「みなさん、遅いですね」
「ねー」
声はふたつ、床に落ちている影はひとつ。
「あずにゃんはあったかいねぇ」
「先輩も、あったかいですよ……」
私と唯先輩は、部室のソファにふたりで座っていた。
……と言っても、ただ隣り合って座っている、という訳じゃなく。まず唯先輩が座って、その足の間に私が引っ張られてきて、今の状態の完成。
つまり、私が唯先輩に背中側から抱きしめられている状態。
もちろん、最初は抵抗していた。
……でも。
『あずにゃん』
でも、その甘い声で、耳元で名前を呼ばれて、ぎゅっと抱きしめられて。
背中に先輩の鼓動が伝わってきて、そのドキドキが私にも伝染して。
甘くて甘くて、頭の奥がぴりぴりとしびれた。
こんなの、抵抗できるわけないじゃないですか。
「ずるいですよ」
「んー?」
「……こっちの話です」
唯先輩の匂いがする。肺の中も、唯先輩でいっぱいになる。
外側も内側も先輩で満たされている自分を想像して、身体の芯が、じん、と熱くなる。
「あずにゃーん」
不意に、名前を呼ばれた。
「あずにゃんのうなじー」
唯先輩の言ったそこに、ふっ、と息を吹き掛けられて、びくりと震えてしまう。
「や、やめてくださぃっ……」
うなじに柔らかい感触。そして湿った音。
突然のそれにびっくりして、一瞬何も考えられなくなった。
先輩が唇を落としたのだと気付いたときにはもう、そこには舌が這っていて。
「ひぁ、あっ!?」
つぅ、と。うなじから耳たぶの下まで、唾液でできた一筋の道が作られた。きっと蛍光灯の光が当たって、てらてらと光っているだろう。
「やだぁ……っ」
「嫌?」
ぞくぞくする。
首筋が、耳が、ぞくりと震える。
ちゅ、といつもより大きく響く音。耳に軽くキスされたと思ったら、かぷり、と軽く噛まれる。
耳が熱くて、くすぐったくて、気持ちいいのが全身に広がっていく。
おかしくなりそうで、でも、先輩にしっかりと抱きしめられているから、逃げられない。
「あっ、やだっ……、っは……や、ですぅ……っ!」
「んー……」
さっきまで噛んでいた場所に軽くキスを落としてから、やけにあっさりと引き下がってくれた。
正直、ほっとする。……でも、何かが残る。
もどかしさというか、切なさというか。……何か、足りない?
そんな不思議な感覚が私の中で渦巻いていた。
「じゃあ、こっちは?」
「――ぇ?」
制服の上から、先輩のきれいな中指が、さらりと私の胸を撫でた。乳房の下から、突起の頂上までを、ゆっくりと。
「……あずにゃん」
私の左肩にあごを乗せて、先輩は熱い息を吐く。それが私の頬を撫でて、熱が上がる。
全身が熱くて、ぼーっとする。その感覚に酔っていると、先輩は慣れた手つきで制服のボタンを外し始めた。
「あ、あのっ……!?」
「ん?」
先輩の顔が近くて、ドキドキする。
大きな眼が私をじっと見つめて、ふにゃりと柔らかく微笑んだ。
「や……、なんで脱がしてるんですかっ」
「あずにゃん、可愛いから」
答えになってません、そう言う間にも先輩の指は、するすると制服を肌蹴させていく。
「きれい」
ちゅう、と首筋に吸いつかれて、ブラをたくし上げられる。
その時に先輩の手が突起をかすめた。瞬間、全身がびくりと反応する。
その感覚と吸付かれている感覚と、もうそれだけでとろけそうになる。
平面に近い私の胸が、外気に触れて小さくふるりと震えた。
「にゃ……ぁ……っ」
胸の上のブラが、変な感じ。どうせなら、取ってくれればよかったのに。
そんな考えも、すぐに消えた。
「あ、……っ、せんぱい……!」
その頂点で、先輩の指が、くるくると小さな円を描いていく。
耳をあまがみされて、それだけでおかしくなりそうだったのに。
「あずにゃん、もうこんなに固い……」
きゅっと乳首を摘まれて、くに、と左右に引っ張られる。
私は、何も考えることが出来なくなっていた。
「耳とか、うなじとか。それだけで感じちゃった?」
耳元で囁かれる。
下腹部に、つきんと鈍い痛みを感じた。
「ち、ちが……っ」
今度は肩を舌でなぞられて、力が抜ける。
先輩はそこにも吸いついて、小さな跡を残していった。
私が先輩のモノ、という証。
「違わないでしょ?」
……あ、やばい。
唯先輩の変なスイッチが入った気がする。
「……あずにゃんの、えっち」
ふわりと、先輩の掌で私の胸が包まれる。
唯先輩の手は、とても温かかった。
「きもちいいんでしょ?」
人差し指の腹で先端の突起を押しつぶされると、少しだけ膨らみのある乳房にそれが沈む。
「あずにゃん、声、我慢しないで」
私の胸を弄りながら、先輩が言う。
