第二話「これが私のご主人様」


唯「あずにゃ~ん! あずにゃ~ん」

梓「ふぁ~」

憂「……あーずにゃん!」

梓「……ぐるる」

唯「……」

憂「……」

梓「ふぁ~ぁ……zzz」

唯「気まますぎるよ」

憂「うん……どうしてこうなっちゃったんだろう」

唯「最初の三日くらいはいい感じだったのにね」

憂「なんかこう……これはこれで猫っぽんだけど」

唯「こんなの私が望んだあずにゃんじゃない!」

憂「うん!! あ、またバウリンガル鳴ってるよ」

唯「なになに」


 【そろそろご飯もってきて】


唯「……むぐぐ」

憂「……仕方ない、持ってくるね」

唯「あ、また鳴ってる」


 【この間のアレはいや。もっと味付け薄くして】


憂「……し、しかたないなぁ」プルプル

唯「お、落ち着いて! 憂のご飯はおいしいよ!!」

憂「あの贅沢猫には一体なにを食べさせたらいいの」

唯「あ、いまポッキー食べてるね」

憂「それも私のだし……」

唯「……あずにゃん」

憂「なんか一日中寝そべってるよね、お姉ちゃんみたい」

唯「……私あそこまでぐーたらしてない」

憂「飼い主に似るのかなぁ」

唯「……やめてよね」

憂「ちょっと甘やかしすぎた?」

唯「かもしれないねぇ。どうする?」


梓「……」ミョンミョン ベンベン


憂「ギター弾く猫なんてはじめてだし……どうしたらいいかわからない」

唯「困ったなー」

憂「あ、また鳴ってるよ」

唯「はいはいっと」


 【まだ?】


憂「はぁ……・今持って行きます……」

唯「ねーあずにゃーん」

梓「……ふぁ」

唯「ねー、こっちみてよー」

梓「にゃごにゃご」

唯「ねーあそぼー?」

梓「にゃお」


 【お腹すいた】


唯「うーん……これ壊れてるのかなぁ」

梓「にゃー」

唯「首輪とる?」

梓「にゃー」


 【別にどうでもいい。それよりご飯】


唯「そんなぁ……もしかしてホントに猫さんになっちゃったの?」

梓「にゃおにゃお」


 【うるさい。静かにして】


唯「ふぇえ……あずにゃんそんな言い方ひどいよ」

唯「ほら、私ご主人様だよ? 忘れたの? 可愛がってあげたでしょ?」

梓「……」

唯「住まわしてあげてるんだよ? ご飯あげてるんだよ?」

梓「……にゃお」


 【そりゃそうでしょ】


唯「え!!?」


 【私を誰だと思ってるの?】


唯「ひいいいい! こりゃダメだ! ういー! ういー!」

憂「な、どうしたの……?」

唯「あずにゃんが完全に自分の方が立場上だと思ってるんだよ」

憂「そっか……ね、猫ってそういう生き物だっけ……」

唯「どどどどどうしよう」

憂「落ち着いて。まずはその首輪を外してまともに話せる状態にしよ?」

唯「うん……」

梓「!」ピクッ

唯「ほらあずにゃん、おとなしくしててねーいまその首輪外すからねー」

梓「にゃほおお!! ふしゅー!!」

唯「ひいいい怒ったああああっ!! ういーこわいよーなんとかしてよー」

梓「……ふしゅる」

憂「ぐぐぐ……さてはこの生活が快適過ぎて堕落したんだね。もう戻りたくないと?」

梓「にゃふ」


 【いいからご飯もってきてよ。遅い】


憂「私にも立場ってのがあるの!! 仮にもご主人様なんだからー!!」

梓「にゃん」ダダッ

唯「逃げたっ!」

憂「家の中でどこへ逃げようっていうの!!」

唯「つかまえるよ憂!」

憂「うん、まかせて!」

梓「にゃふん」ピョン

唯「うわっ素早っ。運動不足のくせにっ!!」

梓「にゃおー」

憂「えいっ! つかまえたっ!! つかまえたよお姉ちゃん!」

梓「にゃごおお!」ベシベシ

憂「ちょ、んっ、もう! どこ触ってるの!!」

梓「にゃふううう」ジタバタ

唯「じゃあ首輪はずすよ!」

憂「早くっ! 暴れすぎだってもう!! あずにゃん!」

梓「にゃああああっ」

カチャン コトン

唯「はずれた……」

梓「……」

憂「ふぅ……で、いつまで触ってるの」

梓「……」

唯「あずにゃん。正気に戻った?」

梓「……にゃお」

憂「ん? んー? いまにゃおっていった?」

梓「……いいえ、言ってません」

唯「ふー、久しぶりにあずにゃんの言葉が聞けて安心したよ」

梓「……」

憂「なにその不満そうな顔」

梓「だって……人間はめんどさいんだもん」

梓「猫でいれば憂がなんでもしてくれるし唯先輩が可愛がってくれるし」

梓「ゴロゴロできるし、いいことだらけ。まるでこの家の主だよ」

唯「でもご主人様は私たちって言ったよね?」

憂「平沢あずにゃんなんだし」

