憂「でも二人共、本当に羨ましいなぁ・・・」

純梓「え?」

二人が怪訝そうな表情で言う。

梓「憂だって、和先輩が居るじゃない」

純「そうだよ、すっごくお似合いだよ?」

憂「私と和ちゃんはそういう関係じゃないよ!?」

純梓「嘘!?」

二人とも、すごく驚いてる。
ちょっと心外だよ。

純「昨日もあんなにいちゃついてたじゃん!」

憂「別にいちゃついてないでしょ!?私は怒ってただけじゃない!」

純「・・・頭撫でられて、あんなに顔真っ赤にしておいて?」

憂「そ、それは・・・!その・・・///」

梓「私、律先輩と澪先輩、憂と和先輩は大分前から付き合ってるものだと思ってたんだけど」

純「あ、私もー。でも付き合ってないにしても、絶対両思い確定でしょー!」

憂「・・・そう、見えるの?え、えへへ・・・///」

梓「うわぁ、何その緩みきった顔」

純「でもぶっちゃけさー、本当にあとはどっちかが告白するだけじゃないの?」

憂「こ、告白かぁ・・・。でも和ちゃん、結構奥手だからなぁ」

まぁ、私も人のこと言えないんだけどね。

梓「和先輩、あんなにかっこいいのにそういうの慣れてないんだ。結構、意外かも」

憂「和ちゃんはかっこいいけど、真面目で誠実だからー」ニコニコ

梓「こんなにデレデレとのろけておいて、付き合ってると思われてたことに驚く憂はすごいよ」

純「でも私も、どっちかって言うと経験豊富なのかと思ってた」

純「あのかっこよさで気に入った子はすぐに・・・痛っ!?」ベシッ

憂「・・・和ちゃんは、そういうことしないもん」バシバシ

純「ご、ごめん!私が悪かったよ!」

梓「憂は一途だね」ニヤニヤ

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唯「ムーギちゃん♪」ダキッ

紬「ゆーいちゃん♪」ギューッ

唯「今日もムギちゃんは、やわっこくてあったかいねぇ」スリスリ

紬「唯ちゃんだってそうよ?それに、いつも良い匂いがするわ~」ナデナデ

唯「あ!ムギちゃんもだよ!?ていうか絶対ムギちゃんの方が良い匂い!」

紬「いいえ!そんなことないわ!唯ちゃんの方が良い匂いだもの!」

唯「ムギちゃん!」

紬「唯ちゃん!」

和「・・・」

律「澪、私今日リップ忘れたから私に澪のリップ使わせて」

澪「もう、律はしょうがないなぁ・・・はい」

律「あ、そうじゃなくてさ。澪が自分にリップ塗って?結構多めに」

澪「え?こんな感じ?」ヌリヌリ

律「そうそう。それじゃ、むちゅー」ブチュー ジュル…ペチャ

澪「んんぅっ!?やっ・・・はぁっ・・・り、ふぅ・・・///」ペチャピチャ

律「んんっ・・・。よし!これでリップ塗れた!澪、ありがとな」プハッ

澪「り、律ったら・・・皆見てるのに何てことするんだよ・・・///」モジモジ

律「澪が、可愛すぎるからついさー」

律「でもこれなら、リップ塗るためって言い訳できるからいいだろー?」

澪「ま、まぁそうかもしれないけど・・・///」

律「それに、皆に見せびらかしたいくらい澪のこと愛してるんだもーん」

澪「も、もう何言い出すんだよ。律は本当に仕方ないやつだな・・・///」


『一つ言えるとしたら、そんなもの全く言い訳になってないわよ。
世紀のバカップル。
それに澪、そんなに嬉しそうな顔で言っても説得力が欠片も無いわ。
あと何より、舌入れる必要性なんて全くないでしょう。』

