大学受験 合格発表当日 駅前


律「唯のやつ遅いなぁ~」


唯「遅れてごめ~ん」ハァハァ

澪「遅刻だぞ」

唯「ごめ~ん! きのうは緊張しちゃってあんまり眠れなかったんだぁ」

澪「まったく」

紬「まぁまぁ。今日はちょっとくらい遅れても問題ないんだし」

澪「そりゃそうだけど」


移動中

律「でもさ~よく考えたら4人で一緒に行く必要もなかったよな」

唯「え? なんで?」

律「だって1人だけ落ちたりしたら超気まずいじゃん」

唯「そ、それは……」

シーン

唯「やっぱり私は一人でいくよ」

澪「おいおい、ここまで来てそれはないだろ」

唯「誰だ~みんなで行くって言ったの」

澪「お前だ」



到着

澪「ここだな」

律「き、緊張するな……」

唯「うん……」

澪「おいおい今さら緊張したってしょうがないだろ。シャキっとしろよ」

律「いいよな~余裕のあるやつは」

唯「ほんとだよ。私なんか一人だけ落ちちゃってたらどうしよう……」

紬「大丈夫よ唯ちゃん。あれだけ勉強したんだもの」

律「そうだぞ唯。それに一人だけ落ちるとしたらむしろ私の方が危ないって」

唯「りっちゃん」

律「唯~」

澪「やれやれ」



掲示板前

(ワイワイガヤガヤ)

唯「人多いね」

律「そうだな、すくまで待ってようか?」

唯「そうしよう、それが――」

澪「先延ばしにしたっていいことないぞ」

唯「だって~」

澪「どうせもう結果はでてるんだから。わかったら行くぞ!」

律「待って! まだ心の準備が――」

澪「行くぞ!」

律「……はい」

唯「あ……」

律「ん? どうしたんだよ?」

唯「あった」

律「え?」

唯「あったよりっちゃーん!」

律「なっ、もう見つけたのかよ! はえーな! てかあったのかよチクショー!!」

唯(ちくしょう?)

紬「私もあったよ」

唯「ムギちゃん、やったね!」

紬「うん!」

律「か~チクショー!」

紬(ちくしょう?)

紬「大丈夫よりっちゃん、あれだけ頑張ったんだもの」

律「ムギ……」

唯「そうだよりっちゃん、きっと合格してるよ!」

律(クソッ、急に余裕になりやがって)

唯「ところでりっちゃんは受験番号何番なの?」

律「あぁ? 14029だよ」

紬「それならたぶんむこうの方ね」

唯「このへんじゃないかな? ほらここ14002だし」

紬「そうみたいね」

律「え~と…02がここだから29は――」


律(いや、待て! 焦るな、ここは02からゆっくり見ていこう)

律(02…05…08…18…っていきなり10もとんでる)

律(20…21…22…24…ってここ4つも続いてんのかよ!)

律(ダメだ…こんなとこで4つも続いてたらこの先はしばらくスカスカになってるはず……終わった……)

律(いや、まだだ! 諦めるな! 希望を持て!)

律(おそらく…勝負は次かその次の番号で決まる…まだだ…焦るな…ゆっくり、ゆっくりだ)

律(ここが勝負どころ、精神を――)


唯「あったよりっちゃん!」

律(集中して―――え?)

紬「おめでとうりっちゃん」

律「…………」プルプル

唯「りっちゃん?」

律「コラーーー!!」

唯「うわっ、りっちゃんが怒った!?」

紬「まぁまぁまぁまぁ」

紬「これであとは澪ちゃんだけね」

律「そういえばあいつどこ行ったんだ?」

唯「はぐれちゃったね」

律「まぁ、澪が落ちてるわけないか」

唯「そうだよ~澪ちゃんが落ちてたら私たち受かってないよぉ」

律「そりゃそうだ」

律「とにかくこれで放課後ティータイムのメンバーは無事全員合格だな!」

唯「うん!」

紬「はい!」


唯「あっ! 澪ちゃんだ」

律「ホントだ。お~い! 澪~!」



律「澪~! きいてくれよ奇跡がおこったぞ」

澪「…………」

唯「私たち3人みんな合格したんだよぉ」

澪「…………」

律「いや~ムギは当然だけど私たちは危なかったよな~」

唯「ね~♪」

澪「…………」

律「でもこれで大学でも放課後ティータイムできるな」

澪「…………」


律「澪?」


澪「…………ない」

律「え?」

澪「ないんだよ」


律「嘘……だろ……?」

紬「み、澪ちゃん受験番号は?」

澪「05176」ボソッ

紬「176ね。えっと……」

紬(174…175…177…178)


律「…………」

唯「…………」

紬(これは見事なサンドイッチだわ)


澪「…………」

律(どう声をかければいいやら……)

唯(なんか前にもこんな空気になったことあるような)

紬(あのときとは重さが違いすぎます)


澪(私…一人だけ落ちちゃったんだ……)


唯「りっちゃんなんか喋ってよ」ヒソヒソ

律「唯こそなんとかしてくれよこの空気」ヒソヒソ

唯「そんなこと言ったって無理だよぉ……」ヒソヒソ


シーン

澪(どうしよう、なにか言わなくちゃ)

