律「怖さを紛らわせるためにがむしゃらに銃を撃ち続けてたら」

律「最前線で一番の戦果を挙げた兵士として表彰されたんだ」

医者「それでレンジャーにスカウトされたんだね」

律「そう、私はフォーロン・ホープからレンジャー基地に移り」

律「重要な作戦をいくつか任された」

律「私はNCRレンジャーという名誉と」

律「最前線から離れることが出来た嬉しさで舞い上がってたんだ」

律「澪はその時、既に除隊してて、ウエストサイドに住んでたんだけど」

律「あそこの連中はNCRをあまり良く思ってない」

律「約束を破った引け目もあって」

律「なかなか澪に会いに行けなかった」

律「その後、私は少しの休暇をもらい」

律「沢山のお土産と、ポケットに入りきれない給金を持って」

律「意気揚々と澪に会いにいったんだ……」

律「……」

医者「……続けて」

律「でもそこに澪はいなかった」

律「私が行く前の日にレイダー(無法者)の襲撃にあい」

律「澪はさらわれてしまったんだ」

医者「……」

律「あそこには時々フィーンドっていうレイダーの集団が襲ってくるんだ」

律「あいつらがさらった人間をどう扱うか知ってるか……?」

律「まだ小さな女の子を集団で犯しているところや」

律「生きたまま吊るした人間を、ナイフで少しずつ解体している所を見たことがある」

律「勿論その時は、奴らの頭に弾を撃ち込んでやったけどな」

律「澪もおそらくは相当ひどい事をされて殺されただろう……」

医者「……」

律「私はすぐにNCRを辞めて、ウエストサイドに移り住んだ」

律「そして澪の仇のフィーンドどもに復讐をしようと」

律「毎日フィーンドを探し歩き、見つけ次第狩っていった」

律「奴らは必ずと言ってもいいほど」

律「ターボやジェットなんかの薬物を持っていた」

律「私は奴らからそれを奪い、キメるとまた次の獲物を探した」

医者「なるほど、そこからだね」

律「ああ……」

律「結局やってることはフォーロン・ホープと変わりなかった」

律「死の恐怖から逃げるために戦い続けた私は」

律「澪を守れず、一人のまま死なせてしまった事実から逃げるために」

律「薬をキメ、敵を撃ち殺し続けた」

律「ウエストサイドの奴らは、そんな私をフィーンドと同類に見てたんだろう」

律「ちょっとしたイザコザで私は街を追い出され」

律「それからはレイダーを撃ちながら当てもなく放浪して」

医者「唯君や梓君と会い、今に至る……か」

律「あいつ等は私が正義のヒーローか何かだと勘違いしてるけど」

律「全然そんなんじゃない……」

医者「話してくれてありがとう」

律「いや、言えると少し楽になったよ……」

医者「ところで」

医者「君達はこの町に残ってみたらどうだい?」

律「私は遠慮しとくよ」

律「でも、唯と梓はココに置いてもらうと助かる」

医者「安住の地が必要なのは、あの二人よりも、むしろ君の方だと思うんだがね」

律「それは出来ないよ」

律「私にとって、自分だけ平和に暮らすことが一番の苦痛なんだ」

ドンドン

唯「せんせー、りっちゃんに会わせてよー」

梓「すいません、面会できますか?」

医者「ああ、ちょっと待ってくれーっ」

医者「律君、続きはまた今度だ」

律「……」

ガチャ

医者「ちょうどいい所に来たね、律君も起きてるよ」

唯「あっ、りっちゃーん!」

梓「律先輩、もう起き上がっていいんですね」

律「もう大丈夫、元気ピンピンだよ」

律「二人とも、心配かけて悪かったな」

唯「わーん、りっちゃーん」ガバッ

梓「あっ、ちょっと唯先輩!?」

律「イデデデデっ」ビキーン

医者「唯君、律君はまだ安静なんだよっ」

律「もうっ、今ので退院が一週間は延びたぞーっ!」

唯「あわっ、りっちゃんごめーん」

梓「もうっ、唯先輩ったらー」

律「ふふっ」

律「あはははっ」

唯「あははっ、りっちゃんが笑ってるー」

梓(律先輩も、唯先輩もとっても嬉しそう)

梓(律先輩は一人で旅を続けるなんて言ってたけど)


梓(私達このまま、ここで暮らせるかも?)

