唯「どったのりっちゃん」

律「あーっと唯、あっちに『世界のアイス大全集』があるぞ!見てきなよ!」

唯「え?見たい見たい!」とてとて

律「……今のうちに」

店員「二冊で2015円になります」

律「はい」

店員「一万円入りまーす」

律(お年玉の最後の一枚、有意義に使うぞ)

唯「りっちゃーん、お待たー」

律「ゆっ!」

唯「ん?本もう一冊買ったの?」

律「ば、バカ!アイス大全集もっと見てろよ!」

唯「もう飽きちゃった、食べたことあるのばっかだもん。ねー、何買ったの?」

律「見るな!見ちゃダメ!」

唯「ねー」

店員「ありがとございましたー」


某ファーストフード店!

唯「女の子二人のお昼なのに、華がないねえ」

律「華ならあるだろ」

唯「どこどこ?」

律「お前だ……やっぱなんでもない」


唯「次どこ行こっか」

律「映画見に行かないか?ほら、有名な作家が書いた小説の映画化ってやつ」

唯「あー、あのテレビで宣伝してたラブストーリーか。面白そうだね。行こっ!」

律(女の子二人でラブストーリー、か)

律(そういや以前、映画の途中でキスしてるカップル見たな……って!)

律(何考えてんだ、あたし!)ぶんぶんぶん

唯「?」


そんなわけで、映画館!

唯「ポップコーンうまい!」

律「そのぬいぐるみ、いい加減降ろせよ」

唯「私とこの子は、ずっといっしょなのです!」

律「ぬいぐるみぬいぐるみ、って……」ぼそっ

唯「ほえ?ごめん、よく聞こえなかった」

律「なんでもねえやい……ほら、始まっぞ」

律(……)

律(こうして見ると、唯って可愛いな)

律(彼氏いないのが、不思議なくらいだよ)

律(ちょっと生意気だけど、そこがまた魅力なんだよな)

唯「この主役の人、完全にミスキャストだよね」

律(そりゃたまにケンカもするさ)

律(でも私、なんだかんだでこいつが好きなんだよな……)

律(……)

律(私の“好き”って、どんな“好き”なんだろ)

唯「ヒロインがギャアギャアうるさい映画だね」

律(守ってやりたい“好き”。いっしょにいると楽しい“好き”。嫉妬するくらいの“好き”)

律(好きにもいろいろあるよな)

律(私の好きは、どれだろ?)

律(……)

律(唯は私のこと、どう思ってるんだろ)

唯「もうひとりの女の子、棒読みがひどいね」

律(種類はどうあれ、唯も私のこと好きって思ってくれてるかな)

律(今日いっしょに来て、楽しんでくれたかな)

律(面倒くさいやつ、なんて思われてたらやだな)

唯「ひどい脚本だね。原作読んでないとわけわかんないよ」

律(そういやムギは、女同士が好きって言ってたけど)

律(その気持ち、わからなくもないんだよな)

律(同性愛とか気持ち悪くないし)

律(なにより、本気で彼氏ほしかったら女子校なんか行かないし)

律(でも唯は、その辺どうなんだろ)

律(私の価値観を押しつけるのは、ただのエゴだよな)

律(……でも確かめたいよ)

律(なあ唯)

律(お前は女同士って、どう思う?)

律(お前は私のこと、どう思ってる?)

唯「ねーりっちゃん、まだこれ終わらないのか……な」

律「……!」

唯「……どうして、手握るの?」

律「いいから。映画見てろ」

唯「でもこれ、ちっとも面白くないよ?」

律「……」

しばらくして……

唯「いやー、ひどい映画だったね」

律「そっか?けっこうよかったんじゃないか?」

唯「なに言ってんの。りっちゃん映画なんか見てなかったじゃん」

律「あん?」

唯「ずーっと私の顔ばっかりぼんやり見て、どうしちゃったのさ」

律「そ、そうだったっけ。あれ?」

唯「あ、否定しなかった!」くすくす

律「こ、コノヤロ!」


律「さて、本日最後のイベント!」

唯「そしてメインイベント!」

律「無料アイス!」

唯「……の前にトイレ!」

律「トホホ」

唯「すぐ戻ってくるからねー」とてとて

律「……やれやれ、デリカシーに欠けるというか無邪気というか」

律「にしても、すごい行列だな。私も交代で行こっかな」



「なあ、姉ちゃん」

律「はい?」

DQN1「あんた可愛いね。俺らと遊んでくんない?」

律「は、はあ!?」

DQN2「高校生?可愛いね。俺ら今ヒマしてっからさ、つきあってよ」

律「……あの、すみません。友達と約束あるんで」

DQN1「ごめん。聞こえない」

DQN2「プギャハハハwwwwいじめんなよwwwwww」

律「こ、困ります!」

DQN2「困りますぅ!……だってよwwww可愛いwwww」

DQN1「なあ、俺らとお城行こうよ。そこでいいモノあげるからさ」

DQN2「そうそうwwwwいいモノいいモノwwww」

律「離せよ!さわんな!」

DQN2「おっとwwwwあんま俺らナメない方がいいよwwww」

DQN1「調子乗らない方がいいよ?俺らバカだからキレるとなにするかわからないし」

律「ひっ……」

DQN1「そうそう、正直になんなよ。本当はほしいんだろ?」

DQN2「周り見てみ?みんなあたたかく見守ってくれてるだろwwww君はお姫様で、俺ら王子様wwww」

律「やめて……やめてよ……」

DQN1「おい、この子ビビってるよ」

DQN2「お前のせいwwww」

律「やだぁ……助けて……誰か助けて……」



「りっちゃんいじめんなぁ!」

律「唯!?」

唯「りっちゃんにさわんな!りっちゃんいじめんな!えいっ!えいっ!」ポカポカ

DQN1「あ?なにこいつ」

律「バカ、止めろ!」

唯「りっちゃんを返せ!りっちゃんに変なことすんな!」

DQN1「……ちっ」

ガッ!