澪「みんな…なんていうか、ゴメンな」

律「な、なに謝ってんだよ」

紬「そうよ澪ちゃん謝ることなんてないわ」

澪「でも、4人で一緒にって約束したのに……」

紬「それは……」


律「べ、別に大学が離れたって私たちは友達だろ」

澪「律……」

律「第2志望だって近所なんだし放課後ティータイムは続けられるよ」

唯「そうだよ澪ちゃん」

澪(みんなが気をつかってくれてる……)

澪「うん…そうだな」

澪(こんなことなら1人で来ればよかったな……)


紬「……帰ろうか?」

律「……そうだな」



帰り道

唯「いや~でも私は絶対落ちてると思ってたよぉ」

律「ん、あぁ……」

澪「…………」

唯「もう1回受けても絶対受からない自信あるもんね。奇跡だよ奇跡」

紬「そ、そうね」

澪「…………」

唯「でも絶対合格点ギリギリだったと思うな~試験は全然できなかったし」

澪「…………」


紬(唯ちゃんったらよっぽど嬉しかったのね)

律(唯、気持ちはわかるけど頼むから今は自重してくれ)

唯「あっ、そうだ! 憂に電話で報告しなきゃ」

律(ちょ、そんなんわざわざ今やることないじゃん!)

紬「唯ちゃん、それは帰ってからでも――」

唯「ダメだよ、合格したらすぐに電話するって言ったもん」ピッピッ


唯「あ、もしもし、憂~?」


憂『もしもし、お姉ちゃん?』

唯「うん、今合格発表見てきたんだ~」

憂『受かったんだ!』

唯「え? なんでわかったの!?」

憂『声でわかるよ~。お姉ちゃんすごく嬉しそうだもん』

唯「あはは、さすが憂だね」


澪「…………」

律(気まずい)

紬(気まずいわ)


唯「でさ~私は絶対落ちてると思ってたんだけどね~」

憂『私はお姉ちゃんなら絶対大丈夫だと思ってたよ。お姉ちゃんはやるときにはしっかりやるもん』

唯「え~そうかな~。でも絶対ギリギリだったと思うなぁ」


律(それはさっきもきいた)

紬(なんだか長くなりそうね)

澪「…………」

律(せめてむこうでやれって言えばよかったなぁ)


憂『そういえばお姉ちゃん、他のみなさんはどうだったの? ききづらいんだけど律さんとかは……』

唯「うん、りっちゃんも合格したよ」

憂『そっか、よかった~。(みんな)合格したんだ』

憂(お姉ちゃんと律さんが合格なら澪さんと紬さんはきくまでもないよね)


憂『それじゃ今からうちで合格祝いパーティよろうよ! 律さんたちも一緒に』

唯「え? 合格祝いパーティ?」


澪「」ピクッ


律(今何かこの状況にふさわしくない単語がきこえたような……)

紬(いいえ、いくら唯ちゃんでもこの空気でパーティやるなんて言うわけないわ)



唯「やるやる! じゃ憂はお料理お願いね~」

憂『うん、任せて! それじゃ気をつけて帰ってきてね』

唯「はいは~い」ピッ


澪「…………」

律「…………」

紬「…………」


唯「憂が合格祝いパーティやってくれるって~♪」

律(うわぁ…やっちゃったよこいつ)

紬(天然って恐ろしいわ)

澪「…………」


唯「みんな来るよね?」

紬「そ、それは……ちょっと…」チラッ

律「ええと……私はこれから用事が…」チラッ



澪「」ハッ

澪(そっか…私のせいで2人とも大っぴらに喜べないんだ……)

澪(これ以上みんなに気を遣わせるわけにはいかない)

澪「わ、私なら大丈夫だから」

律(澪……)

紬(澪ちゃん、私たちのために……)


唯「そっか~ムギちゃんとりっちゃんは来れないのか。残念」

律(唯もさすがに諦めてくれたか)

紬(ふぅ)



唯「仕方ないね。それじゃ澪ちゃん、2人でお祝いしよっか? 澪ちゃんは来れるんでしょ?」

律・紬「!?」

澪「え……あ、うん」

律(はぁ!? こいつ何言ってんだ? 頭おかしいんじゃねぇの??)


律「や、やっぱり私も行こうかな」

紬「私も!」

律(澪が行くって言うなら私たちも行くしかないよな)

唯「なんだ~2人とも来れるなら最初からそう言ってよぉ」

唯「これでみんなでパーティできるね♪」


紬(どうしてこうなった)



平沢家 到着

律(結局ここまで来てしまった)


唯「う~い~! ただいま~」ガチャ

憂「お姉ちゃんお帰り」

梓「唯先輩お邪魔してます」

唯「あずにゃん!?」

憂「せっかくだから梓ちゃんも呼んだんだ」

唯「あ~ずにゃ~ん」ダキッ

梓「うわっ――唯先ぱ――」グイッ



律(梓まで来てたのか)

紬(なんだか余計ややこしくなりそうね)



憂「みなさんも合格おめでとうございます。どうぞあがってください」

澪「」ピクッ



律(やっぱり憂ちゃんは勘違いしてたか)

紬(そうよね。憂ちゃんがこんな無神経なことするばずないもの)



唯「うわ~凄いご馳走だ~!」

紬「ホント……」

梓「私と憂でつくったんですよ」

律「ホントにすげー! てかよく短時間でこんなに準備できたな」

憂「みなさんなら合格するって信じてましたから。材料は昨日のうちに買っておいたんですよ」

律「そ、そっか~…さすが憂ちゃんだな」

憂「えへへ」



澪「…………」

律(さて…ますます切りだしにくい空気になったわけだが……)

紬(どうしたものか……)


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