私は昔からヘッドスライディングなんかしちゃう球児が嫌いだった


 みんなが見てるから、TVに映ってるからやってるんだって


 そんなあざとい気持ちからあんな危ないことをやってるんだって思ってた


 だけど今は、私にもそれだけ必死になる球児の気持ちがわかる気がする


 これは私だけが走ってるんじゃない


 みんなの想いと……みんなと一緒に走ってるんだ



 そんな気持ち

 甘酸っぱくて

 でもしょっぱくって



 でもなんか、悪くは……ない



 だから



 全力で……!!



澪「おりゃぁぁぁぁぁぁ!!!!」

実況「秋山ヘッドスライディング!!」

    ズサァァァァァァァ!!!!





澪「……!!」

実況「判定はっ……!!」















   「セーフ!!」




『わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!』

実況「お聴きください! この大歓声を!!」

実況「秋山の気迫のヘッドスライディングで1塁はセーフ!
    その間に田井中がホームイン、同点に追いつきましたっ!!」

実況「いまだ秋山に対する歓声が鳴り止みません!」

実況「それもそのはず、なんと秋山、ヘッドスライディングをした勢いで……」

福本「縞々やね」

実況「そうです! ズボンがズレ落ちて下着を大観衆に晒してしまっているっ!!」

ムッシュ「ちょっとごめんなさいね~。まだ私が阪神の監督をやっておったころ
      その当時西武にいた清原がFAをしたんです」

ムッシュ「彼はこの関西、地元のスターですからね、なんとしてでも我がタイガースに来て欲しくて
      私は彼にもし阪神に来てくれたら縦縞のユニフォームを横縞に変えると言ったんです」

ムッシュ「それほどの強い気持ちで交渉に臨んだんですが、結局彼は昔からの憧れだった巨人に行ってしまいましてね」

ムッシュ「もし、あのとき清原が阪神に来てくれておったら、今のユニフォームもあのように横縞になってたかと思うと
      なんやら感慨深くなってしまいますなぁ~」


和「澪、早くズボン上げた方が……」

澪「いっ……」









   「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」




 澪ちゃんはその後、すぐズボンを上げて可愛らしい縞々おぱんちゅを仕舞うと
 まるでファミスタでアウトになった選手の如きスピードでベンチ裏へ引っ込んでいきました

 ロッカールームへ閉じ籠り、どんな呼びかけにも応じようとしない澪ちゃん
 1塁ランナーがいなくなってしまった我がチームは前の打者のさわちゃん先生を臨時代走に置き
 なんとか試合を進めました

 そして私の打席
 そうそうなんどもまぐれが続くわけもなくあえなく打ち取られてしまい3アウト

 しかし、同点でこの回を終えることが出来たので、延長に入るものと思われたのですが
 澪ちゃんの状況からみて、とてもプレーを続けることは困難だという判断が下され
 結局、同点のままゲームセットとなったのです


 その後、りっちゃんや私たちの説得もあり何時間かぶりにロッカールームから出てきた澪ちゃん
 バックスクリーン3連発ならず、甲子園3連泊になんてならなくて良かったとホッと一安心


 さわちゃんと焼肉の賭けをしていた鹿島先生とはなにやら一悶着あったようですが
 結局は仲良く割り勘で焼肉を食べに行ったみたいです。なんだかな~


 やがて澪ちゃんの閉ざされた心も時の経過と共に少しずつ開かれていきました

 学園祭も近くなり準備に大忙し
 その頃になれば澪ちゃんも事件のことは忘れたかのように
 学祭ライブを成功させようと頑張ってくれています

 そうそう新曲も出来ました
 野球を通じて体験したことや気持ちをふんだんに取り入れた澪ちゃん作詞の曲

 私たちはあの大事件があったので澪ちゃんの前では野球の話はタブーになっていたのですが
 ピッチャーをしたことで精神的にも成長した澪ちゃんはどうやら吹っ切れたようです。よかったよかった

 そして私たちの最後の学園祭

 この3年間の集大成ともいうべきライブ

 クラスのみんなの協力やさわちゃんのサプライズもあり大盛り上がり

 その盛り上がりにつられるように私たちの演奏もさらに光を増します

 追い打ちをかけるかのように澪ちゃん作詞の新曲の披露です

澪「次の曲は私たちが野球を通じて感じたことを歌にしたものです」

 いたるところで歓声が上がります
 この日一番の盛り上がりです

澪「それでは聞いて下さい……」

澪「ヘッドスライディングにゃご用心!」

 澪ちゃんはヘッドスライディング否定論者にさらに磨きがかかったようでした




おしまい



最終更新:2011年01月28日 03:45