梓「そんなの……しらない」

憂「これじゃ梓ちゃんがご主人様状態だよ」

梓「それでいい」

唯「……あずにゃんごめんね? 軽い気持ちで飼うなんていって」

梓「もっかい飼ってくださいよ」

唯「こんなにあずにゃんが堕落してダメになるなんて夢にも思わなかったんだ」

梓「無視ですかー」

憂「もう猫さんごっこはおしまいだね」

梓「えー」

憂「人間にもどって、たくさん苦労して、りっぱな梓ちゃんになってね?」

梓「いやだ。あの贅沢はもう体にしみついちゃってていまさら離れないよ」

唯「あずにゃん……」

梓「私もう戻れないので、唯先輩責任とって飼ってください。憂も」

憂「そんなこと言われても……」

唯「仮に飼うとしてもはじめから一ヶ月限定なんだよ? その後どうするのさ」

梓「ここに居つきます。死ぬまで」

憂「それは困る……かなぁ」

梓「じゃあこうしましょう。私が忠実なメイド二人を従えるご主人様ということで」

唯「シチュエーション変わっただけで中身変える気ないよね!!!?」

梓「だって……ひどいですよ唯先輩も憂も……こんな首輪つけて」

唯「そ、それは……」

憂「まさかこんなことになるなんて夢にも思ってなかったし……」

梓「私をこんなにして……ううう、よよよ」

唯「ご、ごめん……って発端はあずにゃんじゃん」

憂「……」

梓「……えへへ」

憂「……ねぇお姉ちゃん……いいアイデアがあるの」

唯「え? 何?」

憂「あずにゃんもう一度飼お?」

唯「え? 過ちを繰り返すの?」

憂「ううん、次はあらかじめしっかりしっかり……」

梓「?」


憂「調教すればいいんだよ。この猫」


梓「!?」

唯「おーなるほどー!」

憂「……ね?」

唯「……そうだね? 私たちをご主人様と認めさせるにはそれがいいかも」

梓「あ、あのあのあのっ!」

憂「首輪なんてなくても忠実な平沢あずにゃんにしてあげる」

唯「ふふふふ……あははははっ」

憂「えへへへ……あははっはは」

梓「こ、これは……」

憂「おっと逃さないよ」

ガシッ

唯「逃げちゃダメ。ほら、お望みどおり飼ってあげるんだから」

梓「にゃー! いやですー! ごめんなさいいいい!!」

憂「びびっちゃって可愛い」

唯「んもぅ子猫ちゃんちゅっちゅしちゃおー」

梓「んにゅ……にゃああああ!! 怖いです! その邪悪な笑みはなんですか!!」

憂「ねぇ、お姉ちゃんの部屋でいい? ちょっと汚れるかもしれないけど」

唯「うん! 汚れたらあとで洗うし」

梓「汚れるってなにいいいい!!? にゃあああ!!?」

唯「うるさい子猫にはまた首輪つけるけど?」

憂「にゃあだけでやってみるのもいいかもね」

梓「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい調子乗ってましたぁああ!!」

唯「ううん、過去のことはもういいの」

憂「だっていまからするのは、これから先調子にのらないためのしつけだもん!」

梓「にゃああああ!!! 痛いのはヤですーーー!!」

唯「痛くない痛くない」

憂「そう、とってもいいことするんだから」

梓「嫌だあああ! ゼッタイ嘘だーーー!!」

唯「はじめちょっとは痛いかもねー」

憂「あー、かもね」

梓「うにゃああああ!!」

唯「あずにゃん、しっかり目に焼き付けておくんだよ?」

憂「これがあずにゃんのご主人様なんだから……ふふ」



第二話「これが私のご主人様」



                                         デデン

                                         〈 ̄ヽ
                                   ,、____|  |____,、
                                  〈  _________ ヽ,
                                   | |             | |
                                   ヽ'  〈^ー―――^ 〉   |/
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                                   \__/   ヽ_____)



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最終更新:2011年02月06日 23:22