「ふあ、……にゃぁあっ」
与えられる快感を素直に受け止めると、口から勝手に甘い声が漏れてしまう。
やだ、こんな声。先輩は可愛いって言ってくれるけれど、本当にそうなのかな。
こんなやらしい声、すごく恥ずかしい。
「んー、あずにゃん。ちゅーしたい」
「ふえ……?」
「あずにゃん可愛い。ちゅーしたい。顔見たい。だからこっち向いて?」
顔が更に赤く染まったと思う。熱があるみたいに熱くて、恥ずかしくて。
かお、みられたくない。そう思って、ふるふると首を横に振った。
「えー」
ものすごく残念そうな声を上げられた。
でも、胸を弄る手は止まらない。
「っあ……! や、やめ……」
「やめない。ねぇあずにゃん、こっち向いてよぉ」
頬にキスを落とされる。
「……うぁ……っ」
頬だけじゃなくて、ちゃんと、唇にもほしい。
切なくて、もどかしい。
「わっ……、わかり、ました……っ」
「ほんとっ?」
「はぃ……、て、あ、あれ……?」
腰が上がらない。
足に力が入らなくて、立てない。
「んん? どしたの? 立てない?」
「は、はい……」
先輩が、う~ん、と唸る。
どうしよう、まさか立てなくなるほど気持ちいいなんて。
「じゃ、こうしよう」
「えっ」
視界が、くるりと回る。
そして、眼の前には先輩の顔。
「最初っからこうしてればよかったかな」
そう言って、唇を落とされる。
触れ合う唇と唇。やっと、ちゃんとキスできた。
「ん……、せんぱ、ふわぁ……ぁ」
「あずにゃん……」
ソファの上に押し倒されたんだ。啄ばむようなキスの雨の中、頭の片隅でそう思った。
触れるだけの口付けが、だんだんと深く長くなっていく。
それに従って、私たちの熱はじわじわと上がっていった。
「ちゅ……ん、」
先輩の舌が、私の唇をなぞる。迎え入れようと思って小さく隙間を開けた。
けれど、先輩は中に入ってこずに、あごへと降りていく。
「ん……。ちゅー、ほしかった……?」
妖しく笑って、軽く唇を重ねられた。
そして、首、鎖骨と、なぞりながら降りていく。
「ちゅっ……、ふ」
そして、辿り着いた先は胸。
いきなり乳首を咥えられて、身体がはねる。
「にゃあっ!?」
「……んぅ、こりこりしてるよぉ……?」
「やぁっ、……言わ、ない……でぇっ……」
舌で、歯で。突起をいじめられて、おかしくなりそう。
耳でやられたようにあまがみされて、わずかに残っていた理性なんて吹き飛んでいく。
いけないと思う自分がいて、でも、もっと、もっとと刺激を求めてしまう。
「んぁ、唯せんぱい……、せん、ぱい……っ」
「あずにゃん」
「ふにゃぁ……、あっ、もっと、……っ」
つん、と張り詰めた突起をぺろりとなぞって、唯先輩は唇をそこから離す。
唯先輩の眼が、かすかに細まる。見つめられて、ぞくりとした。
「あずにゃん、今みんな来ちゃったらどうする?」
――――え?
「こんなにえっちぃ姿、みんなに見られちゃうよ?」
言われて、思い出す。
そうだ、今は放課後、部活の時間。
何故か唯先輩以外いないけれど、何か用があって、後から来るのかもしれない。
「ぁ、ぅにゃあ……っ」
「ねぇ、あずにゃん?」
ソファの上に押し倒されて、やらしい声を出していて。制服は乱れて、胸は露わになっている。
やだ、やだやだやだ。こんな姿、こんな、やらしい姿。
唯先輩以外に見られたくない、見せたくない。
「せんぱいっ……、もっ……ヤメっ……」
先輩は、私の耳元に顔を寄せて。
そして、甘い熱い吐息を吐きながら囁いた。
「だーめ」
先輩のいじわる。思っただけで、声にはならなかった。
先輩が、片方の胸の突起を摘まんで、捻る。
空いているもう片方には、先輩の舌が蛇のように這う。
「にゃ……ふっ……」
もし先輩たちが来たら。
そう思うと怖くて、見られたら終わりだということをわかっていながら、せめてもと声を塞ぐ。
「どうする? もしみんなが来たら、きっとびっくりするだろうね」
「にゃ、あぁっ!」
声が、我慢できない。
先輩が触れたところ、全部ぜんぶ気持ち良い。
「えっちく、にゃーにゃー鳴いてるあずにゃん見たら、みんなどう思うかなぁ」
とろける頭でぼんやりと想像する。
見られたら、そう思うと余計に身体が熱くなって、びくりと跳ねる。
「ね、あずにゃん」
先輩の声は、匂いは、指は、何かの麻薬みたいに私の思考を奪って、とろけさせていく。
「やぁあ……っ、なんで……ぁ、むね、ばっかり……っ! も、はなしてくださっ……」
先輩は、ぺったんこな私の胸を何度も何度も揉みほぐす。
こんな胸でも、弄ってると楽しいのかな? 気持ち良いのかな?
