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さわ子「ムギちゃん、澪ちゃん、新曲できた?」

紬「はい~♪」

澪「うぅ…もう私の歌詞を破られるのはいやだ……」

さわ子「早く渡せ」

澪「あああぁぁぁ……」

澪ちゃんの書いてきたいくつかの歌詞カードがさわちゃんに奪われた。
ちらりと内容が見えたけど、すごくメルヘンな内容だったように思える。

さわ子「……澪ちゃんこれ……」

澪「え…?」

…なんだかさわちゃんの様子がおかしい。
いつもなら澪ちゃんのかわいすぎる歌詞を見て、怒ったさわちゃんが全部破いてしまうかさわちゃん風に書き直されてしまう。

でも今日のさわちゃんは澪ちゃんの歌詞を食い入るように見ていた。

律「さわちゃん…どうしたんだろ…?」

澪「き…きっとさわ子にも私の歌詞のよさがわかっ…」

さわ子「こっからここまで没ね」

結局何枚かは破られてしまった。
さっきのさわちゃんはなんだったんだろうか。

澪「あぁぁぁぁぁ私のときめきシュガーがぁぁぁ…」

さわ子「さ、早速アレンジに入るわよー!」

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そしてライブの日になった。

唯「うわ~…結構お客さんいるね……」

律「元からこの世界にいるやつらも来てるみたいだからな」

澪「き…緊張する…」

紬「澪ちゃん!手のひらに入って書いて飲み込むのよ!」

律「なんかおかしくないか?それ」

さわ子「みんなおまたせー」

唯「あれ?さわちゃん?」

さわちゃんはいつもはかなりすごいメイクと服装なのだが今日は制服で普段のままだった。

律「さわちゃんはやく準備しないと間に合わないぞ!」

さわ子「今日はこのままでするのよ。ライブ」

紬「なんだか新鮮な感じだわー♪」

澪「…嫌な予感がする……」

さわ子「失礼ね…まぁ演奏はいつも通りやるからね」

澪「うぅぅ……」

さわ子「…今日、この新曲は最後にやるから。はいこれ。セットリスト」

律「じゃあ準備しますか」

唯「初ライブ!楽しみだな~」

良いライブにしよう!

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さわちゃんがステージに立つとなんだか観客席がざわついた。
もしかしてメイクをしていないさわちゃんを見たのは初めてなのかもしれない。

もしくはメイクしてるときってさわちゃんだと気づかれてなかったのかも…

さわ子「待たせたな!!!おまえらぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

でもさわちゃんがそう言うと観客席からは凄い歓声がおこった。
中にはメイクしてるさわちゃんみたいな人もいる。

さわ子「いくぞ!一曲目ぇ!!!ふわふわ時間!!!!!」

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唯「すごい…」

体がすごく熱い…なんだかよくわからない感情で胸の中がぐちゃぐちゃだ。
でもすごく気持ちいい。

観客席からはアンコールがおこっていた。

さわ子「じゃ…新曲やりましょうか」

律「よっしゃー!もいっちょがんばるか!!」

紬「おーっ♪」

澪「やるしかない…やらないと……」

さわ子「…じゃあ行くわよ。みんな」

この時の私は初めてのライブでの緊張感や高揚感で
さわちゃんがなんだか思い詰めたような表情をしていたことに気づかなかった。

さわ子「…次は新曲をやらせてもらいます」

ん?なんだかさわちゃんの様子がおかしい。
みんなも不思議そうな顔をしている。

さわ子「私の恋はホッチキス!」

さわちゃんの激しいギターソロから始まるはずの曲。
でもなんだかおかしい。

唯「これって…」

いつものさわちゃんの演奏じゃない!!
みんなと目配せをすると、困惑顔だったけど曲はもう始まってしまっている。
さわちゃんに合わせるしかない!

観客席もさっきのパンクな感じから一転してポップなラブソングに変わったことに戸惑っているらしい。
だれも声を発していなかった。

そして演奏が終わったと同時に電気が消え幕が下ろされた。

私はさっきの高揚感が失せ今はすごく不安な気持ちになっていた。

唯「さわちゃん!どうしちゃったの?」

なぜだか不安でしょうがない。

唯「さわちゃん…?」

返事がない…

そうしている内に目が暗闇に慣れてきてさわちゃんのいた位置が見えてきた。

唯「え…さわちゃん…?」

いない。そこにはさわちゃんが使っていたギターが落ちているだけだった。

律「お…おい…どうなってるんだよ…」

澪「さわ子が、き…消えた…」

紬「…………」

唯「き…きっと部室に戻ったんだよ!恥ずかしくなっちゃったんじゃないかな?ハハハ…」

そうに決まってる!

