夏が近づく、暑い日のこと。

 その日は両親も帰ってきて、

 久しぶりにお母さんのご飯を食べられてお姉ちゃんも満足げでした。

 いや、きっと満足そうなふりをしていただけです。

 食後にお姉ちゃんとテレビを見ながらお風呂があくのを待っていると、

 どうにも横からチラチラ覗かれているような感じがしました。

憂「……お姉ちゃん?」

唯「んー、なに?」

 しらばっくれるつもりのようです。

憂「わかってると思うけど……」

唯「うん、わかってるよ?」

憂「……」

 お姉ちゃんの口ぶりはものすごく不安です。大丈夫でしょうか。


 しばらくして、お母さんがお風呂からあがったようです。

唯「わたし先に入ってくるね」

 お姉ちゃんがおもむろに立ちあがって、すたすたとお風呂場に向かっていきます。

 お母さんはそれを見てくすっと笑いました。

母「お母さん達もう寝ちゃうから、着替え持っていってあげてね」

憂「うん、わかった」

 時計を見ると、まだ10時です。

 お母さんたちはきっと疲れているんでしょう。明日の朝は私が頑張らないと、と思いました。

憂「おやすみ」

 お母さんがとんとん階段をのぼっていきました。

 私も、なんとなく少し待ってから立ち上がって、お姉ちゃんの部屋に向かいます。

 お姉ちゃんのいないお姉ちゃんの部屋は、とても静かでした。

 小さく、お風呂場から水の撥ねる音が聞こえます。


憂「……」

 クローゼットを開け、タンスの引き出しを開けました。

 木の匂いと一緒に、ほんのりとお姉ちゃんの匂いがします。

 まずは半袖のTシャツをとり、次にズボン。

 軽く呼吸をしてから、下着が入っている引き出しに手をかけました。

 淡い色の布が並んでいます。

 吸い寄せられるように、顔が近付きました。

憂「……だめだめっ」

 適当にペアを選び取って、腕に抱えます。

 引き出しを戻してクローゼットを閉めると、お風呂場のお姉ちゃんのもとに向かいます。

憂「お姉ちゃん、着替え置いとくねー?」

唯『おー、ありがとう憂ー』

 脱衣場を去ろうとすると、お姉ちゃんがさらに声をかけてきました。


唯『ちゃんと選んでくれたー?』

憂「え、選んでないよ?」

唯『ふーん?』

 きゅっ、と蛇口のしまる音がしました。

 続いてシャワーの音が消え、ノズルが壁に掛けられたようです。

憂「ちょっとお姉ちゃん、ちゃんと体洗ったの?」

唯『どうかなー?』

 すかした返答をしつつ、お姉ちゃんがお風呂場の戸を開けました。

憂「……」

 ポタポタと水を垂らしながら、お姉ちゃんがずい、ずい、と近付いてきます。

 見慣れたお姉ちゃんの裸身。

 なのに、いつもこうして胸が高鳴ってしまうのは何故なんでしょう。


 お姉ちゃんの肩からのぼる湯気が、首筋をほかほか包んできます。

唯「わたしよく分かんないから、憂がきちんと洗ってくれたら嬉しいんだけどなー?」

憂「ば、ばかなこと言ってないで、ちゃんと洗いなよ」

 さっきからお姉ちゃんは余裕たっぷりですが、

 今日は両親が家にいるのです。なんとしても折れるわけにはいきません。

唯「むぅー。まぁ、いいけどね」

 不満そうに唸ったあと、ニヤッと笑い、お姉ちゃんはまたお風呂場に戻っていきました。

 再び水の撥ねる音がします。

憂「……もうっ」

 早く部屋に戻ればよかった。

 首を振り、揺らいだ意志を立てなおしました。

 リビングの電気を消して自分の部屋に向かいます。


――――

 やがて部屋のドアが2回ノックされ、返事をする間もなく開かれました。

