さわ子「まず、平沢さんがまだアウトカウントの浅いときになんでもいいから出塁したとするでしょ」
さわ子「そしたら佐々木さんが送りバントで先の塁へ進める」
さわ子「平沢さんは足が速いから微妙なバントでもなんなく得点圏に行くことが出来る」
さわ子「ほら、これでチャンスが出来たでしょ。あとは上位打線がなんとかしてくれるわ」
さわ子「いうなれば、3年2組影の1、2番ってことかしら!」
曜子「なるほど……私と唯ちゃんでチャンスメイクをする」
唯「ふっふっふ、さすがさわちゃん。良いところに目をつけたね。
まさか相手チームも7番の後が1、2番だとは思いもしないだろうね!」
さわ子(正直このメンバーで打撃に期待出来るのは7番の澪ちゃんまで……。
なんとか体良く2人を切り離すことが出来たわ)
姫子(先生上手いこと言ったなぁ)
和(唯の足活かすにはそれがいいかもね)
律「ところで、対戦するクラスはどこなの?」
さわ子「それが、他のクラスも野球する人数が集まらなかったらしくってね
結局この3年2組以外で9人以上集まったのが1クラスしかないのよ」
曜子「やっぱり皆バレーボールやテニスに集まちゃうんですね」
紬「で、そのもう1クラスっていうのは?」
さわ子「2年1組っていう話ね」
姫子「2年1組ですか!?」
さわ子「な、何? 立花さん!?」
和「どうしたの?」
姫子「そのクラスには2年ながらウチの4番を務める子がいるんだよ」
唯「そんなに強いの?」
姫子「この夏の地方大会は3試合で6ホーマーだからね」
姫子「しかも、準決勝ではその子が敬遠されてばっかりだったから負けたようなもんだし」
さわ子「ええっ!? ちょっと! そんな子が2年1組にいるなんて聞いてないわよ!」
春子「なんでさわちゃんがそんなに必死になってんのさ」
さわ子「へっ? いや……なんでもないのよ」
律「手強い相手ってことか……」
姫子「そうだね、他にも2人ほどそのクラスにはソフト部の主力がいるし」
いちご「バトン部も何人かいる」
さわ子(それは正直どうでもいい情報だわ……)
澪「そういえば、梓も2年1組だったな」
唯「お! 本当だ。あずにゃんも野球かな~?」
和「ちょっと待って! それじゃあ憂も一緒のクラスよね?」
唯「そうだね~」
和「なんてこと……」
律「こ、こんどは和が……」
さわ子「もしかしてとは思うけど……そんなにすごいの?」
和「小学校の頃同じリトルのチームでやってたんですけど、あの打棒は忘れられません」
和「もっとも、それもその当時のことなので今はどうかわかりませんけど」
律「なんだ……それならもう何年も前の話だろ? だったらさすがに大丈夫じゃね?」
和「まぁね、最近は野球なんてやってないでしょうし鈍ってるとは思うけど」
和「でも、昔は地元じゃ有名だったのよ。リトル殺しの憂ってね……」
律「り、リトル殺し……!!」ゴクリ
和「その打棒で何人もの前途ある野球少年の心を打ち砕いてきたのよ」
唯「あ!」
さわ子「な、なに!? 今度はいったいなに!?」
唯「そっか! あのうまい棒とかは憂がバッティングセンターでとってきたものだったんだ、きっと!」
唯「今の時期商店街で福引なんてやってないからおかしいとは思ってたんだよね~」
紬「あのバッティングセンターの景品根こそぎ持っていったのって憂ちゃんだったってこと?」
唯「いや~、昔のことだから和ちゃんの話聞くまで忘れてたよ~。憂打つのすごかったんだ~」
律「マジか……」
唯「春ちゃんすいやせんね~、ウチの妹がうまい棒詰め合わせとっちゃって」
春子「唯の妹すげぇんだな……」
和「どうやら完全に勘を取り戻してるようね」
姫子「厳しい戦いになりそうだね」
律「いいや! 大丈夫だ!」
唯「りっちゃん!?」
律「私たちだって必死に練習してきた、それにこっちにはエースがいる!」
澪「そんな簡単に言うなよ……」
和「そうね、憂といえどもあの澪のストレートはそう易々とは打てないはずね」
律「私たちバッテリーに任せとけ! 私のリードで三振の山を築いてみせるぜ!」
澪「誰が投げると思ってるんだよ……」
曜子「秋山さんが三振取るたびに、私恵まれない子供のために100円を募金するわ!」
澪「い、いいよ佐々木さん、そんなことしないで」
