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「…んぱい!ゆいせんぱい!」

唯「んあ……」

梓「…なんでこんなところにいるんですか!?」

唯「……ん…あずなん……おあよ」

すごく良い夢見てたのにー…

梓「もう始まっちゃいますよ!」

唯「始まる…なにが…?」

梓「はぁ~…ラ・イ・ブです!!」

唯「へ…?…あ…あーっ!!!」

時計を見るともう開始時間直前だった。

梓「…もうホントに……」

唯「えへへ……」

梓「ほら、早く行きますよ!!」


唯「うん……よし、行こっか…ギー太」


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律「…まぁ……うん……」

澪「……」

梓「はぁ……」

紬「お、お茶いれてくるね……」

唯「……ごめんなざぁぁぁぁぁい!!!」

…ライブは散々な結果に終わった。

理由は寝ぼけた私の演奏ミスに始まり、焦りによって歌をど忘れし、シールドに足を引っかけ
アンプ、りっちゃんのドラムセット、ムギちゃんのキーボードを巻き込んで盛大に転んだからだ。

奇跡的に楽器に損傷がなかったのが不幸中の幸いだろう。

澪「…ふっ…ふふ…ふふふ……」

梓「み…澪先輩…?」

澪「…あはっあははははは!!」

律「澪が壊れた……」

唯「み、みおぢゃん…ごめんなざぃ~……」

怒りを通り越して笑いに達してしまったのかな…こわい……

澪「ち、違うんだ…ごめん…ふふふっ……」

澪ちゃんは目に涙をためて笑っている。

本当に可笑しいらしい。

澪「……私、もしかしたら…消えちゃうんじゃないかって思ってたんだ…このライブで」

唯「え…?」

澪「みんなと演奏してると本当に…本当に楽しいんだ…練習でだって本当に…
  ならライブなんてすれば絶対消えちゃうんじゃないかって」

律「……澪…」

澪「…でも唯があんな……ふふ…あはははは…」

唯「め…めんぼくない……」

澪「…ホントに…ホントに…ふぅ…グスッ…ぅ…うぅぅぅぅ…」

澪ちゃんも私と同じで不安な気持ちになっていたのだろう。
今度は泣き出してしまった。

唯「…ねぇみんな……もうライブするの…やめない?」

律「な!唯~お前ミスしたからって…別に気にすんなよ」

唯「…違うの」

紬「…唯ちゃん……」

唯「…最高のライブを目指してずっと練習するの。ずっと…ずっと」

梓「それって…」

唯「ライブはしない…でもいつかは最高のライブをするため練習する…ずーっと部活を続ける…」

律「目標…というか未練があるから消えないってことか……」

唯「消えるのは恐くないけど…もうみんなとバンドできなくなるのは…嫌だな」

澪「…賛成だ!そうしよう!そうすればずっと一緒に居られるんだ!みんなで!」

紬「…私は反対だわ」

澪「なんで!?なんでだよ!ムギはずっとみんなでバンド続けたくないのか!?」

律「私も…それは嫌だ」

澪「りつ!なんで!なんで……」

律「生きてた頃の記憶を引きずって本当に心から満足できないままこの世界に残り続けることになるんだぞ……」

澪「ぅ……」

唯「そう…だよね」

やっぱりそれは勝手な考え方なんだろう。

梓「…なら…本当に最高のライブを目指せばいいんじゃないですか」

唯「…どういうこと?」

梓「本当に最高のライブをするんです…私たちがみんなこの世界を旅立てるくらいの」

唯「……」

紬「そうね…そのためならいくらでも練習を続けるわ」

律「私も…それなら」

澪「…みんなで消えるのか?」

梓「言い方は悪いけど……そうです」

唯「……みんなで…」

魅力的な話に思えたけど、それは同時にみんなと別れることなんだよね……

澪「ぅ…グスッ…いやだよ…みんなと別れたくない……ずっと…ずっと一緒にいたい……」

梓「……澪先輩…」

律「…考える時間が必要だよ…とりあえずこの話はまた…な」

唯「……」

紬「そうね…」

そのあとみんなと別れ、帰った。

次の日から澪ちゃんは練習に来なくなった。

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紬「あっ…りっちゃん……今日も…」

律「…あぁ」

何日たっても澪ちゃんは部室には来なかった。
食事の時や校内で私達やりっちゃんが話しかけても悲しそうな顔をするだけだ。

一度りっちゃんが無理やり連れてこようとしたときは澪ちゃんが泣き叫んでしまって大変だった。

唯「私…のせい…だよね……」

梓「唯先輩……」

律「…唯のせいじゃないよ…ただ澪はホントに…ホントにみんなと別れたくないだけなんだと思う」

紬「…やっぱり澪ちゃんがいないとライブはできないわ…もう一度話にいこう?」

唯「…あのね、澪ちゃんと二人で話がしたいんだ…いいかな?」

紬「…その…りっちゃんがいないと…」

律「…いや、頼んだよ唯」

唯「…うん」

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澪「……!?…りつ…?」

唯「…ごめんね」

澪「…唯……私は…練習には行かないから…」

唯「…澪ちゃんは…みんなとバンドするの嫌になっちゃった?」

澪「それは違う!けど…練習したら…いつかライブをして…みんな消えちゃうんだろ…」

唯「…そうだよ」

澪「やっぱり私は嫌だ…唯だって嫌なんだろ!?だからあんな提案をしたんじゃないのか!?」

唯「…私も…みんなと…ずっと…ずっとバンドしたい」

澪「や、やっぱり唯もそう思ってたんだな!じゃあ二人で皆に言いにいこう!そうすれば皆もっ…」

唯「…あのね…澪ちゃん…私、みんなの生きていた頃の話を聞いて…
  ホントに悲しくって、もし新しい人生を始めたとしてもまた悲しいことになっちゃうかもしれない…
  それならこの世界にいた方がいい…ふとそう思ったの」

