唯「見て見て~、今日のお弁当は私が作ったんだよ~♪」
律「えっ!?憂ちゃん風邪でも引いたのか?」
澪「唯……熱はないか?」
唯「何その反応!?私だってたまには料理くらいするもんっ!」
梓「唯先輩が料理なんてそんな……」
紬「ゆ、唯ちゃん、怪我はしなかった?絆創膏ならあるわよ!」
唯「みんな酷くない……?もう、これを見なさい!」パカッ
律「おお!」
澪「こ、これは……」
梓「……!」
紬「たこさんウインナー、ポテトサラダ、卵焼き、アスパラのベーコン巻き……わあ、美味しそう」
律「意外なほど普通、いやむしろ美味そうだなっ!ごはんの上に目玉焼きが乗ってるのは謎だけど」」
澪「やるじゃないか唯、見直したよ!」
唯「えっへん!」
紬「色取りも綺麗ね♪」
澪「さっきは悪かったな唯。まさかこんなお弁当を作れるようになってるとは思わなくて……」
律「いつの間に料理上手になったんだ?」
唯「いや~、才能が開花しちゃったっていうか~♪」テレテレ
和「へえ……それで唯、あなたはどれを作ったの?」ヒョコッ
唯「……目玉焼きを、作りました」
律・澪「ダメじゃんっ!」
紬「あらあら」
和「他のは明らかに憂が作ってるもんね、見れば分かるわ。嘘はダメよ、唯」
唯「うう……ごめんなさい」
和「うん、いい子ね。じゃあ私生徒会に行くから」スタスタ
唯「また明日ね~……。ちぇっ、和ちゃんが来なければバレなかったのに~」
梓「……」
律「唯が作ったのは目玉焼きだけか、まあ上手に焼けてはいるよな」キシシ
澪「目玉焼きを失敗する人なんていないだろ……」
梓「!!!」
唯「他のも作るはずだったんだよ?でも一度失敗しちゃって、時間がないからって憂があっという間に……」
律「相変わらず出来た子だな、憂ちゃんは」
紬「唯ちゃん、ファイト!」
梓「……」
梓(皆さん、何を言ってるんです?目玉焼き……この料理がいかに難しいか)
梓(唯先輩の作った目玉焼きは凄い……!この形、焼き加減……完璧で隙が見当たらない!)
梓(正直この目玉焼きを見た瞬間、体中に電撃が走ったかのような衝撃だった)
律「梓はさっきから黙りこくってどうしたんだ?」
澪「さあ」
紬「梓ちゃ~ん?」ブンブン
梓(私の得意料理は目玉焼き。誰よりも上手く作れる自信がある)
梓(でも……)チラッ
唯「どうしたのあずにゃん?」ニコニコ
梓(唯先輩に、勝てる自信がない……!ひょっとして私は、唯先輩よりも料理が下手?)
梓(いや、そんなことはない!私は唯先輩には負けるわけにはいかない!)
梓「やってやるです!」ニャオーン!
澪「ひゃっ!?」ビクッ
律「うわっ!ど、どうしたんだよ梓」
梓「唯先輩!三日後、あなたに料理対決を申し込みます!」ドーン!
澪「いきなり何言って……」
唯「あずにゃん……本気だね。分かった、受けて立つよ!」
律「早いなおいっ」
紬「あらあら♪」
梓(これは女の意地をかけた戦い……絶対に負けられない!)
……
三日後!
梓「いいですか、唯先輩。勝負は三本、手加減無用です」
唯「ふふっ、望むところだよあずにゃん!」
梓「審査は厳正にお願いしますねっ」
律「何でこんなことに……」
澪「練習……」
紬「二人とも頑張って~♪」
1戦目!
梓「まずは一品目……!」スッ
唯「食材はこれだね!」スッ
澪「どちらも取り出したのは卵か」
律「そして他には何も用意しないところを見ると、これは」
紬「目玉焼きね!」
律「やっぱりこうなるのか……。というか、せめてベーコンエッグにするとか思いつかないのかなあ」
梓(やはり唯先輩も一品目は目玉焼き。想定通り!)
梓「見せてあげますよ、私の真骨頂……!」バッ
コンコン、パカッ
律「えらく慎重だな、梓の奴。あんなにフライパンに近い場所から卵を落とすなんて」
ジュー…
澪「お、フライパンが温まる前に卵を落としたのか」
紬「凄く弱火ね。水も定期的に足して行ってる」
梓「ふふふ……」
唯「やるねあずにゃん、でも私だって負けないよ!」
ジュージューッ
紬「唯ちゃんは強火→弱火で一気に焼き上げてるのね!」
律「まあ目玉焼きってあんなもんだよな。梓はちょっと丁寧すぎる」
唯「出来た!」
梓「出来ました!」
澪「おっ、早いな。さすが目玉焼き」
律「唯のは至ってオーソドックスな目玉焼きだな。ちょっと黄身が半熟だけど」
唯「えへへ~」
澪「梓のは……な、何かまん丸だな」
紬「焦げ目がほとんどない、ふわふわの目玉焼きね」
梓「自信作です、さあどうぞ」
律「じゃあ……いただきます」パクッ
律「……」モグモグ
律「こ、これはっ!」
律「う……うまあああああああああい!!」
梓「カッと口を開き、神々しい光を放つ律先輩!その光の中からは、一匹の龍が天に昇る!」
子供「見たか!これが梓ねえの力だっ!」
子供「これを見ろ!」
律「おおっ、それはまさしく、特級――!」
~~
律「さっきから何一人でぶつぶつ言ってるんだ梓」
梓「私の料理がどれだけ美味しいのか、妄想をちょっと」
律「いや、そういうのいいから」
澪「……」モグモグ
紬「はむっ」
唯「どう、美味しい?」
梓「……」ドキドキ
律(当たり前だけど卵の味しかしない……醤油が欲しいな)
澪(どこを評価すればいいんだろうこれ……。あと、せめてマヨネーズをつけてくれよ)
紬(二人の手料理が食べられるなんて幸せだわ~♪)
唯「みんな食べ終わったね。さあ、判定は!?」
梓「どっちの方が美味しかったですか!?」
律「う、う~ん……私は唯かな。パリパリの部分好きだし」
紬「どっちも美味しかったけど、唯ちゃんの方がちょっとだけ美味しかったかな?」
澪「私は梓かな……ふわふわで美味しかったよ」
唯「よっし、2対1で私の勝ち!一本先取!」
梓「くっ、やりますね唯先輩……!」
律(何かもう完全に好みの問題だな。焦げ目がある方がいいか否かっていう)
2戦目!
