唯「あ、あずにゃ~ん!」

梓「あ、唯先輩」

唯「そんなところにねっころがって何してるの? 日向ぼっこ?」

梓「ああ、空を見てるんですよ」

唯「空?」

梓「はい。見てください、綺麗ですよ」

唯「おおおー、雲ひとつない青空だー」

梓「散歩に出たら、あまりに綺麗だったんでちょっと眺めたくなって」

唯「じゃあ、私もちょっとご一緒させて貰おうかなー」

梓「いいですけど、面白いものでもないですよ?」

唯「丁度暇してたとこだし、私こういうのんびりしたの好きなんだ」

梓「ああ確かに、こういうのは唯先輩らしいですね」

唯「む~、何か人に言われると失礼な感じがするなぁ」

唯「へへ、じゃあちょっと隣失礼しますよー」

梓「と、言いつつ何で私の膝の上に寝ようとしてるんですか!」

唯「えへへ、やっぱり駄目?」

梓「当たり前です!」

唯「ちぇー」

梓「大学生になっても、唯先輩は全然変わりませんね」

唯「え~、これでも結構バイトとかして人生経験つんでるんだよー」

梓「人生経験、ですか」クスッ

唯「何さ?」

梓「いえ、唯先輩らしくない言葉がでたなぁと思って」

唯「あずにゃんしどい!」

梓「冗談ですよ。でもやっぱり、唯先輩は唯先輩ですよ。変わってません」

唯「褒められてるのかそうじゃないのか良く分からないなぁ」

梓「夏休みはいつまでなんですか?」

唯「九月の終わりまでだよ~」

梓「随分長いんですね」

唯「大人ですからっ!」

梓「良く分かりません」

唯「えへへ。夏休み中にまた合宿行きたいね」

梓「私の夏休みが終わる前にしてくださいよ。あ、でも軽音部の方でも合宿しないと。どうしよう」

唯「じゃあ、新生軽音部と放課後ティータイムで一緒に合宿しようよ!」

梓「あ、それいいかもです」

唯「でしょでしょ? 後で皆に聞いてみよっと」

唯「へへへ、あずにゃんが先輩として後輩を指導してるところが見られるのか~」

梓「別に大して新鮮なものでもないと思いますよ」

唯「え? 何で?」

梓「唯先輩への対応とほとんど変わりませんし。敬語か敬語じゃないかの違いくらいです」

唯「酷いよあずにゃん!」

梓「むしろ唯先輩より手がかからなくてやんわりしてるかもしれません」

唯「追い討ち!?」

梓「あ、でも、新入部員の中に、唯先輩に憧れてるって子がいるんですよ」

唯「うん。憂から聞いたよ」

梓「ああ、憂ったら大喜びしてましたからね」

唯「私はいい妹を持ったよ。いい後輩も持ったけどねっ!」ギュー

梓「もう/// ……だから、もし一緒に合宿できたら大喜びすると思いますよ」

唯「何だか照れちゃうなぁ」

梓「サインの練習でもしたらどうですか?」

唯「おおっそれは名案だねっ」

梓「冗談なんですけど」

唯「ていうか、サインならもうできてたっけ」

梓「え……あ、あれはちょっと」

唯「何さ?」

梓「ちょっと個性的過ぎるというか、その子の中の唯先輩のイメージが一気に崩れかねないというか」

唯「結構自信作だったのに」クスン

梓「まぁでも、唯先輩と接すればイメージなんて一時間くらいで崩れ去るんであんまり関係ないかもしれませんね」

唯「今日のあずにゃん厳しくない!?」

唯「はぁぁ~青いね~」

梓「青いですね~」

唯「あ、カラスが飛んでる。青色に黒が混じっちゃったよ」

梓「カラスって可愛いですよね」

唯「えーそう?」

梓「鳴き声が可愛いじゃないですか。カァカァって」

唯「私はツクツクボーシの鳴き声の方が好きだなぁ」

梓「でもカラスがツクツクボーシって鳴いたら困るじゃないですか」

唯「カラスの名前がツクツクボーシになるね」

梓「だからカァカァが一番なんですよ」

唯「なるほど」

梓「カラスって可愛いですよね」

唯「そんな気がしてきたよ」

唯「じゃああずにゃんはカラス飼いたいの?」

梓「え? 飼いたいわけないじゃないですか。怖いし」

唯「そっか」

梓「私は鳥ならインコが飼いたいなぁ」

唯「あー面白そうだよねー」

梓「調教して『オウムー』って言わせたいです」

唯「あずにゃんは可愛いこと考えるねぇ」

唯「こうやって空を見て、のんびりするのも悪くないね~」

梓「あの青空に吸い込まれて、飛んで行きたい気分です」

唯「あー私も、飛びたい気分」

梓「……唯先輩は、もう飛んでますよ」