和「・・・一応言っておくけど、ここは学校よ」

唯紬律澪「え?」

『何で私、周りの人間全員に「この人何言ってるの?」みたいな目で見られなきゃいけないのかしら?』

和「・・・まぁいいわ。それで、放課後にちょっと話がしたいって言ってたけど何の話?」

律「あー。それじゃ、ストレートに聞くけどさ」

唯「和ちゃんは、いつになったら憂に告白するの?」

和「・・・え?な、何?唯ったら何言ってるのよ・・・。そ、それじゃ私生徒会・・・」

澪「今日は生徒会ないって言ってたじゃないか。だから今日にしたんだし」

紬「というか和ちゃん、ひょっとしてばれてないと思ってたの?」

『・・・何か知らないけど、さっきから随分と酷い言われ様じゃないかしら。』

唯「和ちゃんだって、私とムギちゃんのラブラブっぷりを見て羨ましいとか思ってるでしょー?」ギュー

紬「まぁまぁ、唯ちゃんったら♪」

唯「だからか最近和ちゃん、いつもより積極的に憂と一緒に居ようとしてるもんね」

和「・・・まぁ、正直に言えばね」

律「でな、私達は思った訳だよ」

澪「憂ちゃんだって、和のこと待ってると思う、ってさ」

和「・・・」

紬「和ちゃん、憂ちゃんのこと好きでしょう?」

和「・・・そう、ね」

唯「ねぇ、和ちゃん。他人が口を出すことじゃないのはわかってるけど、勝手に独り言を言わせてもらうね?」

『そんな断りを入れながら言っちゃったら、それはもう独り言じゃないと思うわよ?』

唯「憂はきっと、不安だと思うんだよね。だから誰かが早く、憂のこと安心させてあげてくれないかなぁ」

和「・・・時間は有限なのに、いつまでも煮え切らないなんて・・・我ながら何やってるのかしらね」

和「唯、ありがとう。今度、何かお礼はさせてもらうわ」ダッ

『本当にありがとう、唯。煮え切らない、臆病な私の背中を押してくれて。』

唯「私は今日、ゆっくり帰るから焦らずにね」

『長い付き合いの幼馴染の言葉も聞き終わらないうちに、私は走り去っていた。』

―――――――――――――――――――――――――――――――――――

ピンポーン

あれ?
お姉ちゃん、じゃないよね・・・。
お姉ちゃんだったら鍵持ってるし、わざわざチャイム押す必要ないもん。
一体、誰だろ?

憂「はーい」ガチャッ

和「ご、ごめん・・・憂。突然、来ちゃっ、た・・・」

憂「え?和ちゃん?べ、別にいいけどそんなに息を切らしてどうしたの?」

和「ちょっと、憂に用事があって・・・。上がらせてもらってもいいかしら?」

憂「うん、どうぞ上がって」

和「・・・ありがとう」

何か、和ちゃんの様子が変だなぁ。
いつもはこんなに表情、険しくないのに。


憂「・・・えっと」

和「・・・」

どうしよう。
「ちょっと、座ってくれる?」って言うから座ってみたけど、
それから和ちゃんったら、うつむいたままなんだもん。
何かすごく真剣に考えごとしてるみたいだし・・・。

とりあえず、飲み物でも持って来ようかな。

憂「和ちゃん、私ちょっと飲み物でも持って来るね」

和「・・・いえ、いいわ」

憂「え?でも・・・」

そう言って顔を上げた和ちゃんは、今までにみたことないくらい真剣な表情だった。
真剣な顔してる和ちゃん、いつもよりもっとかっこいいなぁ。

って、私ってば何考えてるんだろう・・・///

和「憂・・・、ちょっと目を瞑ってくれる?」

憂「え・・・?う、うん」

あまりにも真剣な彼女の表情に、私は促されるまま目を閉じた。
彼女がそっと、腰を上げる気配が、そしてどんどん私の方に近づいてくる気配がする。

ふと目を開けてみると、そこには目の前に迫った彼女の顔があった。

私は、そんな彼女の唇にそっと人差し指を当てて言う。

憂「だーめ。和ちゃん、何しようとしてるの?」

『え・・・。
どうしよう、私憂に・・・憂に、拒否され、た・・・?』

『そんなことを思っていると、彼女は続けて言った。』

憂「こういうことをしたいなら、先に伝えなきゃならないことがあるんじゃない?それをしないでっていうのは、ずるいよ?」

和「ご、ごめんなさい憂・・・。確かに私、卑怯だったわ。でもちゃんと言うわ。私、憂のこと・・・!」

『気持ちばかり焦っている私。
そんな私の唇に、彼女はもう一度人差し指を当てた。』

憂「ストップだよ、和ちゃん。一回あんなことしようとして、それで指摘されて後から言おうなんて、ずるいと思わない?」

『確かに、憂の言うとおりだわ・・・。
でもそれじゃ、もう私みたいな卑怯者には気持ちを伝える権利すら無い・・・の?』

憂「でも和ちゃんを待ってばっかりで、何もしようとしなかった私も・・・ずるいよね」

憂「だから、それはおあいこでいいんだ」

和「でも・・・」

『さっき、憂・・・私の言葉を遮ったじゃない。』

憂「それでね、和ちゃんにお願いがあるんだけど」

和「・・・何?」

憂「気持ちは、伝えて欲しいの。でもね、言葉じゃない方法で、私に気持ちを伝えて欲しいな」

和「え・・・?」

憂「ちょっとさっきと矛盾してるかもしれないけど、言葉じゃなくて、和ちゃんがしようとしたことで伝えて欲しいの」

憂「和ちゃんがしようとしたことって、する場所によって色んな意味があるよね?」

和「・・・!」

憂「だから、勢いとかそういうのじゃなくて、ちゃんと・・・気持ちを伝えるために、考えてして欲しいな」

憂「・・・お願い、してもいい?」

『全く、情けないわね私ったら・・・。
一人で焦って、気持ちだけ先走ってたのなんて、憂にばればれだったじゃないの。

全く、憂ってば―』

和「ええ、わかったわ。・・・じゃあ憂、今度こそ目を閉じてちょうだい」

和「私の貴女への気持ち、ちゃんと伝えるから」


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最終更新:2011年02月05日 07:40