唯「そうだよねー、でもごめんムギちゃん、私実は澪律派なんだ!」

紬「まぁ唯ちゃん、そうだったの? うふふ、それも素敵ね…でも私はまだ考えたことがない組み合わせだわ」

唯「えっ、どうしてどうしてー?」

紬「だって律澪は王道パターンを踏襲できる素晴らしいカプなのよ」

唯「王道トウシューズ?」

紬「唯ちゃんちょっと黙ってて。…あのね、「実は思慮深い元気っ子」と「ツンデレウブな照れ屋さん」の組み合わせは、珠玉なの」

唯「ほほう?」

紬「何パターンでも色んな妄想ができるわ! 例えば王道ではね…」


「…澪、」

そう言って、優しげな声音で振ってきた、私の名前。
それに思わず硬く閉じてしまっていた目を開けば、すぐ傍には、律の顔があった。苦笑している。

「そんな、怖がんなって。…さっき言っただろ?ちょっとずつ慣れていこうな、って」

電灯の明りは律の身体に遮られている。
そのせいで、そう言った律の表情は見えない。

「私だって慣れてないよ。…でもさ、澪を怖がらせることだけは、絶対にしない。約束するよ」

そっと頬を撫でられたかと思うと、目元を指で擽られる。
その拭うような動作に、私は自分が初めて泣いていたのだと気づいた。

紬「…なんて風に、いつもはおちゃらけているりっちゃんが、かっこいい王子様に変化するというギャップ萌えが味わえるの…!」

唯「ふむ」

紬「かっこいいわ、何てかっこいいのりっちゃん…」

唯「確かに分からないでもないなぁ。それにときめく澪ちゃんなんて、とっても可愛いし」

紬「うふふ、でしょう?」

唯「でもねでもね!王子様になる澪ちゃんだって可愛いし、それに慌てちゃうりっちゃんだって、かーわいいんだよ!」

紬「あら…」

唯「じゃあねじゃあね、さっきの所からだけどね…」


「…律、違うんだ…りつ、」

少し慌てて、私は目元を擦った。
指の腹で瞼が捩れ、何本か睫が抜ける。それに慌てたように、律がバカ!と声を上げた。

「こら、やめろって!」

「…怖くなんて、ないんだ」

そしてはっきりとした視界で、もう一度律を見上げる。
既に肩口までシャツを脱ぎ、ボタンも外されている自分とは違い、未だ服を着込んだままの律。
そうだよな。私は脱がしてもらったけれど、律は自分でするしかないんだものな。
私が、何もしないから。
未知の事をする事が怖いのも、一線を越える事がとても怖いのも、自分達の世界を裏切ることが震えるほど怖いのも。
律も、きっと一緒に違いないのに。

「自分が、情けない、だけだ」

「えっ?…うわっ!」

咎めるように捕まれていた手首をそっと指でなぞり、掴み返す。
そして一気に力を込めれば、律は簡単に倒れこんできた。剥き出しの胸の上に、丁度律のブラが当たって、ちょっと痛い。

「み、おっ!…何すっ、」

「うん、律…」

けれど抱き込めば、腕の中でその身体の柔らかさと細さを感じる。
ああ、律。そうだったよな、お前はこんなに。

唯「…っていう風に、立場が逆転しちゃうのもいいと思うんだ!」

紬「そうね…私としては、喘ぐ真っ赤な澪ちゃんを優しげに見るりっちゃん、って構図が最萌えなんだけれども……確かにいいわね」

唯「でしょー? ギャップで言ったら、泣きながら嫌だって喘ぐりっちゃんと、それをちょっとS心を持ちながら責める澪ちゃん、ってのもいいと思うんだ!」

紬「あら唯ちゃん、素敵な趣味ね」

唯「えへへー」




最終更新:2011年02月07日 01:52