唯「……ぁっ!」

律「ゆ、唯!」

DQN2「あーあwwwwかわいそwwww」

DQN1「先に殴ったの君だからね?正当防衛だからね?」

DQN2「女の子殴ったったwwwwサイテーwwww」

DQN1「お前うるせえ」

唯「……ひ、ひっちゃん……らいじょぶ?」

律「ぅっ……うっ……ううううう……」ポロポロ

DQN2「あーあwwww泣かしたったwwww」

DQN1「気分悪い、行くぞ」

DQN2「野次馬さん邪魔でーすwwwwプヒヒヒヒwwww」

律「うっ……うっ……」

唯「ひ、りっちゃん。行こう」

律「うっ……ううう……っく……」

唯「静かなとこ行って、ゆっくり休も?」


公園!

律「……っく……うっく……」

唯「もう大丈夫だよ。泣かなくてもいいんだよ」

律「……ふ……ふぁあ……あ」

唯「ほら、怖い人いないから、ね」

律「……ゆ、い」

唯「んー?」

律「……ごめん、ね」

唯「なにが?」

律「……わたし、のせい、で……」

唯「うん、残念だったね」

律「……うっ……うううぅ……」

唯「アイス、食べれなくって。タダ券ムダになっちゃったね」

律「……ちが、う。ゆいのかお……」

唯「鼻血なら、もう止まったよ」

律「はれちゃ、った……わたしのせいで……ういちゃん、に、かおむけできない……」

唯「転んだっていうから、大丈夫だよ~」

律「……っく……っく……」

唯「りっちゃんりっちゃん」

律「……?」

唯「見てみて、豚さん。ブヒブヒー」

律「……くす」

唯「そうそう。りっちゃんは笑った顔の方が素敵だよ~」

律「……唯、強いね」

唯「なにが?」

律「私ね、ダメだった。あいつら見て、ビビっちゃった。怖くて怖くて、しょうがなかった」

唯「私もちょっぴり怖かったよ~」

律「でも、唯は私を守ってくれたよね。こんな私なんかを……」

唯「もー、らしくないよ。普段の自信あふれる部長りっちゃんは、どこ行っちゃったの?」

律「……ごめんね。ごめんね……」

唯「りっちゃんはずるいよね」

律「……え?」

唯「りっちゃんはなんでも自分ばっかり。軽音部を引っ張るのも、友達を楽しませるのも」

律「そう、かな」

唯「そうだよ!今日もりっちゃんばっかりリードして!かっこいいとこ見せて!欲張りだよ!」

律「かっこいいとこなんか……」

唯「……私だってね、りっちゃんのためになりたいのに」

律「唯?」

唯「私だって、りっちゃんが好きなんだから!いいとこ見せたいの!」

律「ゆっ……それ、どういう」

唯「私ね、りっちゃんが大好き」

唯「いっしょにいると楽しいから、好き」

唯「守ってあげたいくらい、好き」

唯「独り占めしたいくらい、好き」

唯「……あとは、わかんない」

律「ゆっ……唯!あのね!」

唯「んー?」

律「私もっ!唯が好きなのっ!」

律「ずっといっしょにいたいくらい、守ってあげたいくらい、誰かに取られたくないくらい、好き!あとは……」

唯「あとは?」

律「……わからない」

唯「……くすっ」

律「な、なに?」

唯「りっちゃんも、女の子らしい口調でしゃべれるんだなぁ、って」

律「う!?……うるせえ!かまうな!」

唯「あはは、戻ったー」

律「本当にごめんな、アイス食べられなくなっちゃって」

唯「大丈夫。食べられるよ」

律「えっ?でも……」

唯「行こっ!」

律(あ、手……)

店員「ありあとございましたー」

律「……アイスって、コンビニのアイスかよ」

唯「でもおいしいよ?」

律「まあ、な……」

唯「りっちゃんのガリガリ君、一口ちょうだい」

律「ほらよ」

唯「はむっ……えへへー、間接ちゅー」

律「ばっ!」

唯「もうこんな時間。そろそろ帰らないと」

律(……なんでだろ。胸が締めつけられるみたいに苦しい……)

律(帰りたくない……唯といっしょにいたい)

唯「……りーっちゃん」

律「ん?」

唯「えいっ!」

律「!!」

唯「へへー、りつにゃん分補給完了!」

律「なにをー!私だってゆいにゃん分補給!」

唯「きゃー!」

律「……唯」

唯「んー?」

律「また、明日ね。会えるの楽しみにしてるから……」

唯「私も明日が楽しみだよっ。これからは、ずっと仲良くしようね」

律「ん。……大好き」



翌日!

律「唯なんか大嫌い!」

唯「私だってりっちゃんなんか大嫌い!」

律「私が狙ってたストラップ、梓にあげるような奴だとは思わなかった!」

唯「りっちゃんだって私がほしかったストラップ、澪ちゃんにあげちゃったじゃん!」

梓(唯先輩ストラップ……)ほくほく

澪(律スト……)によによ

さわ子「はーい、こんにち……あら、まーたやってるのね。今日の原因は何?」

紬「お茶のストラップだそうです」

さわ子「本当に飽きないわねぇ、あの二人も」

紬「すっごく楽しそうですよね!」

さわ子「喧嘩するほど仲がいい、か」

紬「唯ちゃんもりっちゃんも、お幸せにね」

唯「ぷんっ!」

律「ふーん!」



おしまい