いちご「期待してるわ、爆乳ストレート……」
澪(やっぱり嫌だ……)
律「よーし! 唯! 私たち軽音部の目標を言ってみろ!」
唯「はい! お茶とお菓子を欠かさずに毎日を放課後のように過そうです!」
律「ちっが~う! まぁそれも魅力的ではあるが……」
紬「唯ちゃん、武道館よ!」
唯「おおっ! そうだった!」
律「軽音部の目標がそれなら、このクラスで白い白球を共に追いかけた仲間の目標は……!!」
和「白い白球って、重複してるわよ」
律「コホン……。ずばり甲子園だ!」
澪「何言ってんだよ……」
律「目標は大きく!!」
姫子「ふふっ。やっぱり軽音部って面白いよね」
さわ子「その意気で明日の本番も頑張ってちょうだいね! 絶対に勝つのよ! 負けは許されないわ!」
澪「な、なんでさわ子先生がそんなむきになってるんですか……」
曜子「秋山さん、私を甲子園へ連れて行って!」
澪「……」
平沢家
唯「そう言えば、憂も球技大会は野球なの?」
憂「うん。私も野球で参加するよ」
唯「ほ~」
憂「梓ちゃんも一緒だよ」
唯「おおっ! あずにゃんもなんだ」
憂「実は、お姉ちゃんが野球の練習してるって聞いてから私と梓ちゃんと純ちゃんで野球の練習してたんだ」
憂「本当はお姉ちゃんと同じチームでやりたいんだけど、こればっかりは仕方ないよね」
唯「そうだったんだ~。じゃあライバルだね!」
憂「担任同士も熱い火花が散ってるって話だよ」
唯「どういうこと?」
憂「噂じゃウチの担任の鹿野先生と山中先生って仲が悪いんだって」
憂「しかも負けた方が焼肉おごるって約束したらしいんだ」
唯「へぇ~、だからさわちゃんもあんなに真剣だったんだね~」
唯(あれ? でも焼肉おごる間柄なら仲はいいんじゃ……?)
そして試合当日
唯「おおっ、ここが甲子園」
律「いや~、まさかいきなり甲子園で野球が出来るとは思ってもみなかったな~」
姫子「ほ、本当にいいのかな……」
紬「私の父が阪神の球団オーナーと知り合いで(ry」
いちご「もう聞き飽きた」
春子「ここのやきとり美味しそう」
和「でも、ここで野球が出来るだなんて光栄よね」
曜子「秋山さん、大丈夫?」
澪「な、なんで観客も入ってるの……」
紬「いたほうが盛り上がると思ってたんだけど……」
澪(こんな大勢の前でやらなきゃいけないなんて……)
律「良かったな澪、もしかしたらどこかのスカウトがいてそのままプロデビューなんてことになっちゃうかもな!」
和「最近じゃ独立リーグなんてものもあるし、あながち無いとは言い切れないかもね」
澪「め、目立ちたくない……」
…
純「うわ~、ここが甲子園」
梓「私たちなんかが足を踏み入れちゃってもいいのかな……」
憂「広いね、ドカ子ちゃん」
花子「さすがのあたいでもスタンドまでは無理かもねぇ」
憂「そんなことないよ、きっとドカ子ちゃんならホームラン打てるよ」
花子「まぁ、頑張ってみるよ」
…
和「ねぇ、姫子。あなたが言ってたのってあのゴツイ子?」
姫子「そうだよ、山田花子。ポジションは……」
和「キャッチャーね」
姫子「よくわかったね」
和「いかにもキャッチャーっていう体型だったから……」
姫子「元々は柔道部だったんだけどさ、ソフト部の顧問って体育教師でしょ」
姫子「授業でソフトボールやったときに素人とは思えない振りだったんだって」
姫子「こんな才能を眠らせとくなんてもったいないって顧問が柔道部から引き抜いてさ」
姫子「そっからメキメキと頭角をあらわしたってわけ」
姫子「そんな経緯と弁当箱がでかかったことからついたあだ名がドカベン子
私たちはドカ子って呼んでるけど」
姫子「今じゃ県の強化選手にも指定されてるし、U19の日本代表にも選ばれるんじゃないかって」
和「そう、すごいのね……」
唯「ペロッ」
紬「ど、どう? 唯ちゃん」
唯「土だね」ペッ
紬「そっか……」
律「ほ~ら、馬鹿やってないで早くベンチに入れよ~」
さわ子「さぁ、あなた達。今までの練習の成果を存分に発揮するのよ!!」
唯「さわちゃん気合入ってるね!」
さわ子「今日は監督と呼んでくれるかしら?」
律「わかったぜ監督!!」
さわ子「勝ちにいくわよ!!」
「おお~~~~っ!!」
澪「お、お~~」
