『6番 ライト 鈴木さん』

純「こんちは」

律「ああ、えっと……」

純「……」

律「スガキヤさん……だっけ?」

純「ラーメンじゃないですか……」

律「あれ? 違ったっけ?」

純「もう! 違います! 鈴木です! さっき名前コールされたじゃないですか!」

律「あはは、冗談だって」

律(この子はちょろそうだけど……)

    ビュンッ!!

純「はやっ! こわっ!」

球審「ッタラーイク!」

純(ううっ……速すぎる……)

純(こうなったら奥の手を……)

純「律先輩、鈴木姓で一番有名な野球選手ご存知ですか?」

律「マック鈴木?」

純「誰です、それ?」

律「え? さ、さぁ……」

律(いったい何の話してんだ、この子)

    ズバンッ!!

球審「スッタラーイ、ツー」

純「ちょ!? ちょっと待って下さいよ! ほら! 日本で一番有名な野球選手ですよ!」

律「一番有名って言ったら、イチロー?」

純「そう! そうですよ! で、何か気づいたことありませんか?」

純(ふっふっふ……私が鈴木だって気づいたら私にもイチローの血が流れていることに気づくはず)

純(そしたら律先輩も澪先輩も驚き慄くに違いないっ!)

律「あ~、そういやイチローって鈴木だったね」

純(待ってましたその反応! これで失投間違いなし! 甘く来たところは見逃さないよ!)

    ズバンッ!!

純「!?」

球審「ッタラーイ! バッターアウッ!」

律「で、そのイチローがどうしたって?」

純「あっれ~? おっかしいなぁ~……」

律(本当になんだったんだ、この子は……)


実況「鈴木、全く手が出ず3球三振に終わりました」


『7番 ファースト モブファーストさん』

    ズバンッ!!

球審「バッターアウッ!」


実況「続いてのバッターも難なく打ち取った秋山
    ノーアウトのランナーを出しましたがバックの厚い守りもあり2回を無失点です」

さわ子「すごいじゃない、唯ちゃん」

唯「えへへ、もっと褒めていいよ」

律「あれはいかれたと思ったけど助かったよ唯」

いちご「……ねぇ」

唯「なに? いちごちゃん」

いちご「上がりってなに?」

唯「上がり?」

いちご「守備してたときに言ってた」

唯「ああ~、和ちゃんに聞いたんだけどさ、メジャーリーグじゃ自分が捕るってアピールするときに『上がり!』
  って言うんだって~。だから私もそうしようかな~って」

いちご「変な掛け声」

和「唯、それ違うわ。正しくは『I got it』よ」

唯「あ、あい ごっと……?」

和「リピートアフターミー 『ァガリッ!』」

唯「上がり」

和「……もうそれでいいわ」


『6番 サード 近田さん』

春子「ちゃーっす!」


実況「さて、このバッターはどういうバッターなのでしょうか?」

福本「元気がええ」

ムッシュ「荒削りですが、そのぶん思い切りがあって非常に見てて楽しみなバッターですぅ」

実況「なるほど」


憂(いかにも初球から振ってきそうな人)

花子(高めのボール球投げたら打ち上げてれそうだ)

憂「それっ!」シュピッ!!

春子「おらっ!」カキン!!


実況「あ~っと、近田初球を打ち上げてしまった。高~く上がったキャッチャーフライ、捕ったアウト」

福本「真上に上がるくらいやからタイミングはぴったしでしたけどね」

ムッシュ「ただ球が高かった分打ち上げてしまいました~」


『7番 ピッチャー 秋山さん』

澪ファンクラブの面々「きゃ~!!」

曜子「秋山さ~ん! がんばって~!」

律「澪~! かっとばせ~!」

唯「澪ちゃんいけいけー!!」

実況「秋山にはスタンドやベンチからも力強い声援が飛びかってます! 人気者です」

澪「ううっ……目立ちたくないのに……。もうさっさと凡退してベンチに帰ろう……」

実況「ピッチャー、秋山に対し第一球……投げた!」

澪「それっ!」カキン!!