澪「そ、そうだよ!どうせ生まれ変わったってまた同じ目にあうんだ!それなら消える必要なんてない!」

唯「…でもね…この世界に残っても嫌な記憶や気持ちはずっと残ってるんだよ?
  …そんなの辛すぎるよ…」

澪「でも!みんながいれば!…みんなといるときは嫌なことだって忘れられるんだ…だから…」

唯「この世界はそんな記憶を完全に無くしちゃうくらいの喜びとか満足とかを得るためにあるんじゃないかな…」

澪「でもっ…辛いことを忘れて生まれ変わっても…また辛い目に合うかもしれないじゃないか…」

唯「りっちゃんとムギちゃんに聞いたよ…二人とも生まれ変わっても澪ちゃんを見つけるって約束をしたって」

澪「…そんなの…無理だよ…」

唯「…こんな世界があるってことは…本当にいるのかもしれない…神様が」

澪「え…?」

唯「…理不尽な人生を終えた人のための世界なら…
  次の世界で、その人の願いを一つくらい叶えてくれたっていいと思わない?…もし神様がいるなら」

澪「…唯……」

唯「…二人の約束…信じてあげてもいいんじゃないかな」

澪「……」

唯「みんなでやらなきゃ卒業できないよ…この世界から」

澪「私…は…」

唯「澪ちゃん」

澪「……?」

唯「私も約束する。きっと澪ちゃんを見つけるよ」

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律「…お…唯」

唯「ムギちゃんとあずにゃんは?」

律「ん…先に飯食べにいったよ。ちょっと私も唯と話したくてさ…澪、どうだった?」

唯「うん…きっと大丈夫だよ」

律「そう…か…よかった」

唯「…りっちゃんはホントに澪ちゃんを大切にしてるんだね」

律「んー?まぁな…なんていうか…ほっとけなくてさ…」

唯「…そうなんだ」

律「うん……罪滅ぼしってわけじゃないけど…生きてたころ助けられなかった友達に…」

唯「りっちゃん…」

律「ま、澪が大丈夫ならよかった……でさ、唯はどうなんだ?」

唯「…?」

律「その…唯があの提案をしたときからずっと思ってたんだ…唯もずっとこの世界にいたいのかなって」

唯「…半分くらいはそうかな」

律「半分?」

唯「私も…生まれ変わって、もうみんなと永遠に会えないならずっとこの世界にいたい…」

律「そうか…」

唯「けど…それじゃ辛い気持ちをずっと引きずったままになっちゃうから…」

律「…じゃあさ…あの約束…みんなでするか」

唯「みんなで…」

律「あぁ…5人…いや、さわちゃんを入れて6人でさ……6人もいれば見つけるのなんて余裕だよ!」

唯「あはは…りっちゃん前向きだね」

律「おぅ!それだけが取り柄だからな!…だからさ唯も…」

唯「うん…最高のライブ…がんばろ」

律「よし!じゃあ今から澪誘って飯行くか!」

唯「…うん!そうだね」

律「澪が戻ってきたらさすがに練習しないとな!だいぶ鈍ってるよ」

唯「そうだね…だって最高のライブにしないといけないんだから!」

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澪「……ごめん、みんな」

紬「澪ちゃん…おかえりなさい」

梓「そのっ!…私も…約束します!だから…」

澪「梓…ありがとう」

唯「りっちゃん…」

律「うん…なぁ澪…みんな…」

澪「ん…?」

律「生まれ変わって…次の人生が始まっても、お互いが見つけあって
  また友達になれるように…またバンドができるよう約束しよう…みんなでさ」

紬「りっちゃん…うん…」

梓「私も…はい!」

澪「…うん…約束しよう」

唯「澪ちゃん…」

澪「約束…破ったら承知しないからな!」

律「…あったりまえだろ!私は部長なんだからなっ!!」

唯「えぇー!?りっちゃんいつの間に!?」

梓「律先輩が部長?あり得ないです」

律「中野ぉ…言うようになったな…」

唯「私が部長だと思ってたよ!」

律「私よりあり得ないよ!」

梓「どっちもどっちです」

澪「ふっ…ふふふっ…」

紬「澪ちゃん…この五人なら…ううん、さわちゃんも入れて六人…きっと約束…守れるわ」

澪「うん…そうだな…」

律「…んじゃあ部長はジャンケンな!」

唯「えぇ~アミダにしようよぉ~」

梓「澪先輩かムギ先輩がいいと思います」

紬「みんな~とりあえずお茶にしましょう?」

律「じゃあじゃあジャンケンにするかアミダにするかジャンケンで決めようぜ!」

唯「えぇ~…」

澪「いいかげんに…しろっ!」

律「あだっ!」

梓「澪先輩が律先輩を殴った…!?」

唯「は、初めてじゃない?」

紬「うふふふふ…」

律「みおちゅわ~ん…よくもやってくれたなー!こちょこちょ~」

澪「うわっ…やめっ…やめっろ!」

律「ぐへぇ!」

唯「ぷっ…あはははは!りっちゃん、たんこぶ~」

本当に…本当に楽しい。

この空間をこの世界でも、次の人生でも続けていくためにもライブ…必ず成功させなきゃ。


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