唯「つーんつん」

純「やですってば。」

 唯先輩は私のおちんちんで遊ぶのがすきだ。

 ベッドに入るとすぐ、やわらかなペニスの先端を指先で弾くようにしていじることからはじめる。

 正直、あまりきもちくはない。だけど。

唯「おお、おっきくなってきた。」

 こうして自分のいちぶがしっかり反応してしまうことがみょうに悔しい。

唯「じゅーんちゃん。おっきくなったよ?」

純「……」

唯「つつつー……」

純「っ!」

 乾いた亀頭の周囲を、指の腹でなぞられる。痛くて無意識に体がぴくりと撥ねてしまう。

唯「えへへ。今びくってしたね。」

 嬉しそうな声で先輩は言う。

 その悪気のない顔をみると、抗議の声をあげることもできない。

 唯先輩はそれからベッドに肘をついた姿勢で寝っ転がる。

 ちょうど、私の股間あたりに先輩の顔がくる位置関係だ。

 恥ずかしくて脚を閉じてしまいたいのに、先輩はそれをゆるさない。

 閉じようとすると、彼女はいつも力づくで私の脚を開いてくるのだ。

 私と先輩の体格にさしたる差はないのに、どうしてあんなに強い力がでるのだろうかと不思議に思う。

 最近では、はなから脚を閉じようとする気すら起きなくなった。

 ただ、この恥ずかしい時間がすぐに過ぎればいいと考える。


 先輩はそんなこちらの気も知らないで熱心にペニスを見つめる。

 顔を近づけているので、やわらかい息がかかってくすぐったい。

 ずっと空気にさらされていた亀頭は本格的に乾燥して、表面にしわがよっていた。

唯「純ちゃんは女の子なのにどうしておちんちんが生えてるんだろうね。」

 先輩がぽつりとこぼす。

 これもいつものことだ。

純「わかんないです。」

 だから私もいつも通りの言葉をかえす。

 このやり取りも、その前の「お遊び」もなにもかも同じように繰り返す。



 二人が合う日は、都合のよい時に先輩からメールが来るきまりだった。

 べつにどちらかが言いだして決めたことではないのだけど、いつの間にかそういうことになっていた。


 メールはかならず先輩からで、文面はその日だれかから聴いた面白い話とか、

 お昼ごはんがなんだったとか、今日の占いは当たらなかっただとかどうでもいい話題が続いた最後に

 決まって一言、『今日会いたい。』で締めくくられている。

 私はメールを読み終えたあと、短い返信をおくる。まだ、一度も誘いを断ったことはない。

 学校から出て少しした先に、秘密の集合場所がある。

 そこは用途の分からないバラックがいくつか並んだ陰で、他人が来ることはあまりない。

 先に約束の場所へ着いた私がコンクリートの塊に腰掛けて髪を直していると、

 すこし駆け気味で息の上がった唯先輩がやってくる。

 先輩は私を見つけると呼吸を整えることもせず、私の身体をぎゅっと長く抱きしめてくれる。

 先輩の腕の中で私は全身の部品がほどけてしまいそうになる。

 私は、その瞬間がいちばん幸せで、好きだ。


 それから、二人のうちどちらかの家へ行く。

 といっても唯先輩の家には憂がいることが多いので、行き先はだいたい私の家。

 両親は共働きで、昼間は留守。私の部屋なら、誰にも見られる心配はない。




 先輩のタイミングはまだつかめない。

 いつ「あれ」が始まるのか、わかったものじゃなかった。

 部屋では二人で音楽を聴いたり、漫画を読んだり……

「仲のいい友達同士」の会話をするだけで、「恋人」のような雰囲気はあまりない。

 でも、なにかのタイミングで、先輩が私の手を掴んだら、スタートだ。