実況「打球はショートほぼ真正面に転がる、ショート中野捕って1塁へ送球、アウト。
    秋山初球を打ってショートゴロという結果に終わりました」

澪ファンクラブの面々「秋山さんが打った~! きゃ~! あのボールになりた~い!」

澪「……」

実況「凡退しましたがその声援はさらに大きくなりました」

澪「ふぅ……」

さわ子「ちょっと澪ちゃん」

澪「は、はい」

さわ子「まさか早くベンチに帰りたいからってわざと凡退したんじゃないでしょうね?」

澪「ま、まさか! 精一杯でしたよ!」

さわ子「そう、それならいいのよ」

澪(次からは真面目にやらないと……)


『8番 センター 平沢唯さん』

実況「早くも2アウトとなりましたが、先程守備でいいところを見せた平沢唯が左バッターボックスに入ります」

実況「福本さん、彼女はバッティングはどうなのでしょうか?」

福本「足は速いけど、打つんはからっきしやね」

実況「なるほど、では良くも悪くも打順通りの実力ということでしょうか?」

福本「まぁ……せやね」

ムッシュ「彼女は守備で貢献するので、バッティングには目をつぶらなあかんところもありますねぇ~」

憂(お姉ちゃんに強い球投げるなんてできないよ)フワッ

唯「宇宙感!!」ブン!! カスッ コロコロ…

実況「おっと! バットには当たった模様ですがスイングの勢いとは裏腹に打球はかなり弱々しい」

律「唯! 早く走れ!!」

唯「わわわ! そうだった!!」ダッ!!

実況「しかし、これはおもしろい所に転がっています」

モブサード「くっ……! 間に合って!!」

実況「3塁手が前に出てきて打球を掴み1塁へ送球!!」

唯「ぬおおおおお!!」ダダダダダダッ!!

実況「これはギリギリの勝負になりそうです!」

唯「うわっ!?」コケッ…



     ∩ ∩
   ~| ∪ |         (´´
   ヘノ  ノ       (´⌒(´
  ((つ ノ⊃≡≡≡(´⌒;;;≡≡≡
   ̄ ̄ ̄(´⌒(´⌒;;
   ズズズズズ


一塁塁審「せ、セーフ!」

実況「な、なんとヘッドスライディングです!」

福本「あれだけ、頭から突っ込んだらアカンって言うたのに……」

福本「怪我したら、終いやがな」

律「おお! 唯気合入ってんな!!」

紬「凄いわ!」

澪「なぁ、和。あれって……」

和「ええ、そうね。ベース手前でコケただけね」

さわ子(やるじゃない唯ちゃんも。これで佐々木さんで終わっても次の回はまた真鍋さんから)

さわ子(悪いけど佐々木さんのバッティングには期待できないし、これが今は一番最適の結果かも)

さわ子「ふっふっふ、流れはウチに来てるわよ!!」

『9番 ライト 佐々木さん』

姫子「落ち着いていきなよ、曜子」

曜子「う、うん!」

憂(あわわわわ。お姉ちゃん大丈夫かな……あんなに派手に転んじゃって……)

憂(心配だよ~)フワッ

曜子「!? 緩い球! これなら私にだって!!」パコーン!!

憂「しまった!? お姉ちゃんを気にしすぎるあまりっ!!」

実況「佐々木、初球の甘めに入った球を打っていった! 打球は二遊間へ。センターに抜けるか!?」

梓「させないです!」ピョン パシッ!

実況「いえ、ショートの中野、猫のように素晴らしい身のこなしで打球を処理しました
    そしてセカンドベースカバーにボールをトスして3アウt……」


      今だ!2塁ゲットォォォォ!!
       ̄ ̄ ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄      (´´
                  ∧∧       (´⌒(´
            ⊂(゚Д゚ )≡≡≡(´⌒;;;≡≡≡
        ⊆⊂´ ̄ ⊂ソ  (´⌒(´⌒;;
           ̄ ̄ ̄   ズザーーーーーッ
2塁塁審「セーフ!!」


