ふと あたたかさに包まれた

律『お?なんだ!?』

視界が 晴れていった

律(あれ?ここ、どこだ?)

半目を開けて天井を見る
どこだここ、私、知らないぞ?

ていうかアタシ 今まで何してたんだっけ?

首が重くて動かない

仕方なしに目を端に向ける

お!スイカだ!ラッキー!!!
あれ?誰かいる



澪「ぅ…りつぅ…ひっく…」

…澪!?


何で唯も梓も泣いてるんだよ!


そうか、アタシ、あの黒猫を助けようとして轢かれたんだ

なんであの黒猫をかばったんだろう

ただあの時はなんとなく

あの黒猫が、澪みたいに みえちゃったんだよなぁ…

澪「…りつ…!なんで…なんで起きないんだよぉ!」

律(澪…)

聞こえているよ

澪の声も、涙の音も。全部

全部知ってるから。

私は大丈夫だから。

ほら、こうやって話…せないけど、アタシ、そんな声、聞きたくないよ

私にはいつもみたいに怒ってくれる澪の声の方が耳慣れてて

心地がいいんだ だから

「…泣くなよ」

澪「律!?」
唯「りっちゅぁあぁぁあ!!!!」
梓「律せんぱぁぁああぁ!!!!」


突然病室から女の子達の涙声が聞こえた

それを聞いた私は

さわ子先生とりっちゃんの担当医とともに病室へ駆け込んだ

紬「りっちゃん!!!?」

律「あだだだだ!!!!澪!痛い!!痛いって!!」
澪「りつぅぅぅうぅぅ!!!!」

そこには見慣れた光景があった

りっちゃんに抱きついて泣きじゃくる澪ちゃんと唯ちゃんがいて

りっちゃんに悪態をつく梓ちゃんがいた

みんな 泣いていた

そして 笑っていた

担当医「奇跡だ…」

さわ子「…え?」

担当医「彼女はもう目覚めないとすら言われていたんです」

さわ子「だけど、自分で這い上がってきた」

担当医「よほどの精神力がなければなせません」

さわ子「…」

律の担当医は病室で笑っている律に言った

担当医「とにかく、これから精密検査を行いたので一度皆さん出て行ってください」

担当医「田井中さんは少し質問に答えてください、よろしいですか?」

律「あ、はい。ほら澪」

澪「…律、本当によかった…!っ本当に…」

律「うん、ありがと。皆もありがとうな!」

アタシはもう大丈夫!といわんばかりの笑顔を浮かべた

皆安心したのか素直に医者の意見に従った

アタシは医者の話を聞くために身体を前にしようとした

あれ?身体が、重くて動かないや

そっか、今アタシ患者だからそんなの当たり前か!

むふふ♪

あとでスイカおいしくいただくか♪

先ほどまで澪が座っていた椅子に医者が座った

担当医「…今、貴方の腕は動きますか?」

律「え?」


私達は医者と律に促され病室を後にした

唯「りっちゃんが生きててよかったぁー!!」

梓「まったく寝坊するにも程がありますよ!」

澪「ああ、全くだ!!むぎがいなかったら今頃どうなってたか…」

紬「そんな、私は何もしてないわよ」

そんな事をいいながら私達は病院の広いフロアに出て自販機で飲み物を買った

ちょっとしてからさわ子先生がやってきた

さわ子「皆、今日はもう面会できないみたいよ」

唯「えっ!?もうりっちゃんと会えないの!?」

梓「まぁ起きたばっかですしね…」

さわ子「明日なら面会はできるみたいよ、今日はもう帰ったら?」

紬「精密検査とか諸々やらなきゃいけないことがあるものね…

澪「そう…か。まぁそういうことなら仕方ないな」


『…今、貴方の腕は動きますか?』

さわ子(なんて聞かれたら、フラグたちまくりじゃないの…)

さわ子「りっちゃん…」


バン!!!!

扉が勢いよく開いた

聡「待たせたな!!姉ちゃん!!!」

全くなんでこいつはいっつも扉開けるとき

こんな騒がしいんだろう

部活帰りらしくユニフィーム着て

泥だらけになっちゃって

おまけに目に涙ためてるよ

男の子だろ?泣くなよ


バン!!!!

扉が勢いよく開いた

唯「待たせたね!りっちゃん隊員!!!」

なんでこうアタシの病室はこうも騒がしいんだろう

アタシが眠っていた間に季節は9月になっていた
アタシの夏休みは没収された
学校帰りなのかみんな制服姿だった

律「おいーっす!いらっしゃい!!」

澪「昨日はどうなることかと思ってたがもうすっかり起きたみたいだな」

澪がそういって背負ってたベースを降ろす
よくみれば唯も梓もギターを背負っていた

むぎはティーセットをもっていた
近くのポットでお湯を沸かしたのか紅茶を用意してくれた

律「もしかして今日部活やってたのか?」
唯「うん、そだよ!」
梓「もう文化祭も近いしこの前話した武道館での公演も近いんですよ」

紬「はい、どうぞ」
むぎはテーブルに紅茶を置いた
アタシはそれを眺めるだけだった
律「お、サンキュ♪」

澪「だからお前もサッサと退院しろ!」

退院、ね…

律「そのこと、なんだけどさ」
澪「ん?どうした?」

律「…昨日、皆が帰った後、気づいたんだ」

律「アタシ…、腕、使いモノにならなくなった」

唯澪紬梓「!!!?」

律「だから、アタシ…もうドラムできないや」

澪「そ、そんなぁ…」

澪「律…」

病室の空気が一気に冷え込む

アタシはベッドにもたれかかり腕は身体の脇に
力なくおいていた

みんな、アタシの腕をみている

梓「ほ…、本当に動かないんですか!?」

アタシは何も言わずに梓を見つめた
すぐに目線をそらされたけど。

澪「嘘じゃ、ないのか…?」

今にも泣きそうな声で澪がいった

ああもう全く

律「澪は大袈裟だなぁ」

顔を上げた澪の震える肩を

アタシは力いっぱい抱きしめた

律「嘘に決まってんだろ!」

アタシはいつもみたいに笑った

律「嘘に決まってんだろ!」

律がそうやっていつもみたいに笑った

けどその分抱き締められた肩の狭さがより一層


律の脆さを際立たせた



離すもんか、絶対、もうこの先ずっと、離してなるものか

澪「…ぅうぅ…ひっく…りつううううう!!」
唯「もう!りっぢぁんのぶわかぁあ!!!!」
梓「おどろかせないでくだざいよぉぉお!!」

紬(キマシタワー!!)


この瞬間をどれだけ待ち望んだだろう

この張り詰めた空気も、このホールも、皆と一緒に演奏できることも

律とこれからもずっと一緒にいれることも

ああ、そうか
今、私……



……

念願の武道館でのライブ当日

この瞬間をどれだけ待ち望んだんだろう

この張り詰めた空気も、このホールも、皆と一緒に演奏できることも

澪とこれからもずっと一緒にいれることも

ああ、そうか
今、アタシ……

私は不意に向きかえった

唯も、むぎも、梓も

…律も、まっすぐに私を見つめ、笑っていた

皆が、律がそうやっていつもみたいに笑うから、不安も緊張も何もかも溶かされた

澪(大丈夫…)
澪(大丈夫だよ、律)

律「それじゃぁ…」

律がスティックを構えた
それに答えるように私たちは楽器に手を添えた
ざわつきは瞬く間に静かになった

さぁ楽しもう、最高の舞台を

律「皆いくぜぇ!…1,2,3,4!」

ドコドコドン!!

軽快に律のドラムが鳴り響く



おわり
ありがとうございました