平沢唯です

えっとね、憂に聞いたんだけど

ずっと昔に核戦争があってね

ほとんどの人が死んじゃったんだって

それで今は、人殺しや泥棒をする恐い人や

放射能でおっきくなった虫やトカゲがウロウロする世界になっちゃったの


わたしは今、元兵隊さんのりっちゃんと

核シェルターで生まれ育って、外に出てきたばかりのあずにゃんと

三人で旅をしてるんだ


憂がいないのは寂しいけど……

わたし、おねえちゃんだからがんばるよ!


梓「唯先輩、何一人でぶつぶつ言ってるんですか?」

唯「えっ?なんでもないよー」


梓「これからどこへ行くんですか?」

唯「そうだねー、どうしよー」

唯「あずにゃん行きたいところないの?」

梓「私ですか?」

梓「私は何も考えずにVaultを飛び出して来ちゃったから……」

梓「私より、律先輩はどうなんですか?」

梓「私や唯先輩と違って、目的があって旅してたんでしょ?」

律「んー?行く場所は決まってるぞー」キョロキョロ

唯「りっちゃん、どこへ行くの?」

律「あ、ちょっと待ってくれ……」

カシャッ

バーンッ バーンッ!


梓「きゃっ!?」


唯「りっちゃん、今度は何やっつけたの?」

律「バークスコルピオン(巨大なサソリ)だ」

梓「えっ、全然気付きませんでした」

律「お前らもちょっとは周りに注意しろよー」

律「こいつは猛毒を持ってってけっこう危険なんだぞ?」

唯「りっちゃんがいるからいいじゃん!」

律「まったくなー」

ゴソゴソ

律「よし、今日の昼飯はこれだな」

梓「へっ?サソリなんて食べられるんですか!?」

唯「憂もたまに獲ってきてくれたけど、身はプリプリして美味しいよー」

梓「えーっ、ホンとですか?」


律「コイツから取った毒腺は加工して武器に塗れるし」

律「売ってもちょっとの足しになるからなー」

唯「サバイバルだよっ、あずにゃん」フンス

梓「なるほどー」(唯先輩は何もしてないけど)

唯「りっちゃん、行く場所は決まってるって言ってたけど」

唯「それってどこなのー?」

律「そりゃー、お前たちが安全に暮らせる場所だよ」

律「こんな放浪生活、いつまでも持たないからな」

唯「えっ?りっちゃんは私達と一緒にいてくれないの?」

律「私はお前たちの安全が確保されたら、また旅を続けるよ」

唯「そんなぁーっ」

梓「律先輩は、唯先輩に会う前、何の目的で旅をしてたんですか?」

律「……」

梓「律先輩?」

律「しっ、静かに」

律「あそこの岩の陰に隠れろっ」ササッ

梓「えっ?」

唯「待ってよりっちゃんっ」


唯「どうしたのりっちゃん?」

律「あっちを見てみろ、レイダー(無法者)だ」

律「あいつ等、こっちを見つけたとたんに問答無用で撃って来るぞ!」

律「ここに隠れてやり過ごそう」

唯「うぇーん、怖いよーっ」

梓「……」

律「よし、行ったみたいだな……」

唯「よかったぁー」ホッ

梓「……」

律「さっ、行くぞっ!」

唯「うん!」

梓(律先輩は強いから、レイダーなんて簡単にやっつけちゃうんだろうな)

梓(でも、それをしないのは)

梓(私達を危険に晒したくないから……)

梓(それだけじゃないっ)

梓(私達、特に妹さんを亡くしたばかりの唯先輩に)

梓(人を殺す所を見せたくないから……)

律「まずは、近くの町を目指そう」

梓(律先輩……)



その日の夜

唯「むにゃむにゃ」スピー


梓「律先輩っ」

律「なんだ梓、まだ寝てないのか?」

律「私が見張りをしてるから、お前は早く寝ろ」

梓「律先輩は、なんで旅をしてるんですか?」

律「……」

律「目的なんてないよ」

梓「目的もなく、NCRっていう大きな組織を抜けたんですか?」

律「……」

律「いいからもう寝ろよ」

梓「……」

梓「おやすみなさい」

律「おやすみ」

律(澪……)

律(私はお前を助けられなかった)

律(こいつらだって、私を頼ってるけど)

律(私には荷が重過ぎるよ)

律(私には無理なんだ)

律(私は誰かと一緒になんていられないっ)

律(怖いんだよ澪)

律(もう、大切なものを失うのは……)

律「くっ……」

律「はあっ、はあっ」

律(そろそろやばいな)

律(フィクサー、これで最後か……)

ゴソゴソ


梓「……」

梓(律先輩、何してるんだろ?)


次の日

唯「あははっ、それでねあずにゃん」

梓「ちょっと、唯先輩っ」

唯「律先輩が……」

律「」ハアッハアッ

唯「どうしたのりっちゃん!?」

唯「すごい汗だよ!」

律「なんでもないよ」

梓「どこか具合でも悪いんですか?」

律「なんでもないって言ってるだろ!!?」

梓「きゃっ!?」

律「あっ、ごめんな梓!」

律「もう少ししたら……」

律「よく、なるから……」ハアハア

唯「りっちゃん?」


律「……っ!?」

律「伏せろっ!!!」

カシャ ドン! カシャ ドン!!!

パンパンパン!


唯「うわぁーんっ!!!」

梓「何ですか!?」

律「敵だっ、遮蔽物に隠れろっ!」ササッ

唯「わぁー、わぁー、どうしよう!?」

律「落ち着け、武器を構えて隠れてろっ」

律「私が何とかするっ!」ハアハア

梓「そんなっ、律先輩っ、体調が悪いのに!?」

バーン バーン バーンッ!


律「くそっ、当たりやがれっ!」ハアハア

梓(だめだ、いつもの律先輩じゃないっ、このままじゃ……)

律「なっ!!?」

律「伏せろぉぉぉおおおおおおっ!!!」

唯梓「!!?」

ドガーーンッ!!!!!!


律「ダイナマイトかよっ!」

唯「もう嫌だよーっ、ういーっ!!!」

梓「爆発物を投げて来てるんですか!?」

律「さっきは私達が隠れてる岩の前で落ちたから、助かったけど」

律「こっち側に投げ込まれたら終わりだぞっ!」

唯「もうこんな所逃げようよーっ!!!」

カシャ ドン! カシャ ドン!

パンパンパン!


梓「ダメですよっ!ココから出たら狙い撃ちされます!」

唯「そんなぁーっ!?」


律「!?」

律(くそっ、またダイナマイトを投げ込まれるっ!)

律(投げられたら今度こそ終わりだ)

律(その前に撃つっ!!!)

バーンッ バーンッ!


律(くそーっ、当たらない)ハアッハアッ

律(やっぱり私は、ダメなんだ)

律(誰も守れない……)


梓「……っ」

カシャッ

梓(そこっ!)

ビーッ ビーッ!

ドガーーンッ!!!!


律「!!?」


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