唯「うい、お風呂あいたよ」

憂「あ、うん」

 用意していた着替えを持って、ベッドを立ちました。

 ドアの脇に立っているお姉ちゃんの横をすり抜けます。

唯「えいっ」

 その瞬間、お姉ちゃんがいたずらっぽい声とともに、

 ちょうちょ結びにして後ろ髪を留めているリボンをしゅるっと解いてしまいました。

 襟足の先がうなじに触れます。

 ちくちくした感触。

 体が弱く震えます。


憂「お、お姉ちゃん……」

唯「ふふっ」

 お姉ちゃんは左手につまんだリボンを見せつけるように振り、悪そうに笑います。

憂「ぁ……」

 言葉が出ません。

 お姉ちゃんはそんな私を満足げに眺めた後、

唯「待ってるからね」

 と言い、私の部屋に体をすべりこますと、ぱたりとドアを閉めてしまいました。

 廊下に取り残された私は、ただがくがくと膝を震わすばかりです。

 今日はお母さんたちがいるから、だめなのに。

 理性ではわかっていますが、

 長い月日をかけて刻みつけられた行為の感覚が、すでに私を襲い始めていて、

 その理性はざぶざぶと飲みこまれていってしまいます。


 お姉ちゃんが私のリボンを外すとき。

 それは、えっちをしようという合図なのです。

 両親がいるにもかかわらず、

 私の身体はこれからお姉ちゃんに可愛がってもらえるという期待にうずいています。

 気付けば着替えは足元に落ちて、それを抱えていたはずの手はドアノブを掴んでいました。

 私の欲望を縛り付けていたリボンは、もうお姉ちゃんの手中で遊ばれていることでしょう。

憂「は、ふぅ」

 金属の触れあう音。

 急に気温が高くなった気がしました。

 ゆっくりゆっくり、ドアを開けていきます。

唯「……早かったね?」

 お姉ちゃんはベッドの上で、見ただけでやわらかいと分かる

 ふくらはぎを投げ出して寝転んでいました。


唯「お風呂は?」

憂「……いい」

 ベッドのそばにずんずん歩いていきます。

唯「我慢できなくなっちゃったの?」

 お姉ちゃんが嬉しそうににやにや笑っています。

 耳の横に、お姉ちゃんが買ってくれた黄色のリボンが落ちていました。

唯「ういー、今日はお母さんたちいるんだよ?」

憂「大丈夫だよ。もう寝てるから」

 そっとベッドに腰掛けて、お姉ちゃんと平行に身体を横たえます。

 一呼吸置いてから、むくりとお姉ちゃんが起き上がります。

唯「えへへぇ……」

 頭の横が沈んで、お姉ちゃんの笑顔が目の前に現れました。


 私は腕を伸ばして、お姉ちゃんの背中に手をのせます。

 軽く引き寄せるように力を入れると、ぎゅっと脚がからまって、

 下半身のほうからお姉ちゃんの体重がかかってきます。

 腰のあたりまでは、そーっと。

唯「ういーっ」

 そして突然、お姉ちゃんはどさりと私の上に倒れ込んできました。

憂「ん……」

 お姉ちゃんは私の上にのしかかる時、いつもこうして遠慮なく全身を預けてきます。

 私もありのままのお姉ちゃんの重みを受け取って、その代わりにあたたかく包み込まれます。

 お風呂から上がったばかりのお姉ちゃんの身体は、普段より熱く感じました。

唯「ふふん」

 そのまましばらく抱きしめていると、お姉ちゃんが鼻を鳴らして顔を上げました。

 大きな瞳が、私の顔の下っかわ……くちびるを見つめているのがわかります。

唯「んべー」

 お姉ちゃんが大きく舌を出しました。

憂「む……」

 エッチの時は、お姉ちゃんはキスの前にまず舌を出して、私のくちびるを舐めます。