実況「なんと! 1塁走者の平沢唯、電光石火の如くセカンドを陥れた!」

実況「誰もがショートの中野が打球に追いついた時点で、セカンドにトスして2塁封殺と思ったことでしょう」

実況「あるいは、そのままセカンドが1塁に送球していれば打者走者がアウトになっていたかもしれません」

実況「しかし、あまりの出来事に一瞬プレーが止まってしまいました!」

福本「だから言うたやろ、足速いって」

実況「スライディングも素晴らしかったですね福本さん」

福本「アレ教えたんもワシやがな」

ムッシュ「ちょっとごめんさないね~。ワタシはアウトを取れなかったとはいえ
      ショートの守備も褒めるべきだと思います~」

実況「はい、どちらもギリギリの素晴らしいプレーでした」

さわ子「佐々木さんでこの回終わりだって思ってたけど」

さわ子「こうなったら欲張っちゃうじゃないのよ」

さわ子「真鍋さん。ちょっと……」

和「何ですか? 先生」

さわ子「カ・ン・ト・ク」

和「……か、監督」

さわ子「なんとかフルカウントまで粘れない?」

和「わかりました。やってみます」

紬「どうして?」

律「塁が詰まった状態で2アウトフルカウントだったら投手が投げた瞬間にランナーはスタート切れるんだよ」

律「アウトだったらそのままチェンジだし、ボールだったらフォアボールだし」

紬「あ~。そういえばそんな事も習ったわね」

姫子「委員長の打撃技術と選球眼の良さならそれも狙えるかもね」

さわ子「そうよ。スタート切って打球が内野の間を抜けさえすれば
     唯ちゃんの足だったら必ず帰って来れるわ!」

 ・ ・ ・ ・ ・

実況「2回の表3年2組の攻撃。バッターは先程センター前ヒットを放った真鍋」

実況「2アウトランナー1、2塁。この局面でカウントは2-2」

実況「先程から真鍋、臭いところは全てカットしています」

憂「さすが、和ちゃんはしつこいね」

和「あなたもね。コース一杯ばっかり狙うんじゃなくて、たまにははっきりとストライク投げなさいよ」

憂「いやだよ。不用意に投げて長打ってのが一番最悪なんだから」

実況「ピッチャー、真鍋に対して8球目……投げました!」

和(これは高い!)ピタッ

球審「ボール!!」

実況「これでフルカウントとなりランナーは投球と同時に自動的にスタートを切ります」

ムッシュ「平沢の足ならば、外野に抜けたら必ず帰ってきますよ。ここはピッチャー踏ん張りどころです~」

実況「ピッチャー勝負の第9球目……投げました!」

和 カキーン!!

憂「くっ……、しまった!?」

実況「打った! 打球はライトの前で……落ちた落ちた!」

さわ子「よっしゃ! もう一点いただき!!」

律「ナイス和!!」

実況「もちろんスタートを切っていた2塁ランナーは余裕を持ってホームイ……」




実況「いえ、帰ってきてません!! 平沢唯は3塁を少し回った所でストップ!!」

実況「何故でしょうか!? スタートを切っていたのであれば悠々とホームへ帰ってくることも容易であるはずが
    平沢唯は3塁でストップしています!!」

福本「やっぱり……」

実況「どういう事でしょうか? 福本さん」

福本「いや、あの子にルールとか色々と教えたけどなかなか覚えやんのよ」

福本「せやから、最低限打球が転がったら走ってよし。球が浮いてたら地面に付くまでは様子を見るって教えてんけど」

実況「と、すると先程の打球も地面に落ちるまで待っていたと」

福本「2アウトやったらどんな打球でもスタート切れとは一応言うたつもりやねんけどなぁ……」

ムッシュ「しかし、あの子も決して悪い子じゃないんですよ」

福本「教え込む時間が足りませんでしたね~」

実況「しかし、2アウトながら満塁とチャンスであることには変わりありません」

さわ子「ど、どういうこと!?」

律「やっぱりあいつルールを理解してなかったか……」

さわ子「こうなったら若王子さんに賭けるしかないわ!」

いちご「任せて」スタスタ…

律「今のいちご……めちゃめちゃカッコよかったぞ」

紬「なにかやってくれる雰囲気漂ってたわ……」






いちご「……」ガクガク…


一同「足震えてんじゃーん」ガビ──── ン!!


 ・ ・ ・ ・ ・

    ズバンッ!!

球審「ッタラーイク! ツー」

実況「あーっと、手が出ないか? 若王子2ストライクと追い込まれた!」

実況「それになにやら小刻みに震えているようにも見えなくもないです」

実況「ピッチャー平沢憂……投げた!」

いちご カコン

実況「おおっと! なんとここでセーフティスクイズ!? それにしては正直すぎるバントだ」

実況「平沢憂、これを落ち着いて処理。1塁へ送球してアウト」

実況「2アウトからチャンスを作りましたが三者残塁に終わりました」

福本「バントは上手いんやけどねぇ」

ムッシュ「あの場面では打たな意味あらへんからねぇ~」

いちご「バントなら任せて」

律「苦し紛れにバントでごまかすんじゃありません」

姫子「まぁ、打てなかったもんは仕方ないよ。次だよいちご」

いちご「……うん」


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