唯「みんな!早く部室に戻ろ!!」

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?「あんなに評判がいいから来てみたのに、めちゃくちゃなサイドギターに走りぎみのドラム…
  アンコールは急に曲調が変わって意味わかんなかったし。ホント最悪……」

私が入れば少しはマシになるだろうけど。

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部室に戻ってもさわちゃんはいなかった。

恥ずかしくて私たちの前に出てこれないだけだろうと私たちはさわちゃんを待っていた。

でも何日経ってもさわちゃんは帰ってこなかった。


澪「さわ子…もしかして本当に消えちゃったんじゃ……」

律「澪っ!!」

澪「ご…ごめん…」

紬「……みんな聞いて」

ムギちゃんがなんだか覚悟を決めたような顔で話始めた。

紬「みんな、この世界では消えてしまうことがあるのは知ってるよね?」

でもそれって…

律「それは真面目に授業を受けたり模範的な行動をしたらだろ!?さわちゃんは授業なんか行ってないし模範的でもなかったぞ!!」

紬「それも間違ってはいないわ…けどね、この世界で消えてしまう条件はそうじゃないの」

澪「どういうこと…?」

紬「この世界で消える条件…それは心から満足すること。いうなれば成仏かしら?」

唯「でもそれじゃ授業に出たり、模範的な行動で消えるっていうのはおかしいよね…?」

紬「…それはこの世界に来る条件が満足な学生生活を送れなかった人、だからよ」

澪「……!!」

律「っ…!」

唯「え…?」

紬「唯ちゃんは記憶がないからわからないかもしれないけど、つまりこの世界はいろんな理由でまともに
  学生生活が送れなかったり、満足できなかった人が来る場所なの。…澪ちゃんとりっちゃんはわかるよね?」

澪「…………」

律「ムギっ!」

紬「ごめんなさい…でもこれが事実よ…少しは私の推測も入ってる……でもこれで確信したわ」

律「そんなこと信じられるかよ!」

紬「…だって私は何度も見てるもの…友達が消える所を」

律「っ……」

唯「じゃあさわちゃんが消えたのは…満足したから…?最後のあの演奏で…」

紬「…おそらくそうね……」

律「なんだよそれ!くそ!」

でもそれって良いことなんだよね…?だってさわちゃん満足して消えたのだから。

澪「それじゃ…私たちもいずれ消えてしまうってことじゃないのか…?」

唯「……」

紬「それはわからない…でも私は悪いことだとは思わないわ。だって満足した気持ちでまた新しい人生を歩めるかもしれないもの」

澪「消えるんだぞ…?怖くないのか…?」

紬「違うわ。いままでの人生の未練をなくして新しく生まれ変わるの。だから満足して消えることは悪いことじゃない」

唯「私もムギちゃんと同じ考えだよ…」

律「お前は記憶がないからそんなことが言えるんだよ!!」

紬「りっちゃん…」

澪「律……」

唯「ごめんね…りっちゃん……」

律「くそっ…!」

りっちゃんが部室から出ていってしまった。
私の発言は無責任だったのだろうか。

澪「律が…軽音部を作ったから…一番納得できないんだと思う。律と話してくるよ……」

紬「お願いね…澪ちゃん…」

澪ちゃんはりっちゃんを追って部室を出ていった。
ムギちゃんと二人きりだ。
さわちゃんのことやさっきのこともあってすごく気まずい。

唯「……ムギちゃん…何度も友達が消えるのを見たって言ってたよね…どういうこと?」

紬「……」

あまりの重い雰囲気に喋らずにはいられなかった。
でもこんな質問失礼だったかな…ムギちゃん黙ったままだし…

唯「ごめんねムギちゃん…いやな質問だよね…」

紬「…いいの唯ちゃん。話すわ。…実は私、この軽音部の中ではたぶん一番最初にこの世界に来てると思う。」

唯「そうなんだ…」

紬「私がこの世界に来てすぐの何もわからない時、同じ境遇の人たちが助けてくれたの。
  そのうちの何人かは気もあって友達になったわ。すごく楽しいかった」

唯「でもそれじゃ…ムギちゃんは消えちゃうはずじゃ……」

紬「…先に私が何で死んだのかを話さないとだめね…私はね、高校に入ってすぐの頃に殺されたの。」

唯「殺された…?」

紬「私の家はね、すごくお金持ちだったの。けどお父様方は汚いことをしてでもお金を稼ぐようなやり方の人だったから他の人からすごく恨みをかってたわ。
  そして私はお父様を脅す材料に誘拐された。高校初めての友達と一緒に帰るために付き人を全て断った日にね。」

唯「そんな…」

紬「酷いことをたくさんされた…そのあとお父様への見せしめに殺されたわ…そして気づいたらこの世界にいたわ」

唯「………」

紬「この世界に来たときに傷は全部治ってたけど、記憶は残ってた。私ね?男の人が近くにいるだけですごく気持ち悪くなっちゃうの……
だから私は授業には行けなかった…それに私たちと同じ境遇の人にも男の人はいるわ。だから友達とも毎日会えるわけじゃなかった。
だからかな?私が消えなかったのは」

