3戦目!

梓「この戦いで勝者が決まる……」

唯「負けないよ、あずにゃん!」

梓「私だって負けませんよ!軽音部一の料理上手の称号は私のものです!」

律「えっ、私たちってあいつらより料理下手なの?」

澪「私に振るな」

梓(手抜きはしない……一気に畳みかける!)バッ

唯「えっと、卵は……おわっ!?」ツルッ、グシャッ

紬「ゆ、唯ちゃん大丈夫?」

唯「えへへ、失敗失敗」

律「また二人とも卵か……」

澪「この対決って卵縛りとかルールあったっけ?」

律「なかったと思う」

梓「この身土不二に加えて……これを使います!」ドンッ

律「おお、卵以外の食材来たっ!」

紬「あれは……お米かしら?」

和「ええ、お米ね。でもあれはただのお米じゃないわ」キラリ

澪「どういうこと?」

梓「ふふふ……一目で見抜くなんて和先輩はやはり凄い人です。そう、これこそ私の切り札……『幻の米』!」

律「幻の……米?」

和「正しくはJA北信州みゆき『幻の米』ね。米の良食昧三大産地を結んだエリア、幻の三角地帯。そこに位置する長野県JA北信州みゆきでとれるコシヒカリの中でも、県内特A地域で収穫された一等米だけに許された銘柄よ」

紬「美味しいの?」

和「それはもう。一粒一粒がしっかりと甘みを蓄え、栄養価も抜群。まさに幻の米と呼ぶにふさわしい一品ね」

律「これはまた凄いものを持ち出してきたな……」

和「唯は……」チラッ

唯「お、重い~……」フラフラ

澪「唯が持っているのもお米だ!」

紬「材料が被っているけど、大丈夫かしら……?」

律「見たところ唯のは……普通の市販品だな」

梓(ふふふ……。唯先輩、そんなお米では私のこの一品には到底敵いませんよ?)

梓「見せてあげます……私の本気をっ!」

コンコン、パカッ

和「炊き立ての幻の米を中央を少しだけ窪ませて茶碗に盛り、その上に身土不二を落とした……!?」

梓「仕上げにこいつです!」タラー

紬「その上から黒い液体をかけて……この匂いはお醤油ねっ」

澪「こ、これはまさか……」

梓「完成しました!これが私の三品目っ!」ドンッ

律「って、卵かけごはんかよおおおおおおおおおおっ!!!」

梓「うるさいですよ律先輩」

澪(これはひどい)

紬「……」

和「三人とも、油断しちゃダメよ。あの卵かけごはんは油断ならないわ」

律「そりゃ凄い米と卵を使ってるからなあ」

和「甘いわ律。梓ちゃんの工夫はそれだけじゃない……」

紬「えっ、どういうこと?」

和「卵かけごはんに使った醤油……」

梓「そこまで気付きましたか」

澪「醤油がどうかしたのか?あっ、まさか幻の醤油とか?」

和「違うわ。梓ちゃんは、卵かけごはんと最高の相性を持つ醤油を選択してきた……」

紬「卵かけごはんと最高の相性……?」

和「そう、あれは『おたまはん』。卵かけごはん専用醤油よっ!」ドンッ!

律「な、何だって!?」ガガーン

澪「卵かけごはん専用醤油……そんなものまであるのか!?」

和「ええ。その名の通り卵かけごはんのために開発された醤油よ」

梓「……ただ美味しいだけの醤油なら他にもあります。しかし身土不二と幻の米……この二つを最高に引き立てるにはこれしかないと思い、ネットで取り寄せたんですよ」フフン

紬「た、食べてみてもいいかしら?」

梓「もちろんです。審査をよろしくお願いします」

律「じゃあ……」

澪「い、いただきますっ」

パクッ

律「……!」

澪「ん……」

紬「わあ……」

梓「どうですか?」

律「悔しいけど美味いな……」

澪「うん、こんな卵かけごはん始めてだ。ご飯も卵も醤油も、しっかり味が立ってる上にお互いの美味しさを高め合ってる感じだ」

梓(よし……評価は上々。勝った!)

紬「……」

唯「よっし、出来たよ~」

律「お~唯、遅かったな」

和「いや、普通に早い方よ。梓ちゃんのスピードが異常なだけで」

梓「卵かけごはんはスピードも大事ですから!」エヘン

澪「威張るとこじゃないぞー?」

紬「唯ちゃんは何を作ったの?」

唯「えへへ~……じゃ~んっ」

コトッ

律「これは……」

和「卵おじやね」

澪「いい香りだな」

梓(見たところ何の変哲もないおじや……これで私の勝ちは決まったも同然!)

