律(さて、6回か)

律(小山コーチが言うには6回7回辺りがピッチャーにとって一番キツイ回って言ってた)

律(確かに長距離走ったりするときは半分過ぎた辺りが一番しんどいんだよな)

律(この回は8番からだし、なんとか球数減らして打たせて取るか)

律(ここを楽に切り抜けられればラストスパートも決まるってもんだ!)

澪 シュパッ!!

    カキン!!

実況「8番のモブサード初球を打っていった。しかし当たりはサード正面」

春子「よっと」パシッ!! シュ

春子「あっ!?」

実況「ああっと!? 送球が逸れる」

1塁塁審「セーフ!」

実況「ファースト琴吹の足がベースから離れてしまった! サードの送球エラー」

春子「ごめんごめん」

姫子「やっぱりさっきドカ子とぶつかってどっか痛めたんじゃないの?」

春子「そうじゃなくてさ~。なんか糞暑くて集中力が切れるんだよな」

和「確かに、9月とはいえ昼間はまだ暑いわよね」

紬「よいしょ、よいしょ」

律「けど一番しんどい思いをしてるのは澪だぜ」

春子「そうだね。ごめん澪、アウト取りそこねて」

澪「大丈夫だから、気にしないで」

和「だけど澪も球数多くなってるでしょうし、打たせて取る必要もあるわよね」

紬「う~ん、う~ん」プルプル

律「さっきからムギは何やってんの?」

紬「私の体がもうちょっと柔らかかったらさっきのだってアウトにできたかもしれないから」

澪「だから、柔軟してるの?」

紬「うん。でも、これ以上は足広がらなくって……」

姫子「あまり無理しない方が……」

春子「お酢飲めば体が柔らかくなるって」

紬「本当!? じゃあさっそく用意させるわ!」

和「よく聞くけど、それ意味ないわよ」

紬「そうなんだ……」

律「……と、とにかく、あとの回のことも考えてこの回は打たせて取るつもりだから」

春子「わかった。次はミスしないよ」

姫子「ふふっ。律にもどことなくキャッチャーの風格が出てきたね」

和「じゃあ、ここも気合いれていくわよ」

澪「うん」

紬「お~!!」プルプル

律「……ムギはいつまでそうしてるの?」

紬「なんだか1人じゃ戻れなくなっちゃって……助けて」

澪「ムギってここまで天然だったっけ……」

唯「う~ん……」

曜子「どうしたの唯ちゃん」

唯「内野の皆は集まっていったい何を話し込んでるのか気になってさ」

曜子「私も秋山さんとマウンドに集まってお話したかったわ」

いちご「確かに気になる」

唯「ちょっと行ってこようか」

曜子「あ、でももう輪が解けたね」

唯「もしかして!?」

曜子「え? なに?」

唯「これが終わったら皆でどこか行く約束をしてるんじゃ……」

曜子「ええっ!? そうなの!?」

唯「所詮私たちは外野。あの土と芝生の区切りにはそんな隔たりがあるんだよ」

曜子「唯ちゃん……私悲しくなってきちゃった……」

唯「こうなったら、私たちは私たちで外野手友の会を発足させるしかないね!」

唯「友の会1号!」ビシッ!!

曜子「に、2号!」ビシッ!!

いちご「……」

唯「ほら、いちごちゃんは3号って言って。ちなみに早いもの勝ちだったから」

いちご「脱会するわ」

唯・曜子「!?」

 ・ ・ ・ ・ ・

実況「9番のモブレフト、ノーアウトのランナーを送るべくバントを試みますが2回続けて失敗しています」

実況「はたしてスリーバントはあるのか」

律(ここは欲張ってカウント悪くするのも嫌だしな。たぶん次もバントでくるだろうからさっさとさせた方がいい)

律(何かミスしてくれるかもしれないし)

澪 シュパッ!!