唯「ふんふ~ん♪」
梓「……」
梓(負けた……目玉焼きで、この私が)
梓(でも、落ち込んでいられない。まずは次を取る!この……秘密兵器で!)
梓「ふふふ、唯先輩……私がこの三日間、のうのうと過ごしていたと思わないことです」
唯「ほえ?」
梓「これが私の秘密兵器ですっ!」バーン!
律「おお~!って、また卵かよ!」
澪「あれに一体どんな秘密が……」
紬「う~ん……」
和「説明しましょう」ヒョコッ
澪「うわっ、和!?」
律「どうしてこんな所に……」
和「気にしちゃダメよ。それより梓ちゃんが持っているあの卵」
紬「和ちゃん、知っているの?」
和「ええ。あれは青森県の誇りとも言うべき究極の卵……『身土不二』に違いないわ」
澪「しんど……ふじ?」
梓「さすが和先輩。正解です」
和「身土不二は鶏の生活環境にこだわり尽くして作られた有精卵……その味は絶品の一言」
律「そんな凄いものを持ち出して来るとは……梓の奴、本気だな」
和「身土不二を生産している青森県上北郡の東北牧場では、よりよい卵作りのため鶏の飲み水に八甲田山のミネラル伏流水、餌に有機野菜やハーブまで与えているらしいわ」
澪「はっ!まさかこの三日間の間に梓の奴、青森まで行って手に入れてきたの
か!?」
梓「いえ、ネットショッピングで買いました」
澪「あ、そう……」
紬「ええっと、それじゃあ梓ちゃんはその究極の卵を使ってどんな凄い料理を……」
梓「ゆで卵です!」エヘン!
紬「……」
律(何かもう色々台無しだー!)
唯「出来たよみんな~」
澪「おっ、早いな。梓の方に気を取られてたよ」
紬「唯ちゃんは何を作ったの?」
唯「スクランブルエッグだよ♪」
律「……」
澪「……」
紬「……」
律(ああ、明らかに超簡単な料理なのに、梓に比べたらマシに思えてしまう!)
和「何これ。ひどい手抜きね」
澪「!?」
唯「ふふん、文句は食べてから聞きましょう!」
和「自信があるのね……いいわ、食べましょう」
律(いつの間にか和もしれっと参加してるなあ)
唯「砂糖たっぷりのあま~いスクランブルエッグを召し上がれ~♪」
澪「お、今度はちゃんと味付けもしてあるんだな」
紬「それじゃあいただきま~す」
パクッ
紬「……!」
律「こ、これはっ!」
澪「あ、甘あああああいっ!体中がとろけるように甘いっ!」
律「もう息も出来ない……重力にすら逆らえない……!まさに奇跡っ!」
紬「シャッキリポンと、舌の上で踊るわ!柔らかで優しい味!胃の悪い人なんか、これ一口食べただけで治っちゃうわ!」
唯「あまりのふわふわ感と自然な甘みに感動する三人!その周囲には溢れんばかりの眩い光が降り注ぎ……」
~~
和「ぶつぶつうるさいわよ唯」
唯「てへへ、あずにゃんもやってたし私もちょっと美味しさの表現を……みんなどう?美味しい?」
澪「……」
律「……」
紬「……」
和「三人とも黙り込んじゃってるじゃない」
唯「あまりの美味しさに言葉もないんだよ、きっと。和ちゃんも早く食べて食べて」
和「はいはい。……はむっ」パクッ
唯「甘くて美味しいでしょ?」
和「……」
梓「出来ました、これが最強のゆで卵ですっ!塩をかけて食べて下さい!」タタタッ
和「……判定は?」
律「梓の勝ちで」
澪「うん、梓の勝ちだな」
紬「ごめんね唯ちゃん、梓ちゃんの勝ちにするわ」
唯「ええっ!?」ガーン
梓「ち、ちょっと待って下さいよ!勝ちは嬉しいですけど、せっかく作ったんだからまずは食べて下さい!実はこの塩もこだわり尽くした一品で……」
和「そうなんだ。じゃあ私たち水飲んでくるね」
梓「ちょっとーーーーーーっ!?」
2戦目:勝者梓
決まり手:砂糖と塩の入れ間違い(唯)
律「ベタ過ぎるわっ!」
澪「あんな塩辛い卵料理は初めてだよ……うえ」
最終更新:2011年02月01日 22:56