律「おい梓、なにニヤニヤてるんだよ?」

梓「えっ?わたしそんな顔してました!?」

梓(私も、嬉しいっ)

梓(Vaultの外に出て、二人に会えて本当によかった)


その日の夜

律「」コソコソ

ガチャ パタッ

律(ごめんな二人とも)

律(やっぱり私は一人で行くよ)

律(どうか幸せに暮らしてくれ……)


梓「待って下さい」

律「!?」

唯「りっちゃんが行くなら、私達も行くよ」

律「お前たち、なんで……?」

梓「律先輩の事です、私達に内緒で出て行こうとすると思ってましたっ」

唯「わたしはあずにゃんについて来ただけっ」

律「まさか、ばれちゃうとはな……」

梓「律先輩、一人で行ったりしないで下さいっ」

律「だめだ、お前たちとはここでお別れだ」

唯「イヤだよりっちゃん、一緒にいようよ!」

律「……」

律「私はな、お前たちの思っている様な人間じゃないんだ」

律「親友を裏切り、守ってあげられなかった」

律「お前たちにだって、同じだ」

律「私はお前たちを守れない」

梓「だったら、私達が強くなって、律先輩を守ります!」

律「そんなこと、簡単に言うなよっ!」

律「守るなんて、軽々しく言うんじゃねえよ」

唯「りっちゃん……」

律「それに、私は人に守ってもらう資格のある存在じゃない」

律「私は薬と殺人の中毒なんだ」

梓「それは、気付いてました」

律「!?」

梓「でも、きっと治せますよ、この町で落ち着いた生活をおくっていれば!」

律「澪を悲惨な目にあわせといて」

律「私はぬくぬくと幸せに暮らすのか?」

律「そんなの出来る訳ないだろっ」

律「私は復讐の為に戦って、その中で死ぬんだ」

律「それが私にできるせめてもの償いなんだよっ!」

唯「ばかりっちゃんっ!!!」

パチーン!

律「ゆ、唯……」

梓「唯先輩っ!?」

唯「憂が死んじゃって、悲しんでる私に」

唯「りっちゃんは何て言ったか覚えてる?」

唯「生き残った人間には、生きぬく義務があるんじゃないの!?」

唯「澪ちゃんは、りっちゃんが戦って死ぬことを喜ぶような人だったの?」

律「それ、は……」

律(そうだ、澪は、最前線の私をいつも心配してくれていた……)

唯「わたしだって、あずにゃんだって」

唯「りっちゃんがそんなふうに一人で死んじゃったら嫌だよっ」ジワッ

唯「それが分らないりっちゃんは、ばかりっちゃんだよーっ!」ボロボロ

律「唯、お前……」ウルウル

唯「ばかばかばかーっ!」

ポコポコポコ

律「イデデデデっ」ビキーン

梓「わぁーっ、何やってるんですか唯先輩っ!!?」


次の日の朝

医者「診て見たところ、本当に退院が一週間延びた」

唯「ごめんなさい」

律「……」

梓「大丈夫ですか律先輩?」

律「まったく、この分じゃ、しばらくこの町から出られそうにないな」

律「お前たち、ちゃんと責任とってくれよ?」

唯「うん!」

梓「はいっ、任せてください!」

医者(ふふっ)

医者(体の怪我は長引いてしまったが)

医者(もう一つの方は、早く治りそうだ……)


しばしの安息を得た三人だったが

他の場所では新たな冒険が始まっていた

グッドスプリングスより南の町、プリムではレザーアーマーに身を包み

ショットガンをかついだ美女が、占拠していた脱獄囚達を一掃した

また、とある荒野では大規模なキャラバン(商人の一団)が襲撃に遭い

その中でただ一人だけが生き残った

さらにシーザー・リージョンによって二人の少女が奴隷として

コットンウッド・コーヴへ連れて行かれようとしていた

物語はいよいよ動き出す

唯「フォールアウト!」律「ニューベガス!」 第四話 完



最終更新:2011年02月08日 03:57