紬「でもなんでおじやを?」

律「料理対決って場には相応しくないよな。まあ他の料理も大概だったけど」

唯「えっとね、これはこの前憂が風邪引いちゃった時に覚えたんだ~」

澪「憂ちゃんが?」

唯「うん、料理の本を見ながら頑張って作ったんだけど……憂が凄く喜んでくれてね。みんなにも食べてもらいたいなって思って」

和「そう……唯が憂のために……」

唯「さあ召し上がれ♪」

律「いただきます」

パクッ

唯「どうかな?美味しい?」

律「……」

澪「……」

紬「……」

梓「ど、どうしたんですか?みんな黙って……」

和「みんな同じ考えみたいね」

律「ああ、多分な」

梓「え……?」

和「一応聞いておくけど……判定は?」

スッ

梓:0
唯:3


……

唯「わ~い、勝った勝った~♪」ピョンピョン

梓「そ、そんな……納得できません!どうして私が負けてるんですか!?」

澪「落ち着け梓」

梓「でもっ!私の卵かけごはんは完璧だったはずです!」

律「和。説明、頼めるか?」

和「ええ。梓ちゃん、こっちを向いて」

梓「和先輩……」

和「あなたの食材選びは確かに完璧だったわ。あの卵かけごはんはまさしく至高の一品だった」

梓「だったら!」

和「落ち着いて。梓ちゃん……唯の料理にはあって、あなたの料理にはないものがあるの」

梓「私の料理に……ないもの?」

紬「そこが勝敗の分かれ目だったわ」

梓「ムギ先輩……一体何なんですか、私の料理に足りないものって」

和「それは……『手作り感』よ」

梓「手作り……感……?」

和「梓ちゃん、あなたの揃えたものはどれも素晴らしいわ。でもそれは、所詮お金で集めたもの」

梓「っ!」

和「料理とは、食べる人間を想って苦労すればするほど、手間をかければかけるほど美味しくなるもの」

律「唯が勝ったのは当然のことなんだ」

澪「唯が憂ちゃんのために、そして私たちのために作ってくれたおじや」

紬「決して難しい料理ではないわ。でもそこに込められた確かな愛情……唯ちゃんのおじやは、まさに究極の味だったの」

唯「な、何か照れるね~」

梓「……」

和「分かって……貰えたかしら?」

梓「……」

唯「あずにゃん……?」

梓「唯先輩。そのおじや、私にも食べさせてもらえますか?」

唯「えっ?……うん、もっちろん!」

梓「ありがとうございます。……はむっ」

梓「……」モグモグ

唯「どうかな?」

梓「……あったかくて、優しい味がして……すごく、美味しいです」

唯「……えへへ♪」ギュッ

梓「あ……」

唯「ありがとう、あずにゃん♪」

梓「つ、次は負けませんからっ!手作り感が足りないって分かった以上、もう私には死角は……はぅ」

唯「ぎゅ~」

梓「にゃあ……///」

和「めでたしめでたし、ね」

紬「ふふ、二人とも楽しそう♪」

澪「ああ、そうだな。これで二人とももっと料理の練習をしてくれれば……」

律「まあぶっちゃけ梓の卵かけごはんのほうが美味しくはあったけどな。和の説明には感心したよ」

澪「食材に頼ってばかりじゃダメ……料理は真心が一番ってことだな」

和「梓ちゃんも唯も、きっと今日を良い機会に成長するわね。次が楽しみだわ」


……

澪「さて、今日はしっかり練習するぞー!」

唯「おーっ!」

律「唯がやる気あるなんて珍しいな~?」

唯「ちっちっち、いっつも私はやる気満々だよりっちゃん隊員!」

紬「りっちゃん隊員!私もやる気満々です!」

澪「ああ……久しぶりにたくさん練習出来そうだ……」

律「梓が来たら練習開始だな」

唯「あずにゃん遅いね~?」

紬「そういえば……もう授業終わってから結構経つのにね」

澪「日直でもやってるのかな?」

律「それか掃除当番か……」

唯「あう~、あずにゃん分を補給したいよ~……おっ?メールだ」ブー、ブー

紬「もしかして梓ちゃんから?」

唯「あ、ムギちゃん凄い!あずにゃんからだよ~」

澪「何て来たんだ?」

唯「えっと……」

梓『皆さん、お元気ですか?私は今、青森県の上北郡……東北牧場で働かせてもらってます』

梓『青森は自然も豊かで空気も美味しくて、とても良いところです』

梓『私はここで自分の力だけで身土不二を作り上げ、もう一度唯先輩に挑戦するつもりです』

梓『そう、私が真心を込めて作り上げる手作りの卵で究極の一品を仕上げて見せます!』

唯「……アドバイスをくれてありがとうございました。唯先輩、首を洗って待っててくださいね」


澪「……」

律「……」

紬「……」

唯「……おしまい」

澪「手作り感ってそういうことじゃないだろ……」プルプル

律「ていうか、調理の腕を磨けよおおおおおおおおっ!!」

ちゃんちゃん