   カコン

モブレフト「あっ!?」

実況「あっと、打ち上げてしまった。打球はピッチャーの秋山へ」

律「澪! 取るな! 落とせ!」

澪「!?」

実況「判断良くワンバウンドさせる! 1塁へ戻りかけた走者はもう一度スタートを切る」

律「ファースト!」

実況「キャッチャー、1塁を指示。セカンドの真鍋がベースカバーに入ってアウト!」

実況「そのまま2塁へ送球! 立花がタッチしてアウト!」

実況「2年1組、バント失敗で痛いダブルプレー!!」

ムッシュ「あれは先にセカンドに放っとったら、もしかしたら1塁セーフになってたかもしれないですよ」

福本「フライがちょっと高かった分打者走者もファースト近くまで行ってましたからね」

実況「キャッチャー田井中の冷静な判断が活きました!」

姫子「やるじゃん律」

律「ははっ! これぞ扇の要ってやつですよ!」

和「ほんと、よくあそこでファースト指示したわね」

紬「りっちゃん凄い!!」

律「もっと褒めるがいい!」

澪「これでやっとお前のゲッツーがちゃらになったな」

律「うぐっ……。わ、わかってらい!」

律「次の梓も当ててくるようなバッティングだから守備頼んだぞ」

春子「おう!」

律「よっしゃ! 3人で終わらすぞ~!」

実況「2アウトランナー無し、打席は1番の中野です」

律「あれ? もうあの構えやめたのか?」

梓「もうあんな姑息なことはやめました。正々堂々とヒット打ちますよ」

律「まぁ、どっちにしろあんま変わんないけどさ」

梓「……」

澪 シュパッ!!      プチッ

澪「!?」

    ズバンッ!!

球審「ッタラーイク!!」

梓(相変わらず速いなぁ……)

律「おいおい、誰がヒット打つって?」

梓「くぅ~~~~!!」

律「にひひ」

律(こんだけ挑発したら次は打ってくるだろうな)

律(ちょっと緩めの球で引っ掛けさせて内野ゴロだ)

澪「……」ヒョイ

梓(これだっ!!)カッキーン!!

実況「中野の打球は三遊間を破る! レフト前ヒット!」

律「あっちゃ~、ちょっと梓を甘く見過ぎてたか」

律「まぁ次次! 切り替えていくぞ!」

実況「2アウトからですがランナーが出ました。2番のソフト部セカンドが打席に入ります。
    クリーンナップに繋げることが出来るか」

律(いくらソフト部だからってこの2番はまだ澪の爆乳ストレートを捉えてないからな)

律(それさえ決まれば打ち取れる!)

澪 シュパッ!!

律「!?」

実況「ああっと! 田井中の構えとはずいぶん違う所へ! しかし田井中反応良くそれをキャッチする」

福本「コントロールええのにえらい珍しいですね」

ムッシュ「少しくらいは外れる場合もありますが、あれほど構えた所に来ないのは滅多にありませんよ」

律(あ、危なかった。まぁ、澪も疲れてるだろうしな)

律(でも、さすがに緩い球じゃ打たれちゃうし。ここは我慢して爆乳ストレートで頼むぜ!)

澪「……」ヒョイ

   ヒュ~~~~ン

律「なっ!?」

    カッキーン!!

実況「緩めの球を弾き返した! センター前ヒット! 秋山ここで連打をくらった!!」


律「お、おい澪。どうしたんだいったい」

澪「……」

律「また何か私のリードで気に入らないところがあったのか?」

澪「そうじゃなくて……」

律「だったらなんで」

澪「ホックが……」

律「ん?」

澪「ブラのホックが壊れたみたい……」

律「え?」

澪「////」カァァァァ

律「まさか、爆乳ストレートの投げすぎでその衝撃にブラジャーが絶えられなくなったって言う事?」

澪「そ、その名前を出すな!」

律「マジか……」

澪「ど、どうしよう……」

律「その状況じゃ速い球は無理か?」

澪「なんだかバランスが悪くってさ、さっきみたいにとんでもない所に行っちゃうと思う」

律「替えのブラは?」

澪「まさかこんなことになるとは思ってもみなかったから持ってきてないよ」

律「わ、私の外して貸そうか?」

澪「お前のなんてサイズが合うわけないだろ!」

律「そ、そっか……。ってさりげに傷つくなぁ」

澪「とりあえず、ここはこれで乗り切らないと……」

澪「ちょっと調整したらちゃんとストライク投げられるかもしれないし」

律「そうだな」

 ・ ・ ・ ・ ・

   バシンッ!!