そうだったら嬉しいけれど。
でも、これ以上ここばかり攻められると、ホントにおかしくなりそうで。
「ん、そんなこと言うけど、離してくれないのはあずにゃんの方だよ?」
言われて気付く。
私は無意識に、唯先輩の頭に両手を回していた。
「そんなにおっぱい、気持ち良かった……?」
先輩の制服が素肌に擦れて、それだけなのに、快感に押し潰されそうになる。
唯先輩だから、こんなに気持ち良くなれる。
「……ね、もうこっちもいいかな?」
するり、と太ももを撫で上げられて先輩の指がたどり着いたそこは、もう恥ずかしいくらいに濡れそぼっていた。
「……ぅ、にゃあ……っ」
つ、と軽く下着の上からすじをなぞられた瞬間。
「あ、あずにゃんっ!?」
「ふぇっ、ここ……はぁ、これっ……以上はっ、もう本当に駄目です……、っく」
これ以上されたら、私ももう止まれなくなる。学校だろうと部室だろうと、そんなこと関係なくなってしまうくらい。
そんなところを見られたら、もう恥ずかしくて死んじゃう。
最悪の事態を思い浮かべると、涙が溢れて言葉にも嗚咽が混じる。
「……」
唯先輩は、目を見開いて驚いていた。
そりゃそうだよね、私が急に泣き出すんだもん。
先輩はちょっと迷った表情で、ばつが悪そうに言った。
「……あー」
唯先輩にしては、妙に歯切れが悪い。うんうんと悩んで、よしっ、と一人で気合いを入れた後に、こちらに真剣な眼差しを向けられる。
「あのね、あずにゃん。りっちゃん達、今日は来ないんだ」
「え?」
思考と涙が止まる。
「実は3人とも放課後に用事があるらしくて。今日は部活はなしってことだったんだけどね?」
けど、なんですか。
「あずにゃんと部室でイチャイチャするのもいいかなー、なんて」
「………………」
「みんなが来るかもってハラハラする中でのえっちもいいかなー、って……」
「……ふぇ、」
止まりかけていた涙がまた溢れて出して、視界がぼやける。
だって、そんな、ひどい。
私、本気で焦ってたのに。
「ご、ごめんね? でもあずにゃん、すっごく可愛かっ……」
「もう先輩なんて知りませんっ!!」
*
「おっはよー」
「あ、純ちゃんおはよう」
「……ぁー、おはよ…………」
「……憂、梓ってばどうしたの?」
「あはは……」
だるい……。
あれから、唯先輩は家にお泊まりすることになってしまいました。
それでまぁ……、お察しの通りというか、なんというか。
「昨日はお姉ちゃん、梓ちゃんちに泊まったんだー」
ちょ、憂っ!
純に余計なこと言わないでよっ!
「ははーん。そーいう訳ですかぁ……」
ニヤリ、という擬音語が漫画みたいに純の横に見える……気がする。
「ゆうべはおたのしみでしたね!」
「じゅ、純っ!」
「ホンっトに、梓は唯先輩だいすきだねぇ」
「あはは、ラブラブだからねー」
「もーっ、憂までぇ!」
でも、こんな風にからかわれるのも、唯先輩と上手くいってる証拠みたいで。
恥ずかしいけれど、ちょっぴり嬉しくも感じてしまう。
「なにー? ニヤニヤしちゃってー」
「お姉ちゃんのこと?」
「もぉっ、いい加減にしないと怒るよっ!」
こうやって言われるのも良いことなのかなって、ほんのちょっぴり思った。
おしまい!
これでおしまい、なんだ……
シメが下手でごめんね!
微えろを目指した結果がこれだよ!
なんか、最後も一年トリオはいらなかったかなぁ
焦ってつくった感パネェ
それでも保守、支援してくれた方々!
読んでくれた方々!
どうもありがとうございました!
最終更新:2011年02月10日 00:33