 そして、私がそれに応えて舌を出したりすると、「めっ」と頬を引っぱって怒ります。

 早くキスが欲しい私をじらしているんでしょう。

唯「ういー、ういー」

憂「ん……んんぅ」

 お姉ちゃんは低い声で歌うように私の名前を呼びながら、

 舌でぺたぺたと口の周りを舐めまわします。

 黙って待っていれば、そのうちちゃんとキスをしてくれるのは分かっています。

 だけど、そのうちまでが長すぎるのです。


 自然と脚がもぞもぞ動きます。

 絡みついたお姉ちゃんの脚と素肌がこすれあって、それがまた意識をかき乱します。

憂「……っは、おねえちゃ」

唯「めっ」

 ぎゅ、と軽くほっぺをつねられます。

憂「もう、もういいれひょ?」

唯「めったらめっ、だよ」

 つねったところを優しくさすって、お姉ちゃんが再び舌を出しました。

 私も諦めて、くちびると目を閉じます。

唯「れー……」

 お姉ちゃんの暖かい舌が下唇に触れたと思った瞬間、

 突如として、ぐいっと唇をこじ開けて、舌が口の中に駆けこんできました。

憂「んっ、うっ!? んん~っ!」

 あまりに唐突だったせいで、体が一瞬拒否してしまいます。

唯「んふふ……れろ、れろれろっ」

憂「は、んぐっ……ん、ちゅく」

 私がびっくりし過ぎたのを気遣ったのか、入ってきた舌の攻めはそれほど激しくありません。

 丁寧に歯を撫でていくお姉ちゃんの舌を、私の舌で追いかけます。

唯「ん……」

 お姉ちゃんは私の頭に手を置いて、やさしく撫で始めました。

 そっと、舌が触れ合います。

 最初はお互いの存在を確かめるように、静かに舐めあって。

 徐々に唾液をはじけさせながら、絡み合う激しいキスへと変わっていきます。

 ぐしゃぐしゃと髪をかき撫でるように、お姉ちゃんの手つきも変わってきました。

 私もお姉ちゃんも、もう口で呼吸をすることは完全に諦めていて、

 鼻息がふーふーとうるさく吹いていました。

唯「うい……」

憂「む……おねえひゃんっ」

 こうして頭をぐしゃぐしゃに撫でられながら、

 お姉ちゃんと舌をぶつけ合うのが私の大好きな時間です。

 今この瞬間だったら、死んだって悔いは残らないような気がします。

 私は覚えていませんが、お姉ちゃんが言うには

 キスのしすぎで一度そのままクラッと倒れてしまったことがあるとかないとか。

 すぐに人工呼吸をしたんだよ、とお姉ちゃんは胸を張りますが、

 もちろんそんな記憶はまるでありません。

 きっとそれで目が覚めても、私はすぐキスを再開したことだろうと思います。

 そのくらい、お姉ちゃんとのキスは大好きです。

唯「くっ……ちゅ、ぺろ」

憂「んっ、ぴちゃ、ちゅちゅ……」

 喉の奥につばが溜まってきました。

 わたしとお姉ちゃんの唾液で作ったカクテル。

 ごくんっ、とわざとらしく喉を鳴らして飲みこみます。

唯「ん……はぁんっ」

 お姉ちゃんが興奮気味に息を切らします。

 一瞬だけくちびるが離れました。

 舌先で繋がった唾液の糸を視認する間もなく、再びお姉ちゃんが覆いかぶさります。

唯「ふっ……ん、ぶぇ」

 さっきとは違って、お姉ちゃんは舌で襲いかかってはきませんでした。

 今度のお姉ちゃんの舌は、くちびるまで引っ込んでは唾液を集めて私の口に入ってきます。

 そのたびに、とろりとお姉ちゃんの味が垂らされます。

 絶え間なく、忙しく渡されるお姉ちゃんのつば。

 ちょっと大変だけど、どんどん飲みこんでいきます。


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