『唯「しあわせ日和」』


日曜日。お休みの日。
いつもより早くかけた目覚まし時計。

ちゃんと起きれるかどうか心配だったけど、目を開けたらまだ朝で。
よかった。寝坊はしなかったみたい。

ベッドの上で伸びをする。
カーテンの隙間から光が洩れている。

開けてみると、よく晴れていた。
やったね、絶好のお散歩日和だ。

そっと、部屋を抜け出す。
隣の部屋で寝ている憂を起こさないように。

いつもの道を、ひとりで歩く。
見慣れた道のはずなのに知らない道のように思えた。

それはとても新鮮だった。
でもどこか寂しく思えた。


憂には内緒で、ひとりで散歩するつもりだったんだけどな。
やっぱりそういうわけにもいかないよね。

憂には、内緒。
この散歩もそうだけど、もっと大きな秘密。

それは突然やってきたから、私はとまどっている。
だからひとりでゆっくり散歩でもして考えようと思った。

でも歩いている最中も浮かんでくるのはどうしても、憂のこと。

いつもと変わらない道、憂と並んで歩いている道。
それが今日はどこか寂しく思えるのは、たぶん憂が隣にいないから。

こんな気持ちがやってくる前だったら、何も考えずに通り過ぎていたかな。
そうなのかもしれない。私が今歩くのは何の変哲もない、ただの通学路。


ひとりきりだからかな、いつもは考えないようなことが浮かんでくる。

ずっと、ずっと憂と一緒に通っている通学路。
長い間私たちが歩いてきた道。

今までは何も思わなかったけど、憂がいないだけでこんなに違って見える。
でも長い間何も思わずに歩いていたことも、本当。

だから私はとまどっている。
どうして憂がいないだけで、寂しいって思っちゃうんだろう。

答えの出ない問いに、ぼんやり空を見上げてみる。
青い空。ぽつぽつと浮かぶ雲。
それがゆっくり流れるのを見つめながら、心を空っぽにしてみる。

しばらく見つめたあとに思ったのは、なんか憂に会いたいな、ってことだけだった。


きっと私は、憂のことが好きなんだろうな。
今までもだったけど、それとは違う意味で。

ひとりになってみて、やっと実感する。
わかっていたような気もするけど、こんなにはっきり考えたのは今が初めてだった。

でも、どうしたらいいかわからない。
憂に告白、すればいいのかな。

何て言えばいいのかわからないよ。
うまく伝えられる自信がない。

焦る気持ちを抑えるように、また空を見た。
穏やかな陽射しだけが返ってきて、私の心を落ち着けてくれているみたいだった。

また歩きだす。
何て言おうかとか、どうしようか、とかは置いておいて。

難しいことを考えるのは苦手だから。
今はただ、憂に会いたかった。

気付けば公園の前にいた。
ここも、憂との思い出がたくさん詰まった場所。
吸い寄せられるように、私は公園に足を踏み入れた。

入ってすぐのベンチに座って、誰もいない砂場を見る。
あの砂場でよく遊んでたっけ。
山を作って、トンネルを掘って。

崩れないように気を付けながら真ん中で手をつなげたときは、嬉しかったなぁ。

滑り台も、ブランコも、鉄棒も。
見渡すものすべてが私と憂の思い出を蘇らせてくれたから。

もうどうしようもなく、憂に会いたかった。

帰ろう。きっと私はうまく言えないけど、そのときはまたここに来たらいい。
次は、憂と一緒に。

立ち上がろうとした、そのとき。

「あ、お姉ちゃん。ここにいたんだね」

顔を上げると、朝日を受けてきらきらと光る憂の笑顔があった。

「う、憂…」

あんなに会いたかったのに、言葉はうまく出てこない。
言葉にならない私の心は、なぜか私を泣きたいような気分にさせた。

「お散歩してたの?」

「うん、よく晴れてたから」

「そうだね。今日はほんとにいいお天気」

眩しそうに空を見上げる憂は、本当にきれいで。
私はやっぱり憂が好きだな、と思った。

「憂もお散歩?」

「私も…お散歩、かな?」

「ちがうの?」

憂は私の隣に腰を下ろして、また空を見上げた。

「朝起きたらお姉ちゃんがいなくて」

「あ、ごめんね…何も言わないで出てきちゃって」

「ううん、今日はよく晴れてたから。お姉ちゃんはきっと散歩に行ったんだな、って思ったから」

「えへへ…」

憂には内緒のつもりが、できてなかったんだなぁ。
でもそれよりも、憂が私の考えていたことをわかってくれたことが嬉しかった。

「でね、きっとおなかすかせて帰ってくるから朝ごはん作って待ってようって」

「おなか…そういえばすいたかも」

今の今までおなかのことなんて気にもならなかった。
でも憂の言葉を聞いた瞬間に感じたのは、安心したせいなのかな。

「でも何か…部屋ががらんとしてるように思えて」