唯「え?」


梓「前に言ったじゃないですか。私は、新歓ライブの演奏に感動して入部したって」

唯「うん。あれは嬉しかったなぁ」

梓「あの時私は、こんなに凄い演奏をするってことは凄い練習をしてるに違いないって思ってたんです。それこそ、私の想像もつかないくらい」

唯「ふむふむ」

梓「でも、実際はまるでお茶部ってくらい練習してなかったじゃないですか」

唯「う……。で、でも、それなりには練習もしてたもん!」

梓「それでも、小学生の頃からギターに触ってた私を感動させたにしてはどう考えても少なすぎる練習量でした。だから最初は納得行かなかったんです。
  どうしてこんなだらけてばっかりの人に、あんなに素晴らしい演奏ができるんだろうって」

唯「あずにゃん厳しい……」

梓「でも、今なら分かります。きっと、唯先輩が飛んでるからなんですよ」

唯「飛んでる?」

梓「私は、練習すればする程いい演奏ができるようになるはずってずっと思ってましたけど、唯先輩はそういうのを超越した場所にいるんですよ。
  どこまでも自由で一生懸命で楽しそうに、まるで大空をはばたいているように演奏してるんです。多分、だから私は感動したんだと思います」

唯「うーん、良く分かんないけど、あずにゃんだって楽しそうに演奏するじゃん。あずにゃんだって飛んでるよ!」

梓「いえ……私は駄目ですよ。軽音部の皆と一緒に過ごして、私も飛べるようになったかなぁと思いましたけど、やっぱり私には無理みたいです。
  今だって新入部員は私の技術は褒めてくれますけど、私の演奏に心を動かされたって言ってくれる人はいません。
  唯先輩と、皆と演奏して飛べた気になってましたけど、やっぱり私には翼はなかったみたいです」

唯「そんなことないよ! あずにゃんにだって翼はあるよ! だって」

梓「?」

唯「だってあずにゃんは、天使だもん!」

梓「……あの歌、ですか?」クスッ

唯「そうだよ。あずにゃんは天使だもん。翼がないなんてことないよ」

梓「駄目ですよ。どうしたって私は唯先輩にはなれません」

唯「別に私みたいにならなくったっていいじゃん。ううん、むしろなっちゃだめだよ。私あずにゃんの真面目なとこ、大好きだもん!」

梓「えっ///」

唯「他の皆だってきっとそうだよ。ティータイムを叱られるのはちょっと辛かったけど、
  そういう真面目なところもあずにゃんのいい所なんだから、私の真似なんかして失くしちゃ駄目だよ」

梓「唯先輩……」

唯「きっとあずにゃんが飛べないって言うんなら、それは無理して私みたいになろうとしてるからだよ。
  上手くいえないけど、皆に違う飛び方があって……あずにゃんには、あずにゃんの飛び方があるんだよ」

梓「私の、飛び方……」

唯「うん!」

梓「……」クスッ

唯「ど、どうしたのあずにゃん!?」

梓「いえ。……ありがとうございます、唯先輩。本当を言うと、ちょっと自信なくしてたんです。私に後輩のことまとめていけるのかなって。
  放課後ティータイムみたいな楽しい軽音部を作っていけるのかなって」

唯「大丈夫だよあずにゃんなら。きっと皆から尊敬されるいい先輩になるよ」

梓「少し自信つきました。ありがとうございます」

唯「うん、自信持って良いよ。あずにゃんは可愛い天使さんなんだからねっ!」ギュー

梓「も、もうそれはいいですっ///」

梓「……」

唯「あずにゃん?」

梓「また、唯先輩に助けられちゃいましたね」

唯「えへへ。これからも悩みがあったら、いつでも相談していいんだよ」

梓「……そうします」

唯「だから、合宿の時ちょっと遊んでも、大目に見てね?」

梓「それとこれとは話が違います!」

唯「やっぱりだめー!?」

憂「あ、おねーちゃーん! あ、梓ちゃんも一緒だったんだ」

唯「あ、ういー」

梓「憂」

憂「散歩に出たっきり帰ってこないから、お昼ご飯に呼びに来たんだけど」

唯「おおもうそんな時間かー。あ、あずにゃんも一緒に食べてきなよ!」

梓「え? いいんですか?」

唯「勿論だよ! そうだ、食べたら皆で遊ぼうよ! 新生軽音部の人たちも呼んでさ!」

憂「あ、それいいね」

梓「え、ええ!? そんな急に……」

唯「よーし、そうと決まれば行くよ、あずにゃん!」タッ

憂「行こ? 梓ちゃん」タッ

梓「……」クスッ

梓「はい!」タッ


おしまい