後攻 3年2組オーダー 先攻 2年1組オーダー
4 真鍋 和 6 中野 梓
7 若王子 いちご 4 ソフト部 セカンド
6 立花 姫子 8 ソフト部 センター
2 田井中 律 1 平沢 憂
3 琴吹 紬 2 山田 花子
5 近田 春子 9 鈴木 純
1 秋山 澪 3 モブ ファースト
8 平沢 唯 5 モブ サード
9 佐々木 曜子 7 モブ レフト
実況「さぁ、まだ残暑厳しい日々が続きますが皆様いかがお過ごしでしょうか」
実況「今日は、ここ阪神甲子園球場から桜ヶ丘高校の球技大会の模様をお伝えしていきます」
実況「実況はABC清水次郎、解説はおなじみ阪神タイガース唯一の日本一監督吉田義男さん」
実況「そして世界の盗塁王福本豊さんに努めて頂きます。よろしくお願いします」
ムッシュ「よろしくぅ~」
福本「お願いします」
実況「さて、ご両人は今から試合をする3年2組のコーチングをしたと噂を聞いておりますが」
ムッシュ「はい、その通りですぅ~」
実況「その話も随時お伺いしていきたいと思います。ではそろそろ試合開始です」
『1番 ショート 中野さん』
実況「先攻の2年1組トップバッターの中野がバッターボックスに入り……いま球審の声がかかりました」
球審「プレイッ!!」
梓「先輩たち、本当に夏休み中ずっと野球やってたんですね」
梓「部活と私を放ったらかしで」
律「あはは……ごめんごめん」
梓「まったく……、その情熱を少しでも軽音部の方に向けて欲しいですよ」
梓(まぁ、私も人のこと言えないけど……)
律「そう言うなよ梓。これが終わったらちゃんとするからさ」
梓「絶対ですよ!」
律「その前に澪の球見てやってくれよ。絶対打てないぜ」
梓「私だって、少しは憂たちと練習したからそう簡単には……」
ズバンッ!!
梓「速っ!?」
律「だろ~。しかも指によくかかってるらしくて伸びるんだってさ」
梓「澪先輩って何やらせても凄いんですね!」
律「いやいや、これも私のリードがあっての……」
梓「へ~」
律「聞けっての!」
・ ・ ・ ・ ・
実況「秋山投手なかなかいい球を投げていますね」
ムッシュ「はいぃ~。何やら変化球も投げるらしいですぅ~」
実況「それはすごい! 期待しましょう」
球審「ッラーイク! バッターアウッ!!」
実況「2年1組、三者連続三振で1回の表が終了。秋山、上々の立ち上がりです」
さわ子「凄いじゃない澪ちゃん。さすが私が見込んだだけのことはあるわ」
澪「はぁ……。どうも」
律「なんだ~澪。まだ乗り気じゃないってのか?」
澪「当たり前だ! 結局夏休み中はずっと野球やってたし……
しかもこんなに大勢の前で投げなきゃいけないなんて……」
律「でもそのおかげで、澪の隠れた才能が発掘されたわけだし」
澪「別に私はピッチャーがやりたいわけじゃないんだ!」
律「そんな事言ったって、球技大会まではやるって言ったじゃん」
澪「わかってるよ。だから、もう早いとこ終わらすぞ」
律「はいはい」
実況「さぁ、1回の裏3年2組の攻撃です」
『1番 セカンド 真鍋さん』
和「憂が投手なのね」
憂「和さんと一緒に野球するなんて久しぶりですね」
和「そうね、もっともそのときは同じチームだったけど」
憂「あのときみたいに楽しくやろうね、和ちゃん♪」
和(よく言うわ……)
実況「ピッチャー振りかぶって……投げた!」
バシンッ!!
球審「ボール」
和(球は澪の方が速いわね。まぁ、リトルのときも憂は野手だったし)
実況「第二球……投げた!」
球審「ボール、ツー」
和(コントロールもそんなに良くなさそう……)
和(あの子は打者としては警戒するべきだけど投手としてはそれほどでもないかも)
和(でもいきなりスリーボールにはしたくないでしょうね。次は入れてくるはず)
和(あっちもいきなり手を出すとは思ってないでしょうし。それに多少難しそうな球でも、このくらいなら打てる!)
さわ子(ツーボールか……。ちょっと立ち上がり荒れ気味だしもう何球か見てフォアボール狙いでもよさそうだけど)
和(打っていいですか?)
さわ子(打ちたいって目してるわね……。いいわ、自信があるなら打ってちょうだい!)
最終更新:2011年01月28日 22:22