌い。

44. 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/11(金) 23:39:48.49 ID:TT811Ri+0
唯「……」

授業中。

薄目になっている。

それから目をつぶり、次第にこくこくと首が揺れる。

幸せそうな寝顔。

私はじっとそれを見ている。

「田井中さん、集中して」

唯のせい。

唯なんて大嫌い。
45. 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/11(金) 23:41:12.97 ID:TT811Ri+0
紬「唯ちゃん、次教室移動よ」

唯「ううう、ごめん、まだ準備していなくて」

ばたばたとしている。

そうとう焦っているらしい。

澪「律、唯の準備手伝ってあげているのか」

紬「りっちゃん、やさしいわね」

自然に手が動いただけ。

むかつく。

唯なんて大嫌い。

46. 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/11(金) 23:42:53.06 ID:TT811Ri+0
唯「先に行ってていいよ」

紬「え、でも」

唯「悪いし」

澪「じゃあ、行くよ。早く来るんだぞ」

ばたばた。

ごそごそ。

ようやく準備が整った。

唯「りっちゃん、待っててくれたの?」

ちょっと壁に寄りかかってただけ。

律「……別に」

唯「……えへへ、ありがとう」

あったかい笑み。

……。

倍むかつく。

唯なんて大嫌い。
47. 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/11(金) 23:44:20.03 ID:TT811Ri+0
唯「ありがとね」

律「ほら、さっさといくぞ」

唯「りっちゃんって面倒見いいなあ」

律「そうかよ」

唯「りっちゃんのそういうとこ、好きだなあ」

……。

唯なんて大嫌い。

嫌い、だし。
50. 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/11(金) 23:47:08.97 ID:TT811Ri+0
唯「わ、わわわ」

姫子「唯、そこはこうやるんだよ」

唯「あー、そっかあ」

理科室の実験。

隣の姫子に、いろいろと助けてもらっている。

いつもそう。

唯「姫ちゃん、面倒見いいなあ」

姫子「そんなことないよ?」

唯「姫ちゃんのそういうとこ、好きだよお」

デジャブ。

やっぱり、

唯なんて大嫌い。
55. 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/11(金) 23:49:56.66 ID:TT811Ri+0
和「唯、昔からああいう子なの」

実験道具を片づけに、私の席の近くまで来た和に肩を叩かれた。

律「え?  いや、和が何言いたいのか分かんないけど」

和「みんなのことが好きなのよね」

律「え、あの、だから」

和「唯ってば、小学校のときにもね」

小一時間、私の知らない唯の話が続いた。

思わず聞き入ってしまった。

別に。

唯なんて、大嫌いだし。

57. 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/11(金) 23:51:29.84 ID:TT811Ri+0
律「へえ、そうなんだ」

和「そうなのよ、それで唯……」

唯「和ちゃーん!」

和にしがみついてきた。

唯「ここが、分からないのです!」

和「もう、しょうがないわね」

唯「和ちゃん、頼りになるなあ」

またデジャブ。

むかつく。

唯なんて大嫌い。
58. 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/11(金) 23:52:47.25 ID:TT811Ri+0
紬「唯ちゃんのお弁当、相変わらずおいしそうね」

澪「憂ちゃんの手作りだもんな」

律「いいよなー、私も食べたい」

唯「じゃあ、食べる?」

律「おう。あーん……」

フォークじゃなく、弁当箱ごと渡される。

唯「あ、一口だけだよう」

……。

ばか。

唯なんて大嫌い。

59. 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/11(金) 23:54:11.23 ID:TT811Ri+0
唯「なんで、りっちゃん食べないの?」

私は答えない。

唯「私食べるの遅くなっちゃうよお」

答えないし。

唯「そうだ!  はい、あーん」

フォークをおかずに突き刺し、私の口元へ。

律「……あーん」

むかつく。

やっぱり、

唯なんて大嫌い。

60. 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/11(金) 23:56:01.01 ID:TT811Ri+0
結構人が見ていた。

恥ずかしい。

紬「りっちゃんのもおいしそうね」

澪「今日は、自分で作ったんだっけ?」

律「そうだぞ、えっへん」

唯「そうなの?  じゃあ、一口ちょうだい。あーん」

人が見てるっつうの。

唯「おねがいだよう」

……。

律「……ほら、口開けろ」

小鳥みたいだ。

むかつく。

唯なんて大嫌い。

61. 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/11(金) 23:57:16.32 ID:TT811Ri+0
紬「唯ちゃん、部活行こう?」

机に突っ伏したまま。

澪「唯、ほら起きろ」

寝息をたてたまま。

しょうがない。

律「唯、部活にいっくぞー!」

……起きなかった。

紬「声じゃ起きないみたい……」

精一杯呼んだのに。

むかつく。

唯なんて大嫌い。

71. 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/12(土) 00:22:30.51 ID:pF5Or6Xn0
梓「何してるんですか先輩方」

紬「あ、梓ちゃん」

澪「唯が起きないんだ」

梓「もう唯先輩ってば……ほら、起きてください」

動かない。

律「ほら、私達がいくら呼んでも起きなかったんだから…」

そのとき、かすかに身じろぎした。

澪「あ、聞こえたのかな」

むかつく。

唯なんて大嫌い。
74. 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/12(土) 00:25:46.80 ID:pF5Or6Xn0
梓「でも、あの一回きりでしたね」

律「もので釣るか?」

澪「まさか。それで起きるとは……」

紬「唯ちゃん、ケーキあるわよ」

唯「……んんぅ、ふわぁ、おはよう」

梓「起きましたね」

むかつく。

唯なんて大嫌い。
75. 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/12(土) 00:27:27.53 ID:pF5Or6Xn0
澪「練習するぞ」

律「まだいいじゃん」

梓「だめです。今日こそ」

もう少し休みたいのに。

二人の勢いに負けそう。

唯「もう少しだけ休もう?」

目があった。

笑みを向けられる。

お見通し、みたいな。

むかつく。

唯なんて大嫌い。



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最終更新:2011年02月13日 00:46