 その瞬間、びくりと体がふるえる。

 それが来るまで、自分でもこの時間を期待しているのか、恐れているのか、はっきりとはいえない。

 抵抗することはできなかった。もし、そこで私が何かをいえば、この関係はすぐにでもおわってしまいそうに思えた。

 私は手を取られ、誘われるままにベッドに腰掛ける。

 私自身がなにかをする必要はほとんどない。

 先輩の指が私の服を脱がし、先輩の手が私を押し倒し、その目が私の身体を見つめる。

唯「つんつん。」

 冷たい手が私のペニスをいじる。

 いくら唯先輩でも、これを単なるスキンシップとは思っていないだろう。

 だけど、私たちがセックスをしているのかと問われれば、それもまた疑わしかった。

 この人は、私のそれで遊んでいるだけ。

 そう考えて、こころが暗くなる。

唯「どうしたの、純ちゃん。」

純「どうって?」

唯「悲しい顔してたよ。」

純「なんでもないです。」

唯「もしかして、気持ちよくなかった?」

 私が答えずにいると、先輩は勝手に納得したのか「くふふ」と笑い、

 私のペニスをぎゅっと強く握りしめた。

純「あっ……」

唯「純ちゃんのおちんちん暖かいね。」

 その言葉に答える余裕もない。

「お遊び」がどういうところまで続くかは、先輩の気分次第だった。

 射精まで導かれることもあるが、お互いにやんわりと体を触ってなんとなく終えることが多い。

 今日は、どうやら先輩は乗り気な日のようだ。

 掴んだ手を優しく弛めると、毎分90くらいのテンポで上下にしごき始める。

 先輩の動作は早すぎも強すぎもしない、ぎりぎりのラインでとどめるように調節されている。

 ときどきもう片方の手で、痛いほどに腫れあがった亀頭にじかに触れる。

 先から溢れた粘り気のある液体を指に纏わせ、全体に塗りこむように指を回されると、

 神経をとおって小指の先にまで電気が走ったようにつらくて涙が出る。

純「先輩っ……。」

 爪を噛んでその感覚をこらえる。

 ペニスの全体がどくりと脈を打った。

 先輩は私の射精が近いことを見てとると、わざと手の速度を遅くする。

 ほとんど動かさずに、圧力を感じられるか否か、

 けれど常に快感からは逃れられない悪魔みたいな手技。

 ベッドの上では、彼女がおそろしい悪魔にも見える。

 先輩はそのまま握り続けた。

 たぶん、実際は数分間に過ぎなかったのだろうけど、それが一時間も続いたように思えた。

唯「もうべちゃべちゃだよ、純ちゃんの。」

純「それ、いやですぅ……もうやめてよぉ……。」

 とうとう耐えがたくなって私は訴えた。

 普段なら最後まで黙りとおす自信もあったのだけど、この日の責めは過酷過ぎた。

唯「最後までしてほしい?」

純「なんでも、……いいから、終わらせてください……ひっく」

唯「よーし。」

純「ひあっ!」

 先輩が手をこまかく震わすようにして刺激すると、あっというまに私のそれは射精した。

純「はっ……ふ、うん…はぁ、はぁ……」

 空しく宙に吐きだされた精液はベッドや私のお腹にかかって汚物となる。

 じらされたせいか、今日はいつもより長く放出が続いている。

 あとでシーツを拭かなくちゃ……。


 先輩は自分の手が汚れても気にしないみたいだけど、シーツが染みになって恥ずかしい思いをするのは私なのだ。

 射精がやみ、ペニスがじょじょに小さくしぼみつつあるのを満足げに見届けると、

 先輩は私の頭をやさしくなでてくれる。

 それがどういう意味なのかは想像したけれど分からなかった。

 よくがんばったで賞?

