律「湯につかっている間は色々と考え事をしちゃうよな」

律「今日は冬の日の歌詞について考えてみた」

律「あの時は私の勘違いで済ませちゃったけど」

律「本当に私に歌詞の感想を聞きたいから、澪はポストにそれを書いた紙を入れたのか?」

律「ふわふわ時間の時もそうだったように、まず私に感想を聞くなんてことはそれまでなかった」

律「そして何より、自分で言うのもなんだがあの詞に出てくる"きみ"」

律「前髪をあげているところとか、私と共通するトコロがいくつかある気がするんだ」

律「そこで、もしかして冬の日は、勘違いなんかではなく実際に私に宛てた詞なのではないかという仮説が生まれたわけなんだが」

澪「なるほどな、それで電話してきたと」

律「どうなんです、澪さん」

澪「宿題しろ馬鹿」

律「学校に置いてきた明日見せてください話をそらすな馬鹿って言うな馬鹿」

澪「途中でブレスを入れて区切れ馬鹿。あと宿題は見せません馬鹿」

律「言葉にしたいことがありすぎて一気に溢れ出たんだ、許せ馬鹿。宿題は見せてください馬鹿」

澪「馬鹿って言うなば……」

律「質問を変える」

澪「人の発言を遮るなば……」

律「ずばり、澪は私にフォーリンラブなのか?」

澪「だからって……はぁ?」

律「歌詞にさ、好きとかそれっぽいワードが出てくるじゃん?だからさ」

澪「好きって言っても男女の仲だけの話じゃないだろ、友達同士の好きだってある」

律「でも冬の日の詞を見る限りこれはフォーリンラブのほうの好きだと思うぞ」

澪「友達を想って胸を痛めることだってある」

律「成程な、じゃあ私の思い過ごしだったわけだ」

律「そして澪、やっぱり馬鹿はお前だったみたいだな」

澪「どうしてだ?言い分を聞こうか馬鹿」

律「お前今冬の日、これが私宛じゃないってこと、一度でも否定てねーだろ」

澪「……」

律「そして今のを聞く限り自分で”この詞は友達宛てに書いた”って言ってるようなもんだぞ」

澪「……」

律「んでもって、私がはじめに質問をした時に話をそらそうとしてたな、怪しさマックスだ」

澪「……」

律「ばーか」

澪「……嵌められた」

律「私もこんなに上手く嵌まるとは思わなかった」

澪「律、その……なんだ」

律「恥知らず」

澪「な……」

律「こっちが恥ずかしくなってきたわ!こんなの書いててよく恥ずかしくならないなばーか!」

澪「ば……馬鹿にするな!こっちだってうわあぁぁってなりながら必死に書いたんだぞ!」

澪「それに……」

澪「本当に恥知らずなら、紙に書いて伝えずに口で言うよ」

律「今日の今日まで伝わってなかったけどな」

澪「本当に伝えるべきかの葛藤があったんだ」

律「なんでその結果が手紙じゃなくて詞なんだよ、わかりにくいったらありゃしないわ」

澪「伝えるための行動をとったっていう事実が欲しかったんだ」

律「意図が伝わらないと意味ないじゃん」

澪「伝わっただろ?」

律「……それもそっか。悪かった、恥知らずってのは訂正するよ」

澪「わかってもらえればいいんだ」

律「はずかしがりや~☆で、ひっこみじあん~☆なんだよな」

澪「なんか凄いムカつくんだが」

律「気のせいだ……。さて」

澪「どうした?」

律「次はこの詞についての質問をします」

澪「えー……」

律「なんだ、明日部室に皆揃ってから改めて聞こうか?」

澪「よーし、なんでも聞け」

律「まずは……前髪を下ろした君の姿も見てみたい、ってのだ」

澪「それか……律はもっとおしゃれしたらかわいくなると思うんだ、それを婉曲表現してみた」

律「なるほど照れるじゃないか、そしてわかりにくいな馬鹿」

澪「うるさい馬鹿」

律「次」

澪「なんだこれ、凄い恥ずかしいんだけど」

律「手をつないでならいいのにな、って何だ、フォーリンラブか?」

澪「律に宛てたメッセージだってのを悟られにくくするために、ラブソングっぽくしてみた」

律「なんでわかりにくくするんだ馬鹿」

澪「……恥ずかしいだろ馬鹿」

律「お前、なぜ、コレ、書いた」

澪「……何かしないと駄目な気したんだ」

律「澪は真面目だからなー」

澪「……そうだな、事実がないと安心できないってのは真面目、なんだろうな。真面目で堅物か」

律「それでもって心配性だ、今更そんなこと伝えなくても大丈夫だよ」

澪「そっか」

律「さて次だ、さっきは納得してみせたけど、これが一番よくわからん」

澪「胸が痛む、ってところか?」

律「イエス」

澪「……言わなきゃ駄目か?」

律「なんでも聞けって言ったろ。言わなかったら明日の部室での話題になる」

澪「そうか、それはごめんだ」

澪「……完全に私のわがままというか、勝手というか、とにかくあまりよろしくない感情だ」

律「と、いうと?」

澪「先に言っておくと、私は唯が好きだからな」

律「なんで唯が出てくるんだよ、フォーリンラブ?」

澪「誤解を招かないためだよ馬鹿、フォーリンラブでもない。」

律「失礼」

澪「律、唯とウマが合うだろ?凄い楽しそうだ」

律「まあな、なんでかわかんないけど」

澪「それがなんていうか、悔しいんだ」

律「ふうん」

澪「私と一緒にいるより楽しそうで、それが悔しいんだ」

律「……その分きみのこと、思ってるって気づいたよ、か?」

澪「そうなるな、別に唯が嫌いとかではないよ」

律「私はな、唯が一番大事だ」

澪「……」

律「そんでもってムギが、梓が、もちろん澪だって一番大事だ」

澪「矛盾してるな」

律「どこがだよ?」

澪「一番がそんなにたくさんあったらおかしいだろ」

律「なんでだ?」

澪「なんでって……」

律「私が納得できる答えがなかったら私の勝ち」

律「何が悔しいか知らないけど、私は澪も一番大事だからな」

澪「……恥知らず」

律「うるせえ恥ずかしがりや」

澪「もし……それが矛盾だっていう律の納得できる答えが出たらどうするんだ?」

律「そんなモンないよ。絶対に納得してやらない」

澪「そっか……」

律「そうだ」

澪「……恥知らず」

律「うるせえ恥ずかしがりや」


澪「……」

律「しっかし、もうすぐ三年だな」

澪「そうだな」

律「次は皆とはなればなれじゃないといいな、澪ちゃん」

澪「ああ……和がいなかったらと思うと今でも泣きそうになる」

律「ははは」

澪「今度は軽音部みんな一緒がいいな」

律「ああ」

澪「それが無理でも、せめて律と一緒がいい」

律「……」

澪「律?」

律「……恥知らず」

澪「照れたか?」

律「うるせえ馬鹿」


澪「……私の喋り方がこんな風になったのは多分律の影響なんだろうな」

律「急になんだ馬鹿」

澪「だからさ、律がちょっとだけ恥ずかしがりやなのは私の影響なのかなって」

律「……澪、さっきからどうしたんだよ、なんか変だぞ」

澪「お前が冬の日で私を困らせたから、私も冬の日にちなんで仕返しだ」

律「……?」

澪「いたずらな笑顔がとても似合ってる」

律「なんなんだ」

澪「冬の日、続き」

律「でも頬を赤くして照れてるきみも……」

澪「そういうことだ」

澪「電話越しで顔が見れないのが残念だけどな」