唯「ムギちゃん…」

紬「それでもね私に会いに来てくれる友達はいたわ。でもある日を境にまったく会えなくなった。他の人に聞いたわ。彼女はどこにいったの?って。
みんな知らない。消えてしまったって。…それから私は必死でこの世界について調べたわ。我慢して男の人にも話を聞いた」

唯「だからムギちゃんはあんなに詳しかったんだね…」

紬「…でもそうしている内に私が知っている人は誰もいなくなったわ。友達が消えた真相はわかったけど、友達どころか知り合いまで誰もいなくなってしまった。
……私ね、生きてるときの趣味はピアノだったの。一人で寂しかったからかな?無性に弾きたくなっちゃって。
それでね?私が一人でピアノを弾いてるときにりっちゃんが声をかけてくれたの…」

唯「う…ムギぢゃん……」

紬「これで終わり。ごめんね?唯ちゃん」

唯「うう゛ん…こっちこそごめんね?無理やり話させて…」

紬「泣かないで唯ちゃん…お茶入れるわ。りっちゃんと澪ちゃんを待ちましょ」

唯「…うん」

こういうときは無理に励ましたりしない方がいいよね…

唯「えへへ…ムギちゃんの入れてくれたお茶おいしい…」

紬「ありがと♪」


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ムギちゃんとお茶を飲んでるとりっちゃんと澪ちゃんが帰ってきた。

澪「ほら…律」

律「ムギ…唯…ごめん…少し言い過ぎた…」

紬「ううん。私もごめんね?りっちゃん」

唯「そうだよー!気にしないでりっちゃん!」

律「ぷっ…お前は少しは気にしろー!」

唯「ぐぇっ…り…りっちゃん…ギブ……」

よかった、りっちゃんも元気になったみたいだ。

澪「…さわ子のことはもうしょうがない…納得はできないけど満足して消えたのなら悪いことってわけでもないしな……」

律「ああ…さわちゃんのことは忘れないけど、気にしすぎるのはよくないよな」

紬「そうね…」

唯「…ねぇみんな…久々に合わせて演奏しない?」

律「おっいいねー!やるか!」

紬「やりましょやりましょ♪」

澪「…そうだな」

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?「やーっと練習を始めましたか…やる気のないバンドです」

やっぱり私が入ったほうが……

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律「そういやボーカルどうするんだ?」

紬「作詞してる澪ちゃんがいんじゃない?」

澪「む…無理無理無理!コーラスで精一杯だよ…」

律「じゃあ…」

唯「でへへへ……」

律「…ムギ!頼んだ!」

唯「りっぢゃぁぁぁぁぁん!!!!!」

紬「唯ちゃんでいいんじゃないかしら♪」

律「しょうがねぇなー…しっかりやれよ平沢隊員!」

唯「わかりましたであります!田井中隊長!」

澪「曲調は昔の感じに戻していいよな…?」

律「そうだな…さわちゃんがいないしな」

澪「よ…よかった……」

律「んじゃ始めるか!1、2、3、4!」

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?「やっぱりあのギター、演奏が独創的すぎて浮いてます。誰かがカバーしないと…」

私が…私なら……


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唯「ふぃー久々に演奏すると疲れるねぇ~…」

律「同意~…」

澪「まだ一曲しかやってないだろ…」

紬「お茶にしましょ♪」

唯「わーい!おやつ♪おや 「失礼します」

私が肩からギターを下ろしながらお茶の席に向かっている途中、突然ドアが空き、中からツインテールの小さな女の子が入ってきた。
そしてその子は私に向かって指を指すとこう言った。

?「あなたのギターのせいでバンドが死んでます」

唯「………」

あまりにも突然のことに呆然としている私から、肩にかかったギターをおもむろに奪い取るとその女の子はギターを演奏しだした。

唯「う…うまい……」

そして一通り演奏をやり終えると女の子はすごく胸を張り、やりきった感ありありの顔で

?「このバンドも私が入れば少しはマシになるんじゃないですか?」

と偉そうに言った。

律「……なんだこいつ……」

澪「この子やばいよぉ…りつぅ…」

紬「うふふ♪」

唯「あのー…どちら様で…?」

?「梓です。中野梓」

相変わらず胸を張った偉そうな態度だ。

唯「どういったご用件で…?」

梓「だ・か・ら!私がこのバンドに入ってあげるって言ってるんです!物分かり悪いですね!」

頬を膨らませながら地団駄を踏んで怒っている。
小さくてかわいいなぁ。

紬「まぁまぁ落ち着いて。梓ちゃん。お茶いかが?」

梓「…まぁ飲んでやるです」

律「…わかった…お前、喧嘩売りにきたんだな…?そうだろ?」

澪「りつ…喧嘩はよくないよぉ…」

紬「まぁまぁまぁまぁ。みんなもお茶にしましょ」

唯「おっかし~おっかし~」


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