 いっぱい出しました大賞かな……


 言い忘れたが、これらすべての行為の間、唯先輩は服を着たままだ。

 服を脱いで肌を見せるのは私だけ。

 それが付き合い始めた三週間前からずっと続いていた。



    1

 先輩がこうなった原因は私にあるのかもしれない。

 三週間前。私と先輩が付き合いはじめたきっかけについて。

 それは梓との二人での会話からだった。

純「私は、唯先輩が好きかな。」

 なんで言ってしまったのか自分でもわからなかった。

「好きな人いる?」って自分から作った話題だったのに、みごと雰囲気に流されてしまったとしか言えない。

 先輩の妹である憂がいなかったせいもあるだろう。

 梓は私のセリフをまるで予想していなかったようで目を丸くしてこちらを見ていた。

 私はおそらく「しまったー」という顔をしていたことだろう。

梓「唯先輩って、あの唯先輩だよね。」

純「うん……。」

梓「女の人が好きなの? いつから好きなの? どうして好きなったの?」

純「いっぺんに聞かないで、そんなの分かんないよ!」

 あの時私の目的は梓をからかって笑うことだったはずで、どうして私の方が質問攻めに遭っているのか。

 よっぽど「なーんて、冗談だよ」と言ってしまいたかった。

梓「あ、ごめん。それにしても、純が唯先輩をねぇ……。」

純「なによー、悪い?」

梓「意外というか、澪先輩だったらまだわかるんだけど。純はカッコいい人が好きって前も言ってたよね。」

純「ゆ、唯先輩だってかっこいいもん!」

 また墓穴を掘った。梓がにやにやしている。

純「いや、これはちが……」

梓「ふうん。かっこいいかあ。」

 ちくしょう、私が元気玉を使えたらおまえなんか一撃なのに。

梓「顔赤いよ、純。」

純「もうこの話やめる。」

梓「もっと続けようよ、純をからかえる機会なんてあんまりないもん。」

純「梓って意外とひどいやつだよね。軽音部の先輩の前でもそうなの?」

梓「それに、そういうことって誰かに話したいでしょ。」

純「……。」

 たしかに、今までそんな気持ちを誰かに打ち明けることなんてなかった。

 もっとも、そんなことを言う必要がないと思っていたからでもあるけど。

梓「ね、なんで好きになったの? 先輩とあんまり話したこととかない、よね。」

 くそう。楽しそうだなあ、この子……。

純「去年のライブで……」

梓「うんうん。」

純「最後の曲で、ギター弾きながら歌ってた先輩が、かっこいいなあ、と思って。」

梓「結局ミーハー……。」

純「いいじゃん、別に! それから毎日憂が唯先輩のこと話すたびに気になって『普段はとろい人なんだなあ』とか、」

梓「ほうほう。」

純「それで一つずつ先輩の好きなもの覚えていったりああ! 何言ってんの私っ!?」

梓「熱いね。」

純「もう忘れて!」

梓「純は、告白とかしないの?」

純「告白? なんで?」

梓「なんでって、先輩のこと好きなんでしょ。付き合いたいとか思わない?」

純「いいよ、そんなの。私が唯先輩と付き合えるわけないじゃん。」

 告白なんて、そんなつもり少しもないとは言わないけど、ほとんどなかった。

梓「諦めるの早いよ、純。告白もしてないのに。」

純「だって」

 私にはおちんちんが生えていたから。

 おちんちんの生えた女の子が、誰かを好きになっていいはずがない。

 こんな私のことを好きになってくれる人なんているはずがなかった。

梓「女同士だからためらってるの?」

 本当の理由は言いにくかったので、そういうことにして頷いた。

梓「気にすることないよ。今時、普通だし、うちの学校でも多いって聞くよ?」

純「でもやっぱり、いいよ。そこまでのつもりじゃないっていうか。」

梓「だめだよ、そんなの。気持ちはちゃんと伝えないと。私、その気持ち応援するよ。」

純「あんた面白がってるだけでしょ……。」

梓「今度告白の機会セッティングするから。」

純「いいってばー!」


……

純「――唯先輩、私とつきあってください!」

 結局のところ先輩はOKをくれた。それは梓のおせっかいのお陰。

 先輩が「はい」と言ってくれたとき、本当にうれしかった。

 あまり舞い上がっていたので、そのあとどうなったのかよく覚えていない。

 気が付いたら私は一人で部屋に居て、携帯の画面に表示された教えてもらったばかりの先輩のアドレスを見ながらにやにやとしていた。

 恋人同士ってどんなメールをするんだろう。

 一日何通も送ったら、うるさがられるかな。

 電話はどのくらいかけていいんだろう。

 お風呂入ってる時に着信があったらどうしよう。

 先輩の恋人になれて嬉しいな。

純「……。」

 しばらくして私はようやく我に返り、冷静に状況を捉えることが出来た。

純「私が、先輩の恋人に……」

 鏡を見ないでも、自分の顔が青ざめていくのがわかった。

 私はまだ、先輩にあれを話してはいないのに。

 ズボンのファスナーを下ろして、下着の中に手を挿し入れる。

 そこには、普通の女の子にはついていないはずのものがあった。

 触っただけでも、充分に判断できたが、念のため下着をずらして目で確認する。

 小さな陰茎が普段から比すると主張を強め、むきだしになった先端からにおいを放っている。

 きもちがわるい。

 何より、こんなことを隠して先輩と付き合おうとした卑怯な自分がいやだった。

 ……やっぱり、ちゃんと言わないとだめだよね。


 翌日、私は先輩を家に呼び出した。

 先輩に家まで来てもらうのは悪いし、ずうずうしいかとも思ったが、話の内容が内容だけに、他のところではまずい。

 振られることを覚悟して打ち明けたが、先輩ははじめ信じなかった。

唯「何言ってるのー、純ちゃん」

純「こんな嘘つかないです。」

唯「じゃあ、それ見せてみてよ。」

 ぐ、と私は息がつまるような思いがした。

 先輩に、私のきたないものを見せる。

純「それは……。」

 いやだけど、方法はそれしかないのかもしれない。

純「……はい、わかりました。」

唯「え、冗談だよ!」

 短いスカートの中に手を入れた私を見て、唯先輩はあわてて押しとどめようとする。

 構わずに私は下着を脱いで、それをさらけ出した。

 先輩は私に向かって手を伸ばそうとしたその恰好のままで硬直した。

 おちんちんは、やわらかな形状をたもっている。

 私は先輩の目がじっとそれに注がれていることに気づき、自分からやったこととはいえ、恥ずかしくなった。

 手でそれを隠そうとしたとき、

唯「あ……」

 と先輩が小さな声をあげた。

 私のそれが、ぴくりと撥ねあがるように大きくなる。

純「……!」

唯「かわいい。」

 かわいい?

 そんなのウソだ。

 こんなきもちわるいものが、かわいいはずなんてない。

 なのに先輩は目を一点に向けたまま、私の方に近づいてきた。

 ほほが赤く染まっている。

 心臓が、どくりと脈を打った。

唯「ねえ、触ってもいい?」

 ふわりとした声。その声はいつもの先輩の声のはずなのになぜか恐ろしく聴こえた。

 先輩の手が伸びる。私のそれが、ふたたび撥ねた。


2