「待ってればそのうち帰ってくることもわかってたけど」

「心配かけちゃったかな…ごめんね、憂」

空を見上げていたはずの憂は、いつのまにか下を向いていて。
さっきあんなに輝いて見えた顔が曇ったように見えた。

「心配…っていうよりもね」

「寂しくなって出てきちゃった…どうしてかな」

憂の顔にある雲はどんどん大きくなって、今にも雨を降らせてしまいそうだった。

「憂…」

だから今度は、私が代わりに空を見上げた。
太陽はもう高く上っていて、でも陽射しは変わらず穏やかで。

憂の手を取って、一瞬目を閉じる。
願うように、祈るように。
私の思いが伝わりますように。

「あのね、憂。私にはうまく言えないけど…」

「でもね、わかるよ」

「え…?」

憂が顔を上げたような気がした。
でもそれは見ないで、手をぎゅっと握った。

「私もね、憂に会いたかったから」

心臓がばくばくと音を立てている。
うまく言えたとは思えない。
でもこれが、私の今の気持ちだった。

「そっかぁ…」

安心したような憂の声が聞こえた。
私はもう一度手を強く握った。

「すき、だからなのかなぁ」

「え…すき?」

「うん、憂のこと」

「わ、私のこと…」

「ごめんね、最近気付いたから、まだ…よくわからないのにこんなこと」

「ううん…」

「でも、私もお姉ちゃんに、会いたかったよ」

そう言って握り返された手には、力が込められていたから。
やっと憂の顔を見る勇気が出た。

「ねぇ憂。私は憂のこと、好きだよ」

「ほんとう?」

「うん。ほんと」

「わぁ…うれしいなぁ」

「…ほんと?」

「ほんとだよ?」

少し頬を赤くして首をかしげる憂を見て。
急に恥ずかしくなってしまう。

「言っちゃった…」

照れを隠すようにそう呟いた。
私を見つめる視線から逃げるように横を向いた。

「お姉ちゃん…?」

憂に呼ばれて、どきっとする。

振り向いてみれば、憂は目尻に涙を溜めていた。
でもなぜか、それはもう眩しい笑顔で。

「私はね、お姉ちゃんのこと、大好きだよ」

うれしさとか恥ずかしさとかなにかよくわからないもので胸がいっぱいになって。
私はまた、泣きたくなった。

おしまい



ジャンピング憂ちゃん




平沢唯です。妹の憂には昔からある癖があります


憂「やったあ!」ピョンッ ピョンッ


すごく喜んだときに、ジャンプするのです

どうやら本人は自覚してないみたいですが・・・

純「憂ってかわいいよねー」

梓「うん」

純「私たちの中で一番、というかこのクラスの中で一番じゃない?」

梓「う、うん」

純「いや学校で一番かも。まあ私たちはそんな憂が大好きなんだけどね」

憂「2人とも、褒めすぎだよ~」ピョンッ ピョンッ

純・梓「(喜んでる喜んでる)」


純「じゃあまた明日!」

梓「じゃあね」

憂「ばいばーい」

梓「さて、帰ろうか」

憂「今日は練習ないの?」

梓「先輩たち、大学の見学に行くんだってさ」

憂「そうなんだ。じゃあ梓ちゃんと一緒に帰れるね」ピョンッ ピョンッ

梓「(喜んでる喜んでる)」


憂「ここでお別れだね」

梓「憂、頼みがあるんだけど・・・今度料理教えてくれない?」

憂「もちろんいいよ!どうして?」

梓「お母さん、家に帰るの遅い時も家事してくれて・・・私も料理できるようになって家族の役に立ちたいんだ」

憂「家族想いだね。梓ちゃん」

梓「それに、憂と一緒に料理したいし・・・」ボソッ

憂「え、今何て言ったの?良く聞こえなかったからもう一回言って?」ピョンッ ピョンッ

梓「(喜んでる喜んでる)」


とみ「あら憂ちゃん。こんにちは。今帰り?」

憂「おばあちゃん。こんにちは!荷物持つよ」

とみ「あらあら悪いねえ。憂ちゃんは昔から本当にいい子だね」

憂「おばあちゃんにも、昔からお世話になってるからね」

とみ「憂ちゃんは私の孫のように思ってるんだよ。これからもいい子でいてね。
   はい、飴あげる」

憂「そんなあ、子供扱いしないでよー私もう高校生だよ」ピョンッ ピョンッ

とみ「(喜んでる喜んでる)」


唯「ういーただいまー」

憂「おかえりお姉ちゃん!大学どうだった?」

唯「大学って人多いんだねえ。つかれたよお。でも楽しそうだった!」

憂「みんなで行けるといいね。ご飯出来てるよー」

唯「やったあ!やっぱり憂のいるこの家が一番好きだなあ」

憂「ありがとう♪」ピョンッ ピョンッ

唯「(喜んでる喜んでる)」ピョンッ ピョンッ

憂「(喜んでる喜んでる)」



おわり



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