球審「ボールフォア!!」

実況「おっと、最後の球もとんでもなく外れてしまった」

実況「あきらかに秋山がおかしくなっている!」

実況「いったいどうしたんでしょうか?」

福本「ワシ、ピッチャーやったとこあらへんからわからんわ」

実況「あ、はい……」

ムッシュ「乙女心と秋の空やねぇ」

実況「そういうことにしときましょうか……」


澪「駄目だ……。どうしても胸が暴れて……」

律「なんてこった……。次は憂ちゃんだぞ」

和「ちょっと、いきなりどうしたっていうの?」

姫子「まさかまた喧嘩してるの?」

律「いや、そうじゃなくてさ……実は……」

澪「り、律! 言っちゃうの!?」

律「仕方ないだろ」

澪「そうだけど……恥ずかしい……////」

律「あのさ、澪のブラジャーが壊れちゃったみたいなんだよ」

律「皆も知ってのとおり、澪は胸の反動で速い球が投げられるようになったからさ」

律「その胸がブラの締め付けから解放されて右左でバラバラに暴れちゃってるってわけで
  投球のバランスがとれないんだよ」

紬「だったら新しいブラがあればいいのね?」

澪「そうだけど、そんなもの用意してないし」

和「私たちのやつじゃあ澪に合わないでしょうしね」

春子「大きいってのもなんだか大変なんだな」

澪「う、うん……////」

紬「あるわよ」

澪「え?」

紬「こんなこともあろうかと私が用意しといたの」

律「お前は博士かなにかか?」

紬「澪ちゃんのサイズって……」コショコショ

紬「……で合ってる?」

澪「……なんで知ってるの?」

紬「うふふ」

律「うふふでごまかしちゃったよ」

姫子「とにかく着替えておいでよ」

澪「わ、わかった」

審判「こらこら、勝手にベンチに戻られちゃ困るよ」

澪「いや、あの……」

和「ちょっと訳があって……」

審判「駄目駄目、ちゃんと理由を言い給え」

澪「……ぶ、ブラを」

審判「ん?」

澪「ブラジャーを替えてきますっ!!」

審判「!?」

審判「こ、コホン……。これは失礼した。構わないよ」

澪「恥ずかしぃぃぃぃぃっ!!」ダ────ッ!!!!

紬「あ、待って澪ちゃん!」

律「ちゃんと帰ってくるだろうな……」

『秋山選手、けがの治療のため、今しばらくお待ち下さい』

実況「けが、ですか。そういう風には見えませんでしたが」

福本「まぁ、ホンマはまた違う理由やと思いますよ」

ムッシュ「スタンドで待ってる観客へ詳しい説明ができないときは、けがという理由を口実に使ったりしますぅ~」

実況「なるほど、しかしなにかアクシデントがあったことには変わりありません」


澪「はぁ……。恥ずかしかった」

紬「澪ちゃん、はいコレ」

澪「ありがとう。じゃあ、ちょっと着替えてくるから」

紬「一緒に行こうか?」

澪「だ、大丈夫」

紬「そう……」

 ・ ・ ・ ・ ・

澪「お待たせ」

紬「じゃあ行きましょうか。皆が待ってるわ」

澪「う、うん。あのさぁ」

紬「なに?」

澪「本当になんでムギが私のサイズ知ってるんだ?」

紬「うふふ。聞きたい?」

澪「……いや、結構です」

『お待たせしました。試合を再開いたします』

実況「あ、出てきました。投球練習を見てどうでしょうか?」

福本「変わったとこなんかあらへんね」

ムッシュ「いつもどおりですぅ~」

実況「大した事がないようで安心しました。それでは試合再開です」


律「どうだ調子は」

澪「うん、思ったよりもしっくりきてる」

紬「なんせ既製品じゃなくてオーダーメイドだから」

律「だからなんでムギが澪のサイズにそんなに詳しいんだよ」

紬「よかったらりっちゃんのもあるけど?」

律「こわっ」

澪「でも、また壊れたらどうしよう……」

紬「大丈夫、予備もたくさん持って来てるから」

澪「……」

春子「ムギは計り知れないね」

和「もしかして私のもあったりするのかしら?」

紬「もちろん! あとで渡そうか?」

和「ありがとう」

姫子「それを普通に受け取ろうとする委員長もなかなかなもんだね」

律「いやいや、お待たせしちゃって……」

憂「いえ……」

律(あれ? なんか試合序盤と雰囲気が変わってるような……)

憂「和さんはもうキャッチャーしないんですか?」

律「え? ああ、まぁ一応私が正捕手だからっ!」

憂「そうですか……」

律(な、なんだ……?)


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